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≪セレクター編≫ブラフマンの断片

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≪セレクター編≫ブラフマンの断片
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九鬼 士堵との戦い4


 不可視の一太刀のからくりが掴めそうで掴めない。何かもう一つでも手掛かりがあれば――。
 そこへ、鬼もどきの対処をしつつ士堵への接近機会を窺っていた春夏秋冬 日向が呪珠丸に手をかける。

「俺が手の内を視てこよう。
 機会は一回。しかも一瞬だが、俺も剣士の端くれ。肉を切らせて骨を断つ」
 
 春夏秋冬はタイミングを見計らい、ジェノやフリーデンの攻撃の隙間に睦美流奥義・絶影を発動。縮地により、士堵の目の前に現れた。
 
(忍はどんな手を使ってでも目的を遂行させる。
 一歩間違えれば盗賊と同じ。だから正しき心を必要とする)

 士堵が仲間だったら良かったと、春夏秋冬は思う。しかし、自身は陰に生きる者として、表に生きる者を護りたいのだ。刃を心に忍ばせる己にとって、士堵は倒すべき相手であった。

 春夏秋冬は抜刀する。自身が高速化することで、周囲が緩慢に見えた。士堵が僅かばかり目を見張ったような表情の機微を捉え、彼が柄に手をかけたのも見えた。抜刀はこちらの方が速い。しかし、呪珠丸の刃が士堵の刃に受けられたのを一瞬視界に入れた次の瞬間、士堵は己の視界から消えていた。自分の体が建物にめり込むほど打ち付けられていて、士堵の剣戟に吹っ飛ばされたのだと理解した。
 
 一瞬でも自身を脅かされたことに危機感を覚えたのか、続けて士堵は不可視の刃を広範囲に放った。
 春夏秋冬にそれを回避する術はなかったが、それでも絶影の影響で士堵の攻撃動作を捉えることができた。先ほどは柄に手をかけ抜刀。確実に呪珠丸と刃を交えた。しかし不可視の一太刀に関しては、攻撃動作がなかったのだ。つまり抜刀どころか、柄に手をかけることすらしていないのだ。
 
 士堵からの居合い斬りと斬撃を浴びた春夏秋冬は、いよいよ戦闘不能となる。しかし最後の霊力をふり絞り影結で傷口を塞いだおかげで、致命傷には至らなかった。
 
「攻撃動作がない……。つまり不可視の一太刀は刀による斬撃ではない。
 自身のオーラの操作、あるいは殺気のようなものを攻撃に転用しているのか」
「僕たちの“刀からの斬撃に斬られた”という意識を逆手に取っているのかもしれないね」

 春夏秋冬の元へ駆け寄った夏輝と狂介が、自身や星川、春夏秋冬からの情報をまとめて考察する。
 不可視の一太刀は物理的な斬撃ではない。“斬られた”と錯覚したイメージが固定され、現実となっているのではないか。
 
「それが正しいと仮定して、相当の精神力が必要だろう。現に精彩を欠いているのはそのせいのはずだ。
 とにかく削って弱体化していければ、不可視の斬撃は繰り出しにくくなるだろう」
 
 ジェノが考察を元に、士堵の弱体化を図るべく仕掛ける。
 星川とフリーデンが士堵の矢面に立ち、アリーチェ・ビブリオテカリオがチャンプムーブで士堵からの攻撃を避けながら位置取りして夢現の被炎を展開。そこへソルエススパーダでのバーニングラッシュで、星川が周囲を燃やし巻き込みながら士堵へ迫った。
 刀を抜いた士堵の剣圧で、炎は掻き消え星川も後退させられる。しかし次の瞬間、上空から七発同時の大蛇が士堵に降りかかった。プリエンティヴストライクによって、星川の攻撃威力を加味した箇所に落とされたムシュマッヘに、直撃は免れない位置取りだ。
 しかし、士堵は大蛇を切り裂いた。たちまち大蛇は水塊と成り士堵を濡らす。
 
