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カオスな挟み撃ち

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カオスな挟み撃ち
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■終幕カオティックナイト「ボクが雛乃ちゃんのライバルだっ!」


(あ……やばっ♡ カオティックホールが、またちょっと小さくなっちゃった)
「まさかここまでやるとは」
 夕空を見上げる雛乃は、相変わらず、悔しがるどころか楽しそう。
(もしかしてあたし……負けちゃうの?)
 可愛い瞳はキラキラと輝き、その奥には確かな闘志が燃えている。
「フェスタのアイドル達。ざこは撤回するよ。あなた達、最高……!」
 雛乃は一瞬で、夜空を纏ったようなのドレスに変身。夜空はみるみるうちにドレスから滲み出てきて、特設会場を包みこむ。
 空にぽっかり浮かんだニコニコ顔のお月様からは、
「ぴょーん♡ ぴょぴょーん♡」
「雛乃ちゃん、あーそぼ♡」
 120%の可愛さを放つうさちゃん達がぞくぞくと飛び出し、客席もステージも構わずうさぎのダンスを繰り広げる。
「うん、遊ぼう?」
 雛乃は虹の足場を作りながら、自由自在に虚空を駆け抜け、歌い、踊る。
 空からは甘い香りのうさちゃんキャンディが降り注ぎ、これに触れた者はみな、可愛いうさ耳尻尾が生えてしまった。
「ひぃ……っ! 可愛さのテロ! だぴょん♡」
「うぅぅ、キュンのし過ぎで心臓が止まりそう、だぴょん♡」
「雛乃ちゃんに、殺されるーっ!!! ぴょぴょん♡」

 こうして夢中で歌い踊り終えた雛乃は、頬を染め、瞳を潤ませている。
「やばっ♡ 本気出すのって……こんなに気持ちいぃの?」
 
 その時。
 夕日がさしこむステージに、1冊の巨大な白い本が出現した。
「フェスタのターンか」
「ま、雛乃ちゃんほどじゃないだろうけど?」
 なんだかんだいってフェスタのライブを楽しんでいる観客が、ステージに注目する。
 はらりと本が開くが、ページは白紙だ。すると、
「「これから始まる不思議なひととき、リトルフルールがお届けする星間旅行を、どうぞお楽しみくださいませ!」」
 少女達の声が響き渡った。『リトルフルール』の虹村 詩音虹村 歌音姉妹だ。
「次はどんなライブなんだ?」
「あっ、見て! あそこ!」
 観客が期待で瞳を輝かせるなか、客席上空に空飛ぶ小型機関車(コンセクエンス号)が現れた。
「フルールの夜にようこそ。『リトフルスターライトエクスプレス』出発だ」
 運転士のアレクス・エメロードが、漆黒の美しい剣(ダガーニュクスダガー)で虚空を切り裂くと、裂け目から冷たく暗い夜が溢れ出てきた。
 染み出る夜のなか、
「今宵、皆様を素晴らしき星空の世界へお連れするよ☆」
「バブー!」
 ピュアシャリゲーターに乗って飛翔する戦戯 シャーロットが、抱っこしているスタンド・ベイ・ビーの戦戯 ミコトと同時に、月に跳ぶ兎のジャンプ&変身。2人はお揃いの月をバックに、それぞれもふもふうさ耳尻尾姿に変身する。
「ボクは道先案内人の、兎妖精!」
「バブバブー!」
「うそちゃん、ミコトちゃんをよろしく」
「まかせるのよ、シャロ」
 アレクスのコンセクエンス号に接近したシャーロットは、ここに乗っている伴侶の戦戯 嘘にミコトを託した。

