・浮上、ユニウス夜襲へと
海路を押し進むのは
オデット・アーリンゲの「ピンネース型飛空艦」であった。
潜水し、偽装として「宵闇符」を張り付けて気配を殺している。
「集中力」を駆使してこれより先の作戦――ユニウス夜襲へと備えていた。
「あたしの仕事は連隊の輸送ね。隠蔽に特化したピンネース型でユニウスの街への上陸を目指しましょう。とは言え速度が速過ぎればその分煩くなるし、遅過ぎれば時間がかかり過ぎて上陸に間に合わない。早過ぎず、遅過ぎず、一定速度で進みましょ。どうやらジャマダハルとパルサークレフテスは水上、水中にも適応しているみたいなので油断できないしね」
船に格納されている
柊 恭也はその感慨を噛み締めていた。
「ようやく白の連中を殴り返せるな。配置が鬱陶しく落ち着いて遺跡探索もできやしなかったからな。ここでぶっ殺して地図を塗り替えるとしよう」
その心持ちは同じのようで
キョウ・イアハートも応じる。
「先に喧嘩売られて、黙って終わらせるわけにゃあいかねぇわな。ましてわざわざ町長に白き静謐だと名乗り出てもらったんだ。こっちからもお邪魔しなきゃ失礼で。こっちも準備に手ェかかったもんで、夜分にお邪魔するのは、まぁ仕方ねぇってことでひとつ。……なんつー冗談はさておき、白き静謐の拠点をまずひとつ潰す。なんぞ拾い物のひとつでもできりゃ儲けだが、敵勢力を削りつつ駒を進めやすくする。一度つつけば向こうの出方も見えてくるだろうしよ。それこそ、べらべらと口が軽いデキムスあたりはトカゲの尻尾切りに使われそうな気もするがな」
ヴァレリー・ノーデンスは「集中力」を駆使し、戦闘の前準備を行っていた。
「人間になめられるのはムカつく、です。白き静謐がどれほどのものなのかしらねーですが……いや、正確にはそれを探るために、ですが、今回はデキムスさんが居るっていうユニウスに殴り込む、です。そのための道を拓くのに尽力しましょう」
「ジャミングウェーブ」を放ち、「機動兵器知識【自由都市連盟】」を用いて敵方のソナーの周波数を関知する。
納屋 タヱ子は艦へと同乗し、上陸後の戦闘に備える。
「目には目を、歯には歯を。騎士は舐められたら終わりです。デキムスさんに先日のお返しをさせていただきます。……複製人士や戦力を待機させていたのを見るに奇襲もある程度予想していたのかもしれませんね。用心してかかりましょう!」
朝霧 垂もその時を待ち望み、艦内で鳴動を感じ取っていた。
「そう言う作戦だからって言っちゃアレだけど、まぁ正直白き静謐の奴等に好き勝手やられるのも良い気はしないからな。ここいらで一旦、その鼻っ柱をへし折ってやりたいところだな」
【ヤークトフント】独立連隊と協力の姿勢を見せる【リュミエール】独立連隊所属の
戒・クレイルは
セルヴァン・マティリアの操舵する「ピンネース型飛空艦」で格納されている。
「上陸前は敵に見つからないように隠密による水中移動のみとし、上陸後の街の制圧をメインに尽力しましょう。ジャマダハルを狙う協力連隊である【ヤークトフント】独立連隊と協力して、ジャマダハル以外の敵をある程度引き付け、もしジャマダハル発見の際は、あちら側にも連絡し、連携を密にしていくとします」
「海からの夜襲とは、また難易度が高いですが成功すれば効果は高いでしょうしね。非常に大事な役目、皆さんを無事に送り届けてみせますよ」
セルヴァンは艦へと「マジックウォール」を付与し、「夜間迷彩」で敵からの発見を免れようと行動していた。
その艦の後方についているのは「夜間迷彩」を施した
AHI RUの「大鐡神・安底羅」が追従する。
「あのデキムスのことだから何を隠し持っているか分からないわね。先へ進むためにも、ここは抑えさせてもらうわ」
志那都 彩は「カンフォートパフューム」で気持ちを落ち着かせて「藍袴の装束【緋袴の巫女装束】」を纏い、艦へと同乗していた。
