・ノイマン中尉たちとの戦い3
連絡を受け、搭載機を収容した特異者たちのスカイフォートレスが、ノイマン中尉とその部下たちを挟み撃ちにすべく、その退路に回り込んだ。
イカルスの衝角を用いて、半ば強引に強行突入した
御舟 恵那のスカイフォートレスが、艦載機を次々に出撃させていく。
『さあ、出番でございますよ』
格納庫から出てきた
藤原 経衡のタクティカルジャケットが、シールドを掲げ凄まじい速度でエクレストン目掛けて突っ込んでいく。
『先に行くぞ! 支援を頼む!』
要請を受け、続けて出てきた
ソフィア・ヴァーリィのタクティカルジャケットが、その場に伏せて狙撃態勢を取り、銃撃を始めた。
経衡のタクティカルジャケットに気付いたソウトたちを狙い、組織的な反撃を封じるべく動く。
『連携はさせません。邪魔させていただきます』
浮足立ったソウトたちだったが、すぐに落ち着きを取り戻し、挟撃された状況を理解して、突破するべくランスを構え、突撃態勢を取っていく。
やはりノイマン中尉の存在は大きい。
背後からは正義たちが追撃をかけて迫ってきており、相当なプレッシャーになっているだろうに、統制が崩れていない。
ソウトたちが突撃を開始する。
その一機が出鼻を挫かれ吹き飛んだ。
甲板から放たれたアサルトライフルの大口径弾が直撃したのだ。
十文字 宵一のタクティカルジャケットがそこにいた。
『抜かせるな! 囲い込め!』
挟撃を維持するべく、宵一は引き金を引き続ける。
* * *
何度も轟音が響き、銃撃が行われる。
突撃してきたソウトたちを出迎えたのは、イカルスの壁だった。
いや、恵那のスカイフォートレスだ。
恵那のスカイフォートレスが、イカルスの衝角でぶちかましをかけ、強引にソウトたちの突進を止めようとしているのだ。
ソウトたちの中にはまともに恵那のスカイフォートレスと正面衝突するものもあって、当然恵那のスカイフォートレスも無傷ではいられない。
『離脱の阻止成功でございます。戦闘行動に支障ありません』
一斉に恵那のスカイフォートレスの主砲や副砲が動き、ソウトたちをターゲッティングする。
恵那のスカイフォートレスから、イカルスの散弾がソウトたちに向けて巻き散らされた。
身体を張った恵那の行動が作り出した機会を、経衡のタクティカルジャケットが活かして攻撃に移る。
『この好機、逃すものか!』
立ち塞がるソウトたちを無視し、その奥でソウトたちに指示を出そうとしていたノイマン中尉のエクレストンに襲いかかった。
斬り込んでくる経衡のタクティカルジャケットの手には、イカルスで刃をコーティングされて輝く刀が握られている。
ランスを突き出してくるソウトたちの攻撃はシールドで防ぎ、そのまま突進を続けながら役目を終えて穴が開いたシールドを投げ捨て、代わりにイカルスの刀を両手持ちすると、一気に踏み込んで振り上げ大上段から振り下ろす。
渾身の一撃は、エクレストンのシールドに受け止められた。
シールドで力比べをしたままノイマン中尉のエクレストンがもう片方の手でイカルスガンの銃口を向けてくるのを見て、経衡のタクティカルジャケットがすぐにその場を離脱する。
一瞬遅れて放たれた火線が経衡のタクティカルジャケットがあった場所を貫いていった。
エクレストンに張りつき続けたい経衡だったが、ノイマン中尉はそう簡単に好きにはさせてくれない。
経衡のタクティカルジャケットだけでエクレストンを止めておくのは難しく、ソフィアのタクティカルジャケットの支援射撃を活かす必要があった。
対物ライフルの火力ならば、さすがに実弾だろうがエクレストンに対しても一定の火力が見込めた。
イカルスを動力源とした新兵器が出ても、まだまだ見劣りしない威力を有している。
『このまま畳みかけましょう。残弾は惜しみません』
薬莢を排出し、レバーを動かして次弾装填を済ませ、また狙撃し、その使用済み薬莢を排出し。
淡々と繰り返し同じ動作を続けながら、ソフィアのタクティカルジャケットが狙撃の圧を強めた。
狙われるソウトたちは、思うようにノイマン中尉の援護ができない。
何よりも、ソウトたちにしてみれば先の三人より、宵一のタクティカルジャケットが一番厄介だった。
宵一は的確に、ソウトの強みであろう機動力を削ごうと、足回りを狙って銃撃しているからだ。
『機動力があるなら、まずそれを削ぐ。まあ定石だな』
脚部を破壊され、大きく機動性を損なったソウトたちは、即座にノイマン中尉の指示を受けて撤退していく。
やはり部下に無理はさせたくない心情なのだろう。
ソウトたちの数が減り過ぎていた。
『……まずいな。もう、基地を守ることなど言っていられなさそうだ。これ以上は俺たちの身が危ういか』
決断したノイマン中尉のエクレストンが、まだ戦闘行動が取れるソウトたちを纏め上げ、殿を務めながら組織立って撤退を始める。
このまま黙って逃がしてやる義理はない。
逃げられる前に戦力を可能な限り削ろうと、特異者たちはさらに追撃をかけた。