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≪セレクター編≫ブラフマンの断片

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≪セレクター編≫ブラフマンの断片
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渋谷駅までへの道のり7


 時をやや遡り、有栖たちを駅まで送り届ける面々は、黒江と亜蓮の足止め、先行しての鬼もどきの対処、また都度鬼もどきを撃破していくことで、着々と駅付近まで進むことができていた。
 路地や迂回を経ながら、駅へ続くメインストリートに出る。その時、空気が一気に変わった。張り詰めた緊張感の中、咄嗟に有栖たちの前に出たマリナ・アクアノートが砲撃を放つ。
 
「やっと追いついた。アリス姉、この先には行かせない」

 立ちはだかったのは黒江だった。特異者たちの攻撃を掻い潜り、駅まであと一歩。危機的状況ではあるが、逆を言えば、ここさえどうにかすれば有栖と全能神を駅まで送り届けることができる。幸い、亜蓮の姿や気配はない。有栖と全能神を守るように前へ出た特異者たちが、全力で黒江を潰しにかかる。
 
「我はアルティメッツの九代目”神魂命”
 貴女は、この名を覚え退くことになるだろう」
 
 カミムスビ――碧海 サリバンは、有栖たちに先に行けと目線をやり名乗りを上げる。黒江は碧海に一瞥くれたが、有栖たちを逃さまいと、自身の体から毒霧を発させた。
 しかし、その予兆をアストライアの天秤と女神の天秤剣で京・ハワードが察知。ウィリアム・ウォレスとディープユニゾンし、ミステリーゲートを生み出す。黒江に向かって多方向から同時に槍が射出された。黒江は回避行動を取るしかなく、毒霧は有栖たちまでには届かぬうちに立ち消え、その間にほかの特異者によって有栖たちは路地を回って駅を目指した。
 
「にが……さないッ!」
「クロエちゃん、そのぬいぐるみ可愛いね。私も欲しいな」

 槍を回避した黒江はもちろん有栖たちを追おうとするが、京がアストライアの天秤による結界を展開しながら、その力で黒江の行動を予測。有栖たちを追わせないよう会話で気を引きながら、ファストワークによる加速で有栖たちを背にするように割って入り、黒江の飛ばした毒弾を天秤剣で斬り払う。両断された毒弾が地面に落ちて道路を溶かした。
 
「邪魔しないで!」

 黒江が叫び、京を睨んだ。手のひらから毒を生み出し、一本の棒状にしてそれを握る。黒江がそれを京に差し向けると、毒の棒は鞭のようにしなって一気に伸びた。さらに黒江は自身の体から大量の毒を生み出すと、それは瞬時に黒江と同じ姿形、スピード、攻撃を持つクローンとなって二人を襲う。
 京はウィリアムのアストラルガードでそれらを弾く。枝分かれしたり、硬直したりと黒江の思うがままに動く毒の鞭、そして同じ動きをするクローンをグレードレンズで捉え、回避・迎撃する。
 碧海もバイコーンに乗り、二人の黒江のスピードについていく。ソハヤノツルギを投げつけて火の鳥となった刃で、毒の鞭を斬り払い、クローンの動きを牽制していく。

 ◇ ◇ ◇

 一方で、最短ルートではないものの再び駅へ向かうことができた有栖たちは、残った特異者たちのことを信じながらも黒江に追いつかれないよう急ぐ。
 邑垣 舞花は天衣無縫でわずかに漂う黒江の毒の影響を無効化しながら、マリナと共に後方への警戒を怠らず進んでいく。傍らではノーン・スカイフラワーが毒の影響を受けた人にプリミティブキュアで治癒を行った。駅まではあと少しとは言えど、ここで戦力を失うわけにはいかない。全員で二人を駅に送り届けるのだ。
 
「えっと……ところで、全能神ちゃんはブラフマーにはならないんだよね。
 それと関係あるかどうかわからないんだけど……どうして“神域”って所を目指してるの?」
 
 進みながらノーンが全能神に尋ねる。邑垣も気になっていたところだ。
 確か全能神はブラフマーへの就任を拒絶していたはずだ。邑垣は記憶を辿る。
 もしかして、三大アバターの力が集うヴェーダに引き寄せられているのではないか。もしくは何か”思惑”があるのか……。
 
「たまには里帰りがしたくなってね」

 全能神はさらりと言う。至高の存在である自分が、神域に行くことに疑問はないだろうと、至って平然とした。
 その態度に隠し事や裏があるようには見えなかったし、そもそも全能神はそうやって本心を隠すことはしないだろう。
 なんとなく納得できるような、できないような。ノーンは小首を傾げながらも、
 
「ま、全能神ちゃんがそういうなら、そういうことなんだね!」

 と、取り出した黄金バナナを食べて体力と精神力を回復する。全能神も「いただこう」というので、一つ渡してあげた。
 
「次を左です。道なりに進んだ方が近いですが、建物の倒壊などがあった場合通れません。
 鬼もどきもいますので、より確実なルートに向かいましょう」

 邑垣がスマートナビゲーターで指示していく。そうしてついに、渋谷駅の一部が見えてきた。
 するとベネディクティオ・アートマが上空に現れ、駅まで導くように歩き出す。虹の道が出来、駅方面に向けて真昼の流星が流れる中、アシュトリィ・エィラスシードがスターレインボウとテイクアハンドのコンボで、キラキラと星のエフェクトを降らせていった。
 
「きれー! 楽しくなっちゃうね!」

 有栖が空を見上げる。疲労困憊としていたが、最後に力が湧いてきた。
 数多彩 茉由良がパレードMフラッグを振るい、それに合わせてニューメロウズと出現したアンサンブルを先導する。ヒロインズ・アフェクションで万が一の外部からの攻撃に備えたが、幸いにしてそれは、美しい花畑有栖たちに見せることだけになった。
 
 その花畑の真ん中を、有栖たちは進んでいく。
 ここまでの活躍を讃えるように、そしてこれからの戦いを鼓舞するように行われる応援ライブを台無しにさせないよう、デーヴィー・サムサラはカゲミツを纏って護衛に当たっていたが、多くの特異者が先んじて鬼もどきの対処を行っていたため、出撃する必要はなさそうだった。しかし最後まで油断せず、後方からニューメロウズのパレードを追っていく。
 カラビンカ・ギーターも応援ライブの演奏を攻撃に転じる準備をしていたが、今回はその必要はなさそうだ。であれば、彼らの応援に全力を注ごうと、カラビンカは数多彩のドミナントハーモニーに合わせてリアライズアンビエントで彩りを添えた。
 
「みんな、ありがとう!……ここから先がヴェーダの中枢。だね」
「懐かしいな」

 ようやく、有栖と全能神が渋谷駅へと到達し、足を踏み入れる。
 特異者たちは二人を守り切り、ヴェーダの中枢へと送り届けることができたのだった。



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