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≪セレクター編≫ブラフマンの断片

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≪セレクター編≫ブラフマンの断片
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【3】対 グレムリン―1

「イルミナント・フルドレス!」
 暁月 弥恵の身に着ける服が自身の感情に合わせて変化していく。
「月の舞姫、華拍子、天爛乙女の津久見弥恵、参上です!」
 高らかに名乗りを上げて鬼もどき達の注目を集め、弥恵はデイブレイカーを構えて戦闘に入る。
「千咲!」
「ありがと、いくわよっ!」
 永澄 怜磨がショートシフターの能力で篠宮 千咲を加速させ、前線へ送り出す。弥恵を取り囲んでいる鬼もどきの一体に突撃の勢いを乗せた千咲の拳が叩き込まれる。振り向いた鬼もどきの横っ面に強烈な蹴りをお見舞いし、尻餅をつかせる。その動きに無駄は無く、発勁で最大まで引き出したポテンシャルが最小の動きで最大の威力を出すことを可能としていた。
「久しぶりの大舞台です、私も全力で舞いますよ!」
 弥恵もデイブレイカーで鬼もどきに傷を与えている。舞うような軽やかな身のこなしで攻撃を仕掛けつつ、敵の気を引いて千咲が攻撃する隙を作ったり、逆に千咲を狙う敵の不意を突いたりと連携を意識した行動を取る。
 そうして鬼もどきの意識が二人に集中すれば、補助担当の怜磨も攻撃に回る。ショートシフターの能力で鬼もどきの死角に転移し、ホーリーライトバーストを放つ。だがあくまでメインは味方の回復だ。前衛の二人が怪我を負えばその都度ゼーレケインの炎で癒し、戦い続けられるようにする。
 千咲の蹴りを受けた鬼もどきが仰け反る。すかさず聖拳二連を放って追撃し、目の前の一体を仕留め終える。身に纏った翠聖の闘気は防御膜として千咲の身を守るだけでなく、光に弱い鬼もどきへ有効打を与えやすくなっていた。
 横合いから鬼もどきが爪を振り下ろしてくる。その爪が触れる寸前に空気を揺さぶり、衝撃で威力を削ぎながら回避すると姿勢を崩した鬼もどきへオーラを纏った蹴りを叩き込む。
 と、その背後から別の鬼もどきが飛び掛かろうとしていた。その爪が振り下ろされるよりも早く弥恵の跳び蹴りが鬼もどきの横っ面に突き刺さる。
「わっととと!」
 全力の飛び蹴りをかました弥恵はそのまま地面に倒れ込む。すぐに起き上がって防御の構えを取るが、倒れた弥恵を狙っていた鬼もどきはホーリーライトバーストの爆発で吹き飛ばされた。
「あまり無茶な動きはしないでくれな」
「ごめんなさい……でもありがとう、助かりました!」
 弥恵が剣を構え、爆発で吹き飛んだ鬼もどきへ追撃に向かう。怜磨はショートシフターの能力で弥恵の速度を上昇させて援護。その後は前衛二人が動きやすいよう指示や警告を発し、補助と共に司令塔の役目も果たす。
 弱った鬼もどきが増えてくると、弥恵は大技を放つ。
「今この瞬間こそがクライマックスです! とっておきをくらいなさい!」
 周囲の風景が夜明けへと変わり、歌声と踊りで敵味方問わずに注目を集め、舞うように攻撃を放ちながら黎明の光を空から降り注がせる。同様に千咲も温存していたジャッジライトニングを放ち、鬼もどき達をまとめて浄化する。
「浄化の雷、とくと食らいなさい!」
 弱っていた鬼もどき達が次々と倒れる。まだ残っている個体もいるが、目の前に広い道が開けていた。
「今だ、走れ!」
 怜磨が背後へ向けて叫ぶ。
 開かれた道を燈音 春奈達が駆け抜けていく。邪魔をしようとする鬼もどき達は弥恵と千咲が抑え、仲間達を目的の場所……グレムリンの所まで到達させる。
 
