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反撃の狼煙!

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反撃の狼煙!
【!】このシナリオは同世界以外の装備が制限されたシナリオです。
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地峡での戦い




 リキニウスの街の北西に位置するイストモス半島。この地を得るために鐵皇国皇帝・覇道鼎はモノノフを動かした。
 イストモス半島の複雑な地形は守りやすく、攻め難い天然の要害と言える。だが、逆にここを手に入れることができれば、更に先へ駒を進めるのに最高の足がかりとなる。
 この戦い、容易なものではない。集まった兵(つわもの)たちは誰もがそんな思いを胸に、イストモス半島での戦いは始まった。
 
 先手を切ったのは『ライトニング独立連隊』だった。ライトニング独立連隊は多数の飛空艦で押し寄せ、陸と半島とを繋ぐ地峡からから攻め入った。
「よし、行けっ!」
 飛空艦隊の旗艦である『キャラック型飛空艦』からレベッカ・ベーレンドルフが指示を飛ばす。
「了解よ! 桐ヶ谷さん、フィーアさん! 出撃を!」
 指示を受けて動いたのは『キャラック型飛空艦』を駆るレニア・クラウジウスだった。レニアは地峡より少しだけ離れた海上に、桐ヶ谷 遥フィーア・シュナイデの機体を投下する。
 敵から見れば、狙いは明らかだ。皇国軍は、海上から攻め込んで来た。その位置から陸戦部隊を掃討し、上陸するつもりだ。
「殴り込むわよ……!」
『大鐵神・安底羅』に乗り込んだ遥は、いち早く迎撃に動いた敵パルサークレフテスに接近。『人神一体』による大鐵神との同化と『必殺の構え』を以て、狙い定めた敵機に強力な一撃を叩き込む。
 この遥の動きによって、地峡に陣取っていた敵機は遥かに注意を引き付けられる。
(まずは成功ね。難しいのは、ここからだけど……!)
 遥がそう考えた直後、敵部隊は一斉に遥への攻撃を開始した。遥は決して無茶はせず、素早くテクニカルな動きで猛攻を回避し、避けきれない場合は『旋風鐡円盾』で防御しながら、敵の注意を引き付け続ける。これこそが、遥の狙いだ。自身を囮にすることで、他の仲間たちの行動を支援する。彼女に課せられた役割はこれだった。
「こうなるのはわかってたけど、思ってたより激しいかも……!」
 そんな遥のを後方から支えるのは、遥と同時に出撃したフィーアだ。フィーアは『アーマードスレイヴ(水中型)』に乗り込み、水上から『ヘビーマシンガン』で遥に追い縋る七〇式戦車やトライポッドを狙い撃つ。主に遠距離攻撃を行う敵機を狙うことで、遥を援護するのが彼女の役割だ。
 ただ、敵の攻撃は想定よりも激しく、フィーアの遠距離射撃だけでは思ったように足止めできていない。
「これなら無視できないはずよ!」
 手が足りないと感じた上空のレニアもまた、『カバリング・ファイアー』で遥を援護する。『マジックウォール』で艦を保護しつつ、敵の手が届きにくい位置から攻撃しているため、今のところ撃墜の危険は無いだろう。最悪の場合に備えて『デネボラドリフト』による強引な突破なども手段として用意はしているが、そうなった場合は味方全体の危機と言える。そうならないため、レニアは必死に遥を支え、フィーアと息を合わせて敵部隊を砲撃する。
 手厚い援護の甲斐もあって、遥は幾分動きやすくなったようだ。だが、未だ膠着状態であり、海上からの奇襲という割に攻め込めていない。更に、敵部隊は徐々に水上のフィーアへの攻撃も始めた。
「そろそろ行ってもいい頃だろ」
「上手く海に引き寄せられているです……出るです!」
 そこで動いたのは『クナール型飛空艦』の馬謖 幼常と、『大鐵神・摩虎羅』を駆る土方 伊織だ。
 伊織は幼常の『ファイアーカノン』による『カバリング・ファイアー』とともに水上へ降下すると、フィーアを狙った向かってきていた敵パルサークレフテスに『飛龍鉞』で斬りかかる。
 突然現れた伊織機に反応が遅れ、パルサークレフテスは機体に大きな損傷を負うも、背後の七〇式戦車やトライポッドからの支援を受けて後退する。
(敵も上手く連携が取れているですね……)
 伊織は向けられた砲撃の類を『旋風鐡円盾』による『払い』や『受け』でやり過ごすも、パルサークレフテスの攻撃はそこまで甘くはない。損傷を負いながらも水上に立ち続ける。
 伊織の狙いは、可能な限り敵部隊を水上や海中に引き付けることだ。そのための水中専用機であり、今のところ敵部隊はある程度コントロールできていると言える。