「シュヴァリエの更なる進化・覚醒、のため……この一歩が……重要、な意味を持つ……かもしれない。皆様、を……無事、ユニウスの街まで辿り着かせて……見せる」
「土地勘【自由都市連盟】」を用いて現在地とユニウスの街までの位置関係を概算する。
「セルヴァン様……このまま、の……速度を、維持して……【ヤークトフント】独立連隊、と協力……いたし、ましょう。ここは一度、海戦を行ったことがある場所。ある程度の土地勘、知識は、あるはず。上陸するために、安全で最適、な……ルートを、提案いたします」
「頼みます。上陸する前に敵方に察知されたのでは、話になりませんからね」
艦へと同乗する
シア・クロイツは回復役としての備えを心構えにしていた。
「大事な兄と慕う人のお願いで参戦です。難しいことは分からないけど、大切な仲間を助けるためお手伝いを頑張るですよ」
乙町 空は上陸後の戦闘に備えて自らの「信念」に問い質す。
「夜襲と言う形となることで、改めて私が王朝に協力する理由を思い起こすと……“強さこそ正義”とは言っても、強さを弱者に向けないと言う精神性が、私の“信念”に合致すると言うことで……今回、形としては奇襲・夜襲でも、それが弱者の保護につながるのなら……ですね」
同じく艦に乗り込んでいる
京・ハワードも心持ちを確かめる。
「夜戦は久しぶりですので準備はしっかりと整え、【リュミエール】独立連隊及び協力連隊とも連携を取って作戦に臨みましょう」
「作戦……ほ、本当にボクが……先陣に……」
緊張した様子のエマへと声を投げたのは【ロッソジェルベーラ独立連隊】の
佐藤 一であった。
「何のために王朝の騎士と言う生き方を選んだのか。それさえ忘れなきゃ何とでもなるさ」
「そ、そうでしょうか……。ボクなんかがでも、こんな重要な作戦で……」
「エマ様。『なんか』という言葉は自身にではなく、敵に対して用いるものですわ」
佐藤 花がエマの言葉へと返答する。
「なんか、という言葉が口癖の貴女だから、王は“ボクなんか”を“お前なんか”に変えられる可能性を見出し、推挙したと思われますわ。それに最後まで諦めない意思や姿勢こそが、手助けしてくれる誰かや華々しい成果を招き寄せるものですわよ。我が隊みたいに、ね」
「そうそう、はじめちんの話じゃないけどさ、大体これって気持ちの芯がしっかりしていれば堂々とできるんよ。ま、バルおじを倒す女であるアーシの背中でもきっちり見とくし。ついでにしっかり報告上げといてね、アーシの勇姿を」
そう言ってエマの背中を叩いた
シレーネ・アーカムハイトに所在なさげな声が発せられる。
「あの、えっと……よろしくお願いします……」
「いいよ、いいよ。ま、とかく少しは肩の力を抜くのも戦士の証っしょ」
「……行きます」
「戦場の地形把握」を走らせた花は「夜間迷彩」を施した「ピンネース型飛空艦」で水中潜行を行っていた。
鼠家 蒲桃の操る「キャラック型飛空艦」は
高橋 蕃茄と
エイミー・マーム、それに
モルダ・エレスチャルを収容している。
「夜間迷彩」を付与された艦は他の艦よりも後方に位置し、戦闘開始までできるだけ距離を保っておく。
「バレないように運転するって難易度が高いわ。操縦士はいつも大変な仕事を押し付けられているわ」
「やれることが少ない戦場だよ。もどかしいが仕方ない、できることを精一杯やるよ」
船内から「ノクトビジョンターゲット」の暗視機能を用いたエイミーは「機動兵器知識【自由都市連盟】」に基づいて周囲を確認する。
飛翔機動に移っているパルサークレフテスと会敵した瞬間、「集中力」を高め、「ライトアナライズ」で分析していた。
「敵機の弱点と成り得る箇所を探り当て早急に対処する。それが私の仕事だ」
しかし、「ライトアナライズ」では明確な弱点までは分からない。
