・悪しき軍勢を止めろ1
四天王配下であるホブゴブリンとトロールの軍勢は衰えを知らない。
パレード ロェは総員の突撃が来る前にローンモウLV10でグレートソードLV5を横薙ぎに振るう。
衝撃波で敵の出端を挫きつつ、奥に控えるトロールを見据えていた。
(わぁ、大きいのが居るね! もしかしてあれが四天王……? とりあえず、道を作らないとね)
「よし♪ この隙にみんなは“四天王”のところへ……」
「あれは四天王ではない。ただのトロールですよ」
そう応じたのは
明月 ムゲンであった。チャージLV3で力を溜めて構えるミスリルランスLV4の威力を向上させ、更にウィンドスラッシュLV6で風の刃を帯びさせると、観察眼LV3で見極めたホブゴブリンの弱点――鎧から露出した肌を狙って突き出した。
「……そっか。“四天王”って言うくらいだから四人しか居ないはずだよね!」
「情況はそうとも限らないようですがね……」
天技である黄金の鎧Lv1を発現させ、ホブゴブリンの槍などものともせずに応戦する。
(何としても、この軍勢たちから皆を守らねばなりません……)
ホブゴブリンの槍を弾き返し、その膂力でブレイククレーターLV9を放ち、大地を大きくへこませる。
地形を変化させることで敵陣を足止めするが、それでもホブゴブリンの攻勢は衰えない。
魔物の軍勢は闘争心を滾らせており、
草薙 大和は嘆息をついていた。
(四天王も脅威だが、このまま敵の配下を通してしまえばそれだけで劣勢に転ぶ……。どうやら北王国の騎士団長ネーベルも、こちらの対処に回ってくれているようだな)
大和は向かってくるホブゴブリンに対しアダマンキャリバーLV10を薙ぎ払った
並外れた膂力から放たれるローンモウLV10でホブゴブリンの前衛部隊が吹き飛ばされ、衝撃波がホブゴブリンたちの出鼻を挫く。
鍛冶師として予め武器を強化しているため、武器の破損を恐れることなく攻撃を放てる。
(しかし……硬直が来るな……)
反動で動けなくなった大和へと、後衛部隊が鉄の槍で固めて再度向かって来ようとするのを、
草薙 コロナが見据えていた。
(ものすごい数の敵軍ですね……。ですが騎士団長ネーベルさんがこちらに回ってくれているんです。力を合わせてホブゴブリンの数を減らしますですよ)
コロナはグレートソードLV5を振るい槍と打ち合う。
複数体での連携を組んでくるホブゴブリンに、コロナは苦戦しながらも応戦を続けていた。
(動けるようになるまでの時間が稼ぐですよ……!)
持ち直した大和は武装を構え、ウィンドスラッシュLV6で風の刃を発生させて離れた位置のホブゴブリンを薙ぎ払っていた。
「陣形を崩すぞ、コロナ!」
「はいですよ! 大和さん!」
ホブゴブリンの布陣で固まっている箇所に向けて力強く踏み込んで武器を叩きつけて衝撃波を浴びせる。
グラウンドクラッシュLV5が打ち込まれ、ホブゴブリンが吹き飛ばされていく。
コロナもウィンドスラッシュLV6で風の刃を飛ばしながら牽制し、陣形を少しずつ崩していた。
ホブゴブリンの槍が迫る前に察知し、距離を詰めて至近距離から押し飛ばす。
大和と共に風の刃で迎撃を繰り返し、最大の一撃を叩き込む好機を伺う。
(この間合いなら……!)
ホブゴブリンの一体が防御の構えを解いた瞬間を狙って、コロナはリングオブパワーLV1で引き上げた力を込めたメガブレイクLV5を繰り出す。
その衝撃波が敵陣に伝播し、陣形は瓦解していた。
奥に控えるトロールが痺れを切らしたように味方であるホブゴブリンを巻き込みつつ、棍棒を振るい上げる。
「……来たな……!」
その分厚い脂肪に向けて大和が用いたのはガードペネトレートLV5である。
硬い守りをも貫く刺突がトロールの棍棒ごと肉体を穿ち、背中まで刀身を至らせた。
棍棒の構えが崩れたのを視認し、コロナが風の刃で追撃し放ちトロールを後退させる。
(よし、この射線ならば……!)
