【究極女王戦2】
「よくも……よくも……!」
アルティメットクイーンはこちらを睨みつけながら頭を押さえ、その声は恨みがこもっているかのような低い音を響かせる。
そして、自身の光条兵器を変形させると、それを大きく回転させながらこちらへと投げるモーションをする。不定形だった形から細長くなったアルティメットクイーンの光条兵器は大きく回転をしながらこちらへと向かって来た。
「みんな避けて!」
戦戯 シャーロットが周囲にいる紅百合の仲間達へと注意を促す。それ以外にも周囲にいる味方全員が1度距離を開けるように引く。
「アルティメットクイーンの野郎、完全に攻撃に極振りしてやがったな……!」
「近づくの難しい……どうする?」
アルティメットクイーンの攻撃を見ながら
アレクス・エメロードが、防御を完全に捨てていると感じる。その為、防御も考えていた先ほどよりも逆に懐に入りにくい事に
ミーミル・リィはどうするかを聞く。
「どちらにしても、相手は1人なのは変わらないわ」
製錬・真理の断章をパタンと閉じながら
フレデリカ・レヴィはそう言う。
相手が攻撃重視にしてきたとはいえ、変わっていない事は相手が1人だという事だ。周囲のグランツ教徒は押さえてくれている者達がいるので、気にしなくて良いだろう。
「みんなで一気に仕掛けて隙を作る。これが一番の狙い所ね」
アルティメットクイーンが光条兵器の形状を変え、ガトリング銃のように銃弾を撃ってくる中でスペルプリズムを撒く事で防御をしている
ルイーザ・レイシュタインがそう言った。
「それじゃ、やる事は1つだな。シャロ、頼んだぜ」
「うん……ミミ達が隙を作る……」
「任せて! ボクの全力“全壊”をぶち込むよー!>ワ<」
アレクスは“ゼンカイ”の字が違うような気がしたが、気にせずに星辰兵装・弓を構えると、アルティメットクイーンへと向けて矢を射る。
そして、アレクスが羽織っているライブラマントによる知識によってアルティメットクイーンの攻撃は、魔法攻撃として防いだりが可能だ。
「フレデリカ、俺も魔法結界に一枚噛ませろ!」
「ええ、分かったわ!」
アレクスはフレデリカとルイーザが浮遊させているスペルプリズムの宝石に、自分のスペルプリズムを使う事で結界を張る。
その間にミーミルは想霊のゲルバッキーを召喚させると、UFOに乗りながらビームで攻撃をし始める。そして、この場にいてくれている限りミーミルやシャーロットの持つ光条兵器の威力が上昇する。
「ミーミルさん、合わせて!」
「…………!」
ダークラスターキャノンを持つミーミルとルイーザはアルティメットクイーンへと向けて引き金を引く。
攻撃重視に切り替えたアルティメットクイーンは2人の攻撃を回避するようにして動くが、インプラントから入ってきた不快感によって上手く動けなくなっていた。
そして、ミーミルとルイーザによる黒いエネルギー光を回避しきる事が出来ず、足をかする形となる。それによってアルティメットクイーンの体勢はガクンと落ちる。
「隙が……! ルイ姉、今よ!」
「ええ、分かったわ!」
フレデリカはルイーザへとそう言うと、ロゴス遺跡で発見された膨大な魔力が凝縮されている宝石――真理の響石を掲げる。それはルイーザも同じであり、真理の響石を持つ。
そして、真理の響石を媒体にする事で改めてスペルプリズムの結界を張る。
フレデリカとルイーザ2人のスペルプリズムは共鳴を起こし、更に効果が上昇した。
「顕現せよ! 世界樹ミスティルテイン!」
真の創世の力を使う事でフレデリカは世界樹を模した物を顕現させると、自身の魔法の力を一気に底上げをする。
しかし、この力を持続させられる時間は短い。だからこそ、このチャンスが来るのを待っていたのだ。
アルティメットクイーンは魔法の結界を重ね合わせている事に気付いてはいるようだが、それが真理の響石を使っている物だという事は分かっていないように見える。
「もしかして――ルイ姉、私達で一気に隙を作るわ」
「分かったけれど、何をするつもり?」
「それは――」
フレデリカはルイーザの耳元で作戦を伝えると、はっとした表情の後で力強く頷いた。
「ミーミルさん、合図はお願いするわ」
「分かった……」
何を2人でしようとしているかはミーミルは分かっていないが、アルティメットクイーンへの攻撃へと繋げられる事だというのは確信した。
「こんな所で……負けるわけにはいかないのです!」
アルティメットクイーンは大技を使おうとしているのか、自身の光条兵器を巨大な洞筒の様な形へと変えようとしていた。
そんな砲撃を食らえばこちらにいる者達全員がどうなるかが分からない。ただ、それにはまだ少しだけ時間が掛かるように見えた。
「今……みんな一斉攻撃……!」
ミーミルの一斉集中砲火によって、フレデリカ、ルイーザ、アレクスがい一斉攻撃を仕掛けていく。
フレデリカとルイーザは真理の洪水を使ってアルティメットクイーンの体勢を崩そうとする。そう、真理の洪水はアルティメットクイーンには見えていない為に奇襲として考えた。
アルティメットクイーンはそれによって体勢を崩すが、自分の攻撃準備をやめる気配はない。そして、紅百合からの攻撃が止んでもなおアルティメットクイーンは立っていた。
「終わりです!」
「――そっちがな!」
アルティメットクイーンが砲撃をしようとした時だった。自分の体が動かない事に気付く。それはアレクスがドロドロの樹液のような魔力の塊を放ったからだ。
アンバーバインドによってアルティメットクイーンは動けなくなり、それによって攻撃をする手が止まる。
「行け! シャロ!」
「待ってましたー♪」
ここまで戦闘に積極的に混ざっていなかったシャーロット。それは、自分自身の最大火力をアルティメットクイーンに叩き込む為だ。
シャーロットの持つブライドオブディザスターは着ている光条天衣と覇者の光輪によって強化を行い、ホライゾンウォッチ10thLEを起動させる。
シャーロットの感じる速度を加速させ、その加速は自分もまた速くなる。強力な効果の為に使えるのは10秒程だ。こういった切り札としてしか使えないが、今は十分間に合う。
「いっけぇぇーー!」
上弦の光撃陣で巨大な腕を出現させ、その腕にも剣が持たれている。
アルティメットクイーンは苦した時に頭を押さえていた。インプラントがあるのは頭の可能性が高い。
シャーロットはアルティメットクイーンの頭上から真っすぐ武器を振り下ろし、全身を駆使して武器に力を籠め、6連撃を振り下ろした。
「完全☆粉砕!」
攻撃をした後に着地をしたシャーロットは後ろにいるアルティメットクイーンを見る。
「キャァァァァァアア!」
アルティメットクイーンは大きな悲鳴を上げると、その場に力なく崩れ去る。
「シャロの奴えげつねぇ……」
アレクスはシャーロットの凄まじい一撃を受けたアルティメットクイーンが生きているかどうかを確認すると、胸が上下に動いているのでまだ生きている事が分かる。
こうして倒れたという事はインプラントの破壊も出来、アルティメットクイーンも戦闘不能に追い込む事が出来たという事だ。
契約者達はアルティメットクイーンという女王をこうして下したのであった。