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≪セレクター編≫ブラフマンの断片

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≪セレクター編≫ブラフマンの断片
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【3】ヴェーダの中枢へ―1

「やあ、サヤちゃん。久しぶり……って言う程時間は経ってないか」
 
 ヴェーダの中枢へ向かうサヤを見つけ出した紫月 幸人はひらひらと手を振る。
 近くにいた般若面の鬼もどきが幸人へ襲い掛かってくる。が、アバターオートノマスで生成された分身が攻撃を受け止め、幸人を守っていた。
「……戦意が感じられんな。今は急いでおるでな、のんびりと話をするつもりは」
「玖繰ちゃんと最後に話したんだ。“背中も押してもらった”」
 背を向けようとしていたサヤの動きがぴたりと止まり、目線だけが幸人へ向けられる。
「……成程、面白い物を受け取ったようじゃのう」
「でしょ? 個人的に協力してるって言ってたし、ちゃんと伝えておこうと思ってね」

 玖繰が幸人の気づかぬうちに伝授した技術は、人間賛歌のアバターに合わせて形を変えアバターサーキュレーションという技へと変貌していた。
 気づいたときには既に玖繰は亡くなっており礼をいう事は出来なかったが、彼女が長く生きる中で培ってきた技術は確かに幸人の中に根付いている。

「俺がいる限り九鬼玖繰は三千界からは消えない。ならせめて、サヤちゃんとの戦いもその結末も全部一緒に見せてあげよう、ってそう思ってここまで来た訳だけど、出来れば俺はサヤちゃんに死んでほしくないし本当は仲良くなりたいなぁって思ってるんだよね」
「かっかっかっ! 死んでほしくないとは随分と自惚れた発言よのう」
 サヤの周囲に黒雷が落ち、鬼もどきが現れる。
「そこまで言うのならこの程度の窮地、簡単に切り抜けられるじゃろう? 玖繰の命を背負うと言うのならこんな所で死ぬでないぞ」
 そう言ったサヤは既に背を向けて駆け出している。幸人がいくら声をかけようともその足が再び止まる事は無かった。

 ―――

「居たぞ!」
 次にサヤを発見したのはアルヤァーガ・アベリアだった。
 だがその行く手を鬼もどき達が阻む。
「道は私が拓きます!」
 黒涙号に乗った乙町 空が飛び出し、鬼もどきに向かっていく。その身体は黙示録の体現により漆黒に染まっていた。
 火廣金・天を媒介に双召現を行い、二本の光の槍を形成。馬上から鬼もどきへ振り下ろす。
 穂先が鬼もどきの胴体を切り裂く。だが相手はサヤの血を与えられた鬼。軟弱な身体はしておらず、一撃で切り伏せるとはいかない。
 化け物じみた脚力で跳躍し、鬼もどき達が次々と黒涙号へ飛び掛かってくる。人騎一体の動きで振り下ろされる拳を避け、突き出された爪を受け流しながら空も負けじと反撃を行い、鬼もどきらにダメージを与えていく。
 片方の槍が鬼もどきの頭部に突き刺さる。人型の鬼もどきは弱点も人と変わらないようだ。苦手とする光属性の槍で頭部を貫かれた鬼もどきは絶命し、黒い塵となって消滅する。
 突き刺していた槍を引き抜く間、側面から襲い来る鬼もどきをもう片方の槍で牽制。だがその背後からまた別の鬼もどきが近づいていた。黒涙号が後ろ足を蹴り上げて鬼もどきを押し退ける。後ずさった鬼もどきへ、馬ごと反転した空が続けざまに槍を突き出し、その身体にいくつもの穴を開ける。

 力こそ侮りがたい鬼もどき達だが、自我は無く本能のままに暴れている為に決して賢くはない。その為、殆どが武器を振り回す空に釣られサヤと他の特異者達を阻む個体は少なくなっていた。

