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カオスな挟み撃ち

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カオスな挟み撃ち
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■「正義の執行」


「いいえ! おしゃべりは続くわよ、ショウタロウ君!」
 空飛ぶオフィスチェア――フライングラブの上に立った桐島 風花が、祥太郎の前に飛翔して現れた。
「いきなり出てきて、フェスタを詳しく知ろうともせず、“武力が有るから危険、反論は許さない”なんて言い分、誰も認めるわけがないでしょ?」
 すると祥太郎が、苦々しい顔で口を開いた。
「椅子の上に直立するとはなんと行儀の悪い……」
「えっ、そっち? ま、まあいいわ! 勝負よ!」
 少し距離を取った位置を飛翔しながら、風花が漆黒の槍(インヴァイオラブルスピア)を投げる。と同時に、花形舞芸者の証で彼の周囲に目眩ましの桜の花びらを散らして牽制した。
「お前、行儀悪すぎるぞ。いつまで椅子の上に立っているんだ」
「思い知らせてやろう」
 戦う気まんまんのサポメン部隊が風花に殺到するが――
「風花にはキズ1つ、いや、チリ1つつけさせないぜ! まとめて勝負だ!」
 伴侶の桐嶋泰河が、強烈なレイジオブビーストをサポメン達に繰り出し、風花への攻撃を阻止する。

「あなた、大きなコンプレックスがあるでしょう。そんな顔してるわ!」
「エセ占い師みたいなセリフで動揺を誘おうとしているな。その手には乗らん」
 祥太郎は冷たく答えると、躊躇なく風花に発砲してきた。
「こんなの想定済み!」
 風花はブロッサムラッシュの猛烈な桜吹雪でこれに対抗。いっときは銃撃を阻止したが、祥太郎がひとたびマントをひるがえすと、桜吹雪はあっという間に吹き飛んで消えてしまった。
 だが、風花は祥太郎がマントをひるがえしている隙にフライングラブで祥太郎に急接近。飛び降りながら、獅子の舞を繰り出した。
 お祭りムードで出現した獅子舞は祥太郎の頭に食らいつこうと口を開けるが、
「ふっ、甘い」
 祥太郎の銃によってあっけなく消失した。
 着地した風花の手には、先ほど投げた漆黒の槍が(その特性から)戻って来ている。
「戦闘続行よ!」
「椅子に立ち、椅子で暴れ、挙げ句椅子から飛び降りるとは……何もかもが正しくないぞ。しかも一度も、座らなかった。椅子に……!」
 祥太郎は相変わらず淡々としているものの、表情や口調からは憤りが滲んでいる。
「アイテムをどう使おうと、自由だろ!」
 泰河の声に、祥太郎が身震いした。
「自由の名のもとに、どんな蛮行もやり遂げる……フェスタ、やはり恐ろしい集団だ」
「ショウタロウ君……あなた、頭大丈夫?」
 祥太郎は静かに2人を睨むと、冷酷に銃を乱射してきた。
 
 ここに飛び込んできたのは、八重崎 サクラジル・コーネリアスだ。
「ギャラクシーチェリーただいま現着! 狼藉はそこまでにしてもらうわよ!」
「ジュエルハーツ同じく現着! あなたを止めに来ました!」
「聞くまでもない……その瞳を見ればわかる。貴様らもフェスタの危険アイドルだな」
 サクラとジルはまっすぐ祥太郎を見つめ、頷いた。
「この僕を止められると思うのか? カオティックホールの力を舐めている」
「止められるかなんて問いに意味はないのよ、“止める”これがヒーローとしての矜持」
「わたし達、フェスタのアイドルとしての正義、です!」
「さあ、どちらが正義と信念を通せるか」
「わたし達と勝負です!」
「「コネクト、リンケージ! ユナイトフォーム!!」」
 掛け声を皮切りに、ジルはサクラの武器にユニゾンした。
「フィールド、展開!」
『了解!』
 ジルは『世界はここから始まる』を発動。周囲には、戦闘用の異空間が展開する。
「大切な校舎を壊しては元も子もないですからね」
『こちらのステージに登ってもらいますよ!』
「ステージ? どこにいようと、僕は正義は執行するだけだ」
 祥太郎と共にサポメン部隊が発砲開始。これに乗じて2名のサポメンが銃撃から抜け、サクラに襲いかかって来た。
 彼らの動きや攻撃は、『世界はここから始まる』の中にいてもまったく変化がない。“世界と隔離された空間”にいてもなお、カオティックホールは問題なくその力を祥太郎達に供給し続けているのだ。
 サクラは、ユニゾン中のジルから借り受けているヒートブレイバーを構え、彼らと向き合った。
「たった1人で全員の相手をするつもりか?」
「やっちまおうぜ! きひゃひゃひゃ!」
「何度言わせるんだ0008。言葉遣いが乱れている。それに、油断しないほうがいい。フェスタのアイドルは、極めて危険だ」
 祥太郎が発砲を開始。サポメン達は一斉にサクラに飛びかかった。
『“たった1人”ですって? “わたし達”とちゃんと最初に言いましたからね!』
 突如ジルが現れ、サクラと同じヒートブレイバーで彼らに立ち向かった。
 それはどう見てもジルそのものだが、アウトユニゾンによる具現化――仮の実体。攻撃力は半減しているし、そもそもサポメン部隊は非常に屈強な男達。勝算はないに等しい。とはいえどんなに刃が立たずとも、ジル本人にはダメージがない。
 そんなジルのアクションは、すぐに十分な結果をもたらす。
 サポメン部隊に邪魔されることなく、サクラは一対一で祥太郎と向き合うことができた。
 まさにそれは、サクラが得意とする間合いだった。
 サクラの手には、トライアルグローブの力でひた隠していた武器――ジルがユニゾンしているゼロフィスト――が出現している。
「ここから、全力で行かせてもらうよ!」
『ここからが本当の、わたし達がお相手です!』
 サクラとアウトユニゾンのジルが、ガールズラッシュ。ジルはサポメン部隊に、サクラは祥太郎に、それぞれ挑みかかる。
 そして最後は、サクラの激唱――2人は全身全霊、彼らと戦った。
 
