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スクラヴィア

補給基地を破壊せよ!

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補給基地を破壊せよ!
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・ソウト部隊を引きつけよ1

 基地を防衛するソウトたちの多くを砂漠へと誘き出した特異者たち。
 ソウトたちは布陣を保ったまま、ランスを銃撃モードで構え銃撃戦を仕掛けてきた。
 己のスカイフォートレスに回避機動を取らせつつ、他方 優は主砲と副砲で砲撃を行い反撃する。
 イカルスとイオンの弾丸と砲弾が飛び交い、共に目標を見失って砂地に着弾した。
 砂が弾け、あちこちで盛大に飛び散る。

『やっぱり、ただでは出てきてくれそうにないね。さあ、頼むよ』
『では、歌います』

 中願寺 綾瀬が、優のスカイフォートレスの中から歌を響かせ、ソウトたちを挑発した。
 どれだけ引きつけられるかは未知数だ。
 いざという時にすぐ反応できるよう、朝霧 垂も機体の中で今のうちに心構えをしておく。

『そういえば、事前調整はどうなった?』
『もう終わってますよ』

 既に甲板にワイヤーで固定されている状態のタクティカルジャケットから、マグナ ガイアが答えた。
 マグナは対物ライフルを構え、射線上にソウトたちが現れるのを、手薬煉引いて待っている。
 特異者たちと基地を守るソウトたちの戦いはもう始まっている。

『こちらも始めましょう。お願いします』
『分かりました』

 砂原 秋良のスカイフォートレスの中からも、天音 雷華の歌声が響き渡る。
 対象選択は秋良のスカイフォートレスに一番近い敵を優先する。
 これで、その敵から見て秋良のスカイフォートレスは靄がかかったかのように見え、視認されにくくなったはずだ。
 さすがに完全に敵の発見から逃れることはできないだろうが、それでも敵から向けられるヘイトの数は少なくなり、結果としてソウトたちのヘイトは優のスカイフォートレスへ集まるだろう。
 秋良はスレイ・アバルトアイディール・アコンプリスの両名にも出撃の要請をした。

『調整は?』
『ちょうど終わったところです』

 スレイに尋ねられたアイディールが手早く工具を片付けながら答える。
 ふたりはそれぞれ己の機体に搭乗し、格納庫から外へと飛び出していった。


* * *



 歌でソウトたちの敵意を高め、注意を引きつける戦術を取る特異者たちは、相応に消耗が早く積み重なることが予測される。
 それらを補おうと、また別の特異者たちが集団で動くべく準備していた。

『コンテナは積んだか? 事前調整は終わったか? 確認急げ、敵は待ってはくれんぞ』

 弥久 ウォークスがさっさと己の担当の分を終わらせ、いつでも出撃できる状態になると、機体に乗り込んで待機した。

『こちらも終わりました。出撃できるようになるまで、即応態勢を取っておきますね』

 すぐに弥久 佳宵も己の作業を終わらせ、己のタクティカルストライカーに搭乗した。
 ウォークスの機体と並んでタクティカルストライカーが二機、電源が入り稼働を始めていく。

『……基地が見えたわ。味方はもう展開を始めているみたい。私たちも動いた方が良さそうね』

 桐島 風花がスカイフォートレスの格納庫を開き、ウォークスと佳宵のタクティカルストライカーを出撃させた。
 補給コンテナを背負った二機のタクティカルストライカーが、次々に飛び立っていく。
 永見 玲央のスカイフォートレスの中でも、忙しく出撃準備が続いている。

『こちらの状況はどうですか?』
『整備終わったよ。これで多少は打たれ強くなったはず』

 玲央のスカイフォートレスの装甲を強化し終えた永見 博人から、連絡が来る。

『自分はもう機体に乗り込んでいるよ。調整は終わったし、いつでも出れるねぇ』

 格納庫にいる江河 文典も、やるべきことを終え後は待つだけの状態になったようだ。


* * *



 衛司・ヨハンソンは、出撃前にブリギット・ヨハンソンのタクティカルジャケットを整備していた。

『これでよし、と。ブリギットちゃん、もう乗っていいよ』
『ありがとう、エージくん』

 ブリギットが己のタクティカルジャケットに搭乗したのを確認した衛司は、己の仕事ぶりに満足そうに頷くと、自分もタクティカルストライカーに乗り込み、出撃の準備を整えた。
 衛司とブリギットも出撃する味方に合わせて、機体を出撃させた。
 タクティカルジャケットとタクティカルストライカーが一機ずつ飛び立つと、チアキのスカイフォートレスを守るように、周囲に展開する。
 囮となっている特異者たちはきちんと役割を果たしているようで、ソウトたちは援護砲撃を行っているチアキのスカイフォートレスまでは中々辿り着いて来ない。
 引きつけられていないソウトたちは、補給や修理を担当する者たちを優先して狙っているようだ。
 母艦狙いといい、徹底して特異者側の継戦能力を削ごうとしてきている。
 基地に戻れば修理や補給を受けられるソウトたちと違い、特異者たちの機体は母艦が落とされ補給や修理をする役割の者たちもいなくなれば、いくら火力が高い者たちが残っていたところで敵地に取り残されることになり、そうなれば残された戦力がいくら奮戦したところで大勢は決してしまう。

