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≪セレクター編≫ブラフマンの断片

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≪セレクター編≫ブラフマンの断片
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【3】ヴェーダの中枢へ―2

 グレムリンと戦うデュランダルは表情に焦りをにじませていた。

「クソ、早くアイツを探さねえと……」
 この場から姿を消した是空の事が気にかかっているのだろう。傭兵を気取っている以上、“雇い主”である是空の身の安全が第一。無害すぎるあまりオーラを一切捉えることもできず、目の前の戦いに集中できていない様子だ。
 
「いた! みんな、こっち!」
 駆けつけたのは戦戯 シャーロットアレクス・エメロード。すぐに他の仲間も駆け寄ってくる。
 “敵”が増えた事に反応してか、グレムリンが体を仰け反らせて大きく吼えた。その全身の筋肉が盛り上がり、力を溜めている事が分かる。
「パーターちゃん、ペーターちゃん……絶対、元に戻してみせるから!」
 シャーロットを中心に周囲の空間が妖精郷の舞台へと変化していく。従者である光の妖精たちも姿を現し、主を守る様に周囲に集った。
 グレムリンの攻撃を受け止めたデュランダルが吹き飛び、シャーロットよりも後方へ着地する。その脇を駆け抜けてビーシャ・ウォルコットが前に出た。闘気を纏った拳を振り上げ、グレムリンへ飛び掛かる。
 グレムリンの能力を警戒し、今のビーシャはユニークアバターも機械仕掛けの道具も使っていない。その代わり鋼身功など身体を強化する技を用いて継戦能力を上げ、闘気を纏ったその身を唯一の武器としていた。
 強力な浄化の力を帯びた闘気は、サヤの血によって鬼に近い存在となっているグレムリンには効果覿面だ。明らかに嫌がる素振りを見せたグレムリンはビーシャを叩き潰そうと拳を振り下ろす。飛び退いたビーシャの目の前で轟音と共に地面に大きなクレーターが出来上がり、その衝撃で後方へ押しやられる。
「……直撃は絶対に避けなければいけませんね」
 背を伝う冷たい汗を感じ、ビーシャ本能的に感じた恐怖を抑えながらもう一度前へ出る。
 一撃でも貰えば戦闘続行は困難になる。回避を主体とし、橙楯流礎の構・剛柔で身を守りつつ、時には大きな亀の姿をした神纏を呼び出し共に壁として働かせる。
 敵の拳の直撃は避けていても砕けた地面や建物の破片が時折身体を掠め、血が流れる。だがその程度の傷ならば何もせずともすぐに治っていく。アイ・フローラ がアイドスの杖を使い、周辺に癒しの術式を施していたからだ。
 同じように傷が癒えたデュランダルがグレムリンに向かっていき、大剣を振り下ろす。そのまま果敢に攻め続けるも、どこか動きに精彩さを欠いていた。
 そんな状態ではグレムリンに有効打は与えられず、逆に反撃の拳を喰らいかける。不意に飛んできたナイフとフォークが両者の間を通り過ぎていき、その隙にデュランダルは一度グレムリンから距離を取った。
「君、明らかに戦闘に集中できていないようだけど、何か気になる事があるのかい?」
 下がったデュランダルへ愚者 行進が声をかける。
「そのままだと僕の仲間まで巻き込みかねなかったからちょっと割り込ませてもらったよ。やりたい事があるならそっちへ向かったらどうだい? ここは僕達に任せてもらって構わないぜ」
「……そうだね。分かった、ソイツは任せたよ」
 数秒悩んだ後、デュランダルは武器を仕舞いどこかへ駆け出して行った。
「さて、と」
 行進はグレムリンへ向き直る。手元ではカトラリー類をジャグリングし、その数を増やしている。
 本音を言えば戦力的にデュランダルにはここに居て欲しかったが、先ほど本人に言った通り戦闘に集中できていない状態のままではこちらの味方にも被害を出しかねなかった。実際、何度かビーシャの近くを大剣が掠めている。
 だが彼女が抜けると今度はビーシャの負担が大きくなる。サポートする為にグレムリンの動きを観察しつつ、もう一つ、ここに来た一番の目的に対しても頭を働かせ続ける。
 それは、グレムリンをパーター、ペーターとして生かす事。その残滓がグレムリンの中に残っているかを見極める事だった。
「混ぜられた鬼の血を浄化して! ラブ☆サンシャイン!」
 突き出したシャーロットの手からハート形の光のビームが発射される。彼女はグレムリンの蘇生を、正確には元のパーター、ペーターに戻す事を試みるつもりだった。だがその為にはグレムリンに混ざっている異物、サヤの血を浄化しきる必要がある。
 グレムリンの攻撃の余波で飛んでくる瓦礫を避けながら、シャーロットは何度も光のビームを放ち続ける。
 アレクスも浄錬で仲間達の武器を清浄化し、日輪で周囲を照らして浄化のサポートをしていた。
「やれる事は全部やってやるさ。主人が諦めてねぇのに従者が頑張らねぇわけにはいかねぇからな」
 隙を見て、清浄化での正気化も試みる。顔を顰めたりと反応はあるので効果が無い訳では無さそうだが、人の心を取り戻す様子は見られなかった。
 グレムリンの攻撃をいなしきれず、吹っ飛ばされたビーシャをアイがビッグバンヒールで回復する。しかし既に何度も同じ技を使っており、魔力の消耗は激しい。回復手段もあるにはあるが、いつまで保たせられるか不安は募る。
(ここに来るまでに、他にもグレムリンを探している方達は居た……せめて、あの人達が来るまでは持ちこたえないと‥‥…!)
 サカイヤチョコレートで自身の魔力を回復し、ショートシフターの能力でビーシャの速度を上昇させてサポートする。
 