「邪魔だ、どきやがれ!!」
 ライオネル・バンダービルトがGC:RD・カタルシスに内蔵された大型散弾砲を発射。鬼もどきの身体に穴を開けながら距離を詰めていき、鋭い鉤爪を突き立てる。螺旋駆動機巧で回転しながら突き刺さった日本の腕が鬼もどきの体に大穴を空け、動きを止めた鬼もどきはそのまま後ろに倒れると同時に消滅した。
 ライオネルは倒した鬼もどきに目もくれずに突き進み、サヤの下へ向かう。縮退機関をフル稼働し全速力で距離を詰め、殴りかかると見せかけて奥側へ回り込む。
 振り向きながら重力操作でレッドドラゴンの重量を限界まで増大させ、高速回転で貫通力も上げた状態でサヤへ叩きつけに行く。
 重量を操作したのはサヤを後ろへ吹っ飛ばし、時間を稼ぐ狙いだ。それを読まれたのか、サヤは防御はせず回避行動を取るとライオネルの脇をすり抜けながら斬りつけてきた。
 刃の纏う穢れはギアストーン:カタルシスが軽減してくれる。刀身の方はレッドドラゴンの鋼鉄の腕を引き戻して防いだ。だが間を置かずに放たれた黒雷がライオネルの身体に直撃し、後方へ吹き飛ばす。
「まだまだぁっ!」
 ザ・ペイシェンスに蓄積されたエネルギーを使いアバターを強化。再びサヤへ突貫する。数度飛び掛かるがその爪の切っ先がサヤへ届くことは無く、二度目の黒雷を受けたライオネルはその場に崩れ落ちた。

