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反撃の狼煙!

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反撃の狼煙!
【!】このシナリオは同世界以外の装備が制限されたシナリオです。
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山岳での戦い




 山岳を抑えに動いていたのは、『鋼玉血盟連隊』の面々だった。彼らは地峡や水上、平地での戦闘が同時多発的に起こった裏で、密かに飛空艦を向かわせていた。通常ならば強引過ぎる突破作戦を取らねばならない所だが、様々なところで皇国側が有利に事を進めているため、敵部隊は山岳へ向かう鋼玉血盟連隊に戦力を割く余裕がなかった。
 そして山岳に陣取っていた部隊は鋼玉血盟連隊が向かってきているため、他の戦場に戦力を送れず、釘付けにされていた。ここを取られれば、他の戦場の敵部隊は背後を取られる形になってしまう。敵にとって山岳の死守は絶対だった。
 動けぬなら好都合とばかりに、鋼玉血盟連隊は山岳の敵部隊との交戦を開始した。
(上手く近付くことには成功。でも、ここからの戦闘も有利に進むとは限らないのだわ)
 『カリバーンⅡ(皇国)』に乗り、先行して敵陣に接近していた西村 由梨は、『クチワナの弓』で牽制射撃を行いつつ敵の出方を見ることで情報を得ようとする。当然のように猛反撃を受けるが、そもそも攻め入るつもりのない由梨は回避に全力を上げ、得た情報を仲間たちに伝達する。
「今よ! 全艦全速前進! 山頂を確保するのだわ!」
 そして由梨は、自身を囮として一気に味方の艦を動かした。
「了解だ!」
 真っ先に動いたのは、高天原 壱与の『キャラック型飛空艦』だ。壱与は『ウインドバッファー』で艦の速度を強化すると、最大船速で山頂へ向かう。敵部隊は飛空艦が強引に向かって来るため、一斉に迎撃しようとするが、由梨が低空を飛び回りながらクチワナの弓による毒をばら撒き、敵の複製機体を腐蝕させていくことでその勢いを殺ぐ。狙いも『籠手打ち』による精密なもので、敵機は武器を落としたりして攻撃手段を一瞬失う。
 もっとも、それで壱与の艦が完全に無事で済むはずはない。壱与は必死に山岳を目指し、艦を中破させながらも何とか山頂に辿り着く。
「着いてしまえば、こっちのものだ!」
 到着するや否や壱与は『四方陣(火)』を展開。敵の再度接近を許さないように炎の陣を敷きつつ、他の方向から攻め寄せてきた場合に備えて『投下型アイスデプスチャージ』の投下準備を整える。
「吶喊じゃ!」
 続いて、高橋 凛音の『ガレアス型飛空艦“飛空艦・夕凪”』が山頂へ猛進する。こちらも敵からの迎撃を受けるが、委細構わず『アンカーロケット』を撃ち込み、敵を散らすと同時に艦を山頂に固定。そして、すぐに搭載機を出撃させた。
「降下準備OKよ! 行くわ!」
 凛音の艦から真っ先に出撃したのはヒルデガルド・ガードナーの駆る『大鐵神・宮毘羅』だった。ヒルデガルドはボロボロになってしまった壱与、凛音の艦から敵を遠ざけるべく『投擲型デプス・チャージ×4』を、敵が密集している箇所に投擲。そして投げた方向とは逆に向かって、『鐵の大平広』を構えて突進する。『スパイクユニット』の装着によって足場の不安が無くなっているヒルデガルド機は、その全力を以て敵の迎撃に合わせたカウンターを実行、『突き』で敵機を貫いた。
 半ば混乱している戦場で、鋼玉血盟連隊は高さの有利を活かせてはいるものの、母艦を守らねばならないという不利も抱えていた。だが、その守らねばならないという意識が必死さを生み、隊員たちの動きを洗練させていた。水からはほど遠いというのに、背水の陣を敷いているようなものなのだ。
(落ち着いて……この分なら、艦は守り切れます)
 ヒルデガルドと同時に出撃していた『ブルースロート(連盟)』を駆るアヤメ・アルモシュタラは、ヒルデガルドとは正反対の冷静さで動いていた。
 アヤメは『大暴れするヒルデガルドを隠れ蓑にするかのように『サイレントダンパー』を装着した機体を山岳の起伏に隠した上で『戦場の隠密行動』を行い、『ショルダーショットカノン“肩部散弾砲”』による『トリプルショット』で多数の敵を攻撃していた。
 アヤメの面攻撃によって動きを止めた敵機は、ヒルデガルドに狙われ次々に墜とされていく。そしてその裏でアヤメは次の遮蔽物に身を移し、再び攻撃を実行する。未だ混乱が支配しているこの戦場において、この動きは脅威と言えよう。
 もっとも、遮蔽物を活かせるのは相手も同じだ。そんな敵には『空への一射』を以て対処し、散弾を打ち下ろすことで攻撃を当てる。そうして安全地帯から転び出てきた敵は、やはりヒルデガルドに狩られる。
「鋼玉血盟連隊所属、御陵 長恭……この先は通さん!」