 やがてアイの魔力が尽き、壁役のビーシャが倒れる。だが程なくして、グレムリンを探していた別の特異者グループが合流した。
 戦闘を任せ、一同は近くの建物の陰に身を潜める。そうして身体を休めつつ、一度限りのチャンスを……最後の時を待っていた。


 ***
 
 
 グレムリン、サヤとの戦いがそれぞれ始まった頃。
 
 スレイ・スプレイグはサヤの目的を阻むために、先に中枢へ到達するべく動いていた。
「困りましたね……」
 本当ならサヤより先に中枢へ到達し、防衛しようと考えていたのだが……残念ながら場所を特定する手段を持ち合わせていない。
 とりあえず駆け回ってそれらしき場所を探しながら、もう一つの目的……鬼もどきの排除を並行して行う。
 発見した鬼もどきへ素早く駆け寄り、両手のアザルトバンカーで格闘戦を仕掛ける。先手を取って拳を突き出しアダマンチウム製のパイルバンカーを射出。鬼もどきの皮膚へ杭の先端を突き刺す。しかし鬼もどきはタフなようで杭が刺さっても怯むことなく反撃してきた。
 浸空で鬼もどきの攻撃を防いだスレイはバルティカ流カサガケの四連打を放ち、一気に鬼もどきの体力を削る。読みやすい攻撃は受け止めるだけでなくそのまま体勢を崩すのに利用し、数度連打を打ち込んだ所で鬼もどきは力尽き倒れた。
 その後も、移動しながら近くの鬼もどきを倒して回る。敵が複数ならブレイドダンスを、消耗してきたらアブソーブの精神力吸収も織り交ぜて連戦に対応し、着実に周囲の鬼もどきの数を減らしていった。
 
 
 飛鷹 シンもヴェーダの中枢を探していた。
「くそっ、中枢はどこだ……?」
 顔に焦りを浮かべ、きょろきょろと辺りを見回しながら移動する。どこに行っても周囲はコンクリートジャングルで、特別目立つものは何も見つからない。
 急いではいてもペネトレーションで向かう先の警戒は怠らない。だが鬼もどき達は隠れる事はせず特異者を探して歩きまわっているので、あまり意味は無さそうだ。
 足音や戦闘音に耳を澄ませ、なるべく誰とも合わないルートを選ぶ。が、まったく遭遇せずにとはいかず鬼もどきの一体と鉢合わせてしまった。
「戦ってる時間は無いってのに……!」
 シンはカイロスサイズを構えるとその場で振り回す。鬼もどきが飛び掛かってくると後ろに飛び退き、滞留させた斬撃を発動させる。見えない斬撃に切り刻まれた鬼もどきへさらに斬りかかり、追撃を与える。
 アームディフェンスで防御もしつつ何度も斬りつけ、ようやく鬼もどきが倒れる。思っていたより時間がかかってしまった。急いで武器を仕舞い、駆け出す。
 しかしすぐにまた別の鬼もどきがシンに気付き、襲い掛かってくる。やむを得ず武器を抜いたシンは鬼もどきを迎えうった。
 
