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反撃の狼煙!

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反撃の狼煙!
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■3-4.乱れ交じる戦火

(相手が陣形を整えるまでが勝負。このまま決めさせてもらうぞ、スレイ・スプレイグ――その複製よ!)

 平野へと引きずり込まれつつある部隊、その手堅い射列をかき乱すためには攻撃を続けるしかない。アルヤァーガ・アベリアはクナール型飛空艦からタウルスカノンを撃ち続けることでその楔を打とうとしていた。

 敵がどれだけ恐ろしい存在か、アルヤァーガは知っている。複製人士の元となった人物は彼の友と呼べる人物だという。だからこそ、彼には油断もなければ慢心もない。

(一人で一機を倒そうなんて思わない。二人で、いや、他の連隊の動きも併せて確実に叩かせてもらう)

 戦いはすでに乱戦状態に入っている。彼はゴッドラッシュと呼ばれる技法によってその砲弾を連射する。超人的とも言えるのは、タウルスカノンを連射し続ける技量だけではなかった。この乱戦状態であっても仲間へ当てることはないのだ。

 そして弾幕により押し留め隊列の中から浮いた相手を狙ったアルヤァーガは、旋回しながら一機に狙いを絞る。そうして動きづらくした相手に向けて、甲板の上に控えた機動兵器がスイッチングライフル、SwRの照準を合わせていた。

(複製、それそのものは……悪いとは思わないけど、スレイの戦友の1人として……私も、狙い撃たせてもらう……!)

 スパイクユニットによって駆体を固定したキンジャールのパイロット、シュナトゥ・ヴェルセリオス。彼女はパンツァークレフテスの回避機動、その頂点を狙い、

「シュナ! やれ!」

 トリガーを引き絞った。放たれたレーザー弾はパンツァークレフテスの肩部へと直撃する。エネルギー部に誘爆したか、爆発が巻き起こりその一機は大きくバランスを崩した。

「もう一回……!」

 今の一撃によって相手のカバーできる範囲は大きく減少した。ここから肩部、或いはそこから更に回り込むように背部へと打撃を加えれば確実に撃墜できるだろう。

 相手の動きをより狭めるため、アルヤァーガの砲撃に合わせて重圧を放ちその動きを鈍らせていく。そして、

「決めろ!」

「了解!」

 アルヤァーガのトリックショットが放たれる。敵機の動きを狭めるその牽制、バランスを崩して回避機動が取れないそのクレフテスをフォローするために、飛空艦へ次々に砲撃が飛来する。

「ぐっ……だが、もう遅い……!」

 しかしアタッカーはアルヤァーガではない、シュナトゥだ。彼女の機体はラビットムーヴの要領で大きく跳躍して身を投げ出すと、素早くSwRによるトリプルショットを撃ち放った。直撃弾の三連続、さしもの“白き静謐”の機動兵器といえど、それだけ受ければただでは済まない。動力部まで到達した損傷によって、パンツァークレフテスは大きな爆発を生んだ。

 一機が欠ければ、部隊は即応してフォーメーションを組み直す必要がある。互いをカバーし合うために連携を取ろうとする“白き静謐”の部隊。だが、それこそ決定的な隙が生まれる瞬間でもあった。

『さあ、攻撃を開始いたしましょう!』

 部隊が立て直すよりも先に、彼らの後背から砲撃が降り注いだ。挟撃のため迂回路を取っていたリンクス独立連隊の到着である。

「ラーナ、ジャミングご苦労様です。続いてシールドエンチャントをお願いできますか?」

「いいよー! まっかせておいて!」

 先頭を行くキャラック型飛空艦の操手、叉沙羅儀 ユウ。彼女は同乗する整備長のラーナ・クロニクルからシールドを付与してもらうと、更に艦体を加速させる。

「対レーザー用のマジックシールドを展開後、弾幕をもう一度張ります。皆さんはその後に突撃を!」

「敵部隊は今、中央が間延びしてるみたい。出撃の時には横撃に気をつけて!」


 奇襲のため低空を低速飛行していた面々が浮上を始める。速度のロスは無く滑らかな操艦だ。

「こちらシスカ・ティルヘイム、移動完了。砲撃合わせ。5、4、3……」

 二隻の飛空艦の砲塔が揃う。

「砲撃開始!」

 一斉に砲塔が火を吹いた。いずれの飛空艦もその主砲はファイアーカノン、瞬間的な火力にこそ欠けるが当たればどこであろうと延焼を引き起こす火炎弾だ。畢竟、纏まって受け止めるのも厄介で回避を優先したくなるというもの。これによってクレフテスの編隊は更に即応力を失うこととなる。

「サキス様方が上手く攻め上がれれば……」

 飛空艦を横切るように空気を切り裂く音が響く。クレフテス部隊の頭上を通るようにして飛翔する影は三つ。最初に前へと飛び出したのは連隊長の焔生 たまだ。

 彼女の駆る機体はベルペオル。たまの専用機を複製したそれが特段目を惹くのはその機体色、ゴールドカラーの装甲は囮としてはうってつけ、のはずであった。

「こちらの陽動には乗って――くれませんか!」

 編隊を組むまでの動揺のようなものはある。しかし、そこから焦り、目立つ機体を狙い撃ちにするということはない。

(不気味なほどに冷静、ですね)

