■プロローグ
――セブンスフォール、霊峰アークラウド。
その山腹を、ファンに馬車を曳かせて
飛燕 まいんがのぼっている。
「神獣……レーヴェちゃんだっけ? ショート動画見た? かわいいよね~。
世界にかわいいものはまいんだけでいいのにね」
「「ほんまそれ!」」
声をそろえて言うのは、まいんのファンたちである。
彼らはみな、まいんの興味があるものは何でもチェックしている自負があった。
――しかし。
「え? オタクくん、まいん以外の動画見たの? ぴえん……浮気じゃん……」
まいんはそんな忠実きわまるファンたちさえも袖にする。
その背筋が寒くなるような振る舞いこそ、彼女がドレッド・カルチャーの申し子である何よりの証拠だった。