「コロナ、一気に決めるぞ!」
「はいです!」
コロナのメガブレイクと重ねて大和も剣を振るい、トロールを転ばせる。
「追撃を行くぞ! ……絶対にこの先を通すものか!」
籐杜 渚沙はふむとネーベルの戦いぶりを観察する。
「あの人がネーベル……騎士団長の名に恥じない気迫と品性……でも、陽樹様のほうがカッコいいですから!」
ネーベルは胡乱そうな眼を一瞬だけ向けてから、すぐに戦闘に集中する。
リングオブマジックLV1の効力を確かめるように擦りながら渚沙は準備を整える。
(はぁ~……陽樹様~)
「先手必勝! 戦火を覆う大津波!」
上級水属性魔法であるタイダルウェイブLV10が放たれる。
初手で押し流されていくホブゴブリンを視野に入れ、その奥に待つトロールを睨む。
(ふむ。あれがトロール……初手を行かせてもらいましょうか!)
ブレイズソードLV7で生み出した炎の剣を構える。
「歯向かう悪鬼は焼け焦げなさい!」
火炎放射器のように放ち、ホブゴブリンの連携を崩しながらトロールを狙う。
分厚い脂肪を有しているトロールが炎に負けじと向かって来ていた。
渚沙は魔力活性薬LV2を服用し、クエイクLV6で地面を鳴動させトロールの動きを制する。
トロールが僅かにたたらを踏んだ、その瞬間。
「これを食らいなさい!」
コメットフォールLV6で隕石を降り注がせ、さらに天技:隕石落としLV1を続けて放つ。
「命よ天に――!」
言葉を掻き消す程の轟音が隕石落下よって辺りへ広がる。
天廻 陽樹はホブゴブリンと相対するネーベルへと視線を振り向けていた。
(さすがは“抜かず”のネーベル。その戦力は圧倒的ですね)
「貴女が“抜かず”のネーベルですね? ワタシは天廻陽樹……一応、勇者候補の時の探索にも参加していた者よ。まぁ別の場所に居たから……貴女の天技である戦局を『ひっくり返す』能力は味わえていなかったけれど」
「そうか。だが、今は少しでも敵を削ぎたい。協力してもらえるか?」
「もちろん。……その、後でサインもらえるかしら? 貴女の名、その雄姿はどの世界でも語られるべきだから……」
「構わない。この戦場をどうこうできるのなら、サインなど安いものだ」
「ありがとう。冒険者のマントの内側に書いて欲しい。これはちょっとした約束手形。……ゆえに、何があっても死なせるわけにはいかない。気にしないで、ただの一人の冒険者の戯言」
猛獣使いとして馬を確保していた陽樹は、いざという時の保険として近場に待機させておく。
(何があっても死なせるわけにはいかない……だからこそ、確実にホブゴブリンを獲る!)
リングオブスピードLV3で引き上げた速度で敵陣に突っ込みつつ、アンティシペイトLV10でホブゴブリンの槍を回避しながら攻撃を加える。
ネーベルの武術も鋭い。
ホブゴブリン相手に一瞬として衰えることはない。
「リスクを恐れず初めてのことに挑戦する者……ファーストペンギンか」
陽樹はサンダーテールLV9をワイヤードプレイLV7で巧みに操ると、絡め取ってトロールの足を払い、ホブゴブリンは連携を絶つように投げ飛ばす。
絡め取って敵の足を払い、連携を絶つようにちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返す。
(奥にはトロールが控えているな……。足元を狙わせてもらうか)
天廻 詠は
白鳥 雫と共に戦域を見渡していた。
「なんや、ぎょうさん数が居るやんか。これ全部ホブゴブリン? よぉやるわ」
「騎士団長……“抜かず”のネーベル。ふむ、あの強さと英傑が持ち得る格……。事を成せてもこの人を失ったらこの国に歪が生じるだろうね」
「せやなぁ。まぁ、最近この手の戦いせぇへんかったからなぁ。お手本になる人も居るようやから注目しておくかぁ。ああいう手合いはお母さん、好きやからなぁ」
詠は予め雫に強化して貰ったグレートソードLV6を構え、雫は自身を中心としてエクステンシブヒールLV10を展開することで仲間の治療を行うと共に、マテリアルガードLV6を続けて起動してホブゴブリンの槍を防いでいた。
