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反撃の狼煙!

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反撃の狼煙!
【!】このシナリオは同世界以外の装備が制限されたシナリオです。
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■3-1.全力の証

 今この世界を侵略せんとしている“白き静謐”。その補給路を断つためにもアッティカ地方の攻略は急務である。この作戦の自由都市連盟の呼びかけに応えたのはなにもバーゲスト連隊だけではない。

 六人のソルジャーたちは川を遡上するようにしながら一挙に攻め上がっていた。

「狙うはシュツルム……それにはまず、パルサークレフテスを排除できれば……」

 剣堂 愛菜たちはまず、最も数の揃っているパルサークレフテスを相手取ることにした。愛菜は特に水中型のアーマードスレイヴを使ったセッティング、速度を上げた彼女の期待であれば先手を取ることはそう難しいわけではない。

 水中から放たれる榴弾。それが扇状の編隊を組むパルサークレフテスへと放たれていく。

 それだけで簡単に落とせれば苦労はない。が、当然そんなことは彼女も承知の上だ。愛菜は水中から上空のパルサーたちへとプレッシャーをかけ、

「さあ……今回は押せ押せで行きましょう!」

 フローユニットで水上を駆ける機動兵器――サヤカ・ムーンアイルのキラーラビットSYKがそこへ向けて畳み掛ける。その機体の名にしおう身軽な動き。ここが川の上であることを忘れてしまいそうなほどの軽やかさでロケットランチャーを撃ち放った。

「なんとか相手を引き離して、仲間の攻めへとつなげませんとね!」

「ああ! あたしたちで一気に攻め上がって……せいぜいスレイさんの複製人士を困らせてやるとしよう!」

 水中と水上。その二面から同時に攻め立てられたことでパルサーの内の一機が孤立する。高度を下げ逃げ場を失ったパルサーに向けて、愛菜はトドメの一撃を叩き込んだ。

「よしっ」

 幸いそのまま水の中へと潜り込まれたとしても、彼女は投擲型のデプス・チャージを持ち込んでいる。この川の上での戦いにおいて彼女たち二人はかなり有利に戦いを運ぶことができていた。

「っと!」

 そんな彼女たちの下に弾丸の雨が降り注ぐ。サヤカは大きく飛び退き、愛菜は水中深くへと潜航することでこれを避けた。

 敵の手勢は非常に多い。踏み込みすぎればシュルツム以下精鋭たる機体群に打ち据えられることだろう。

「愛菜! 少しラインを下げましょう!」

「ああ! 仲間としっかり連携を取らないとね……初陣なわけだし!」

 彼女たち二人の動きは簡単に捉えられるものではない。攻め続けるならともかくとして、相手の外周から叩くだけであれば簡単にやられることもない。

 そして、

「相手が連携するなら、こちらも連携よ!」

 二人を狙うために回り込んできた敵機を狙い、エリカ・クラウンハートが姿を現した。

「ふたりとも。相手を平野に誘導するために協力してくれない?」

「平野へ?」

「こういうこと!」

 赤外線レーザーサイトによってエリカは狙い澄ます。彼女の狙いは正確そのもの、担いだ武器はロケットランチャーにも関わらず、パルサークレフテスの装備を的確に狙い撃ちしていた。

 パルサーの武装はスイッチングライフル。それを失えばシンプルな格闘戦しかできまい。後は飛び込んでくるか、あるいは大人しく引くかだが――。

「スレイさんの人格が複製されてるだけあるか。簡単に釣り出されはしないわね」

「それでも意味はあるわ。このままプレッシャーを与え続ければ……」

「ああ。周りの部隊もフォローするために前へ出てくるかもしれない、ということか」

「そういうことね。それじゃ……もう少しだけ……っ」

 近接戦を仕掛けてきたパルサークレフテスを見据えるエリカのアーマードスレイヴ。

「付き合ってもらいましょうっ!」

 それは敵機の身体へと脚部を絡めると腰部のスラスターを全開に回転する。人間業でいうところの、フランケンシュタイナーであった。

「せーのっ!」

 彼女もまたフローユニットをつけての水上機動がメイン。しかしいかに水面であろうとも、勢いよく叩きつけられれば金属の塊である機動兵器であろうとひとたまりもなかった。

 打ち上がる激しい水飛沫は、わずかながら、空を行く飛空船の船体をも濡らした。

「うーん、派手なもんだ。この調子で惹きつけてもらいたいもんだけどね」

 クナール型飛空艦に搭乗するガジェットドクター、幾嶋 衛司は砲座にかけながら微かに緊張をこめながらつぶやいた。彼の駆る飛空船、その操舵手でもある守山 夢はウインドバッファーによって船の機動力を高めながら戦場を俯瞰していた。