 
 タイクーンオブゲヘナで魔人化した焔生 たまは東京を模した街並みの上空を飛翔していた。
 最初は中枢へ向かうサヤを追いかけていたのだが、他の特異者達がサヤとの戦闘を始めた為、サヤが向かっていた方角へそのまま進み空から中枢らしき場所を探している。
「こんな場所ですから、建物の中という可能性もありますね……」
 目立つ建物は外から覗き込んでみるが、特に気になる物は見つからない。人は勿論虫や動物一匹見当たらず、時折出会うのはサヤが作り出した鬼もどきだけだ。
 鎖鎌の形を取った零の妖気が鬼もどきを切り刻む。刃が纏っていたネザーブレイズの炎が鬼もどきに移り、その生命力を奪って燃え続ける。さらに、虚空の翼から覗く無数の陸阡眼が鬼もどきを凝視し、炎への耐性を下げて延焼を促す。
 全身を炎に包まれながら、鬼もどきはたまへ拳を振るう。たまが空へ逃げるとビルの壁を蹴って跳躍し執拗に追いかけてきた。空中で回避行動が取れないタイミングを狙ってたまは鎖鎌を命中させ、鬼もどきを叩き落す。
 地面に落ちた鬼もどきが燃え尽きたのを確認し、たまは中枢の捜索を再開する。
「そう簡単には見つかりませんか……こうなったら、サヤがどこへ行くのか監視するしかありませんね」
 たまは捜索を諦め、サヤの後を追うことに決める。だが監視されている事にすぐに気づいたようで、一度黒雷を放ってきたかと思うと視界を塞がれている僅かな間に姿を消していた。
 
 
(……見つけた)
 鬼もどきに囲まれている田中 是空を発見した風間 瑛心はそちらへ駆けつける。攻撃されている……のかと思いきや、どうやら何もされていない様子。鬼もどき達は是空を取り囲んではいるものの、それだけだ。
 無響の装束にマシラの草鞋、忍びの歩法に加えトップギアで加速した瑛心は音を立てずに鬼もどきの背後へ。閂を放ち気づかれること無く一体を仕留める。
 残りの鬼もどき達が瑛心に気づき、一斉に襲い掛かってくる。一番近くにいた個体に絶霊刀・双による舞風を放ち、全身を切り刻んだ後すぐにその場を移動。高速で周囲を駆け回り、こちらを見失った鬼もどきへ接近して閂を放ち急所に刃を突き立てる。
 鬼もどきを倒し終えると、是空が声をかけてきた。
「やぁ、助かったぞ。あいつら俺様を取り囲んだまま動きが止まってしまってな。全然どいてくれないもんで困っていた所だ。俺様から発せられる強者のオーラに怯え固まってしまったのだろうな」
 そう言って高笑いする是空に、実際は無害すぎて攻撃する必要もないと判断されたのではないかと思った瑛心だったが口には出さない。代わりに中枢へ向かうなら護衛すると、そう申し出たのだが。
「それは助かるんだが迷ってしまってな。何となくこっちの方角だと思ったんだが……」
 どうやら是空も中枢がどこなのか分かっていないらしい。どうしたものかと悩んでいると、大剣を手にした女性が駆け寄ってきた。デュランダルだ。
「いた! ったく、そんなに遠くに行ってなくて良かったぜ……一人で勝手に動くんじゃねぇ!」
「おお、丁度良い。デュランダル、お前中枢はどっちか分かるか?」
「あぁ? 分かってて行動したんじゃないのかよ……アタシもここに詳しい訳じゃないから知らねぇが、サヤが向かおうとしてた方角なら分かるぜ。とりあえずそっちに向かってみるか?」
 デュランダルの案内で是空は中枢へ向かい、瑛心はその護衛につく。デュランダルのお陰も有って道中苦戦することは無く、着実に進んでいく。
 