エイミーは「暴風神筒」で強烈な風圧を生み出し、敵機の追撃を抑えていた。
「これで少しは追って来づらくなるかな」
火屋守 壱星は連隊から離れ、いち早くユニウスの街を偵察していた。
「土地勘【自由都市連盟】」を駆使し、迷路のような街並みを駆け抜けていく。
「少しでも情報が必要だろう。王朝にとってもユニウスの街は因縁の土地だ。当然、向こうも警戒態勢を敷いているはずだろうし、上陸前にそういった脅威を排除する役割も必要だろうよ」
帰還した壱星は
エミーリア・ハイセルターの艦に同乗し、「サブマリンユニット」で潜水機能を持たせて、副砲の「地龍神筒」を搭載し砲座につく。
「ユニウスの街は王朝が大陸の西に打って出る時の橋頭保になり得る。落とせるかどうかは上陸班にかかっているからな。万全の状態で送り届けてやるさ」
海へと出た【ロッソジェルベーラ独立連隊】のエミーリアの操る「ガレアス型飛空艦」は浮上回数を抑えられる距離から潜航を開始する。
「今回のあたしの仕事は連隊メンバーをユニウスの街の海岸に円滑に上陸させることね。海からの夜襲とは言え白き静謐も警戒していることでしょう」
「夜間迷彩」を施された艦で船内待機する一員である
今井 亜莉沙は緊張に拳を握り締める。
「夜戦であれば、敵の裏をかく色々な策を使いやすくなるわね。手持ちの札を駆使して相手を翻弄するわよ」
その言葉には
エオリア・ドライアウゲンも同意する。
「いつぞやの上陸攻撃のおかえしですです。目にもの見せてやるですです」
シレーネの搭乗する「セバンニ」こと「シュヴァリエ・ハイプリースト【シュヴァリエ・ハイプリースト】」はエミーリアへと挨拶する。
『マスター共々、よろしくお願い致します、エミーリア様』
その言葉に少しだけ瞠目したが、エミーリアは落ち着いて返答する。
「え、えぇ、対岸まで任せておいて」
癒しの巫女が艦へと「シールドエンチャント」を施し、潜行時には「ジャミングウェーブ」を放つ。
途端、海上を疾走してきたのはクルースニクの機影であった。
「ビームピストル」を掃射しつつ距離を詰めようとする相手にエミーリアは「赤外線式照準器【赤外線レーザーサイト】」で狙いを定め、「サンダーカノン」からの雷弾を「トリックショット」の技巧で射撃する。
「邪魔をするというのなら押し通るのみだ!」
壱星は「地龍神筒」の魚雷を「ウィークポイントアタック」で併用して、敵機の水上浮遊ユニットを狙う。
「ジャイロウェア」で体力的な負担を軽減しつつ、接近を試みてくる相手を砲座で捉える。
「照準は可能な限り合わせないと……当たるものも当たらないからな」
「地上戦じゃないから飛空艦のペナルティは関係ないわよね? 敵の総数は……依然として不明か……。こちらは上陸班を無事に届けることを優先するわ! 海上の敵は任せたわよ!」
「――ああ、任された」
「アーマードスレイヴ(水中型)」へと搭乗した一は花の艦より出撃し、「オブザベイション」で別方向からの慣性、エネルギーの流動を関知する。
「上陸しないうちに、終わりにはさせない!」
銃口を向けたまま敵編隊の弾丸を回避し、迎撃する。
急速接近する機影に対しては、「シリンダーナックルショット」の近接格闘術が叩き込まれていた。
「こちらはわたくしたちで引き受けますわ。本隊は今のうちに進軍を!」
「パッシブソナー」を発動させた花が敵の位置を把握し、「チタン製衝角」を「突き」出し、一が撃ち漏らした敵機へと猪突する。
反撃を「受け」止めて防御しつつ適切な距離を取っていた。
「大鐡神を操るための技術を飛空艦で使うことになるなんて、思ってもいませんでしたけれど」
「マジックランタン【マジックランタン】」で一の射程を照らし、命中精度を上げてゆく。
クロウ・クルーナッハは「エレクトリック・トーチ」で海面を照らし出し、「フローユニット」を装備した「シュヴァリエ・メイジ」で応戦に移っていた。
