■プロローグ■
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“東方帝国”ボーショの町
東西に走る大通りと、南北に走る大通りが交差する町の中央。そこには町長の自宅と、そこに併設された集会所があった。
魔族はボーショの町を占拠すると、市民を生きたまま捕らえてそこに放り込んでいったのだ。その中には依頼を受けて真っ先に駆けつけた
ユウたち冒険者パーティの姿もあった。
戦いの心得がある冒険者ということで、全身に縄を巻かれ、魔法の詠唱が出来ないようにと猿轡までされて一般市民に比べずっと厳重な拘束具合である。
流石にそこまでされていれば何もできないと踏んだのだろう。部隊のリーダーである
ブラックジャック。バーストは、懲りずに見張りのゴブリンとギャンブルに興じていた。
「…………」
「速くしてくださいよぉ。何分考え込んでるんッスかぁ」
「待て! あと一分! あと一分だけだから!」
ポーカーの手札とにらめっこしているブラックジャックは、どう勝負に出るか悩んでいる様子だった。それなりの役は出来ているようだが、ゴブリンは掛け金のレイズを繰り返しかなり強気の姿勢を見せ、強い役が出来上がっている気配を出していたのだ。
「……フォールド。キングのツーペアだ」
「ゲギャギャギャ! こっちはブタッスよ、ありがとうございます!」
「あ、てめぇブラフ張りやがったな! この野郎!」
「なんとでも言うがいいッスよ。勝ちは勝ちなんで」
部下の催促されたブラックジャックは苦渋の決断としてこの場は退くべきと判断したが、まんまと騙されてしまったようだ。また負けが重なり、借金の額が膨れ上がっていく。
(ギャンブルに意識が逸れてるうちに難とか脱出を……)
(えぇ、縄さえどうにかできれば……)
そんなブラックジャックの姿を注意深く警戒しつつ、脱出の機会を伺っていたユウが
カレンに視線を送る。シーフであるカレンならば、こういった状況に役立つ道具を持ち縄抜けの技術に習熟しているからだ。
ユウの視線に気付いて小さく頷いたカレンは、服の袖に隠し持っていた小型ナイフで手首を縛る縄に切れ込みを入れようとする。が、そんな二人の前にナイフが飛んできた。
「おいおい、何やってんだてめぇら? まさか逃げようとしてんじゃねぇだろうな?」
「っ!」
もぞもぞと動く気配を敏感に察知していたブラックジャックが警告の意味を込めて投げつけたのだ。ギャンブルで遊びつつも、警戒は行っていたらしい。
少なくとも、ブラックジャックがこの場にいる間に脱出は無理だろうと、ユウたちは諦めるしかない。
「あー、もうこいつらに用はないし、日が暮れる前にでも始末するか。お前ら、それまでに私物は片付けておけよー」
「うぃ~ッス」
絶体絶命という他ない状況に、ユウたちは助けが来ることを祈るしかない。
「あ、そうそう。なんか自然にその鎌持ってますけど、ちょっとの間貸してるだけッスからね? 諸々終わったらちゃんと返すか代金払うかしてくださいよ?」
「分かってるって! 今回の仕事が終わったらちゃんと返すから!」
■ □ ■
――
ボーショの町近くの丘
高い壁に囲まれたボーショの町の中の様子を見下ろせる丘の上に、依頼を受けた冒険者たちが集まり始めていた。
相手は絶滅したと考えられていた魔族が率いる部隊。それも町一つを占拠できる規模だ、油断することは決してできない。戦力はあればあるほどいいだろう、とギルドも多数の冒険者を集めていたのだ。
「流石にこんだけいりゃあなんとかなるだろ」
「……そうですね。住人の方々や町にこれ以上の被害が出る前に決着を付けましょう」
戦力は十分。
セラスも
フリードもそう判断出来るだけの戦力が集まった。
あとは町へ直接乗り込み解放するだけだ。
「さぁて、それじゃあ行くとするか!」
「くれぐれも、町は壊さないでくださいよ」
「分かってるって。心配し過ぎなんだよ」
戦いの気配に昂るセラスにフリードが釘を刺す。
意外と良識のあるセラスではあるが、生粋の戦闘狂で戦闘中ともなればその暴れぶりは凄まじい。何度目になるかもわからない釘を刺しつつ、今回もあまり効果はないだろうなと半ば諦めた様子のフリードは肩を竦め、先陣を切るセラスの後ろについていくのであった。
■目次■
プロローグ・目次
【1】町中にはびこる魔物を引き付ける
討伐開始
町中大乱戦!
【2】魔物を統率する魔族ブラックジャックを倒す
魔物を統率する魔族ブラックジャックを倒す 1
魔物を統率する魔族ブラックジャックを倒す 2
魔物を統率する魔族ブラックジャックを倒す 3
魔物を統率する魔族ブラックジャックを倒す 4
魔物を統率する魔族ブラックジャックを倒す 5
魔物を統率する魔族ブラックジャックを倒す 6
魔物を統率する魔族ブラックジャックを倒す 7
魔物を統率する魔族ブラックジャックを倒す 8
【3】捕らえられた町の人を救出する
先行部隊
内部侵入・そして救助
脱出 1
脱出 2
脱出 3
エピローグ