 
 同刻、信道 正義納屋 タヱ子は街中を駆け回っていた。
 今は二人別行動を取り、ヴェーダの中枢を探している。
(こっちにも居るか……思っていたよりも数が多いな)
 正義は戦場把握とインテュイションで敵の存在を察知し、可能な限り戦闘を避けて移動している。運悪く鬼もどきと遭遇した時の為に、裂谷の咆哮はいつでも撃てるように矢を装填済みだ。
 タヱ子の方は隠形術で気配を断ち、物陰に隠れながら移動していた。AAパーカーとギュゲースで魔力・生命力の反応を下げつつアバターのオーラを隠蔽。特異者として認識されない状態になっている。
 徘徊している鬼もどきは“特異者を襲う”様にサヤから命令を受けている。その為、特異者と判別できないタヱ子には興味が無いのだろう。隠れていても稀に気づかれる事があったが、特異者を探すことを優先しているのかタヱ子を追ってくることは無かった。
(もう少し大胆に動いても良さそうですね)
 タヱ子は気配だけは消しつつ、身を隠すのをやめて捜索を最優先に動く。サヤに直接命令を変更されれば鬼もどき達が襲ってくる可能性もあるので、サヤとの遭遇だけは警戒しておく。
 周辺の探索に集中できた事が功を奏したか、運良く中枢に向かうデュランダル達を見つける事が出来た。話を聞いたタヱ子は向かっている方角を教えて貰い、一度正義との合流地点へ向かう。二人で相談し、共に行動したほうが確実だという結論に至りデュランダルと合流すべく移動を開始する。
 時間をかけない為にも極力戦闘は避ける。だが、あまりにも遠回りが必要な場合は迅速に鬼もどきの処理をする。
 正義がセイクリッドアローを放って先手を打つ。聖なる力を宿した矢は鬼もどきに効果覿面だ。身体に刺さった矢を引き抜きながら鬼もどきが迫ってくる。
 童子切を構えたタヱ子が迎えうち、相手の攻撃を流水円舞で受け流すと流れるようにカウンターへ移行。鬼もどきの身体を斬りつける。下がって距離を取れば正義が矢を放ち鬼もどきを足止め。浄化で弱らせつつ、タヱ子が攻撃する隙を作る。
 連携の取れた攻撃にすぐに鬼もどきは倒される。黒いもやと化して消えていく敵をその場に残し、二人は駆け出した。
 
 
 弥久 ウォークスは壁走りでビルの外壁を駆け上がり、屋上で広域魔力探知を行う。
(どうですか?)
「この辺りには鬼もどきの反応しか無いな。少し移動するか」
 地上に降りたウォークスはシークレットクロークで気配を、無響の装束で音を消しながら移動する。魔力探知で鬼もどきの反応が多かった通路は使わず、なるべく敵との遭遇は避ける。それでも見つかった場合は電光石火で逃走。ウォークスの武器に憑依した弥久 佳宵が煙鈴蘭を使ってウォークスの姿をぼかし、その手助けをする。
「何とか撒いたか……」
 建物の陰から陰へ素早く移動して身を潜めると、鬼もどきはこちらの姿を見失ったようだ。あらぬ方角へと走っていったのを確認し、ウォークスは再び近くのビルの上に駆け上がり広域魔力探知を行う。
 何度か同じように探知を行い、中枢らしき場所は見つからなかったものの気になる反応はあった。一つはサヤと、サヤに挑む特異者達。離れていても激しい戦闘の音が聞こえてきた。
 もう一つは何処かへと向かう複数の反応。ビル伝いに移動して様子を窺えば、デュランダルや是空、何人かの特異者の姿が見える。デュランダルはすぐにウォークスの気配に気づいたようで、視線を向けて武器を構える。敵意がない事を示すために大きく手を振ってアピールすると、興味を無くしたかのように前へ向き直りそのまま歩き出した。
(攻撃されるかと思ってヒヤヒヤしました……)
 神霊化して攻撃に備えていた佳宵がほっと息をつく。一瞬とは言え殺気を向けられたウォークスも背中を冷たい汗が伝っていた。
(あの人達、どこへ向かっているんでしょうか? もしかして中枢の場所を知っている……とか?)
「かもしれんな。聞きたい所だが、先程殺気を向けられたことだし下手に近づくと警戒されるかもしれん」
 ウォークスはサヤと戦う特異者達の居場所を確認しに行く。先程とは場所が異なっていた、恐らく他の特異者達が足止めを試みているのだろうが……そう簡単に止まってくれる相手では無い。
「サヤの移動先とも方角は一致している。彼女らと同じ方向へ向かってみよう。もしかしたら、何か魔力探知に引っかかるかもしれん」
 ウォークスは鬼もどきとの遭遇を避けながら、街中を駆けていく。

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