渋谷駅までへの道のり3
有栖たちは、道端に倒れる鬼もどき越えて遊歩道の先へ進む。これらはおそらく戒が対処したものだろう。以降、鬼もどきに遭遇することなく、有栖たちは遊歩道の突き当りまで進むことができた。スムーズな移動はもちろん、体力などを温存できたこともありがたかった。
しかし、これ以降は遊歩道を離れて大通りにでなければならない。途中路地なども抜けることはできるだろうが、鬼もどきとの遭遇率は高くなるだろう。
現に先導するリズが大通りを確認してみるが、いくつかの鬼もどきが徘徊している姿が見えた。
「やっぱ覚悟決めなきゃならん……すげー強い奴がすげー本気で追いかけてくる訳さー」
現状、黒江の接近は感じられないがいつどこで遭遇するかもわからない。リズは変装セットとホライゾン・アカデミー制服を有栖仕様にカスタムすると、ここから二手に別れようと提案する。
「全ッ然あたしに似てないし! 危ないよ!」
「あはは! これでも身のこなしは早いんさー。
目的を達成するために、あたしも立ち向かうのさ! 1秒でも1歩でも進めさ!」
この程度騙せるなどとは微塵も思っていない。単純に二手に分かれれば、鬼もどきを少しでも分散させることができるだろうが、それだけでは芸がないと思ったのだ。リズは今井とミシェルに有栖たちを頼むと。影奪で颯爽と大通りで出た。
「私たちも鬼もどきを引き付けます! その間に!」
大通り方面から有栖たちに声がかかる。飛行して中心地まで先行していた
八重崎 サクラと
ジル・コーネリアスがリッケンバッカーを止め、避難路を指示した。
同時に、合流した
砂原 秋良と
ヤクモ・ミシバが全能神の護衛に付く。
「私たちも協力します。カミサマを守りましょう」
「もうここまで来れたのか。私もいくらか鬼もどきたちを倒したが、まだ厄介だ。
無事、神域へたどり着けるよう引き続き鬼もどきを引き付けよう」
全能神を回復後、八重崎ら同様先行して鬼もどきたちの対処に当たっていた佐門とシャブダも有栖たちに気付いて近寄る。避難路として通る道を確認し、砂原と佐門たちはそちらへの誘導と護衛を、八重崎たちは鬼もどきたちを避難路から遠ざけるように立ち回ることを確認して、それぞれ行動を開始した。
◇ ◇ ◇
「さあさ皆さんお待ちかね、パルクールでの舞踏会の始まりだ!」
「こっちのステージで踊って貰いますよ!」
再びリッケンバッカーを走らせたジルは、ある程度大通りの中心に出て八重崎を降ろす。自身は徘徊する鬼もどきに向けて対怪物榴弾砲を放ち、敵意をこちらに向けさせた。
被弾し、激高した鬼もどきがこちらに向かってくる。八重崎が俊足で駆け、立体軌道やジルのけん引するトーイングステップの足場を使いながら鬼もどきを牽制していく。その間に、ジルは別個体に榴弾砲を放ち、鬼もどき達を一箇所に集めていく。
「鬼退治って柄でもないけどね、それでも自分に出来る事があるならさっ!」
「何だかんだ付き合ってますからね、好きにはさせませんよ!」
周囲の鬼もどきたちが引き付けられたところで、再びリッケンバッカーに八重崎を乗せ、有栖たちから離していく。
「鬼さんこちら手の鳴る方へ、ですっ!」
「昔っから鬼ごっこは得意で……ねっと!」
鬼もどきたちからの攻撃はムーンサルトターンで回避しつつ、ある程度距離を取ったところで、八重崎がリッケンバッカーから飛び降り鬼もどきに冷たい炎の拳を見舞っていく。蓄積された熱を放って複数を押し戻し、自身はジルの方へ後退した。
「ここです! 今っ!」
「追いかけられても困るんでね、もう少しだけお付き合い願いましょうか!」
鬼もどきが団子状態になったところでジルがライトニングレインを放つ。光線に焼かれた鬼もどきが倒れ、辛くも生き残った鬼もどきは八重崎の格闘による一撃で沈ませた。
「ふう……ひとまずここらは倒しきりましたか」
「はい。では次のエリアに向かいましょう」
二人は再びリッケンバッカーに乗る。有栖と全能神が駅にたどり着くまで、二人の戦いは終わらない。