 だが足止めの役目はしっかりと果たしていた。アルヤァーガ、テスラ・プレンティスアルヤ モドキがサヤを取り囲んでおり、攻撃を仕掛け始める。
 アルヤァーガは神聖機装【stella=O】と影写機【Ducere】の複製を行いサヤをロック。神聖機装のオリジナルを操作して大気に干渉。空気砲を放ってサヤを攻撃する。武器にはそれぞれスロウ効果を持たせてあり、これを蓄積させてサヤの動きを鈍らせ、逃走を阻止するのが狙いだ。
 空気の弾を刀身で受け流したサヤはアルヤァーガに蹴りを放ち、そのまま先へ進もうとする。以前特異者達と戦った時とは違って今回はあくまで中枢へ向かうことが目的であり、積極的に戦うつもりは無いのだろう。
 その行く手を塞ぐように立ちはだかったのはテスラ。ザンザスを駆り、剣で斬りかかる。
 猛烈な勢いで刃を振るうが、サヤに全ていなされる。ならばと<影操>で自身の陰を引き抜き、影剣へと変化させて不意を突くように薙ぎ払うが、それすらも防がれてしまう。
 剣戟の合間の僅かな隙を突き、サヤの放った黒雷がテスラを貫く。衝撃で吹き飛んだテスラを庇うようにアルヤァーガが砲撃してサヤの意識を自分へ向けさせる。
「これ以上俺達が駆け抜けてきた世界を、まだ見ぬ世界の『今』を否とは言わせない」
「ふっ、ならば止めて見せい」
 空気砲の弾もギアの自動攻撃も、サヤは全て潜り抜けていく。その刃がアルヤァーガへ届く前に、シュナトゥ・ヴェルセリオスの放った一射がサヤの死角から迫っていた。
 攻撃の手を止め、矢を弾き落とすサヤ。その背中を狙って大斧を手にしたアルヤが飛び掛かる。
「ワイも邪魔させてもらうで、セレクターのサヤ!」
 アルヤを中心に周囲が異界へと変化する。スキル『ファンタジア』の効果だ。異界の効果で複数生成可能となったオーバーザレインボーの虹を重ね、サヤの反撃を受け止める。
 知覚拡張ゴーグルで強化された五感でサヤの動きを見極め、斧を振るう。アルヤの役割は遊撃であり、無理に一人で追撃は行わない。アルヤァーガ達が攻撃をする隙を作るに留めて一度下がる。
 ふと周囲に別の気配を感じて横目で見やると、鬼もどきが数体どこからか集まってきたようだ。
「鬼は任せて下さい!」
 灰崎 聖がそちらの対処を請け負う。睦美流壱ノ型・音無で音を立てずに移動。マシラの草鞋と忍びの歩法により瞬く間に鬼もどきとの距離を詰めると、相手が反応するよりも早くその身体へ刃を滑らせた。
 睦美流弐ノ型・朱砂切の効果で鬼もどきの身体を猛毒が襲い、霊力を乱される。さらに、攻撃時に黒時雨から発生した影の刃が追加の傷を負わせ、一時的に鬼もどきの視界を奪う。
 聖は即座に鬼もどきから離れる。目が見えなくなった鬼もどきはがむしゃらに腕を振り回していた。巻き込まれないように静かに背後へ回り込み、その背から急所へ一撃。止めを刺すとすぐに別の鬼もどきへ向かう。
「アルヤ達の邪魔はさせません」
 アルヤァーガを狙っている鬼もどきへ黒時雨から影の刃を飛ばしながら近づいていく。飛んできた刃を避けた鬼もどきは狙いを聖に変更し、拳を振り上げて飛び掛かってきた。振り下ろされた拳を鬼の頭上を飛び越えるように回避し、聖は着地と同時に背後へ刃を一閃。毒を流し込むと同時に視界を奪う。後は先程と同じく、暴れる鬼もどきの動きを見切って急所を一突きし、絶命させた。
 そのすぐ近くで、地急行くBernsteinを構えたシュナトゥが矢を形成し、あらぬ方向へと発射する。追跡機能を持つ魔力の矢は弧を描くように進み、背後からサヤに迫る。
 決して視界には映っていない筈の一射だが、それをサヤは攻撃からの流れるような動きで弾き落とす。それどころか、アルヤァーガ達の攻撃をいなしつつ反撃すると見せかけてシュナトゥの方へと黒雷を放ってきた。
 地面に飛び込むようにして黒雷を避ける。少し掠ったが、元素結界が全て弾いてくれたお陰でダメージは無い。
(見切られている……それなら)
 シュナトゥは神聖武装の性質を呼び起こす。そのまま聖約を用いて武装を活性化し、強力な一射を放った。
 放たれた矢はサヤの足元の地面から生え伸びるように飛び出し、その不意を突く。
「!」
 命中はしなかった。だが急に体を捻って避けたサヤは体勢を崩す。
「今や!」
 アルヤが複数の虹でサヤの足を挟み、移動を制限する。そのまま全速力で突っ込み、推進器を使った強烈な一撃を放つ。アドインパクトにより直撃と同時に衝撃波が発生し、サヤを襲う。だが寸前で足元の虹を破壊したサヤは自ら後方へ跳び、威力を緩和しつつ衝撃波を利用して距離を取った。
「まだ……動ける……! このチャンス、逃さない!」
 黒雷の直撃を受け倒れていたテスラは、全身の痛みに耐えて立ち上がるとザンザスと融合。完全変異で身体能力を強化し、サヤの着地地点目掛けて一気に加速する。
「剛ノ閃―蒼破―!!」
 影を纏った剣から放たれる剛の一撃。サヤは刀で受け止めたものの、威力を殺しきれず数歩後ずさる。
 その背後にアルヤァーガが迫っていた。サヤは背後を確認することなく振り向きながら一閃。その腕を、空気の槍が掠めた。
「これだけやって、漸く一撃か……」
 刃が通り抜けた時、アルヤァーガの姿はそこには無い。武装から放った突風で自身を後ろへ吹き飛ばし、緊急回避を行っていた。
「その武器、厄介な能力を持っているようじゃのう。今は急いでおるというのに」
 そう言ったサヤの姿が真っ黒な穢れに覆われていく。直後、大量の穢れと共に今までとは比較にならない威力の黒雷がサヤを中心に全方位へ放たれた。ほんの一瞬ではあるが、鬼神としての力を解放したのである。
 余力の無かったテスラと鬼もどきもろとも巻き込まれた聖が黒雷の直撃を受けて倒れ、残るアルヤァーガ達は身体硬化やシールドで身を護るものの完全に防ぐことは出来ず、そのあまりの衝撃に後方へ大きく吹き飛ばされた。
「ぐ……っ」
 両腕を地面に突き、アルヤァーガはどうにか身体を起こす。その時にはもう、サヤはオーラを抑えて遠くまで駆け去っていた。

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