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四天王襲来

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四天王襲来
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暗雲を駆ける

「よし、これでひとまずは大丈夫なはずだ。でも、しばらくは無理して動かないように」

 ファストエイドLV1で脚の傷口を塞ぎ、念の為に包帯を巻いた相手の肩に手を置きながら、コトミヤ・M・フォーゼルランドは笑みを作った。安心した様子の兵士は、ありがとうございます、と頭を下げる。砦の医療器具を借りて、回復魔法と医療術を兼ねた手当てを試みている。怪我人の数は多く、これは手分けしてやらないといけないだろう。

「……アイツは、大丈夫かな……」

 自分の怪我には安堵したものの、少し不安げに兵士は顔を曇らせる。聞いてみれば、重傷を負った友人が居るという。別の部屋に分けられているために、不安感はおおいにあるだろう。
 ――このままでは体だけじゃなくて、心も消耗するな……。
 コトミヤは目を少し伏せる、打開策があれば良いが。ソッソルト・M・フォーゼルランドもその様子を耳にしながら手当てを続ける。事前に負傷者の数や回復役の数、能力を振り分けしていたおかげで、適切な治療は回っている。彼女が雇い入れた数人の冒険者達が、ソッソルトの指示で避難誘導のための砦内の情報収集にあたっている他、困りごとも聞いている状況だ。

 「ソッソルトさん、今のところ、こちらも向こうも大きな動きはなさそうです。ただ、重傷人のところは、医療器具がどうしても足りない状況でして……」
「ありがとう。じゃあ、それはこちらが指示を出してみるわ」

 天技『大号令Lv1』によって、あくまでやさしく、そして的確に状況が伝えられる。
 ――皆さん、重傷者の部屋にて包帯の不足が多いみたい。また――。

「おっと、それじゃあこいつはあっちの部屋だな」
「そうすると……解毒剤はこっちか」

 指示に従う兵士達の動きは機敏である、信頼されているというあかしであろうか。

「よく訓練されているようだな」
「そうみたいね」

 指示系統があればしっかりと働く兵卒達に、二人は頷くと、より彼らに貢献できるよう、自分のできる仕事を進めていく。

 九曜 すばる古城 偲は、兵士よりも民間人の手当てに回っていた。

「大丈夫、すぐに楽になる」

 すばるの言葉に苦悶の表情を浮かべながら頷く男性――ここは怪我の程度が深い部屋である――に、ダブルヒールLV5を使用する。

「い、いたい……」

 一見怪我のない女性が苦しげに身を屈めている。――毒の類か、すばるはすぐに解毒シロップLV1を手にして、ゆっくりと飲ませてやる。
「ありがとう……ございます……」

 まだ苦しげなものの、ひとまずは落ち着いたらしい、胸を撫で下ろしながら女性の様子を見た。
「思ったよりも怪我人が深刻だね……」

 偲はプラチナロッドLV5で引き出した魔力をリングオブマジックLV1で更に底上げし、回復魔法の効力をより高めつつ、こちらもダブルヒールLV5にて治療を試みる。
 効果は覿面なようで、怪我の塞がった男性は身の軽さに驚いている風であった。

「さあ、怪我が治ったら、もっと安全な所に避難しなよ」
「あ、ああ……でも、『もっと安全な所』って、いったいどこに……近くに四天王? がいるんだろう?」
「避難経路を割り出している人もいるから、従えば絶対に大丈夫だ」

 あえてここでは安心させるために言い切った偲に、そうだよな、冒険者の皆が頑張っているもんな、と男性は納得した風でいる。と、ふと、軽傷者の部屋の方から、赤ん坊の泣き声がした。
 咄嗟にすばるが行けば、腕を怪我していると思しき女性が、子供の対応に困っている。幸い怪我の程度は浅いようであったから、ファストエイドLV1で対応した。しかし――。

「すぐに手は使えなさそうだな……」

 いくら便利な魔法といえども、すぐに激しい運動をしてしまうのは考えものだ。どうしたものか、とすばるが考えていると、すかさず偲が天技『一握の庭Lv3』で蔦を出す。ありもののシーツと布を組み合わせて、おんぶ紐を作った。

「両手が塞がっていると避難中危ないからな。さあ、どうぞ」

 女性はぺこりと頭を下げる、さて、引き続き民間人の怪我の手当てだ。

 小山田 小太郎は一番怪我の程度が深い者の部屋に入り浸っていた。
 ――今は襲撃の真っただ中。ただでさえ治療一分一秒が重要な治療現場で、いつ危険が迫ってもおかしくない場所なれば……。

「慌てず、されど癒やしの御業は緩めず迅速に……ですね」

 エクステンシブヒールLV10を部屋全体に使用する。落命する者が出ないようにするための措置だ。
 重傷の治癒には時間がかかる魔法の特性から、十全に働かない覚悟はしつつも、それでも血のにおいが色濃いこの部屋でいくらか人々の苦しげな息は和らいだような感覚がする。
 フィルマポーションLV4を使って、エクステンシブヒールLV10で消耗した魔力を取り戻すと、小太郎は怪我人たちの様子を見ていく。
 この間に、高橋 凛音は怪我人を楽な姿勢になるように行動していた。
 物理的な医療を担当する医者は清潔な布で傷口を拭ってやり、消毒効果のある薬を塗ることも忘れない。このあと魔法で治すにしろ、傷口から感染症でもかかってしまえば一大事だ。

「今から魔法を使います。すぐ、楽になりますからね」

 ひゅうひゅうと息を吐く相手に優しく声をかけて、それからダブルヒールLV5を一人ずつ、丁寧にかけていってやる。
 うめき声に近い声で感謝の言葉を言われることもあれば、返答する気力もないか、しかしそれでも感謝の念は伝えたいのであろう、手をわずかに動かし、小太郎をさするような仕草を見せた。
 先のエクステンシブヒールLV10で消耗している小太郎を励ますには充分で、彼はこうして治療を続けていく。
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