 ステージ上の巨大な白い本は、詩音が展開したライブ・ライティング。今もこのライブの状況が、可愛い絵本風の絵柄でどんどん描かれ続けている。
 
「素敵な絵本ですね……」
 嘘の向かいに座っていた穴開 ぴのは、ステージを見下ろし瞳を輝かせている。
「そういえば私、フェスタの図書室で“パブロ・ピカソ”の画集を見て、すごくシンパシーを感じたんです……!」
 嬉しそうに語るぴのに、シャーロットがニッと笑いかけた。
「それじゃ、ぴのちゃん!」
「これからボクたちが創る夜空をスケッチブックにして、好きなの一杯描いちゃえ描いちゃえ☆」
 シャーロットはナーバス・シェイドを発動。こうして訪れた暗闇には、うっすらとした光が2つ灯る。
 どちらも朧月夜のセイレーンの淡い輝きで、1つはシャーロットのもの。もう1つは、シャーロットと同じく、ピュアシャリゲーターに乗った草薙 コロナのそれだった。
 暗闇の中、観客は2人の淡い光に注目する。
 やがてナーバス・シェイドの暗闇が解除され、
「兎妖精に先導されて、輝く月まで至る星空旅行……」
 アレクスが歌を口ずさみ、夜の女王のララバイ。周囲は暗闇から星空に切り替わる。
 上空には穏やかなチルムーンが浮かび、さらに、舞台鳴動。ステージには、星空旅行にふさわしい派手やかな装飾が施されていく。
「好きなの一杯、描いちゃいます……!」
 ぴのは楽しげに歌を口ずさみながら、センス爆発の星の絵を次々に描いていく。
「いいね、ぴのちゃん! よっ、フェスタのピカソ!」
 ピュアシャリゲーターの上、らびクロフォンを手に歌うシャーロットの周囲には、可愛いうさちゃんが次々に現れ踊り出し、客席が大いに沸き立つ。
 同じくピュアシャリゲーターに乗り、シャーロットと並び飛んでいるコロナの肩には、小鳥の星獣フルルがとまり、フルートの音色を響かせている。
 コロナはラパン・ジュモーを身に着けており、フルルも小さいながら、お揃いのうさ耳と尻尾を身に着けている。
(いよいよ出番だな、コロナ)
 舞台鳴動で華やかさを纏ったステージでは、草薙 大和がルーメン・ルーナエを奏でながら、コロナを見上げた。
 これまではリトルフルール全体を冷静に見守っていた大和だが、今はコロナだけを見つめている。
(大和さん……見ててくださいです!)
 愛する人の優しい視線を感じ、コロナはキリっと表情を引き締めた。
「兎剣士が、皆さんの旅をお守りしますです!」
 飛翔するピュアシャリゲーターの上、うさ耳尻尾姿のコロナは、水の剣(アクアヴェイン)で剣舞する。
 ザーン……、刀身からほとばしる水しぶきが客席にふりかかったタイミングで、周囲に展開していた優しい雰囲気の星空(夜の女王のララバイ)は様相を変える。
 ざざー……ん
 場内に展開したのは、穏やかな波音が響く夜の海。頭上には星と月を飾った夜空が広がり、これを映した水面が客席の足元に広がっていく――。大和の、ミッドナイトマリンだ。
「すごいね。いったい何個の夜を旅するつもり?」
「楽しい!」
 観客は、リトルフルールのライブに釘付けだ。

「今日のわたしは、みんなのライブを本に書き留める“語り部“だもんね」
 詩音が展開しているライブ・ライティングの絵本には、どんどんページが彩られている。
 そして今また、新しい1ページが開いていく――
 
 穏やかで美しいミッドナイトマリンは唐突に消失。周囲は恐ろしいほどの静寂と閉鎖感に包まれた。
 そしてじわじわと、高潔さを感じさせる凛と澄んだ夜闇が広がっていく。
 観客は、次はどんなライブ展開なのか期待でワクワクしており、その期待に応えるように、夜闇には美しく冴えた星々や流れ星が灯り出した。
 ウィリアム・ヘルツハフトによる、誰が為の歌、イドーラの鳥籠、高潔の夜霧を駆使した連続演出だった。
「ガラッと雰囲気変わったね」
「うん……ちょっと怖いっていうか……」
 そんな声が囁かれるなか、虹村 歌音と、スタンド・ベイ・ビーの虹村 愛音がステージのセンターに躍り出た。
 2人の足元は、朧月夜の御神渡り。ステージの床面は水面になって、そこにすっと月が映り込む。これもまた、これまでと異なる神秘的な光景だった。
「みなさん、ごきげんよう。わたしたちとも遊んでくださる?」
 神格のカリスマを纏った歌音と愛音は、品格のある立ち居振る舞いで観客の視線を存分に集める。
「いいよ☆」
「はいです!」
 シャーロットとコロナを始め、リトルフルールの皆が快諾した。
「お優しいこと。ではみなさん、いっそ吸血鬼になって、わたしと共に、永遠に楽しく遊びませんか?」
「バブバブバブー」
 吸血鬼のスタイルをとっていた歌音は、その力を一気に開放。血沸く共鳴と瀰漫する狂宴をステージで繰り広げ、圧倒的な吸血鬼感をアピールした。
 (大和の演出で)ストームストリームの荒々しい雷雨が吹き荒れ、妖しげな雰囲気が漂う楽曲『紅月 LunaticParty』まで響き出す。
「きゃーっ!」
「いきなりのホラー!?」
 客席からは、ノリノリの悲鳴があがった。

「まあまあ吸血鬼ちゃん、とりあえず一緒に遊ぼうよ☆」
「ですです!」
 シャーロットとコロナはこれまで通り歌い、剣舞を続ける。
「吸血鬼、吸血鬼……はっ! 閃きました!」
 ぴのは絵筆を動かし歌いながら、虚空にカラフルで前衛的なコウモリを描いた。

 ステージを支配していた雷雨と怪しげな楽曲はやがて消失。
「皆さん、素敵……! そうですね。同族かどうかは関係なく、一緒に歌えば楽しいですね」
 歌音と詩音は、シャーロットとコロナ、ぴのに調和して歌い出す。
 
