■プロローグ■
――“東方帝国”創造神フィルマの神殿前
創世神フィルマを称える神殿を背に、
ベンケイは迫りくる魔物の軍勢――否、その戦闘に立つ魔族を見据えて静かに薙刀を構えた。岩融LV6。ベンケイの愛刀である。
「我が名はベンケイ! 魔族を率いる赤鬼の娘よ、いざ尋常に勝負!」
「一対一か! 望むところだぜ!」
ベンケイの岩融LV6と
シュカの鬼棍棒LV6が正面からぶつかり合い、激しい衝撃と共に周囲に衝撃をまき散らしたかと思えば、ベンケイは激突の衝撃を利用して薙刀を反転させると、石突部分でシュカの脇腹を殴打する。
しかし、シュカもそれを直感的に読んでいたらしく、筋肉を締めて守りを固めたらしく打撃はほとんど効いていないようだ。
にやりと笑みをを浮かべたシュカは、大きく金棒を振りかぶると剛撃LV7――ただ力任せの一撃を放つ。咄嗟に薙刀で防ぐベンケイだったが、あまりの威力に足が地面にめり込んでしまった。
「ぐぬぬぬ……」
「いいねぇ。オレとここまで打ち合って壊れなかったヤツは初めてだ! もっともっと戦り合おうぜ!」
「お前と一緒にするな。聖剣のため、我が愛刀の錆としてくれる」
白熱する戦いに燃えるシュカが更に何度も金棒を打ち据えるが、ベンケイはその力の流れを見切ると防御に使った薙刀の柄を傾かせることで衝撃を逃がし、乱打から脱すると反撃に出る。
間合いを詰めて正面からの一刀はフェイント。シュカが防御の構えに入ったところで体を回転させて、側面から一閃しシュカの硬い筋肉を切り裂いた。
痛みに顔を歪めるシュカではあるが、傷の出来た場所に力を込める事で無理やり止血をすると、ベンケイに向けて再び金棒を振るうが既にそこにベンケイはいない。
圧倒的な力で敵を捻じ伏せようとするシュカに対し、ベンケイは技術で対抗しているのだ。
「ちっ、ちょこまかと動きやがって!」
「ふん。力任せに暴れるだけの餓鬼の相手など幾らでもやりようはあるわ!」
余裕を見せるベンケイだが、やはりシュカの腕力は脅威。一瞬の油断が命取りになりかねないことは理解しており、挑発的な口調とは裏腹に、冷静にシュカの動きを見極め対処している。
戦いは一進一退、両者の実力は互角に見えた。
しかし、戦いが進むにつれて均衡は徐々に崩れていくこととなる。
「そこだぁ!」
「ぬおっ!?」
シュカの振るった金棒がベンケイを捉えた。
並外れた生命力と耐久力でベンケイの攻撃を凌ぎ続けたシュカは、長時間の戦闘で疲労を見せ始めたベンケイの隙を見逃さなかった。
ベンケイも決して低い訳ではないのだが、体力においてはシュカの方が優れていた。息を切らせ動きに精彩を欠き始めたベンケイに対し、シュカは軽く汗はかいているもののまだ疲労の色は見えず、むしろ漸く体が温まってきたという様子。
それでも粘り強く戦い続けるベンケイではあったが、徐々にシュカに追い詰められていく。やがて、崖面近くまで追い込まれ退路が断たれたところへとどめとばかりに金棒が振るわれるが、その途中でぴたりと金棒が止まる。
「……へぇ、他にも活きの良いのがいるじゃねぇか」
「なに!?」
シュカの視線が向く先には神殿から打って出てきた冒険者たちの姿。
「待て、俺との決着を付けずに行く気か!?」
「勝負ならもうついてんだろ? これ以上戦っても楽しくねぇよ」
もはや勝敗は決したとベンケイへの興味は薄れており、シュカは更なる戦いへの期待に胸を躍らせながら冒険者の方へと向かっていくのだった。
■目次■
プロローグ・目次
【1】襲撃してきた魔物を迎撃する
オーガの侵攻1
オーガの侵攻2
オーガの侵攻3
オーガの侵攻4
【2】参拝客と神殿を守る
ゴーレムとの戦い
ゴーレムから人々を守れ!
この世界を守るために
守るための戦い
聖剣よりも大切なもの
【3】神殿を襲撃する魔族シュカを倒す
楽しむ赤鬼
怒る赤鬼
本気の赤鬼
エピローグ