9.渡河作戦の行方(2)
上陸を目論むピンネース型飛空艦は他にもまだいた。
「ピンネース型飛空艦、接近!」
スチールライナーのカームとキャリーはそれぞれクナール型飛空艦【スマートファルコン】、クナール型飛空艦【スマートホーク】に搭乗していた。
カームとキャリーがパッシブソナーを使用して索敵し、その情報は魁達とジェン達のそれぞれに伝達する。
キャリーはフロストゲイルを使用して足止めした後、一度高度を取るために離脱する。
スチールライナーの
トリップ・デュランダルはクナール型飛空艦【スマートレイヴン】に搭乗して出撃する。
カームが率いるキャリーの飛空艦は拳のロンデル試作型とトリップのスマートレイヴンとで空中から敵に襲撃を仕掛ける。
高度を合わせ、等間隔の距離を保って部隊を展開する。
「これにより、狙いが絞りにくくなるはずです。禿山さんは敵の潜水艦に集中できるでしょう。迅速に破壊してください」
「了解じゃ!」
トリップがパッシブソナーを展開して相手の機動兵器とピンネース型飛空艦の位置を確認する。
「私達と同じ高度にはカームさん達の飛空艦達もいる。
誰を狙うにせよ、相手は混乱するかもしれないわね。
他の人から共有があるかもしれないけど、それを見て禿山は自分で狙うターゲットを選びなさい」
トリップは自身の飛空艦にマジックウォールを貼り少し前に出る。
少しでも敵機が拳に目が向かないようにカバリング・ファイアーでドキュウを撃ちこむ。
敵の飛空艦が水上に上がるようならファイアーカノンでフレイムブリッツを撃ち込む。
モノノフの拳はモノクルターゲットを使って敵の飛空艦に試製電磁加速砲を撃ち込む、
「テルスで過去戦っていた身としては少々でかいが、ロンデルは馴染みがある。
これで、この世界で戦うのもまた一興じゃて。
ほれ、さっさと引き上げろトリップ。腰も遅ければ機体も遅いのか? しゃっきりしろしゃっきり! 高度をあげよ!
まずは、長距離射程から牽制も兼ねて……いや、落としても構わんのじゃろ? 滑空しつつ狙い撃つとする!
モノクルターゲットを使って、照準を合わせて水面上あるいは水中の浅いところにいる敵の飛空艦に試製電磁加速砲を撃ち込むかぁ!」
機関銃のように喋る拳にトリップが苛立つ。
「禿山! あんたねぇ、バランサーだけ外して超高高度から落としてやろうか!
静かに仕事しなさいよ! 先が思いやられるわぁ、もう」
トリップは自身の飛空艦にマジックウォールを貼っての攻撃を行う。
「正直、気が向かないわ。
バレットと一緒に行動するならまだしもこんなくねくね変態ナルシストと組むのはね……。
とはいえ、バレットを守るためにも役割は果たすわよ。ええ、果たすわよ! 全く!」
高度が下がった拳の機体を再度トリップが高度を引き上げるために牽引する。
カバリング・ファイアーでドキュウを撃ち込む。
高度が下がってきたら、また拳を高高度まで牽引する。これを繰り返す。
キャリーもカバリングファイアーで拳達を支援する。
「禿山さんは超長距離射程から狙えるでしょうけど、いずれ敵の射程に入る。でも、それが私達の射程でもあるの。
パッシブソナーはLL射程、でもある程度の位置の把握ができるわ」
その位置情報を元に水上の機動兵器にフレイムブリッツを撃ちこむ。
「アンカーロケットで引っ掛けてあげたらそのままバランスを崩しそうね」
拳が滑空しすぎて敵の射程に近づきすぎた場合は、トリップが離脱させるまで敵機を引き付ける。
滑空中はどうしても高度が上がらず徐々に敵に接近していく。エンブレムシールドで攻撃を防御する。
「むしろ儂自身も当てやすくなる! 儂は攻撃に専念する! あとは任せたぞ!」