「海上からの夜襲だが、光源があれば海上で発見されやすくもある。ならば、一部が発見されても十全な戦力を送り込めるかが重要か」
「ホーリーライト」で敵を引き付け、「察気」によって敵の銃撃網を関知する。
地の魔法である「スティールフェイルセーフ」の攻撃が機体の加速や急減速も相まってクルースニクを打ち据えていく。
「マジックミサイルアックス」の砲撃と斬撃が組み合わさり、変幻自在な運用を伴わせて、敵機の海上疾走装備を破壊していた。
「ウィンドマント」で飛行も織り交ぜて敵のセンサー部へと「エレクトリック・トーチ」の光源を照射して目晦ましとする。
「こちらで派手に戦っていれば上陸する者もやりやすくなるはずだ。そのためにも、海上の敵はこちらに引き付けるつもりで当たろうか。……無理をさせるかもしれないが……メイジ、今回もよろしく頼む」
パルサークレフテスが街より向かってくるのを
苺炎・クロイツは捉えていた。
「向こうさんも陸のほうが戦いやすかろうけども、なるべく陸には上げたくないだろうしね。港だとか工場を踏み荒らされたくはないでしょうし、多少は偵察も居たり、打って出て来るかと思う。そういう、敵側の備えもあるでしょう」
「シュヴァリエ・マーメイド」に搭乗した苺炎は「マジックランタン」を暗めに設定し、水中を押し進んでいく。
「マジックラッパー」で身を隠し、水中の視界不良も手伝ってパルサークレフテスに先手を取らせないように立ち回っていた。
「魔力感知」で索敵し、「マジックミサイルアックス【マジックミサイルアックス】」を叩き上げ、斬撃を見舞う。
マジックミサイルを牽制に用いてパルサークレフテスの位置取りを変移させ、向かってくる敵影と向かい合っていた。
「僅かに距離は……詰め辛いはずだけれどね」
相手の見誤った射程を先読みして、武装の「スマッシュ」が叩き込まれる。
海面に叩きつけられたパルサークレフテスが粉砕され、次なる標的を狙っていた。
「セルフコンディショニング」を心得て、あえて逃げの機動に移る。
それは本隊からの注意を逸らすためであった。
パルサークレフテスが照準しようとしたのを「ヒュプノスソード」の軌道を描かせ、よろめいた機体へと再び舞い上がっての斬撃を浴びせる。
「これで一機でも多く、墜とせれば僥倖ね」
砂原 秋良は「ピンネース型飛空艦」で水中を航行していた。
「ユニウスの街に夜襲を仕掛けて、デキムス市長から貸しを返してもらいましょう。デキムス市長は色々やってくれましたからね。新しい力……プロスペクターやキュイラシェ、そして聖調霊王の力も試してみたい気持ちもありますから。夜襲というのが厄介ですから、できる限りの準備をして臨みましょう。生き残ることが大切ですからね。――さぁ、物語を綴りましょうか」
「エンチャントジャミング」によって通信のジャミングを施しつつ、「ワイヤータップ」で敵側の無線盗聴も行う。
「敵の無線域は……やはり無理ですか。それでも、逆を言えばそういった措置を施していることが分かっただけでも充分です」
「ノクトビジョンターゲット」の暗視機能を用いて潜行する。
何でも屋の青年は「戦場の改造術」を用い、艦の足を底上げしている。
ヤクモ・ミシバは接近してきたパルサークレフテスに対し、出撃を試みていた。
「貸したものは返してもらわないとな。加減は無用、眼前の敵は確実に潰していくとしよう。まぁ、俺やアリヤの出番があるかは分からんがな。それはそれでいいんだろうさ。さて、それじゃ、行くとしようか」
「夜間迷彩」を付与した「シュヴァリエ・マーメイド」が「オリンディクス」に「風の魔力」を纏いつかせ「ストームウェポン」の一撃を放つ。
武装を排除されたパルサークレフテスを「サイクロンソード」の竜巻で迎撃する。
「シルエットフェイント」によって敵勢の射線を潜り抜け、「セルフコンディショニング」で自身の気勢を万全にしておくのも忘れない。