 もっとも、パルサークレフテスにおいては水中でも難なく動き回っているため、こちらが有利ということはない。パルサークレフテスを相手にする際は細心の注意を払い、『人神一体』となって操縦し『蒼炎斬』による一撃必殺を狙う。
 しかしそれでもパルサークレフテスは強力であり、次から次へと押し寄せられると、とても一機では対処しきれない。
「世話が焼ける……!」
 そういった場合は上空から幼常が『集中力』を発揮し、『スパイダーネット』で敵機を拘束しようするなど援護を欠かさずいることで、伊織は万全の態勢を敷けている。
 とはいえ、『スパイダーネット』は必中ではなく、しかも敵味方無差別であるため、場所や相手によってはかわされてしまうが、伊織に攻撃が集中しなければいい、とここは割り切る。
「地の利を得てもなお圧倒出来ない、となると」
「あぁ、手が足りない。出るぞ」
 伊織やフィーアの苦戦ぶりを見て、フィーリアス・ロードアルゼリアジェノ・サリスが動く。
 ジェノは『大鐵神・安底羅』に乗り、フィーリアスの『クナール型飛空艦』から出撃すると、降下しながら『指鉄砲』でパルサークレフテスを牽制。水上につくや否や『噴火大筒』で爆発的なスタートを切り、急接近して『飛龍鉞』による『霞斬り』を見舞った。
 強烈な斬撃と発生した衝撃波、その前の伊織の攻撃もあってパルサークレフテスは大破する。手応えは確かなものだったが、まだまだ敵の数はあるためジェノは囲まれないように『遍現跳躍』を利用するなどして戦場を動き回り、迎撃を行う。
(ジェノは上手く動けているけど、念には念を入れておきましょう)
 フィーリアスは常にジェノの動きを追いつつ、敵の射程ギリギリを動く。そして、ジェノが多くの敵を引き付けながら移動する先に狙いを定め、『スパイダーネット』を放った。
 繰り返しとなるが、『スパイダーネット』は設置型なので必中ではない。相手によって見破られてしまうが、今回は相手がトライポッドだったため、スパイダーネットに絡めとられ、身動きを封じられる。それを見た水上部隊は一斉に猛攻を開始。敵を撃墜するに至った。
 敵部隊は、海上から攻め寄せるライトニング独立連隊に対処すべく、更に戦力を注ぎ込む。多くの機体が墜とされたが、まだまだ数的有利は揺るがず、侵攻を許しているというほどではないのだ。
「よし、今よ! 本艦とビーシャ艦、全速前進!」
「了解だよ!」
 しかしその瞬間、敵部隊が増援を送り込んだことを察したレベッカが号令を発する。
 指示を受けたビーシャ・ウォルコットは『クナール型飛空艦』に『ウィンドバッファー』を実行し先行。レベッカもまた同様の手段でビーシャ艦に追随する。この二隻が向かうのは水上ではなく、地峡の陸地部分だ。
 その狙いは、海上と陸地からの挟撃。敵部隊が海上への対処に大きく兵を割いたことで手薄になった陸上に、やや強引に味方機を降下させることで挟み撃つというのがレベッカの作戦だった。
「無茶だとは思いますが、皆さん、頑張ってください!」
 レベッカ艦に乗り込んでいたクラリス・アーデットは『鼓舞踊』を舞い、降下する仲間たちを勇気づける。そして一部の機体には『初の手当』を施しておく。
「よっし! 行くぜ、大和!」
「あぁ……!」
 レベッカ艦に同乗していたアルフレッド・エイガーの『シュヴァリエ・メイジ』と草薙 大和の『トムキャット(皇国)』は、準備を整えるとすぐに降下を開始する。
「大和さんが出撃したです! わたしも……!」
「待て待て、もう少しだ……よし、完了だ。行ってこい! だが、無理はするでないぞ!」
 ビーシャ艦では草薙 コロナが夫の大和の出撃を見て自分も出ようとしていたが、雪神 白羽による万全の調整によって多少出遅れていた。これから取る戦法は、かなり無茶なものだ。そのため白羽は調整に力を入れていた。
「行って来るです!」
 『トムキャット(皇国)』を駆るコロナは慌ててビーシャ艦より出撃し、降下しながらアルフレッド、大和に合流する。
「奇襲だ奇襲だ! 派手に行かせてもらうぜ!」
 空中で攻撃を開始したのはアルフレッドだ。アルフレッドは『ウィンドマント』を纏ってある程度空中で機体を制御しながら、『マジックミサイルアックス』からマジックミサイルを放ち、地上の敵を攻撃する。
 だが、上空であまり速度の出せないウィンドマントでの降下は、敵から格好の的にされるリスクもある。アルフレッドの攻撃をやり過ごした敵機は地上からアルフレッドを狙い撃つ。
 アルフレッドは『タロンスモールシールド』を構えて上手く銃撃を逸らしつつ降下を狙うが、それでも機体へのダメージは防ぎきれない。あっさり大破する。
(はッ! そりゃあ俺を狙いたくもなるよなぁ!)