カームの飛空艦に牽制と防御を任せる。
「さぁ、試製電磁加速砲のチャージを開始する……! 籠手打ちの技術でその飛空艦のブリッジ、撃ちぬいてくれよう。
船体は売るにも再利用にも使えるが人は裏切れぬじゃろ、互いも覚悟もあるじゃろ……!」
スチールライナーのウォルフはクナール型飛空艦【スマートバルチャー】に搭乗しスチールライナーの
ルナ・キャリアーのクナール型飛空艦【スマートスワロー】と共に拳を支援する。
「彼の機体は大きいから、狙われやすいってのもあるけど。そこは私達でカバーすると。なるほどね。
つまり、禿山さんを狙ったときを私とルナで狙いにいくってわけね」
「禿山さんの援護だね、了解!」
「いくよ、ルナ! あの機動兵器を狙って2人でカバリングファイアー! 避けにくいようにそれぞれ挟み込むように移動するよ!」
カームの飛空艦を始め、皆烈風符をつけて機動力を少し上げてあった。
「私とルナが挟み込むように狙えば戸惑う……か!? フレイムブリッツでクロスファイアだ!」
ウォルフは頭の中で戦闘後に機動兵器を漁ってジャンクで高く売ることを思い浮かべていた。
「と、ヤバい」
戦闘に夢中になって拳から離れ過ぎていたため敵機から一旦離れる。
「ルナに怒られる前に移動しよ」
そのルナは別のことを考えていた。
「お腹すいた……」
淡々と支援を続ける。
「ん、好きなご飯を食べるためにもお金を稼ぐことは必須。
後は寝るだけなんだけ……ど。ここの世界じゃゆっくりできないのがつらい。
ウォルフと一緒に行動してお金を稼いで、ごはんを食べる。休むためにも……」
3人姉妹でうちルナとウォルフは双子だった。
熟練度の足りなさは、姉妹で数と戦い方でカバーしてきた。
接敵したらウォルフの飛空艦は右から、ルナの飛空艦は左から旋回して狙う。
外さないようにフレイムブリッツを発射する。
(違う方向から撃たれれば避け辛いはず)
距離が近いならフロストゲイルも使用して行動を制限する。命中率を上げて迅速に無力化する。
損傷・無力化を確認したら、アンカーロケットを発射して水際まで引きずる。
「あれは私のごはん代にするよ」
ガジェットドクターの
リカ・キャリアーはカームの飛空艦に乗艦しスマート・トーピドーで味方を支援する。
「久しぶりの撃ちあいね。
さぁ、禿山さん。あなたの機体にシールドエンチャントをしてあげたわ。ある程度狙われても強引に狙ってみてね。
あなたの機体の特性はある意味頑丈さにあるのだから。もし、撃てる弾が無くなったら補充用カートリッジで補充してあげるわ」
敵の状況はライトアナライズで確認する。特に敵の飛空艦の沈黙がこの作戦の肝だから重点的に見る。
拳と同じ敵を狙い火力を集中させる。
「スマート・トーピドーは水中の敵に対しては特に効果的だし、致命的なダメージになるといいわね」
集中力を使いウィークポイントアタックのスキルを効率的に、効果的に使用する。
デキムスのピンネース型飛空艦とその護衛艦は特異者が待ち構えていた場所を避けて残りの戦力で河岸上陸を行おうとしていた。
だが流石に猛攻を受けて河岸に近寄ることができなかった。
スマートワーク連隊へソランから通信が入った。
河岸からピンネース型飛空艦の一団が離れていくということだった。
「スマートワーク連隊、作戦終了とする」
自分以外のピンネース型飛空艦が撃沈されてようやくデキムスは撤退を決意したようだった。
カームは敵の機体の無力化を確認したらアンカーロケットで水際まで牽引し、機体の鹵獲に目の色を変える仲間を制しながら救助も兼ねた投降勧告を行う。
だが、そのデキムスの撤退を許すルミナス王朝ではなかった。