『……敵はセオリーどおりに動いてきたね。俺たちはどう動くべきかな』
『とにかく、できることを今はやろう』

 勇み足を取らず、衛司とブリギットはチアキのスカイフォートレスを狙うソウトが現れないか、注意して警戒する。
 警戒を緩めるわけにはいかなかった。
 そうやって、油断したところを突いてくる作戦なのかもしれないのだから。
 邑垣 舞花のタクティカルジャケットは、個人参加という身軽な立場を活かして、一足先に狙撃場所を選定し配置に着いていた。
 そこは、基地を遠目に見渡せる絶好の狙撃場所だ。

『さて、敵はどう動くでしょうか』

 少しでもソウトたちに見つかりにくいよう、味方とは少し離れ、なおかつ援護を受けられないほどは孤立しないように、絶妙な塩梅の距離を取っていた。


* * *



 歌の効果は覿面で、ソウトたちは基地の防衛を忘れてしまったかのように、特異者たちへと襲いかかってくる。
 目論見どおりの展開ではあるが、この先どう進むかは、これを受け止める特異者たちの戦い振りにかかっている。
 しかし、砂漠を軽快に踏破するソウトたちの機動力は、特異者たちの想定の上を行った。
 優のスカイフォートレスが放つ砲撃を避け、ソウトたちが優のスカイフォートレスを囲み、ランスによる刺突を放ち、一撃離脱していく。

『くっ、思いどおりに動いてはくれないか……!』

 後退しながら放たれる銃撃を衝角で受け止めつつ、優は呻く。
 秋良のスカイフォートレスが動き出す。

『こうなった以上は、仕方ありません。私たちも応戦しますよ。少々船が揺れます。お気をつけて』
『はい。しっかり掴まっておくので大丈夫です』

 ソウトたちに襲われている優のスカイフォートレスを援護すべく、主砲と副砲で砲撃を開始した。
 砲声が複数立て続けに轟き、イオンの砲弾が放物線を描いて飛んでいく。
 降り注いだ砲撃に、方角から秋良がいる方向を読んで注意を向けるソウトたち。
 優のスカイフォートレスへの攻撃役から漏れたソウトたちの何体かが、銃撃しながら一斉に走って接近し、ランスを突き立てようとしてくる。
 遠距離砲撃から自衛に攻撃目的を切り替え、秋良が今度はイカルスの砲弾を発射する。
 ソウトたちの足元で、砲撃が着弾し砂地が爆発したかのように抉れ、たたらを踏ませる。
 砲撃に集中する秋良が少しでも時間を稼ぐ間に、雷華も歌の対象をより近い敵へと切り替え、攻撃の遅滞に努めた。
 状況的に見てみると、優のスカイフォートレスだけでは注意を引ききれなかった分のソウトたちが、他の特異者たちの攻撃をトリガーに、己の攻撃対象を定めて動き出したようだ。
 優のスカイフォートレスを狙うソウトたちはまるで己の任務内容を忘れたかのように攻撃に夢中になっているが、その他のソウトたちはあまり基地からは離れ過ぎずに一定距離を保ち、銃撃戦をベースに時折一撃離脱でのランスによる一刺しを加えてくるなど、機動力を活かした戦術を組み立てている。
 このまま好き放題にさせてやる義理はない。
 スレイとアイディールがこのソウトたちに対して迎撃に当たった。

『敵機を視認しました。これより交戦を開始します』
『私は後方援護を主体に動いて艦の直掩となりつつ、戦線の維持に努めますね』

 スレイのタクティカルジャケットが、空からバズーカ砲の散弾をソウトたちへと降り注がせる。
 さすがの機動性で、砂地を軽快に走り回るソウトたちは、そう簡単には射線の中に留まっていてはくれず、回避されていく。
 ソウトたちの動きを確認したスレイは、回避される様子を確認し、少しずつ偏差撃ちの精度を高めていく。
 時間と共に、散弾を避け切れずに被弾する個体が出てきた。
 もちろん好き放題に撃たせ続けてはくれず、地上からいくつもの火線がスレイのタクティカルジャケット目掛けて伸びていく。
 ランスから発射されたイカルス弾だ。
 軽快に回避していくスレイ機だったが、回避先を先読みして撃たれた最後の一撃を避け切れず、被弾する。
 一時的に下がったスレイのタクティカルジャケットを、手早くアイディールのタクティカルストライカーが修理して前線に送り返した。


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