 これでも倒しきれないのか。ジェノは顔を歪めた。士堵は返り血を払うかのように刀の水滴を振るい、納刀する。
 特異者として高い練度を持っているジェノでも、継続した攻撃や回避のうえで加えた大技に気力が尽きる。不可視の一太刀に備え、アイギスの神格を解放しようとした。だが、斬撃は襲ってこない。
 神格開放したムシュマッヘを、士堵は食らっていた。尋常ならざる速度の抜刀術で薙ぎ払うことができたのは一部であり、何でもないように立ってはいるが、今までの比ではない程パフォーマンスは低下しているだろう。現に、不可視の一太刀は放てないようだった。
 
 攻撃を仕掛けてこない士堵にアイリス・シェフィールドが炉泥式霊子機関銃を放った。幽世眼・改で周囲の霊力の流れ、それによって士堵や鬼もどきたちの位置を大まかに把握し、空走下駄で狙撃ポイントを位置取りする。合間合間で士堵や鬼もどきの牽制を行っていた。
 
 ジェノは士堵の意識がアイリスに向いた隙に戦線離脱。入れ替わりに草薙 大和たちが駆けた。
 
「やっぱり、『斬った』って結果を確定させていたようなものね。
 でもそれも不安定なら、これで突破口をこじ開けてみせるわ!」

 フレデリカ・レヴィが涅槃子ビームビットと顕現させた光の剣を放射する。周囲に浮遊するスペルプリズムはキラキラと輝きながら、プリズムリアクターによる術式に共鳴して、フレデリカに魔力を還元する。そうすることで、何度士堵に光剣やビームを振り払われようと、再び彼を狙うことができる。
 パートナーであるルイーザ・レイシュタインも同じく光剣とビーム砲で、フレデリカとは違った方向から畳みかけていく。フレデリカほど早く連射できるわけでないが、それは実践的錯覚による幻を組み合わせることで、間合いの誤認、あるいは居合術の無駄打ちを誘った。
 しかし士堵は表情を変えずに剣を、ビームを、幻を斬り払う。常人には認識できないほどの抜刀は、迫る攻撃を打ち消すばかりか、今度ははっきりと認識できる斬撃となってフレデリカたちを襲う。
 フレデリカとルイーザは女王の神域を展開してその身を護った。騎士の剣により斬撃を相殺し、再び光剣とビームを撃ち返す。
 
 そのタイミングに合わせて、大和と草薙 コロナは士堵と距離を詰めた。衝撃波のような士堵の斬撃をグレートウォールで耐え、二人が秒の踏み込みで士堵に迫った。刀を抜き付け、流れるように振りかぶり九竜斬に繋げる。
 神速の領域まで高められた剣技が、二人の連携によって更に昇華される。姿が見えない程のスピードだ。
 
 刃と刃がぶつかり合って、大和とコロナ、士堵は互いに弾かれる。
 さすがに捌ききれない速度と連撃だった。しかしオーラを防御膜のように張ることでダメージを軽減させた士堵は、まだ倒れない。開いた距離を踏み込んだ士堵は、大和とコロナに急接近した。
 その時、士堵の進行方向に一閃走った。アイリスからの狙撃だ。士堵は咄嗟に体を捻り回避する。無理やりに足を踏み出して、止まることはなかった。それでも、その一瞬に生まれたタイミングの狂いは隙となる。
 フレデリカは漂う魔力を収束し、ルイーザと自身の光の剣を束ねて放った。蓄積したダメージはインフェルヌスの力に還元され、士堵に迫る。士堵は抜刀して剣を袈裟懸け、勢いのままに一閃薙いだ。
 大和はグレートウォールを、コロナはアバターズバリアを展開する。斬撃の勢いと風圧はすさまじく、その場に留まっていられない。フレデリカとルイーザを護る騎士も霧散した。それでも、アイリスとフレデリカたちによる牽制でベストタイミングでの居合術ではなかったのだろう。その分威力を削ぐことができ、耐えきることができた。ただもう、耐えることに最後の力が奪われていく。
 
 一方、士堵は大きく肩を揺らした。表情こそ変わらないが、呼吸が乱れている。
 あれほどの大技を受け、体には毒が回っている。呼吸の乱れは、内部に蓄積されていたダメージが表層に現れ始めた証拠だ。
 それでも立ち続けられることが、九鬼一族たる所以であり士堵の強さを示している。しかし倒しきれぬ相手ではないと、大和は脱力した体でこの世界の命運を仲間に託した。


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