 読みが外れた彼女だが、まったく攻撃が飛んでこないというわけではない。接近し、ショルダーショットキャノンと胸部ガトリングによる射撃を繰り返す彼女を無視できる道理もなく、しかし、冷静に弾をばらまくことでこちらの接近を阻害されているのだ。

 盾が赤熱し焼き切れるよりも前に回避機動を取り最低限の被弾で済ませたたまは、スラスターを吹かせながら距離を保つ方向へとシフトした。

(ハイテンシールドのおかげで近寄ることはできる……これで、せめて圧力をかけ続けましょう)

 撃破されないことを優先し、確実な勝利を目指す。効果的ではなかったものの、囮としての役割を最大限こなそうとしていた。

 かわりと言うわけではないが、特に敵に狙われることが多かったのはサキス・クレアシオンの駆る飛行型のアーマードスレイヴだ。

(足を止めるのはリスキー……かな)

 サキスのアーマードスレイヴは機動力重視のセッティングだ。彼女の機体にもたまと同様試製ハイテンシールドを持たせていたが、想定以上に注意を惹いている。

「なら!」

 大きく移動しながらクイックドローによって回り込もうとする敵を牽制。こうすることで彼女はより動きやすく、そして、

「セナリア、よろしく!」

「はいはい! 一気に畳み掛けるわよ!」

 焔生 セナリアが隙を突く機を生んでいた。彼女の駆るルーンセレスティアル・ノヴァは圧倒的な速力を持つ戦闘機だ。殊更改造術によって機動力を上げた彼女の機体は、生半可な技術では当てることは不可能と言っていい。

 とはいえ相手はスレイ・スプレイグの複製人士、“生半可”ではないのがネックだが、

「まずはこいつを喰らいなさいって!」

 すれ違いざま、爆雷の要領で投擲型のデプス・チャージをばらまいた。立て続けに吹き荒れる爆炎を背に、セナリアは一気に距離を離していく。

「次は……!」

 シュツルムクレフテスならいざ知らず、彼女の機体に追いつける機体はそう居ない。そのシュツルムクレフテスも、連隊総出で攻撃をされていればセナリアをわざわざ狙うことも難しい。

 無事に戦域への再突入を終えた彼女が次のターゲットへ狙いを定めると、ちょうどそこへ向けて、ファイアーカノンの炎弾がばらまかれた。

「これは……シスカねっ。助かるわ!」

「輸送の任を終えた今、皆さんの機を作ることこそが私の役目ですので」

 シスカの駆るクナール型飛空艦は防御に優れたセッティングとは言いがたい。敵部隊の反撃をもらって一部から煙が上がっている程だ。それでも、彼女の身を挺した援護攻撃のおかげで、

「このタイミング、もらった!」

 迷わずにピンホールショットをパンツァークレフテスへと叩き込んだ。パンツァーの一機がエネルギーを暴走させて爆発する。

「これで敵の圧力も下がるはず! 私とサキスが健在なうちに今のうちに修理を進めて!」

 爆風吹き荒れる戦域内をユウのキャラック型飛空艦が飛翔する。囮の役割を果たしたサキスが収容され、たまのベルペオルがそれを守るように前へせり出した。

「回り込む敵影は無し! よーっし、ラーナも頑張るねっ!」

 幸いにしてユウも整備のために気を払って航行してくれている。揺れの少ない中で機体に取り付いたラーナは、軽く下唇を舐めると修理を開始した。

「補給もお願いできるかな」

「うんっ。これくらいの損傷ならスピードリペアで十分だから。カートリッジの装填もやっておくよ!」

 激しい砲撃音が響き渡る。ユウがゴッドラッシュで周囲の敵機を牽制しつつ、急ぐ形でラーナが修理を進めていく。当然、白き静謐も簡単に修理や補給を許すわけがない。敵部隊の攻撃は激化し、徐々にその包囲を狭めていく。

 補給を受けている間、どうしても焦れてしまう気持ちはある。サキスは操縦席の中でレバーを力強く握っていた。

『近づいたっていうのなら――やらせは、しません!』

 しかし、その視界の端、外を見渡せる窓からパンツァークレフテスの一機が落下していくのが見えた。たまの仕掛けた強引なフランケンシュタイナーによるものだ。

「豪快だね、あれは」

 それを見たサキスの焦りも解けてしまうほどの一撃。思わず笑みをこぼすサキスを覗き込むように、ラーナが顔を上げた。

「これでよしっ。サキス、整備は完璧だよ!」

「流石整備長。それじゃ、もうひと踏ん張りと行こうかな」

 ラーナに見送られながらサキスが再びスロットルを開く。彼女の駆る機体の主兵装はボルテクスカノン、機体のエネルギーを消費する分燃費こそ悪いが、

「万全な状態なら、遅れは取らないっ!」

 大口径のビームが空を灼く。直撃ならばいくら白き静謐といえどただでは済まない。激しい閃光に飲まれたクレフテスの一機が墜落していった。

 徐々にシュツルムクレフテスに随伴する機体は減りつつある。ユウはサキスが無事出撃できたことにアンドしながらセインマインドガウンの襟を整えながら、大きく息を吸い込んだ。

「我々リンクス独立連隊は崩れません。だから後はよろしくお願いいたします、幸人さんにスレイさん……」

 加速度的に複雑になっていく戦闘の只中で、彼女はそう呟きながらファイアーカノンを撃ち放つのであった。

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