「おやぁ、こんな壁が壊せないのかぁい?」
獣の嗅覚で詠はホブゴブリンの接近を察知し、天技:呼吸強化LV1によって吹いた息でホブゴブリンの槍が届く前に後退させる。
「レンガの家でも建ててこいやぁ!」
槍の間合いの内側まで潜り込めば、反撃を受ける可能性も低い。
チャージLV3で腕に力を込め、ホブゴブリンが次手に移る前にアサルトバッシュLV3の一閃を叩き込む。
「焦んなや……本命はここからや!」
ウィンドスラッシュLV6によって生じさせた風の刃を、怯んだホブゴブリンに追撃として放ち、前衛のホブゴブリンを薙ぎ払っていく。
「にしても、ああも色んなのが居るとある意味魔族は仲良しさんやなぁ。こっちの人間さんも早う仲良くせんとアカンやないの?」
ネーベルの睨みが飛んだので詠は首を引っ込める。
「まぁ、皆が仲良くしたいと思うとると限らん……っと気にせんでくれ、戯言や」
雫はネーベルへと呼びかける。
「君、もしくはそれ以上の存在がこの動乱に乗じて……なんて杞憂なら良いんだけれど。強者ゆえに、生じる隙もあるさ」
「……冒険者は口が減らない奴らが多いな」
肩を竦めて、雫は天技:酒解神の嫌がらせLV1を発動した
天技によって生み出された酒をトーメントLV6にかけ、それを無理やりホブゴブリンの口に捩じり込む。
「今日の味は……少し苦く、喉越しのいい炭酸を含んだもの。それは発泡酒だねぇ」
パワークロークLV7にかけられた強化術式で筋力を引き上げ、身体強化魔法であるリーンフォースLV5を発動する。
トーメントLV6を振りかぶり、力強い踏み込みからのグラウンドクラッシュLV7が酩酊状態となっているホブゴブリンの顔面に炸裂した。
「暴力は好きじゃないけど、もうここまで来ちゃったら退けないよねぇ!」
衛司・ヨハンソンは対トロール戦を想定して、予め詰め込んできていたモンスター知識LV2をネーベルと
ブリギット・ヨハンソンに共有していた。
「トロールは分厚い脂肪を持つみたいだね。そう簡単に切り崩せるとは思わないほうがいいよ。知能は低そうだけど、逆にそれ故に恐れもないと思う。厄介な敵になるだろし、ネーベルさん。共闘して少しでも敵を減らさないかい?」
「……引き受けよう。少しでも早く片付けたいからな」
「ありがとう。じゃあブリギットちゃん、やろうか!」
「ええ、エージくん! ネーベル。前は決裂しちゃったけれど、今回は共闘出来て嬉しいわ。あれからあたしたちも成長したんだから!」
そう言ってからこれまでの戦いを見て分析した、ホブゴブリンやトロールの能力をネーベルに告げる。
「敵に天技持ちは居ないわ。向かってくるのはホブゴブリンの軍勢と、そして何体かのトロール……。厄介なのはホブゴブリンの連携と、そしてトロールの突破力ね。確実に砦を陥落させるために、連中は手段を選ばないわ」
「……いずれにせよ、殲滅するまでだ」
「その意気は結構。じゃあ、やりましょうか!」
「ああ。冒険者にはそれぞれ思惑があるのは否定しないけれど、少なくとも俺とブリギットちゃんはネーベルさんに協力したい。この世界を救う手助けをするつもりだ。そしてこの世界に住まう人々の安寧を脅かすのならば、魔族だろうと冒険者だろうと刃を向けることに躊躇いはないよ」
「……ふん。その思いをいつまで持ち続けられるか、だな」
「取り下げる気はないとも。俺が戦えるうちはね」
衛司はディスアピアLV6による歩法と呼吸法で気配を薄めていく。
隙を窺ってトロールへと幻覚作用を持つサイケデリックLV5を散布していた。
その毒が回り切る前にスチールピストルLV7の弾丸を厚い脂肪へと撃ち込んでいた。
(さて、これで……!)
鈍重なトロールが反撃しようとするが、幻惑の毒のせいで正確に狙いを定める事は不可能のようだ。
明後日の方向に棍棒が打ち込まれて地面を捲れ上がらせる。
その威力だけならば確かに脅威。
(だけれど……トドメは頼んだよ、ブリギットちゃん)
そのアイコンタクトを受け取って、ブリギットがトロールへと挟撃を仕掛ける。
(ええ! やってみせるわ、エージくん!)
