■プロローグ■
――リュクセール王国、ミリルミナ渓谷
アイオーンは
剣持 真琴や
美月 慎たち冒険者を伴って、ミリルミナ渓谷を足早に踏破してゆく。
今は黒焔竜ブラックオニキスが“闇竜化”を自身が抗っているが、それも時間の問題だ。
完全に“闇竜化”してしまえば、ミリルミナ渓谷を降り、手始めにノイエ・ゴルドバールあたりから破壊し始めるだろう。
もしかしたら空を飛び、別の都市へ行く可能性すらある。
そうなってしまっては、今までアイオーンが千年間、セレスティーヌのために守り続けてきたリュクセール王国の平和はどうなってしまうのか。
逸る気持ちを抑え、アイオーンはゴストバルム荒野とボヴィーグ山脈を見た。
それぞれ嘆きの塔には最後の4枚の“譜”を取りにフィルツェーンが、そして悠久の時を生きる大魔導士エスターシャが教えてくれた魔導兵器のサルベージにキャロルが向かっている。
(今まで俺は、セレスティーヌ以外の人間を信じていなかった。いや、セレスティーヌが人間を愛していたから、それに答えてカルディネアの地を守っていたに過ぎなかった。フィルツェーンは神竜が遣わした者だし、キャロルは何を考えているか分からない。しかし今は、二人だけではなく、多くの冒険者の力を必要としている)
ボヴィーグ山脈の地下にある、神竜の神殿でセレスティーヌと共に過ごしていた千年間とは異なる濃密な時間がそこにはあった。
(仲間のために加護を解除したことは後悔している。だが同時に、彼らなら、仲間なら、それを補ってくれると信じている俺がいる……不思議なものだな)
アイオーンは踵を返すと、“闇竜化”しつつある黒焔竜ブラックオニキスの住処へ急ぐのだった。
■目次■
プロローグ・目次
【1】嘆きの塔を探索する
◇◆◇ 帰らずの塔 ◇◆◇
◇◆◇ 死者が蔓延る塔 ◇◆◇
◇◆◇ 対価 ◇◆◇
【2】水中神殿に挑む
1.古の湖底の神殿
2.水中神殿の主
3.水中神殿の魔物との激闘(1)
4.水中神殿の魔物との激闘(2)
【3】“闇竜”の復活を阻止する
1.魔の谷へ
2.闇へと導かれる竜(1)
3.闇へと導かれる竜(2)
4.闇へと導かれる竜(3)
5.闇へと導かれる竜(4)
エピローグ