■プロローグ■
――リートリム島。
現在は
アルクティカ統合国の最重要拠点となっているこの島は、元々は
スクラヴィア連邦共和国の資源島(=スペースコロニー)だった。
時間の経過で採掘は進んだだろうが、スクラヴィア連邦共和国が所有していた頃のデータから、それでも島にはまだ資源が多数埋蔵されていることが予測されている。
だからこそ、スクラヴィア連邦共和国軍にとってこの島は是非とも奪取しておきたい場所だ。
この島に眠る資源の有用性をアルクティカ統合国もよく理解しており、基地は司令塔を中心に、何層にも渡って築かれた長大な防衛線で守られている。
防衛線には無数のトーチカが作られ、どこを攻められても火力を隙なく集中運用することによって、撃退させられるようになっていた。
さらに、この盤石の防衛線を守る兵士たちは、アルクティカ統合国の切り札的存在である
“蒼い雷光”アルス・ファング少佐によって指揮されており、その士気はこれまでにないほど高まっている。
仮にスクラヴィア連邦共和国軍が一時的に有利を取ったところで、アルスが出撃し暴れ回れば戦況はひっくり返るだろう。
版図を大きく広げ、戦略的には有利な状況のスクラヴィア連邦共和国軍であるが、局地的、この島での戦闘に限った話であれば決してそうとは言い切れない。
それほどまでに、防衛線の存在と、アルスの存在は大きかった。
今回の戦いの目的は、基地にある司令塔を制圧すること。
それが、スクラヴィア連邦共和国軍が勝利するための絶対条件となる。
そのために必要な工程は、主に三つあった。
まずは、アルクティカ統合国軍の防衛線から戦力を釣り出し、各個撃破していく釣り野伏戦術の成功。
これは必ずしも敵を倒すことが目的ではなく、釣り出すことそのものを主目的としている。
複層的に構築されている防衛線は、表層を突破したところで残る層で受け止められ、周囲からの増援で半包囲を受けて殲滅されるのがオチだ。
それを防ぐためには、すぐに敵が集結できないよう、戦線をできる限り縦に間延びさせばらけさせる必要がある。
首尾よく敵を釣り出せたとしても、おそらくアルスとその直接指揮下にある兵士たちは乗ってこないだろう。
彼らに対しては、直接特異者たちをぶつけて排除する以外に方法がない。
アルスとの対話を諦めていない特異者たちにとっても、この時がアルスと接触する唯一のチャンスだ。
そして、防衛線の戦力を釣り出し、さらにアルスを撃破、あるいは撤退させることができれば、そこで初めてスクラヴィア連邦共和国軍に勝利が見えてくる。
間延びし、さらにアルスの不在によって綻んだ防衛線を、最大戦力で食い破り瓦解させるのだ。
これからの戦争の命運をも決定付ける重要な戦いが始まろうとしていた。
■目次■
プロローグ・目次
【1】防衛隊を引き付ける(陸空)
・釣り野伏を成功させよ1
・釣り野伏を成功させよ2
・釣り野伏を成功させよ3
【2】アルスを誘き出す(陸空)
・アルスを説得せよ1
・アルスを説得せよ2
・アルスを説得せよ3
・アルスを説得せよ4
・アルスを説得せよ5
【3】防衛線を瓦解させる(陸空)
・防衛線を食い破れ1
・防衛線を食い破れ2
エピローグ