砂蛇討伐とアーティファクト 2
「久しいわね“闇の右腕(ダークライト)”……いや、キョーマって名らしいな。古代遺跡争奪戦では接戦で負けたけど別にリベンジって訳じゃない、結論から言う。サンドワーム討伐の為協力してもらいたい。気乗りがしないならせめてその「力を」貸してくれ。よくあるだろ? 一度倒した相手が強化されて再登場するやつ。更にそいつと共闘する展開、悪くない展開じゃないか?」
「ぐっそれは燃えるヤツ……ゴホン」
天廻 陽樹達が
“闇の右腕(ダーク・ライト)”キョーマとの共闘を申し出る。
キョーマとしても遺跡の中でサンドワームが暴れるよりは広い外部で戦った方が分があるということは理解していた。
だがそれでも陽樹達と手を組むのに抵抗があるのは以前陽樹にしでかせられたトラウマが呼び起こされるのだ。
陽樹の罠にしてやられキョーマの顔に彼女が手を当て、その頬をぺろりと舐めたあの事件が。
「これに乗れないんじゃあ、貴方の『闇の力』ってのもその程度なのか」
「む。貴様はこの呪いの力の恐ろしさを知らないからそう言えるんだ。だが、そこまで言うのなら手を貸すのも一興か。このままでは世界が破滅してしまうしな」
「まだチウニ病治ってないみたいやな……いやいや、酷なってんな」
「それで、前のまま来たわけじゃあないだろ」
「当たり前だ。この右腕の呪いと邪眼はさらに脅威を増していると言っても過言ではない……」
悪夢でしかないあの陽樹が今度は何をしてくるのか分かったものではないと警戒するのも無理はないだろう。
それでもその鳥肌を隠すよう陽樹達との共闘に頷くキョーマ。
陽樹のアンティシペイトLV10は保険で冒険者のマントLV5は連携の時に風を受ける際に使うためのものだ。
リングオブスピードLV3は補助要因として観察眼LV3を用いてサンドワームを観察しエイムウィークネスLV3で急所を狙う。
「迂曲雷尻鞭撃(ワインディングサンダーテール)!!」
サンダーテールLV9をLV+1にしてメガブレイクLV5を叩き込む。
「ま、まさかこれがチ……チウニ病……!?」
「やめろ! それは俺も刺さる!」
「自覚があるのな、自分がチウニ病を患っているって」
「あぁ! 知らない! 俺は何も聞こえない!」
羞恥心をサンドワームにぶつけるように武闘家LV4らしく素手に領主の娘から託されたLV15のアーティファクト:シャドウマテリアルで魔力を物質化し、ガントレットの形状の武装に変えてローンモウLV10で拳を振り抜く。
相も変わらず彼の強さ自体は本物で、徒手空拳で多数を相手にすることができる戦闘技術と膂力を持ち、タフネスについてもかなりのものだ。
「戦い方も変えて来たな。どれ」
陽樹はサンドワームと距離を置いたキョーマに接近していく。
今キョーマの腕に付けているガントレットこそが天技だと判断し、それをMレンジの範囲で目視し天技:【重複天技:奪逸】Lv3を発動。
以前は対象を舐めなければならなかったが、今はその必要もない。
それはキョーマが知らぬ話だが。
意味深に身構えたキョーマにニヤリと笑う陽樹。
「アッハハハ何を期待しているのさ、もしかして……期待してたのか?」
「なっ」
「へ・ん・た・い、だな」
「絶対違う!」
だが発動した天技:【重複天技:奪逸】Lv3にどこか違和感がある陽樹。
その違和感をぬぐえないまま仲間達を見渡せば
白鳥 雫が武器の鍛錬LV1で詠のグレートソードLV5に+LV1を練成していた。
それを見ながら
天廻 詠が傭兵Lv1でどれだけサンドワームの外皮が固いのかぼそりと呟く。
「あのニョロニョロ、面がガッチガチや。ほれ……たしか前お母さんぶっ飛ばしたアイツ位のレベルが無いと通じへんよ。まあそこまでやなくても最低LV6を超える技を決めへんと傷一つ与えられへんな」
詠の言うお母さんは陽樹のことであり、アイツというのは当然キョーマのことだ。
基本は素手で戦うキョーマだが、時折ファイターのスキルも使ってサンドワームを押していく様子を見つつ詠は鍛錬している雫とは別に
籐杜 渚沙にとある提案をする。
「なぁ渚沙この剣ヴァーってならん? こうメラメラでゴォーって」
「んー引火材がないからなんとも」
「じゃあ、それがあればメラメラでゴーが出来るんやな! おっしゃ、雫! 天技で酒をぶっかけろ!」
「んん~よく分からないけどぶっかければいいだね。祓え給い、清め給え、神ながら、 守り給い、幸せ給え。創世神の、酒解神の加護があらん事を」
「よぅし! あとはタイミングを見てブレイズソードで火ぃ付けてな!」
「はぁ!? あぁもう! 分かったわよ!」
天技:【酒解神の嫌がらせ】で詠のグレートソードLV5とついでに自分のトーメントLV6【アイアンメイスLV6】に俗に「酒」と称される液体を掛ける雫。
雫の「酒」はアルコール類と同じ性質を持ち殺菌消毒が可能な上、強力な可燃性を待つ。
サンドワームがキョーマを狙って体当たりLV10をしてきた時、雫はブラックガウンLV3効果でLV+1になった状態でマテリアルガードLV6で防壁を展開。
体当たりのLV10とブラックガウンLV4に上がったマテリアルガードLV6でぶつかり合う攻防。
防壁を破られることなくサンドワームを受け止めた雫のブラックガウンLV4に上がった状態のマテリアルガードLV6。
「なっ貴様も邪気眼使い、なのか」