 しかし、それこそ彼の狙い通りだった。アルフレッドの狙いは敢えて自身が派手に動き、狙いやすい機体だと敵に思わせることで注意を引き付け、他の仲間たちを動きやすくすること。すなわち、大和とコロナの行動をサポートすることだった。
「行くぞ、コロナ!」
「はい!」
 瞬間、大和とコロナは息を合わせて『五体投下』を実行する。その目論見に気付いた敵機は大和とコロナを撃ち落とそうと銃撃するが、なかなか致命傷を負わせられない。
「この程度のダメージ、墜ちなきゃ安い!」
 そして迎撃を耐え切った大和とコロナは、アルフレッドの援護によって動きを制限された複数の七〇式戦車目掛けて、渾身のダブルボディプレスを見舞った。
 二人の五体投下の後、アルフレッドは辛うじて着地する。囮としての役割は果たせたが、機体の損傷的にもう戦える状況ではなかった。
 五体投下を見舞った大和とコロナは施されていた初の手当が発動し、機体の損傷を修復させる。完全ではないが、これでまだまだ戦える状態となった。
「降下は成功か! よし、敵部隊を囲い込んで殲滅する!」
 奇襲部隊の降下に成功したのを見て、レベッカは更なる指示を飛ばし、地上に向けて攻撃を開始する。ビーシャ艦もまた、レベッカ艦に追従するように動き、敵の動きを妨害するように攻撃を見舞う。
 水上からの攻撃と空中からの砲撃。そして陸上からの奇襲を以て、敵部隊はほぼ完全に包囲された形となる。
 これまでどちらかというと追い込まれていた水上部隊も、掌を返すかのように回避、防御主体の立ち回りから猛攻に移行する。
 遥はもはや水上で戦うこともないとばかりに『噴火大筒』を使って上陸すると、一気に敵部隊に殴り込んだ。前後から攻められる敵機は逃げ場を失い、次々に遥の『蒼炎斬』に斬り捨てられ、反撃しようにも水上からの援護射撃、空中からの援護砲撃などによって攻めに転じることができない。
 おまけに、レベッカとビーシャは『投下型アイスデプスチャージャー』をばら撒き、更に退路を狭め始める。
「……見事。この機に乗じん手はないだろう」
 『ツヴァイハンダー(皇国)』に乗る風間 瑛心はライトニング独立連隊の立ち回りに感心しつつ、加勢する。
 狙いはこれだけ押し込まれてもなお、パフォーマンスを落とさないパルサークレフテスだ。他の敵機は包囲に四苦八苦する様子が見て取れるが、パルサークレフテスだけは落ち着いて見える。
 ここは一度有利であることを忘れ、瑛心はパルサークレフテスに奇襲をかける。『空裂閃』による先手こそ命中したものの、パルサークレフテスは二の太刀である『飛去来器』は上手く回避。すぐに瑛心に狙いを定め銃撃を行う。
(やはり、油断はできん……)
 瑛心は空裂閃をメインに距離を詰め、隙を突いた『平刺突』によってようやくパルサークレフテスを一機撃破する。
(……敵はまだ死に体ではない。となると、ここは捨てずに更なる戦力を送り込んでくるだろうな)
 瑛心はライトニング独立連隊に紛れ、丁寧に敵機を攻撃しながら、更なる増援が来ることにも警戒する。
 だが、それもライトニング独立連隊の狙いだ。彼らはこの半島での戦い全体を見ていた。自分たちがここで奮戦すれば、無視できる戦場ではなくなる。そうなれば、敵は他の位置から戦力を動かさざるを得なくなる。こうすることで、他の方向から攻めようとしている連隊の援護になる。これが、最大の狙いだった。
 そしてその狙いは、今のところ上手く行っている。初戦の決着はついておらず、この先もつかず仕舞いだろう。
 決着は、全体の決着がつく頃に決まる。



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