〈プロローグ〉
「オイ、こんなふざけたことしてねぇで戻ってこい。戻らないなら、オレが力づくで連れ帰る」
『へぇ……。俺たち随分過大評価されてるみたいだね? ブリギットちゃん。ヨアヒムさんが直々に相手になってくれるみたいだよ』
衛司・ヨハンソンは、大剣の切っ先を向けるヨアヒムに嘲笑を浮かべた。教団屈指の実力者であるヨアヒムが直接挑むということは、彼が衛司たちを教団に必要な実力者だと認めている証だ。
(ヨアヒム様はいつも豪胆でいらっしゃいます……真正面から宣戦布告など、私にはとても……)
川上 一夫は広場の外れの茂みに身を潜め、戦場を観察していた。
これまでシュミスで何度も見かけた衛司と
ブリギット・ヨハンソンの実力は知っている。故に、この二人に挑むにはかなりの、それはもうかなりの勇気を要するのだ。
(下手を打てば返り討ちです。それを考えると恐ろしくてたまりません。ですが……)
狙撃銃を握る一夫の手に無意識に力がこもる。
(……私も彼らと同じ執行者なのです。仲間を助けたいのです。何とかして元に戻して差し上げなくては)
* * *
アンネリーゼはシャティを背に庇うようにして立ち、怪物に十字架を構えた。怪物は威嚇の唸り声を上げ、今にも襲い掛かろうとしている。シャティは、そんなアンネリーゼの背中をもどかしそうに見つめていた。
「わ、わたしもアンネリーゼさまのお役に立ちたいのに……」
消え入るような呟きは、背を向けたままのアンネリーゼには届かない。見つめる掌に、涙の雫がひとつ落ちる……。
* * *
◆目次◆
〈プロローグ〉
【2】〈及ばざる正義(1)〉
【2】〈及ばざる正義(2)〉
【2】〈及ばざる正義(3)〉
【2】〈及ばざる正義(4)〉
【2】〈及ばざる正義(5)〉
【2】〈及ばざる正義(6)〉
【2】〈及ばざる正義(7)〉
【2】〈及ばざる正義(8)〉
【1】〈過ぎたる罪(1)〉
【1】〈過ぎたる罪(2)〉
【1】〈過ぎたる罪(3)〉
【1】〈過ぎたる罪(4)〉
【1】〈過ぎたる罪(5)〉
【1】〈過ぎたる罪(6)〉
【1】〈過ぎたる罪(7)〉
【1】〈過ぎたる罪(8)〉
【1】〈過ぎたる罪(9)〉
【1】〈過ぎたる罪(10)〉
【1】〈過ぎたる罪(11)〉
【1】〈過ぎたる罪(12)〉
【1】〈過ぎたる罪(13)〉
【1】〈過ぎたる罪(14)〉
【1】〈過ぎたる罪(15)〉
〈エピローグ〉