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スクラヴィア

補給基地を破壊せよ!

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補給基地を破壊せよ!
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・ソウト部隊を引きつけよ2
 
 基本的に、ソウトたちは相対する特異者たちの集団よりも多い数が向かってくる。
 数の差を活かして、まるで肉食四足獣が群れで狩りをするかのように、分断して孤立させた標的に狙いを絞り襲いかかるのだ。
 ジェノ・サリスのタクティカルジャケットに向かってきたソウトたちもそうだった。
 味方のタクティカルジャケットやタクティカルストライカーよりやや横に位置取りしていたことで、分断させやすく見えたのだろうか。
 ソウトたちは、一機がジェノに射撃戦を挑み、残りの機体は全て援護攻撃を行いながら展開を優先してくる。
 その機動力から繰り出される、高速での移動射撃も厄介だ。

『バレット、射撃の補助をしろ』
『了解ダゼ。照準のブレヲ少ナクシテヤル』

 味方もまた動き出しているのを横目で確認し、ジェノは展開する敵への対応を任せ、自分は向かってくるソウトとの射撃戦に応じる。
 誘いだろうが、無視するわけにもいかないので、敢えて乗った。
 おそらくジェノを他の特異者たちと分断し、囲い込む算段だろう。
 しかしそれは逆に、特異者側にとっても分断しにきたソウトたちを、ジェノと他の特異者たちで挟み撃ちにできる状況でもある。
 特異者たちにとって有利な状況に持ち込むには、如何に早くジェノが目の前のソウトを撃破できるかにかかっていた。
 フィーリアス・ロードアルゼリアのスカイフォートレスから、歌が響き始めた。
 味方の戦意を高揚しようとしているのだ。

『少しでもお役に立てるように、頑張ります』

 決意を胸に、フィーリアスは歌い続ける。

『このまま思いどおりにさせてやる義理はないわ。咎めた方がいいのではない?』

 戦況を注視していて、ソウトたちの動きに気付いた水元 遥が、通信でレベッカ・ベーレンドルフへ、どうするのか暗に伺いを立ててきた。

『……そうだな。策士策に溺れるという結果を、突きつけてやるとしよう。分断しにきたソウトたちを囲んで叩く。気取られるなよ。陣形が完成するまでは、有利に進んでいると思わせてやれ。我々は陽動なんだからな。いけると思わせなければ、敵は深入りしてくれはせん』

 レベッカが遥に指示を出す。
 遥は承諾の返事をし、そろそろと己のタクティカルジャケットを移動させ始めた。

『俺は遥のサポートに回る。近接特化機体はどうしたって敵陣に飛び込むことになるからな。不足の自体が起きないように、見守っておくぜ。……ああ、整備なら事前に終わらせておいたぞ。攻撃力が上がっているはずだ』

 移動する遥のタクティカルジャケットの後には、アルフレッド・エイガーのタクティカルストライカーも続いた。
 アルフレッドの報告に、遥が通信機越しに礼を告げた。
 初陣としてスカイフォートレスに乗って参戦しているベレッタ・マルールを、タクティカルストライカーの中からビーシャ・ウォルコットが気遣っている。

『気負い過ぎないように。私たちがサポートしますからねぇ』

 作戦では、レベッカが歌でヘイトを引くことになっているが、戦場では何があるか分からない。
 母艦という役割を果たす役目がある以上、スカイフォートレスが狙われやすいのは当然のこと。
 全て落としてしまえば、搭載されていたタクティカルジャケットやタクティカルストライカーたちは、敵地のど真ん中で行き場をなくすことになる。
 そうである以上、たとえ歌があるとしても、レベッカを狙うソウトたちがそれだけで満足してくれるとは思わない方がいいだろう。
 レベッカが全てのソウトたちを引きつけられるとも限らない。
 あぶれたソウトが他のスカイフォートレスを狙うことも予測のひとつに入れるべきだ。

『あ、ありがとうございます。き、緊張します……』

 返事をするベレッタの声は、ビーシャにも分かるほど上擦っていた。
 まあ、初陣ならば緊張するのは誰だって同じこと。
 程度の差こそあれ、初陣で全く緊張しない者などいないのだから。
 事前調整で装甲性能を高めたビーシャのタクティカルストライカーなら、多少庇うことはできるだろうし、そこまではせずとも多少の修理やバッテリーの補充はできるように準備してきている。
 直掩としての役割を果たし、充分にベレッタを支援することができるだろう。
 初陣であるベレッタには、他にも様々な人物たちが声をかけていった。
 出撃前の待機中にはジェノや遥、アルフレッド、レベッカといった面々が何かと理由をつけては代わる代わる通信を繋いで様子を見ようとしたし、そうしなかった者たちも戦いの最中にアクションを起こしてベレッタを気遣おうとする。

『おそらく、戦いの中で僕たちにも攻撃してくるソウトたちが絶対に出てくると思うです。スカイフォートレスを狙うのは戦術面で見ても理に適っているですから、今から心の準備をしておくといいですよ』

 土方 伊織も、そんな後から行動して戦場で役立つ助言を行った者のうちのひとりだった。
 土壇場で動揺しないように対策になればいい。
 先んじて知っておけば、手を打つ時間も生まれるだろうから。