 ほどなくして『世界はここから始まる』の空間が消失。周囲に、いつも通りの景色が戻ってきた。
 激唱を終えたサクラはユニゾンを終えたジルに支えられ、やっとのことで立っている。
 対する祥太郎とサポメン部隊は、さほどダメージを感じさせない様子だ。
 しかし勝敗は問題ではない。2人は全力でフェスタを守り抜いた――その事実こそが、今回記すべき結果なのだから。
 
「その捨て身の技のおかげで生還できたな。しかしこんな技を使わせるとは……。フェスタ、どれだけ危険なテロリスト集団なのだ」
 しみじみと驚愕する祥太郎の正面。
 見える範囲全てに、校舎の2階をゆうに超える高さの、ソイルウォールの土壁が出現。
「これで、校舎に近づきにくくなったわよね」
「ああ、上出来だぜ!」
 二階堂 壱星エミーリア・ハイセルターが現れた。

「正義の執行を邪魔する者は、誰であろうと容赦しない」
 祥太郎とサポメン部隊が発砲を開始した。
 壱星がブロッサムラッシュの小爆発と桜吹雪で威嚇を始めると、桜吹雪のなか、シロとオルタードが駆けつけた。
「よっ、シロにオルタード」
「壱星の知り合い? はじめまして、よろしくね」
「あの壁、素敵だね! シンプルで荒削り。それでいて超攻撃的な佇まい! ねえ、タイトルは?」
「えっ……!? タイ、トル?」
「いいねえ! 俺も知りたいぜ!」
 一瞬で打ち解けた(?)一行は、一丸となって彼らに挑む。
「で? どうするの、壱星」
「ああ、シロ。手下どもを拘束だ……!」

「それならあたしが、祥太郎さんを止める」
 小さいが、きっぱりとした言葉を発しながら剣堂 愛菜が前に出た。
「あたしはライバルが好きだから、あの人がフェスタに物申すのは構わないし、対立するのも構わない。フェスタを完璧な組織と思って動いてもいないし……。でも一方的なディスりで聞き耳持たず破壊すると言うなら……こちらも力づくで止めるよ」
 目的が合致した壱星と愛菜は強く頷き、互いのすべきことに取りかかった。
 
「うっとうしい」
 祥太郎がマントをひるがえし、一瞬で桜吹雪を吹き飛ばした。
 壱星はすぐにもう1度、ブロッサムラッシュを展開した。
「何度やっても同じ結果だぞ。フェスタのアイドルは危険なだけでなく、学習しない愚か者なのか」
 するとこの桜吹雪に乗じて、祥太郎の目の前に愛菜が現れた。
「あなたの相手は……あたしだよ」
 巨大な筆を創り出した愛菜は、一筆入魂で襲いかかる。
「フェスタの危険アイドルにしては、美しい筆使いだ」
 祥太郎は、これを軽々と弾き飛ばした。
「……さすがに強敵だね。そうやって他のものも潰してきたのかな」
 愛菜は次の手、さらに次の手と果敢にで挑みながら言葉を続ける。
「潰された物の気持ち考えたことある? 両親や友人からどう思われてるか考えたことは?」
「弱さを理由に庇護を求め、同情を盾に不徳の限りを尽くす、度し難いアイドルを何百人と処分してきた。そしてそうでないアイドルとは、悲しい行き違いがあった。お前はどっちだ?」
 祥太郎が長い返答をしている隙に大きな絵筆(海色すぱったぁ)で攻撃するが、あっという間に弾き飛ばされた。
「こうしてあなたとやりあってるけど、これは凌ぐための手段なだけ。本当のあたし達の武器は、分かり合う心と……人とつながるこの手だから……!」
 ここで愛菜が、テイクアハンド。間合いを無視して、祥太郎の肩を掴んだ。
「っ!!!」
「あなたがそれを正義と言うなら構わないけど……重たそうだね。ほら、肩凝ってない? 武器を収めてくれたらあたしがマッサージしてあげよっか?」
「僕が懐柔されると、思っているのか」
 忌々しげに言うと、祥太郎は容赦なく発砲してきた。
 愛菜はブルーミングネイブの花びらに紛れ、攻撃をしのいだ。そこへ――
 