チャージLV3で全身に力を漲らせ、トロールが動くよりも先にアサルトバッシュLV3の一撃を叩き込む。
トロールがよろめいた隙に、天技であるルーン斬りLV4をフラーキャリバーLV9へと付与して極大化された斬撃を浴びせた。
「悪いけれど、長く相手はできないんだ!」
倒れ伏したトロールに頓着せず、ブリギットと衛司は次の相手へと向かっていた。
ネーベルへと共闘すべく駆け抜けるのは
邑垣 舞花である。
戦いが始まる前に、貴族としてネーベルには冒険者に手を貸してくれたことへの感謝は告げておいた。
「ネーベルさん。ここでの共闘、本当に……」
「謝辞は、終わってからでも充分だろう。敵を討ちに行くぞ」
舞花は首肯すると、リングオブスピードLV3で引き上げられた速度を活かして動き回りながらスチールピストルLV7を連射していた。
トロールが苦悶の表情を浮かべながら手を払い、棍棒を打ち下ろす。
威力だけならば相当だが、舞花はモンスター知識と観察眼を駆使してその在り方を看破していた。
「トロールは完全に攻撃力特化……知能は低く、その上ホブゴブリンのように徒党を組むことも不可能そうですね。そこにこそ、付け入る隙はあるかと。ノーン様、皆さんのサポートに努めましょう」
「役割了解だよ、任せて!」
ノーン・スカイフラワーはマテリアルガードLV6を展開し、その防壁でトロールの一撃から守ろうとするが、LV7にも達するトロールの一撃を防ぎ切ることは出来ず冒険者の傷は少しずつ増えていく。
「負傷した人はこっちにお願い! 最後までサポートし続けるから、ね。わたしは立ち続けないと……!」
魔力ポーション(大瓶)LV2で魔力が枯渇しないように立ち回りつつ、舞花とノーンは全体に視野を広げる。
「援護するわ……!」
エリカ・クラウンハートは連携するホブゴブリンへと狙いを定め、剣を掲げて閃光を放つ。
グリントオブライトLV6は、強烈な光でホブゴブリンの肌を焼くだけでなく眼も眩ませる。
「さぁ、楽しいステージにしましょう」
舞を踊りながらアダマンキャリバーLV9を振るい、遠心力で叩きつける
槍の穂を掲げて突っ込んでくるホブゴブリンへと、フレイムスラッシュLV6によって炎を纏わせた刃で応戦する。
それでもなお無鉄砲に向かってくるホブゴブリンには、人差し指の先に光を集約し、シャイニングビームLV5を放つことで打ち倒す。
「防衛ラインは絶対に突破させないわ。……あらあら、まだステージは終わっていないわよ?」
猪突するトロールに対し、魔力ポーション(大瓶)LV2で回復しつつエリカは天技である舞踊分身LV4を発動させていた。
LV4の性能で四人に分身し、エリカは光線を湛えて一斉掃射する。
厚い脂肪が容易く貫かれ、トロールはその場に倒れ伏した。
「ステージで走るのはご法度よ。転倒にはご注意!」
エリカに迫っていた別のトロールに気付くと、
ラティス・レベリーはマテリアルガードLV6で身を守りながら駆ける。
(四天王を相手するには実力が足りないが、配下の魔物ならば任せてもらおう!)
リーンフォースLV5を自らにかけてトロールに迫ると、チャージLV3で力を溜めてプラチナロッドLV5での一撃を加えていた。
痛烈な一撃を与えつつも、仕留め切れなかったトロールは反撃に棍棒を大きく振るい上げる。
その一撃でマテリアルガードLV6による結界は破壊されるが、それも織り込み済みだ。
わざと攻撃させ、その隙を狙ってリングオブパワーLV1で高められた筋力を活かしたカウンターの一撃を放つ。
(そこだ!)
結界が消滅したのを契機として
アメリー・ウォルトはパラリティックポイズンLV5で麻痺毒を付与したブラッドブレードLV6を抜き放っていた
(もらったよ!)
麻痺させたトロールに更に何度も斬りつけ、最後には天技であるウチデノコズチLV2を発動する。
巨大な木槌が生成され、頭上から打ち下ろされたそれがトロールの頭蓋を砕いていた。
観察眼をすかさず走らせ、結界の背後を取られないように気を付けながら立ち回る。
(ホブゴブリンは徒党を組むはず……。なら、ちゃんと敵の動きの波を観察すれば……!)
ホブゴブリンの槍が来る方向を予見し、飛び退ってから短刀を握り直す。
(それにしても、四天王、か。勝手に名乗っているだけかもしれないけれど、シーフっぽい男の子が暗殺者としてはかなり腕を持っていそう。……ちょっと気になるけど今はこっちに集中しないと!)
駆け抜けつつ、刃を走らせる。
ホブゴブリンの連携に対し、
リーフリット・テュルキースは自身を中心にしたメイズフォッグLV9の霧を発生させてその動きを阻害していた。
すかさず、アメリーがそれを利用して敵を叩いていく。
「……ホブゴブリンは知能が高くって数を頼んで連携も行う、と。じゃあまずはその連携を崩すところから始めようか♪」
「霧、助かるよ! ありがとう!」
「どういたしまして♪ じゃあ僕も仕掛けるよ!」
飛行魔法でホブゴブリンの頭上を飛び越え、リーフリットは敵全体を濃霧で覆い隠す。
ホブゴブリンの直上を取り、コメットフォールLV6で隕石を降り注がせて敵陣の連携を絶ち切っていた。
(さて、各個撃破と行こうかな。このまま攻撃を続けていれば相手もそうそう前進ってわけにはいかないはずだよ)