『調整で砲の威力を高めておいたが、感触はどうじゃ?』

 タクティカルストライカーに乗ったフリッグ・フェンサリルが、伊織に通信を繋いでくる。
 ソウトたちへの牽制も兼ねて試しに一発砲撃を行い、満足げな表情になると、伊織はフリッグに悪くないと伝えた。

『そろそろ接敵しそうね。直掩として動くわよ』

 グラーフ・シュペーのタクティカルストライカーが、伊織のスカイフォートレスの護衛として配置についた。
 特異者たちの動きが慌ただしくなっていく。
 側面に展開したソウトたちが、ランスを手に突進を始めたのだ。
 それも、左右から同時に。

『僕たちの役目は、分断しにきたソウトたちの突入をそもそもさせない、あるいはしてきたソウトたちを逃さないことだ。さあ、迎え撃とう。右を受け持つ』

 一糸乱れぬ隊列を組み、猛然と突撃してくるソウトたちを迎撃せんと、草薙 大和のタクティカルジャケットが身構えた。
 ランスチャージを受け止めるべくシールドを掲げ、もう片方の手でサブマシンガンを突き出しイオン弾の弾幕を張り、ソウトたちの突撃を押し留めんとする。

『なら、左を担当しますね』

 大和のタクティカルジャケットの動きを見て、すぐに判断を下した草薙 コロナのタクティカルジャケットが、迎撃戦力の不足分を埋めるべく、バランスを考え配置に着く。
 すぐに、コロナのタクティカルジャケットからも大量の弾幕がばらまかれた。
 突破される可能性を考え、シールドで身を守っておくことも忘れない。

『一応基地を攻めに来たという前振りになっているはずなのだけれど……。ソウトたちの動きに迷いがないわね。まるでこの襲撃が、予想できていたかのよう』

 訝しむレニア・クラウジウスだが、この補給基地が戦略上の要衝であることは疑いのない事実であり、特異者たちの戦力展開を発見されていたのも、戦闘前の基地の動きなどから分かっているから、当然といえば当然といえる。
 重要な情報が漏らされているとは、一概には断定できなかった。

『要は、味方を孤立させんという敵の思惑に乗ったうえで、それを踏み潰してやればよいのであろう。……参るぞ』

 雪神 白羽のタクティカルストライカーが空に舞い上がり、空中からソウトたちを待ち構える。
 長期戦を見据え、白羽のタクティカルストライカーは補給コンテナをパージし、障害物として大和やコロナたちが利用できるよう落としておいた。
 他にも、フリッグが落としたものであろうコンテナがあるので、これも活用できる。
 突撃してくるソウトたちに対して、大量の弾幕が叩きつけられた。
 しかしソウトたちは、バックラーと二対のショルダーシールドを頼りに、弾幕の中を強引に突っ切ろうとした。
 機動力が高いとその分脆いと思われがちだが、防御に使う武装が豊富なソウトたちは、耐久力もそれなりに高い。
 特異者たちが展開した弾幕を、最小限の被害で突破し、突進の勢いを殺さず陣形を引き裂かんと突入を試みてくる。

『陣形を引き裂かれたら終わりだ! 機体をぶつけてでも、ここで止めろ!』
『突進を止めるには、周囲の装甲コンテナも利用しましょう! ちょうどいい障害物です!』

 あちこちで、何かと激突したらしいソウトたちが響かせる轟音が複数聞こえる。
 応戦しているのか、それとも本人たちの言葉どおり補給コンテナに上手くソウトたちをぶつけることができたのか、通信越しに大和やコロナの叫び声と、絶え間なく響く銃声が聞こえた。
 戦闘音が鳴り響いている間は、大和やコロナは無事だし、戦況もある程度は問題ないということだ。
 これが静まり返ったり、ふたりの会話の内容の変化によってはまずいことになる。
 すぐに正面を向いていた味方の援護攻撃も行われ、側面へ対する弾幕がたちまち分厚くなった。

『あたしの船より後ろには通さないわよ!』
『温い。我を抑えたくば、この三倍は持ってこい!』

 勝気なレニアの声と共に、スカイフォートレスから放たれたものであろう大量の弾幕の発射音が鼓膜を破らんばかりに鳴り響く。
 同時に、連続したグレネードの爆発音と、威勢のよい白羽の啖呵も聞こえた。
 側面突撃を防がれたことで、ソウトたちのパイロットが下した判断は素早かった。
 波が引いていくように撤退していくと、今度は側面に回した分弾幕が薄くなった正面に回って突撃を仕掛けてくる。
 対応して、特異者側が再度正面に弾幕を振り分け直せば、その時には既にソウトたちは撤退しており、側面から突撃し直してくる。
 特異者たちも対応を急いでいるが、ソウトたちの足の速さと判断の切り替えの早さに追い付けなかった。
 ソウトたちのパイロットは集団での機動戦に熟知し、砂漠での足周りの軽快さも相まって、転進が抜群に上手かった。
 一度先手を取られてしまうと、どうしてもそのままずるずると後手を引かされ続ける展開が多い。
 手を打つ必要があった。


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