■プロローグ■
――ロスコモン島
砂漠ばかりが目立つ、
ロスコモン島。
資源に乏しく、戦略的価値がないと長らく思われていた場所だったが、実は現状の
スクラヴィア連邦共和国軍と
アルクティカ統合国軍がぶつかり合っている各戦場に近く、補給の拠点としてはこの上ない地理的価値があった。
アルクティカ統合国軍にとっては戦線を有利に勧め続けるためには絶対に死守しなければならない場所のひとつであり、スクラヴィア連邦共和国軍にとっても今後を見据えて是非ともこの機会に叩いておきたい場所である。
補給基地があるなら、なおさらだ。
重要拠点であるというのはアルクティカ統合国軍にとっても同様の認識だったようで、そこには大量の防衛戦力が割り振られていた。
砂漠に適応した半人半馬の形をした、ケンタウロスを思わせる姿の
ソウトたち。
そしてそれらを指揮する、
ノイマン中尉と
パーチェ中尉。
どちらも、スクラヴィア連邦共和国軍にまで名声が伝わっている、アルクティカ統合国軍の実力者たちだ。
相手をするならば、間違いなく激戦となるだろう。
そもそも、まともに基地を攻めるには、防衛についているソウトたちの数が多過ぎる。
現状のスクラヴィア連邦共和国軍側の戦力で、まともに攻め落とすのは難しい。
基地の攻略は、性質としては攻城戦に近い。
攻める側であるスクラヴィア連邦共和国軍の戦力は、最低でもアルクティカ統合国軍を数で上回っていなければならない。
しかしスクラヴィア連邦共和国軍側の戦力は、攻城戦を行うに足る数とは到底いえなかった。
ならばどうするか。
ソウトたちを引き摺り出し、基地の外で野戦を仕掛けるしかない。
その野戦でなるべく多くのソウトを釣り出し、手薄になった基地を落とすのだ。
作戦の第一段階である、ソウトたちの釣り出しは成功した。
基地から出撃したソウトたちが大勢、砂漠に布陣する。
やはり、その数はスクラヴィア連邦共和国軍側についている特異者たちの数よりも多い。
ソウトたちが出撃した隙を突いて基地を攻めようとした特異者たちの別動隊だったが、そこに釣り出しには乗らなかったノイマン中尉の
エクレストンと、その部下たちが乗るソウトたちが立ち塞がった。
そして時を同じくして、基地からパーチェのソウトが単独出撃する。
基地の攻略、ソウトたちの誘引、どちらに手を出されても、まずい。
最悪、作戦の瓦解もあり得るだろう。
特異者たちは新たにパーチェのソウトの対応に当たる分の戦力を捻出する必要に迫られた。
何とか戦力をかき集め、対応に向かわせる。
ここに、三つの戦場で戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。
■目次■
プロローグ・目次
【1】ソウト部隊と戦う
・ソウト部隊を引きつけよ1
・ソウト部隊を引きつけよ2
・ソウト部隊を引きつけよ3
・ソウト部隊を引きつけよ4
【2】ノイマン中尉と戦う
・ノイマン中尉たちとの戦い1
・ノイマン中尉たちとの戦い2
・ノイマン中尉たちとの戦い3
【3】“鉤爪の禿鷹”パーチェと戦う
・パーチェとの戦い1
・パーチェとの戦い2
エピローグ