 『シュヴァリエ・ルーク“鐵騎・翻羽”』を駆る御陵 長恭もまた、ヒルデガルド、アヤメと同時に降下していた内の一人だが、長恭は母艦の前に立ちはだかる最後の壁だった。
 長恭は『スパイクユニット』の装着で足元を固めつつ、『魔力感知』で索敵を行うことで接近してくる敵の素早い察知に集中。そうして見出した敵に『ワイドクロスボウ』による射撃で追い払っていた。
 と言っても、仲間たちの奮闘で艦に近付ける敵はまばらだ。坂を上りながら戦うのはそれだけで不利であり、地の利がありながら必死になって戦う隊員たちの戦闘能力の前では、強引な突破は不可能に近いのだ。
 しかし、それでも敵部隊は坂を上ってくる。射程にさえ捉えられれば、満身創痍の壱与と凛音の艦はすぐに墜とせるはず。敵はそう考えているのだろう。
「もう少し待て……ステージは、まだ準備中だ」
 そう言いながら敵を迎撃する長恭の後ろでは、壱与の艦の甲板が突き出していた。それは彼が言うように、さながらステージのようだった。
 いや、さながらステージのようではなく、ここは今からステージになる。
「皆様、お待たせいたしました!」
 その言葉とともに甲板から現れたのは、成神月 鈴奈だった。現れた鈴奈は『“鐵”のインカム』を装着した状態で『集中力』を発揮。そして、渾身の力で『ブレイブソング』を歌い始めた。
 その歌声を受け、隊員たちはこれまで以上に戦意を高め、攻撃の手を強め始めた。
 歌による攻勢の変化に、これまで山頂を奪還しようとしていた敵部隊は怖気づいたように後退、下山を始めた。追い落とすにはこのタイミングしかないとばかりに、隊員たちは前進する。
「加勢します! 一機でも多く、敵を撃墜しましょう!」
 更に、鋼玉血盟連隊の一気呵成に合わせるように、山岳攻めを考えていたシーナ・ロンベルクが、『大鐵神・野武士』に乗って現れる。
 シーナは混乱して狙いが定かならぬ敵を狙い、『脇差』による近接攻撃を叩き込んでいく。
「油断は禁物です。追い詰められた獣は、時に爆発的な力を発揮するものですから!」
 その動きは勢い任せの追撃ではなく、常に死角を気にした立ち回りであり、この絶対的有利な戦場でも万が一に備えたものだ。一人も欠けず、この戦闘を勝利で終えるため、シーナは連隊に混じり戦う。
 山岳の敵部隊は平地に陣取る部隊に合流するしかない。最低でも山岳は取られたことを伝えねば、その場に構えた意味がない。そして、最も下方にいたことで猛攻を免れた一隊は、もう少しで平地に陣取る部隊に合流できそうな位置まで逃れられていた。
 しかし、そんな一隊の前に、別の連隊が立ちはだかった。
「申し訳ありませんが、あなたたちを他の部隊に合流させるわけには参りません」
「何か私たちが把握していない特殊な情報共有方法が無ければ、山岳地帯の全滅はまだ露見していないはずですから」
 現れたのは『四蓮独立連隊』の小山田 小太郎邑垣 舞花の二人だった。それぞれ『エスカリボール(皇国)』と『大鐵神・珊底羅』に乗り込み、既に戦闘態勢は万端といった様子だ。更に言えば、舞花は『戦場の地形把握』で逃げ出してきた敵部隊を迎え撃つのに最高の位置を割り出しており、立ちはだかっていた。
「では……参りましょう」
 先手を打ったのは小太郎だ。小太郎は敵部隊の中で最も強力な戦力であるパルサークレフテスに狙いを定め、『雷鳴刀』で斬りかかった。真正面からの斬撃は、例え敵の戦意が低下していようが流石に躱されるものの、その後も積極的な攻めでパルサークレフテスの反撃を許さない。
 取り巻きの七〇式戦車が砲撃による援護を行うものの、小太郎は機体の機動性を活かした『引き』で回避し、避けられない場合は雷鳴刀による『払い』で対処。付け入る隙を与えず、小太郎もまたパルサークレフテスに一息つく暇を与えない。
「そこです……!」
 そうしてパルサークレフテスが小太郎への対処に集中している隙に、後方で構えていた舞花が『試製電磁加速砲』を放った。
 その強烈な砲撃の狙いはパルサークレフテスの打倒を狙ったものではなく、その周囲を取り巻く敵機だった。
 一瞬で援護を担う随伴機を失ったパルサークレフテスは焦り始め、これまでの防御、回避を主体とした動きから一点、小太郎の撃墜に集中し始めた。間違いなく、次は自分が撃ち抜かれると考えたのだろう。
 その証拠に、舞花は次の一射の準備を始めていた。
 早く倒さねば。そんな焦りを覚えながら、目の前の小太郎と戦い、遥か後方の舞花にも注意を払う。
 集中力を完全に切らせたパルサークレフテスは動きが乱雑となり、ついに小太郎の体裁きに態勢を崩される。
「これまでです……!」
 そしてその決定的な隙を、雷鳴刀による『平刺突』で突き、パルサークレフテスはその場に倒れた。
 これで、山岳地帯からの敵戦力の流れを完全に封じたことになる。
 決着の時は近い。




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