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スクラヴィア

補給基地を破壊せよ!

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補給基地を破壊せよ!
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・ソウト部隊を引きつけよ4

 とにかく何をするにしても、まずは時間を稼がなければならない。
 戦局は、あちこち同時進行で動いているのだ。
 側面と正面からのソウトたちの突撃と、その対処に苦慮する特異者たちとは別に、ジェノのタクティカルジャケットにソウトが囮役として張りつこうとしてくる。
 特異者たちの陣形に切り込んでくるソウトたち。
 そこにかけられた数は多く、局地的な集団戦を構成するには十分な数が割り振られていた。
 数自体が、特異者たちより多い。
 元々ジェノを孤立させる意図での分断策だろうに、そのために出てきた戦力でも、さらに誰かを囲んで孤立させてしまえるように、ソウトたちは戦力を振り分けて、半包囲を形成しようとしてくる。
 それを嫌がってわざと開けられている進路に逃げてしまえば、そこはジェノが孤立する結果への一本道だ。
 つまりその選択肢は取れない。
 ソウトたちの転進に振り回され、特異者側も混乱してきているので、ここで一度戦力の振り分け確認も、し直しておいた方がいい。

『わたしは正面からの敵を叩く! わたしたちが陽動である以上、ここで逃げるわけにはいかない! ジェノ、念のために回り込んでくるソウトたちを見ていて!』
『了解。側面から仕掛けてくるソウトたちは俺が対応しておくぜ』

 各自、流れるように己の担当を報告していく。
 全員の状況確認が済んだ。
 その流れで、起きかけていた混乱も静まった。

『皆、標的の振り分け直しは済んだな?』

 遥のタクティカルジャケットやアルフレッドのタクティカルストライカーの様子を、レベッカは己のスカイフォートレスの中から確認する。
 状況を見るに、ジェノのタクティカルジャケットも、囮のソウトを危なげなく相手しているようだ。
 遥のタクティカルジャケットとぶつかったソウトたちは、突進の勢いを利用したランスチャージを仕掛けてきた。
 いくら遥のタクティカルジャケットとて、真正面からこれを喰らってしまえば、二足と四足の差からなる機体の重量差も相まって、力負けして弾き飛ばされるのは避けられまい。
 衝角を見せつけるかのように停止したレベッカのスカイフォートレスから、歌が響き始める。
 その歌を聴いたソウトたちの動きが乱れ、遥のタクティカルジャケットではなく、迂回して深入りし、レベッカのスカイフォートレスに狙いを変える個体が出始めた。
 敵意を煽られたソウトたちの一部が、遥からレベッカに標的を変えたのだ。
 火力の集中に失敗したソウトたちは、速攻を仕掛け特異者たちの中に脱落者を出す機会を失った。
 そしてその結果は、特異者たちが付け入るべき明確な隙となる。
 目の前のソウトの突進をひらりと避け、遥はそのまま通り抜けようとするのを咎め、斬り結んだ。
 足を狙った斬撃は、さすがに狙われやすい自覚がソウトのパイロットにもあったのか、読まれたかのようにランスの柄で受け止められる。
 そのまま前進しながら、ソウトは押し込もうとしてくる。
 ソウトの鍔迫り合いをいなして拒否し、力の方向性を逸らしつつ流した遥は、タクティカルジャケットの二刀を縦横無尽に振るい、手数で以てソウトの防御を凌駕する。
 ランスによる受けが間に合わず、一撃を浴びたソウトだが、それでも執念で足回りだけは守り、牽制の刺突を遥のタクティカルジャケットへ放ちながら後退しようとする。
 深入りで釣り出されるのを嫌ったのと追い詰め過ぎないために安全策を取り、遥は側面の警戒に回る。
 正面のソウトたちに狙いを変えたアルフレッドが、遥の代わりに追い討ちの弾幕を浴びせた。
 事前の予測はほぼ的中し、全体的な傾向ではレベッカのスカイフォートレスが一番狙われるも、他のスカイフォートレスも歌の影響を受けなかったソウトたちからの攻撃対象になった。
 その中には、当然レベッカのスカイフォートレスも含まれている。