アリヤ・ネムレスは嘆息交じりに「大鐡神・安底羅」で出撃する。
「久しぶりの参戦でこれか。ま、聖調霊王の力も試しておきたいしな。よろしく頼む、安底羅。見つからなかった場合は出番なしだと思っていたんだが、そうも容易くいかなさそうだ。おう、それじゃやるとするか」
「夜間迷彩」を施した機体でクルースニクのビーム銃撃を「旋風鐡円盾」で防御し、「心眼」で敵の行動を見据える。
「夜の海の中でも俺には心眼があるから大丈夫だよ、任せとけって。人神一体ってやつも見せてやるさ」
クルースニクが「ビームソード」を抜刀して近接格闘に入るのを「人神一体」の機動力でかわし、見極めた動きへとカウンターの「鬼砕破砕拳」が芯から叩き砕く。
「電光石火撃ち」の速度を絡めて放たれた一撃に撃破した機体が震える。
秋良の艦より放たれた「トリックショット」の「スコルピオアンカー」がパルサークレフテスに絡みつき、その機体へと「電光石火撃ち」が真正面から撃ち込まれる。
「これは結構いい組み合わせじゃないか? 敵の指揮官もどこから来るか分からないけど、秋良の艦も味方もやらせないよ。そのために俺たちが居るんだからな」
上陸するための支援に徹しているのは
空音 見透であり、「フローユニット」を装備した「シュヴァリエ・スナイパー」で出撃している。
パルサークレフテスを警戒しつつ友軍の後方に位置して狙撃姿勢に移る。
「仲間たちをやらせるわけにはいかない。一機ずつ墜とさせてもらう」
「マジックアーキバス」で狙い澄まし、敵側の明かりを頼りに照準、引き金を絞る。
「セルフコンディショニング」で予備弾薬も充分に保持し、リロードと同時に「ホーリーライト」で自身の周囲を照らし出して牽制する。
「どうした? 自信があるのなら来いよ」
向かってくるパルサークレフテスへと「ストームウェポン」の風圧弾丸で武装を破壊しようとするもこれはかわされ、近接へと持ち込まれる。
こうなってしまっては、自身の武器を槍の穂先のように用いて頭蓋を貫こうとするが、そこはパルサークレフテス、見透の攻撃は避けられ、逆にコックピットへの至近弾による直撃を食らってしまった。
「見透がやられた!? 一機でも迎撃して上陸を楽にしないとな。そのための布陣だ」
ラティス・レベリーはなるほど、と戦局を見据える。
「ユニウス夜襲、思い切ったよい策だと、感心するぜ。俺の仕事は上陸後だな。このまま突っ切る……!」
「フローユニット」を装備した「シュヴァリエ・アーチャー」のラティスは港へと接地するなり、「サイレントダンパー」で駆動音を最小限に留め、
エピュアル・エリークと共に進軍する。
「ユニウス夜襲、わたくしも、微力ながら、ツヴァイを強化で、出撃ですわ。凄く危険な、ミッションですが、町に上陸し、仲間と、王朝を支援攻撃したいの」
「ツヴァイハンダー(皇国)」は「サイレントダンパー」を装備し、ラティスに続いて大地を踏みしめる。
その時、街に配備されていた多脚軍用ロボットがこちらを関知し、「ロケットランチャー」が尾を引いて発射される。
「味方部隊が完全に上陸し切るまでが仕事だ! 後方部隊が来るまでは粘るぜ!」
「重圧」と「ワイドクロスボウ【ワイドクロスボウ】」を番え、回避しつつ反撃する。
それに合わせてエピュアルも「弩」によって応戦し、敵を一機ずつ撃墜していく。
「……でも、もし指揮官機が現れれば……ただでは、済まない、でしょうね」
その時、エピュアルの機体へと襲いかかって来たのは懸念していた指揮官機であるジャマダハルであった。
「……速い!」
「レーザーエッジアサルトガン」を二挺装備し、「ノクトビジョンターゲット」の暗視機能を有したジャマダハルは不意打ち気味に強襲を行う。
ラティスが反撃の応戦を行うも、ジャマダハルは華麗に回避し、即座に近接に持ち込もうとする。