「違うさぁ。前は陽樹君が君に負けちゃったみたいだけど、僕が居なかった。それだけの話だよぉ」
「たったそれだけのことで……フッそういうことか」
「何かに気づいたようだけど、きっと的外れだよぉ。まだ陽樹君が居るから、守れるんだ。死んだら守れないじゃあないかぁ」
「これってどうなるんだろう……もうどうにでもなれ!!」
詠の言っていた作戦が良く理解していないまま詠のグレートソードLV5と雫のトーメントLV6に向かってブレイズソードLV7で天技:【酒解神の嫌がらせ】の液体に引火する。
可燃性の高い酒はとてもよく燃え上がるがただ豪勢に燃え上がるだけでレベルが上がったりなどの副属性的なのはない。
よく燃え上がっているだけの状態のまま雫はリーンフォースLV5で肉体強化してトーメントLV6で殴りかかる。
頭の中は肉を叩く……肉……酒……しか占めていない。
「この匂い……日本酒、しかも純米吟醸、鈴城の匂いだぁ」
もはや禁酒の禁断症状と言っても仕方がないかもしれない。
体力ポーションLV1を飲んでも酒としか認識できない有様で。
鉄を鋳込んだ重厚な打撃武器でサンドワームの首が叩きこまれた方角に吹き飛ばされているがそれでもサンドワームは体勢を戻し威嚇する。
「目が無くたってダメージ位は食らってもらうよぉ」
雫の言う通りサンドワームは元々目は存在しないがグリントオブライトLV6で目潰しをする。
ならばなぜ人のいる場所に現れるのかと言えば視覚には一切頼っておらず、嗅覚と聴覚、魔力感知で獲物を狙っているだけでしかない。
「キン! してビッシャーしてヴァーして、そっからぎゅーんしてぼーん! やで!!」
詠は獣の嗅覚でサンドワームが向かってくるか感知し、他の誰かが行った側面からの攻撃に合わせてアサルトバッシュLV3しチャージLV3でLV+1にした状態で構える。
「んで最後にがぎゃぁん!!」
そして引火しただけのグレートソードLV5のガードペネトレートLV5を叩きこむ。
続けて渚沙のコメットフォールLV6で隕石を振り落とす。
「では2発目……私の『隕石』は少し痛いんだから!」
天技:【隕石落とし】LV1で2つ目の隕石を落下させると、雫がエクステンシブヒールLV10で身内であるこちら側陣営を回復起点を作り出す。
「ここは線引きさせてもらうよぉ」
「陽樹様、思いっきり飛んでください!」
渚沙が疾風の書LV4の効果でLV+1されたトルネードLV3で陽樹を風で噴き上げる。
冒険者のマントLV5で風を受け取った陽樹へ、詠が天技:【呼吸強化】Lv1で呼吸に関わる器官全般を強化した強い息で陽樹を吹き飛ばす。
そして舞い上がった陽樹がキョーマからコピーした天技:【重複天技:奪逸】LV3を発動させるが陽樹の両腕にガントレットが出現する様子はない。
「なに!? アレが天技ではなかったのか!?」
「ハッ俺の呪いは誰にも移すことは叶わない。やり方は違えど前と同じコピーならコイツはコピー出来ないな。やはり呪いの呪縛からは逃れられないか……共闘はここまでだな」
周りを見渡せば魔力ポーション(大瓶)LV2で竜一が仲間の魔力を回復させている状態でこのまま戦い続けるには、サンドワームをここで抑え込むには力不足な状態だ。
そんな状況に見切りをつけたキョーマが誰も助けることなく遺跡を目指し、背中を向けて歩き出した。
そんな絶望の中、一人の来訪者がこちらにやって来る。
「まさかあのような者まで引き寄せられ、剰え遭遇するとは……いやはや、運がない」
砂漠に突如現れた都市。
そこに眠るであろう遺物を求めて様々な者達が集まるであろう事は予想していた
小山田 小太郎だったが遺跡の外で足止めしていたサンドワームと来訪者達の様子に思い悩ませた。
「ですが、これも試練と捉え挑まねば先の発見など得られようはずもない。ここは全力でその脅威を打ち払い、進むのみ。いざ、小山田小太郎……全霊にて参ります」
今はサンドワームの打倒……少なくとも対処し、己や他の来訪者達の道を開く程度は成さねばなるまい。
その為に振るうはアイアンメイスLV6とミスリルガウンLV9にて1レベル強化されたリーンフォースLV5。
家すら飲み込める程の巨体を穿ち、迎撃するために小太郎は強化したそれでアクセラレートLV7で正面からの攻勢を受けぬよう回避行動をとりつつ、ヒットアンドアウェイにて攻めていく。
果敢に攻め立てて行き小太郎はここしかない、その機を掴めたその瞬間、天技:【留めの喝破】Lv2で体内の気を増幅し声と共に放つ事で、声の届く範囲で「任意の事象を止める」天技でサンドワームを少しでも足止めし、その隙をついた全霊のローンモウLV10を叩き込んだ。
そうすればサンドワームは地中に潜り込み始めてしまう。
サンドワームの足止めをしている来訪者達の魔力も体力も底を尽きた状態ではサンドワームの気を引くことは出来ない。
存在感が薄くなったことでサンドワームが次にターゲットにしたのはまだ魔力の濃いまま遺跡を探索している来訪者達だ。
サンドワームが遺跡に向かおうとしているのに気付いた竜一が天技:【神槍グングニール】Lv1で己の身体の近くに神秘的な槍を創造。
「逃がすか! グングニール!!」
サンドワームに向かって槍を飛ばし強力な一撃を貫く。
だがサンドワームはその傷をそのままに完全に砂の下に潜ってしまった。
「くそ、逃げられたか……」