「センパイ。やっぱあそこの皆さんは援護したほーがいいんじゃないッスか?」

「ああ。パルサーを相手取ろうってメンバーは彼女たちだけだし……それに、先行してる都合で被弾もしやすい。ブリギットちゃんも、それでいいかな」

 衛司が呼びかけたのは直掩機でもあるスーパーすごいブリギット号を駆る――その名の通りのブリギット・ヨハンソンだ。機体の名前こそ珍妙極まりないが、一方でそれは彼女のために調整された複製機体。それを駆る彼女はすなわち彼ら三人のエースでもある。

「うんっ。エージくんが判断したならそれで大丈夫だよ!」

 その彼女が太鼓判を押すのならば問題はない、ということだ。衛司は空を飛ぶパルサークレフテスを見据えると狙いを定めた。

「……そうだな。うん、俺たちの強さをしっかり見せつけてやるとしよう」

 大きく息を吸い込む。選択したのは暴風神筒、対飛行戦力においては高い効果を示す武装の一つ。

「それじゃあとーりかーじ! 行くッスよー!」

 夢の号令に合わせて大きく飛空艦が動いた。次々とドキュウが火を吹き弾幕を形成し騒音を響かせる中で衛司は集中力を高めていく。

 放たれる弾頭はかまいたちをまとうもの。当たれば飛行能力を失い、川上で待ち受ける愛菜たちの餌食となるというわけだ。

「エージくんが仕掛けた! それなら!」

 同じく彼女が狙うのもまた空中のパルサークレフテス。水中用ミサイルランチャーが武装とはいえど、決して対空として劣る兵装ではない。とにかく数を撃つことで弾幕に厚みを加え、そうすることで敵機の回避機動を抑え込む心積もり。

「そうはいっても、こっちの戦力は飛空艦一隻。ぱぱっと撃って、さっと引く……だよね、エージくん!」

「ああ。幸いにも仲間たちも平原へおびき寄せたいらしい。遊撃部隊としてしっかり援護しなくっちゃね」

 衛司はそう言いながら艦尾に向けてシールドエンチャントを付与してみせた。彼らは阿吽の呼吸、それを見ただけで夢はにっと歯をむき出しにして笑った。

「オッケー! 後はケツをまくって逃げるとするッスよぉー!」

 勢いよく舵を傾ける。フラップを小刻みに制御しながら制動すると、まさに尾を引くかのような形で飛空艦はターンを決める。デネボラドリフトと呼ばれるその技法、敵機に背を向ける形となった後部へと敵の弾丸が降り注ぐ。

「あたたたた! でも、シールドのおかげでなんとかかんとかっす!」

「さすがは夢ちゃん。……さて、お嬢さん方! 俺たちもその作戦に乗らせてもらうよ!」

 同時、激しい光が敵機の視界を塞いだ。こんなこともあろうかとあらかじめ夢が仕込んでいた閃光符が炸裂したのだ。彼らを追おうとしていたクレフテスたちもこれは予想外だったか、わずかにその流れに淀みが生じる。

「さあ、ここがあたしたちの腕の見せ所、よね!」

 そこに合わせてブリギットが畳み掛けた。彼女は夢たち飛空艦と、水上の機動兵器部隊が“撤退”するのを援護するために迫真の攻撃を仕掛けてみせた。

 これはもともと敵に食らいつかれたときのための装備、衛司たちの想定とは僅かにずれるものだったが、しかし、この戦法は覿面に有効であった。

 そう。相手を誘導したいのならばこちらも余裕であってはならない。相手は歴戦の勇士、スレイ・スプレイグのコピーであるが故に、こちらの生半可な演技など通用しない。

 衛司は自分をそんなエースだと思ってなどいなかった。

「逃げるときは全力で逃げさせてもらうさ」

 彼は砲座にしがみつきながらそう呟く。彼の持てるだけの技術すべてを注ぎ込んでの逃走劇、それは敵に疑わせる余地など無く部隊を誘引させていた。

 水上戦力によるパルサークレフテスへの打撃と、それを援護し遁走する衛司たち飛空艦。その二つが噛み合うことで、敵機編隊の動きは少しずつ特異者たちの思惑に沿いつつあった。

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