「それでは皆さん、打ち合わせ通りに」
 足を止めたルキナ・クレマティスはファンタジアで周囲を異界化する。そうして魔力の強化と詠唱時間の短縮を行った状態で待機し、術を放つタイミングを窺う。
「我らに勝利を!」
 空を行くモリガン・M・ヘリオトープが味方を鼓舞し、眼下にいる春奈と火屋守 壱星が挟み込むようにグレムリンへ攻撃を仕掛けた。
 雷動で瞬発力を上げ、素早く距離を詰めた壱星は新月正宗を振るう。グレムリンの肌に浅い傷が付き、その身が纏う穢れが新月正宗の刀身に吸収される。
 グレムリンが腕を横薙ぎに振るい壱星を払いのけようとする。霊醒でグレムリンの動きを読んだ壱星は腕の下を潜る様に一歩踏み出し、グレムリンの脇腹を斬りつける。刀を振るうたびに禊の大鈴が澄んだ音を立て、その刀身を清浄な霊力で清めていく。
 春奈は原典回帰した七星武装をアマテルレボリューションによって重力を纏わせた状態で振るっていた。刃が触れたグレムリンの肌が腐食し、爛れる。すぐにグレムリンの再生能力によって治癒していくが、それを理解した上で春奈は攻撃を続ける。
(恐らく、再生能力は無限じゃない。再生させ続ければいつか限界が来る)
 腐敗の進行速度を最大状態で固定し、何度も斬りつける。反撃で飛んできた拳はアルデバランフィールドで受け止める。が、フィールドだけでは受け止め切れず、盾代わりに構えた剣ごと押しやられ叩き飛ばされる。咄嗟にアトラスの震動で剣と敵の拳を反発させて威力を減衰した事で、重傷にはならずに済んだ。
 立ち上がった春奈は、壱星へ向けて拳を振り上げるグレムリンを引力を操って自分の方へ引き寄せようとする。重すぎて移動させることは叶わなかったが、気を引くことは出来たようだ。グレムリンの攻撃の矛先が自分へ向くとグレートウォールの構えを取り、その攻撃を全て防ぐ。
 側面から壱星がグレムリンの腕を斬りつける。つけられた傷は自然に閉じていく事は無く残っていた。狩魔により再生能力を封じられた為だ。
 その事に気づいたグレムリンは傷を負った腕を半ばから切り落とす。
「マジかよ……!」
 切り落とした腕は断面から再生していき、元の形を取り戻す。巨体故か狩魔の効果は全身には現れていなかったようだ。再生された腕は傷が消えており、元の再生能力を取り戻していた。
 想定外の行動に驚愕していた壱星へグレムリンの拳が振り下ろされる。一拍反応が遅れ、拳を喰らいそうになった壱星は雷動でぎりぎり回避行動を間に合わせ、刀で拳を受け流す。完全には流しきれず衝撃で姿勢を崩すが、その目の前に大きな盾が出現する。
「今のうちに下がってください!」
 大盾のルーンを使ったモリガンは、続けてノルニルの奔流を放ちグレムリンを攻撃する。闇属性の攻撃はグレムリンには殆ど効果は無い。だが魔法攻撃に弱くする効果は後の仲間の攻撃の為の布石となる。
 グレムリンが身を屈め、足を地面に食い込ませる。直後、驚異的な脚力で跳躍したグレムリンは一瞬でモリガンの目の前まで来ると強烈な殴打を放つ。
「ぐっ!」
 光を導く者の盾で防いだモリガンだったが、あまりの衝撃に両腕が痺れ盾を落としそうになる。体勢も崩れ追撃が来れば防ぐのは不可能。そうならないように、グレムリンの着地点を狙ってルキナがスーパーノヴァを放つ。膨大な光と熱がグレムリンを襲い、僅かに巨体を揺らした。グレムリンの濁った瞳がルキナへ向けられる。その視線を遮るように春奈が間に割り込み、グレートウォールの構えを取った。
 春奈達の負っていた傷が急速に癒えていく。ソルフェ・セフィーラの使用したヒールオールの効果だ。回復を終えると、ソルフェはグレムリンの意識が春奈へ集中している事を確認し、死角へ移動してホーリースヴェートの光刃を展開。気づかれずに接近して光刃を突き差し、グレムリンへパニッシュメントスタンプを刻む。反撃を受ける前に急いでその場から離れ、再び後衛へ。
「回復封じだけでなく魔力阻害効果もあるこれならば、少しは妨害になる筈……」
 グレムリンは春奈を払い飛ばすと、刻印を刻まれた部位の肉を削ぎ落す。驚異的な再生能力を持つからこそ出来る荒業だが、だからこそ止めさせるのは厳しく対処が難しい。
 しかしここまで戦闘を継続した事で、春奈のアマテルレボリューションで武器が纏っている重力が最大まで強化されていた。
 合図を受けた壱星がスカンダの護符の力を解放。速力を上げた上で怪力を発揮し、新月正宗の吸収した霊力を解放して送り火の太刀を放つ。刀身そのものの持つ浄化の力に浄炎が加わり、刃が食い込んだ傷口の穢れを払い、炎で焼き焦がす。
 即座に壱星は下がり、すれ違うように春奈が前に出る。その手に持った剣の輪郭がぶれ、刀身が全て霧へと変化する。腐敗の力に強力な重力まで加わった霧はグレムリンを包み込むと、その巨体を抑え込みながら全身を腐敗させていく。
 グレムリンを逃がさないように春奈がアトラスの震動でさらに加重し、ソルフェがパニッシュメントクロスを発動して拘束を追加。多数の光の十字架がグレムリンの身体に突き刺さり力を奪う。
 グレムリンの身体は高速で腐敗と回復を繰り返し、全身から白い湯気のような物が立ち上っていた。ふいに辺りに歌声が響き渡り、光が降り注ぐ。スポットライトを浴びたルキナを背にモリガンがグレムリンへ突貫。腐食を覚悟でドローミをグレムリンへ巻き付け拘束をより強固にする。
 グレムリンの全身の筋肉が膨張し、巻き付いた鎖がミシミシと嫌な音を立てる。だが拘束から抜けられるより早く、ルキナがスーパーノヴァの詠唱を終えた。
「もう休みましょう。ウェンディさんが帰りを待っていますよ……」
 春奈がグレムリンから離れた直後、圧縮された魔力がスタッフオブラースの先端から放たれる。その数は二つ。ワンダーテラーの秘術、イエスタデイワンスモアによって発射が『もう一度やり直し』されていた。
 腐敗した全身の回復が終わっていないグレムリンを、凄まじい威力の熱波と光が二度襲う。光に包まれたグレムリンが仰け反り、耳を劈く咆哮を上げていた。
 
 光が収まると、グレムリンはその場に膝をついて項垂れていた。
 だが、その目がぎろりと“敵”を睨む。
「ガアアァァァァ!!!!」
 咆哮したグレムリンは身体を拘束していた鎖を力ずくで引きちぎる。立ち上がり、全身に突き刺さった十字架を引き抜いていくその動きは鈍く、傷の回復も先程までよりもゆっくりだ。
 だが死力を尽くした春奈達も余力は無い。その為、他の特異者達が後を引き継ぐ。今度こそ、グレムリンを永遠の眠りにつかせる為に。

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