『落ち着いて、照準を狙い定めてください。守りは私たちが固めますからねぇ』
『は、はいぃ』

 いっぱいいっぱいになって砲撃しているベレッタのスカイフォートレスに、レベッカは呼びかけつつ直掩としてしっかりタクティカルストライカーを操縦した。
 ランスを抱えて突撃してくるソウトへイカルスの弾幕を張って牽制し、遠距離からの銃撃に対しては縦方向に回避機動を取って避ける。
 ベレッタを安心させる意味も込め、レベッカはこまめにベレッタのスカイフォートレスの修理を己のタクティカルストライカーで行った。
 声掛けを行い、精神状態を確かめておくのも忘れない。
 初陣の割にベレッタはよくやれている方だといっていいだろう。
 装備で装甲を分厚くカスタマイズしているので、通常の同型艦よりも耐久力があるのも生存能力の向上に直結している。
 防御を固めているということはベレッタ本人の安心感にも繋がっていた。


* * *



 遥たちが分断を仕掛けてくるソウトたちを抑えつけていることで、ジェノは目の前のソウトに集中することができた。
 互いに高速で動き回る射撃戦を制するためには、偏差撃ちを正確に当てなければならない。
 それはソウトにとってはもちろんのこと、ジェノにとっても簡単ではないことだ。
 しかし、ジェノにはそれを可能とする技術があるのも確かだ。
 対するソウトのパイロットは、どうだろうか。
 互いに差し込まれる、銃火の閃き。
 対物ライフルの弾丸とランスの先端から発射されるイカルス弾が、互いの影を貫くかのように撃ち込まれる。
 どちらも狙いは正確だが、機動力の高さ故に当たらず、避けられる。
 そんな状況が続いている。

『なるほど。これくらいならついてくるか。なら、ギアを上げるぞ……!』

 さらに一段階上に、ジェノのタクティカルジャケットの機動力が上昇した。
 様子見をしてソウトのパイロットの力を測り、不測の事態に陥らないか警戒していたのを止め、仕留めにかかったのだ。
 たちまち、ジェノのタクティカルジャケットがソウトを追い詰めていった。
 脚部に命中した対物ライフルの弾がソウトの後ろ足を一本吹き飛ばし、大きく機動力を削ぐ。
 今までのような機動戦を行えなくなったソウトは、銃撃を続けながら下がろうとする。
 しかし射程の広いジェノのタクティカルジャケットの狙撃から逃れられず、止めを刺された。
 囮役のソウトが排除されたことで、分断に動いていたソウトたちは逆に孤立する形になった。
 急いで離脱しようとするソウトたちだが、それを簡単に許す特異者たちではない。
 殿を走っていたソウトが、急激に蛇行する。

『良かった。効いているみたいです』

 歌を敵を妨害するものに切り替えたフィーリアスが、ソウトのパイロットに眠気をもたらすことに成功したようだ。
 ちょっと嬉しそうな声が、フィーリアスのスカイフォートレスから聞こえた。
 他のソウトたちは後退しつつ、フィーリアスのスカイフォートレスを狙ってイカルス弾の弾幕を浴びせてくる。
 被弾を嫌い、フィーリアスは自衛のため視認妨害の歌に切り替え、被害の低減を試みる。
 無敵になれるわけではないが、少しでも狙われる回数が減ればそれでいい。
 上手く立ち上がりのソウトたちの猛攻を耐えた特異者たちは、徐々に巻き返しを見せてきた。
 後は陽動として上手く動き、戦いを引き延ばす必要がある。
 ソウトたちは分断を諦めたようで、今度は側面、正面、背後へと高速で動き回りながら銃撃を放ち、時折示し合わせたかのように一斉に突撃を仕掛けてくる。