「次は私が、相手だよ……!」
 ブレイジングチェンジの爆風に乗ったリーニャ・クラフレットが、祥太郎にヒートブレイバーで二連攻撃を繰り出した。
「個人的には、戦いたくないし。天使的に貴方の正義の事が沢山知りたいの。でもでも! フェスタに攻撃をするんだったら黙っていられないんだよ……!」
「貴様、その怪しげな声で、民衆を扇動しているのか?」
 リーニャの攻撃を簡単にかわした祥太郎は、まったく容赦せず発砲してきた。
「これはアイドルの声、エネルギアアンジェラ! 邪悪なんかじゃないの!」
 リーニャは、エネルギアアンジェラのVボイスでアンサリングフォーンの盾を作り、祥太郎の攻撃から身を守った。
「天使を騙るとは……どこまで危険な集団なんだ」
 揺るぎない攻撃の意思をみせる祥太郎を前に、リーニャはオープンクライマックスで攻撃力をあげて、大技のサンライズ&ドラゴンを繰り出した。落ちてくる小さな太陽と、続けて襲ってくる龍――その連続攻撃は、カオティックアイドルの祥太郎の銃をもってしても一瞬で消滅させることは不可能だった。
「私達が正しいか正しくないか! 次はライブを見に来ればいいの!! 次はライブで戦うの!!!」
 ほんの数秒で祥太郎は決着をつけ、サンライズ&ドラゴンは消失。その場には静けさが戻った。
 リーニャの姿はもうそこにはない。ただ――
 ポン!
 銃口をおろした祥太郎の目の前に、天使のように白い光の珠が落ちてきた。
 リーニャが放った、カラー・オブ・ノスタルジアだ。
「私はリーニャ! フェスタの天使!! なの!!!」
 去りながら、リーニャは祥太郎に向かって叫んだ。
「忘れなかったら、覚えておいてやろう」
 祥太郎は表情を変えずに言うと、白い珠を撃ち抜いた。
 
 同時進行の壱星達は、サポメン部隊と戦っていた。
 
「千年桜よ、フェスタを彩れ!」
 壱星が無数の桜の花びらをサポメン舞台に浴びせた。
 ブロッサムラッシュと同じ桜の花びらだが、よく見るとこちらは恐ろしい刃物の武器になっている。
 この様子を見た壱星が、ふと、目を細めた。
「さすが千年桜。激しくも綺麗な花びらだぜ……」
 大切な誰かを、思い出しているのだ。
「壱星、大丈夫?」
「ぽーっとしちゃって……」
 シロとオルタードが心配そうに顔をのぞきこむ。
「えっ? いや別に? だ、大丈夫だぜ!?」
「ふーん? もしかしてその桜、なんか特別な意味がある?」
 オルタードがにんまり笑った。
「いや、俺は真面目に戦ってるだけだっっ!」
「ま、そうゆうことにしとくね? それじゃ、あたしも……! いでよ、SAKURAちゃん!」
 オルタードは可愛い乙女型ロボSAKURAちゃんを創り上げた。
 SAKURAちゃんは春風と桜の花びら撒き散らしながら、キュートに歌い踊りだす。
 いっぽうシロは、舞い散る桜の花びらに紛れながら、サポメン舞台を攻撃していく。
 混乱する桜の嵐のなか、屈強なサポメン達は逃げも隠れもしていない。
 刃物の花びらも、よけることなく全身で受け止めている。
 カオティックホールの力は絶大で、その恩恵を受けている彼らは大したダメージを受けていない――
 
 エミーリアは風月傘を盾にしつつ、精神力だけを削るラフタリアの魔力剣を振り、サポメン部隊に応戦している。
「それで壱星! ほんとにやるの?」
「もちろんだ。シロ、オルタード、面白いものを見せてやるぜ、さあ、リア!」
 壱星はまず、サポメン部隊をディストスワンプで牽制。
 渋るエミーリアと手を合わせると、互いの指にある『愛の力でお前を倒すリング』の宝石をくっつけ綺麗なハート型を作り、
「「正義☆執行!」」
 桜の舞うなかふわふわピンクのビームが放たれ、サポメン部隊に襲いかかる。

「なんか……カオス……」
「素敵ー! あたしのSAKURAちゃんもこの景色にはベストマーッチ!」
 シロとオルタードがそれぞれの感想を率直に述べていると、
「こんな恥ずかしいセリフを言わせないでよ! このアタオカ!」
 エミーリアは壱星を、ばちーんとぶった。
「ぶへっ☆ な、なんで?」
 
 そして――
 愛の力のふわふわピンクビームを受け終わると、サポメン部隊はそれぞれが屈強なポーズを取って無傷をアピールした。
 
「ふっ……カオティックホールの力を分け与えられた我々には」
「この程度、赤外線マッサージと変わらない!」
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