 上空では、可愛いうさちゃん軍団を引き連れたうさ耳尻尾のシャーロットが高らかに歌う。
「悪魔、悪神、聖人、ビースト、神獣、吸血鬼!
 どんな相手も ライブやバトルで仲良くなった
 その歴史 なんでもアリのこの楽しさ それこそがフェスタの真骨頂♪
 ひなのちゃんファンクラブのみんなも さあさあフェスタを楽しんで☆」

「まだまだこんなもんじゃねぇぜ?」
 挑戦的な目で雛乃を見下ろしたアレクスは、星獣シュヴィを召喚。
 シュヴィはすぐにシュテルンヴォルフに変身し、音色を奏で始めた。
 その音色は周囲の景色を塗り替え、ステージには満点の星空が展開する。
「フルルちゃん、頼みましたです!」
「♪~」
 うさ耳尻尾を纏ったフルルが飛び立ち、ノチウダッシュ。上空に天の川のような星の連なりを作りながら、飛び回る。
 フルルを放ったコロナは、うさ耳を揺らしながら再び剣舞。
 ほとばしる水しぶきの合間を、大和が放ったブルーミングネイブの花びらがドラマティックに舞い散った。
「みんなーっ、準備はいい?」
 いっぽう歌音は、#うちで歌おう。在宅のファン達がこの場を盛り上げに次々と現れ、歌音と一緒に歌い騒ぐ。
「だーだーバブー」
「そろそろおネムの時間かな? 歌音ママはファンの対応で忙しいから、パパが抱っこしてあげよう。おいで、愛音」
 ウィリアムはぐずりだした愛音を優しく抱き上げた。

「はふ。フェスタはカオスアイドルも受け入れちゃう良い所なのよ♪ ね? ミコトちゃん」
「バブー!」
「リトルフルールの売り、最高にハッピーで賑やかなエンディングを見せるのよ!」
 ミコトを抱っこした嘘は、コンセクエンス号の上からベストエンディング。このライブのラストを大いに盛り上げにかかった。

 もはや観客は雛乃の存在を忘れ、リトルフルールのライブに没入している。
 
「あっ♡ だめ、これ、負ける……あたし、負けちゃう♡」
 雛乃は相変わらず、嬉しそうだ。
 
「ひーなのちゃんっ☆」
 すっかり兎妖精気分のシャーロットが、ピュアシャリゲーターから飛び降りて雛乃に駆け寄った。
「なに? 悔しがってると思ったら大間違いだよ」
 ツーンとすました雛乃に、シャーロットはニパッと笑いかける。
「ひなのちゃんは、ライバルがいなくてはみ出しちゃったんでしょ? 寂しいよねー。ボクも、分かる所あるよ☆」
「あなたに、あたしのなにがわか……」
 言いかけた雛乃に、シャーロットがビシっと言い放った。
「ボクがライバルになってやる!」
「え?」
「お近づきの印に……一緒においで! ほらほら!」
「え、ちょっ……待ってよ、えぇっ!?」

「さーて、『リトフルスターライトエクスプレス』の旅も終点だ」
 壮大なベストエンディングのさなか、アレクスのコンセクエンス号がステージに着地。
 気づけば、リトルフルールの全員がステージに集まっている。
「雛乃ちゃん、こっちこっち」
 シャーロットが雛乃をステージに連れ帰ると、客席は最高潮に盛り上がった。
「ふん……ぽっと出が騒がれて生意気なのね。てゆうか、魔王をどれだけ待たせるつもりなのね」
 ステージのド先端では、魔王ライが仁王立ちしている。
「まあまあまあ。ライが一番おいしいとこ、やっていいから」
 アレクスの声に、メンバー達が大きくうなずいた。
「しょうがないのね。こんなことできるのは、魔王だけだし?」
 魔王ライはすました顔で頭上を指差し(だけど口元は嬉しそうに笑ってる)、欲張りなユートピア・ユーフォリア。
 兎の風船が空からどんどん降り注ぐ。
 同時に、シャーロットがブレイジングチェンジ。
 雛乃を含む、ステージにいる全員が炎に包まれ、お揃いのうさちゃんアクセサリーが、全身にくまなくたっぷり施された。
 
 すると――
 虹の足場を使ってステージ上空へ駆け上がった雛乃が、輝く瞳で宣言した。
「このままじゃ終わらないんだから。見てなさい? 130%、140%の結果を見せつけてあげる。あぁっ、やる気がみなぎるぅ~♡」
「さすがボクのライバル!」
「またライブしようね、雛乃ちゃん」
「しっかり鍛錬して、準備しておきますです!」
 賑やかなまま、全員がステージからはけ……

「今日はここまで。この続きは、また別の本で、ね♪」
 ステージに一人残った詩音が、笑顔でライブ・ライティングの絵本を閉じ、客席にお辞儀した。

 客席からは大きな拍手が巻き起こる。
「ふふん♡ 面白くなってきたじゃないの」
 雛乃はほっぺを真っ赤にして、楽しそうに仁王立ちしている。
 
 ようやく藍色が滲み夕空には、スタート時よりも明らかに小さくなったカオティックホールが、不気味に口をあけている――
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