『深追いはしないでおきましょう。それよりも味方のサポートを優先してください。損傷、消耗した機体は無理をせず、修理や補給を受けるですよ』

 主砲と副砲を全て迎撃に使用し、分厚い弾幕を形成する伊織のスカイフォートレスは、ソウトたちの牽制を続けていた。
 近付くにつれ弾幕の密度も分厚くなり、無理に突撃を敢行するとソウトといえど少なくない損害を被るため、ソウトのパイロットたちはむやみやたらな突撃は行わず、銃撃を挟んで突撃のタイミングを測る戦法を取っている。
 ソウトのパイロットたちの状況判断は的確で、隙を見つけるや否や一斉に突撃を選択してくるので、戦況が膠着しているように見えても僅かな隙や油断でひっくり返される恐れがあり、気が抜けない。
 行動を予測して動くと裏を掻いてくることもあるので、決め打ちするのもまずい。
 一手ずつ、堅実に特異者たちはソウトたちの動きを見定め、冷静に後手で対策を打って攻撃の芽を摘み取っていく。
 伊織はフィーリアスと連携し、戦意を高揚させて機動力を底上げする歌の効果を切らさないように交互に分担しつつ維持した。
 後は、全力で火力を発揮するタイミングを探る。
 周囲では直掩としてフリッグのタクティカルストライカーが弾幕形成の一角を担い、イカルス弾でソウトたちの接近を防いでいる。

『正面突破力が強いのなら、さらにそれを上回る弾幕の密度で蜂の巣にしてやるのじゃ!』

 いわば、弾幕はソウトたちへの見せ札だ。
 好き勝手に突撃を行い、こちらの陣形をかき回させないための。
 当然そうなれば、ソウトたちは銃撃で牽制しつつ、側面からの圧力を強めて、弾幕を形成するスカイフォートレスやタクティカルジャケット、タクティカルストライカーらへ狙いをつけてくる。
 可能な限りレベッカが注意を引いているものの、それも万能ではない。
 ソウトたちの動きに手を打つ必要があった。

『側面を狙われそうですわね。対応に回りますわ』

 迎撃する味方にグラーフのタクティカルジャケットが手を貸し、回り込もうとするソウトたちをすかさず咎めた。
 元々側面から仕掛けてくるソウトたちの対応に回っていた大和やコロナも奮戦し、グラーフのタクティカルジャケットと連動して戦った。

『ソウトの動きに振り回され過ぎるな! 基本に忠実に、目の前の敵だけに対処しろ! 遠くからの射撃は、狙撃役の味方が抑えてくれる!』

 自らもイオン弾の弾幕をばらまいて弾幕を張りつつ、大和はしきりに声を張り上げ、味方を鼓舞する。
 陽動ということで、ある程度の不利を背負うことは織り込み済みだし、そうしなければ敵は簡単に基地から引き摺り出さされてはくれない。
 状況不利を演出しつつ、本当に状況不利に戦況が傾いてしまわないよう、大和は前線を支えていた。

『被弾したら無理をせず、修理を受けに下がってください! 弾切れやエネルギー切れも同様です! 設置されてあるコンテナがありますから、そこからの補給も視野に入れてくださいね!』

 コロナのタクティカルジャケットも、戦線を下がらせず元の前線の位置を維持したまま、ソウトたちへの対応を続けている。
 突撃を仕掛けられる度に撃退し、ソウトたちが無理をしようとしてこないのもあって、その都度追い返していた。

『次はこっちね……! 艦首を回転させて……ああもう、忙しい!』

 弾幕の展開能力としては、スカイフォートレスを操縦するだけあってそれなりのものを有しているレニアは、大和やコロナ、白羽らの動きを見て、不足分を補う形で弾幕を補充する。
 主砲と副砲の位置を、スカイフォートレス自体の向きを変えることで状況に合わせ、左右からの突撃に同時に対応し、ソウトたちの突撃を阻む一助となっていた。
 図体の大きいスカイフォートレスは、ソウトたちの銃撃の的になりやすい。
 レベッカが多くのソウトたちを引きつけてくれているので、これでもレニアが狙われるのは少ない方だ。

『修理や補給が必要な者は申し出よ! 我が向かう他、手が空いていなくば他の者に繋ぐ故!』

 レニアのスカイフォートレスの護衛に回った白羽のタクティカルストライカーが、遠くから銃撃してくるソウトにグレネードをランチャーで投擲して叫んだ。
 戦いはまだ続く。
 問題はない。
 戦いが長引くこと、それは敵を誘引できているということでもあるからだ。


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