「このままじゃ……!」
死の影が差したその瞬間――。
「――待たせたな!」
恭也の「カゲミツ(王朝)」が盾を構えて「パワードスクラム」で割って入りジャマダハルと弾かれ合う。
「よく持ってくれた! ここからは【ヤークトフント】連隊が受け持つ!」
恭也と共にキョウ、タヱ子、それに垂も布陣に加わっている。
「早速本命とは……当たりを引いたな!」
「シュヴァリエ・スナイパー」に搭乗した垂が「ダイヤモンドソード」で強化した「イエロースピネルボウ」の弓矢で徹底抗戦する。
「アローレイン」をジャマダハル中心に放ち、逃げ場をなくすべく「ノクトビジョンターゲット」で暗視する。
「柊さん、こちらは襲ってくる他の敵を撃墜します! ――来なさい、マクアフティル!」
タロットカードから「召喚」で「マクアフティル(王朝)」を呼び出し、乗り込んだタヱ子は空から襲いかかる、先程見透を倒したパルサークレフテスへと「マジックリボルバー【マジックリボルバー】」で狙い澄ます。
「一つ! 二つ!」
銃撃しつつ、「セルフコンディショニング」でリロードの隙を突かせず、弾を補給する。
「バーニングソード」の魔力を込めた特殊弾頭が多脚軍用ロボを延焼させる。
「ジャマダハルには……偏差撃ちと言うんですっけ? 退く素振りを見せたら罠を警戒し、周囲の状況確認を先に済ませてから追撃に移ります」
多脚軍用ロボの実体弾には「イエロースピネルシールド」で防衛し、背後を狙うクルースニクには「バーンアップ」で防御力に極振りして凌いでいく。
「さて、上陸後からがうちらの仕事で。――シュヴァリエ・ナイト、出るぞ」
「召喚」で呼び込んだ「シュヴァリエ・ナイト」にキョウは搭乗し、「オリンディクス【オリンディクス】」を構えて前衛につく。
「魔力感知」で向かってくるパルサークレフテスの動力を捉えようとするも、パルサークレフテスは魔力で動いていないため意味はなく、「ストームウェポン」による風の一撃は回避される。
反撃とばかりにキョウはスイッチングライフルの直撃を受け、キョウのシュヴァリエ・ナイトは大破炎上する。
それでもキョウは意地を見せ、穂先から撃ち込まれた魔力のショットガンが一刹那の立ち回りを変える。
「面的火力でお前の強みを殺す!」
いつ爆発するか分からない相棒だが、それでも相棒を信じて実弾の攻撃を受けつつも肉薄し、「チョッピングトラッシュ」の技巧で腕を旋回させ敵機の死角を衝く。
しかし、そこまでだった。キョウの渾身の一撃はパルサークレフテスを倒すも、シュヴァリエ・ナイトも機能を停止していた。
「「魔力感知」で捉えられない上に、「ストームウェポン」を回避するぞ」
キョウは辛うじて仲間に敵の情報を提供する。
しかし、肝心の恭也はジャマダハルと向かい合い、攻勢へと入っていた。
「テメェ、紫月の複製か! 丁度いい! オリジナルを潰す予行演習だ!」
ジャマダハルの二挺拳銃の銃撃網を盾で受けつつ、恭也は肉薄して「オリンディクス【オリンディクス】」を構え、「スティールフェイルセーフ」の技巧で脚部を狙い澄ます。
機体特性である伸長するクローアームが応戦の距離まで入って来るが、クローアームの攻撃はキョウの狙いのうちだ。
「いくら強力なスラスターを積んでいたとしても、脚部を破壊されれば動きは鈍る。それは自明の理だろうが!」
その瞬間、パルサークレフテスが一撃に割って入り、ジャマダハルは銃撃を与えつつ距離を取っていた。
思わず追撃しかけた恭也を押し留めたのはタヱ子であった。
「柊さん。罠の可能性も考慮して、今は、ユニウス夜襲を優先に。まだ完全に街の中枢にまで入ったわけではありません」
その一言で冷静に成った恭也は、首肯して街への進軍を開始する。
「行くぞ……。敵は何も、あの複製野郎だけじゃねぇ。ユニウス夜襲を必ず成功させる……!」