■プロローグ■
――ジーランディア、ガドラスティア
ジーランディアの中央に位置する、天を貫く塔
ガドラスティア。
ジーランディアを生み出した神、
“ヒルコ(蛭子)”の本体ともいうべき存在である。
鐵皇国も
ルミナス王朝も
自由都市連盟も、
覇道 鼎の采配で元の世界へと戻ったが、鼎とヒルコの複製人士である
ル・フェイ、彼女の“クラッシャーレパード”時代の悪友
トゥルボーと
ニウィス・ルイナ、そしてヒルコが生み出した複製人士たち――
シュペンナー、
マンジュリカ、
ゲルベル――、加えて、ヒルコを神と崇める自由都市連盟の一派である“白き静謐”の
デキムス市長は、特異者たちの兵営地が、
謎の機動兵器の襲撃を受けている報を受け、それぞれ愛機に搭乗し、出撃の用意を進めていた。
ワールドホライゾンからジーランディアへ来るまでどうしても時間が掛かる。その間は彼女たちが、各兵営地を守らなければならないからだ。
「“昨日の敵は今日の友”という諺がございますが、あなたたちと肩を並べて戦うことになるとは思いませんでしたわ」
大鐵神・毘沙門を駆る鼎が、トゥルボーとニウィス・ルイナに言った。
鐵皇国の皇帝という重荷が下りたのか、生真面目さは変わらないが、本来の年相応の明るさを取り戻しつつあるように思えた。
「同感ですわね」
「キミを倒して、ル・フェイを取り戻すつもりだったのにね」
ニウィスカスタム(アーマードスレイヴ(飛行型))のガトリング砲の調子を確かめるニウィス・ルイナと、パルサークレフテスでヒートマチェットを振るうトゥルボーが、鼎に応えた。
「ケガを負って本来の実力が出せないとはいえ、2人の腕前はあたしが保証するわ。あたしはデキムス市長の方が驚きだけどね」
「何を仰る。ヒルコ様の世界に害をなすのであれば、このデキムス、協力は惜しみません」
ギガボルテクスカノンの調子を確かめるル・フェイの言葉に呼応するように、デキムス市長が提供する3機の自立多脚戦車小隊が、それぞれ兵営地へ向かって出撃する。
(敵があの
山本 大國であれば、ヒルコさんの権能をまだ狙っていると思いましたが……)
大鐵神・毘沙門――鼎――はガドラスティアを見上げた。
ヒルコの、神アバター「蛭子」の権能を狙うのであれば、ガドラスティアを狙ってきてもおかしくないはずだ。
だから今回はゲルベルにパンツァークレフテスでガドラスティアの防衛に当たってもらっている。
敵の目的が分からない以上、迂闊な行動は取れないが、兵営地は鼎と
バルタザール・ルミナス国王、そして
盟主アリス・エイヴァリーと特異者たちとを結ぶ、思い出の場所である。
そこを破壊されてはなるものかと、鼎たちは散り散りに各兵営地へと向かうのだった。
■目次■
プロローグ・目次
【1】独立連隊の兵営地を守る(皇国)
・向かい来る敵意へと
・災厄は等しく人々に降る
・徹底防衛線へと
・それぞれの抗いへと
・歌声は静かに奏でられて
・激突、揺るがぬ想いを乗せて
【2】独立連隊の兵営地を守る(王朝)
・大地、激震
・守り抜く、意地
・戦いの舞台は移り行く
【3】独立連隊の兵営地を守る(連盟)
・敵の思惑を超えろ
・思惑の果てに
・彼女たちの戦線
【4】兵営地を応援する(皇国・王朝・連盟)
・輝け! アバターアイドルの翼
エピローグ1
エピローグ2