5.エース機の脅威(2)
一は地上班に合流し、上陸しようとする敵機を相手にバルドイーグル(連盟)のヘヴィマシンガンでの掃討を行なっていた。
“大鐵神であっても量産型なら十分足止めが可能なほどの威力”であり、多数の敵の上陸阻止には充分役に立ってくれている。
ただ反面――その反動の大きさから機体的にも弾薬消費における金銭面的にも身動きが取れなくなるのが痛いところだった。
金の面はともかく、戦闘面に限定すればバルドイーグル(連盟)の射撃性能と耐久力を信じていいだろう。
そこに花から敵のエース機接近の報せが入った。
水面を蛇行しながら急速に迫るグラナートに向けてピンホールショットで狙う。
(接敵前に敵の機動力を殺せればよし、そうでなければ……)
一撃目は外れた。
だが、身動きが取れないところを敵の汎用型アーマードスレイヴに狙われる。
バルドイーグルにシレーネのシュヴァリエ・ルークが立ち向かう。
シレーネはフローユニットを活用して遊撃手として戦場を駆け回っていた。
今回の防衛の要は、艀の設置を許さないように岸に取り付く敵機の数を少なくする事。
「だったらまあ、後詰めの後詰めも必要じゃん」
今回は迎撃を主に立ち回る。
シレーネは上陸間際で仲間が仕留め切れなかった敵への追撃を最優先する。
「たかかし! はじめちん! アーシも行くよ!」
地上班の蕃茄、水上で攻撃をする一が牽制や足止めしてる敵機に突っ込み、マジックミサイルやヘビーマシンガンの射撃への対応で隙ができている所へと攻撃する。
「アーシの戦い方はマジックジャベリンにマジックソードで魔力を纏わせ威力の向上を図り、エンブレムシールドにマジックシールドを施し、物魔両方の攻撃に備え、斬り込む際には重圧とフェイントを活用して相手の隙を作ったり大きくしたりして奇襲の効果を最大限に引き出していけるような立ち回りを心がけるし」
あまり一機と競り合うのは避けたかった。だがこの相手は時間かかりそうだった。
一回距離を取ってシレーネは他の潰しやすい敵機に回る。
一は重圧をアーマードスレイヴに向けて放ち、残りの弾で応戦する。
花がバルサミーナを浮上させて 一のバルドイーグル(連盟)を収納する。
微笑みを前線にもたらす神官が一のバルドイーグルにスピードリペアを実施する。
事前に調査した艦を一部でも隠せそうな場所に撤退する。
重火器での固定砲台となる一の機体に敵弾が直撃せぬようソイルウォールを展開して遮蔽物を構築しておく。
敵の侵攻が予想より早い場合はフロストゲイルを発動させ、歩みを鈍くさせるよう試みる。
一はエース機に勝てるとは思えない。だが出ていくしかない。
欲するものを得るには、代わる何かを賭けて己がそれを得る力がある事を示す必要がある。
(だったらこちらも、ハラを据えるさ。それが王朝の文化ならな!)
徐々にこの世界に染まりつつあるのが、少し嫌な気分だった。
シレーネに代わってガジェットドクターの壱星が飛空艦の砲撃でバルドイーグルに対応する。
壱星は他の連隊の猛攻を潜り抜け侵攻してくる敵部隊を迎撃、漸減させ「地上班」と連携して上陸を阻止する。
モノクルターゲットを照準器に使い、高めた集中力で半追尾能力を持つ副砲の魚雷をウィークポイントアタックの技術で発射する。
敵部隊の警戒は最高潮だろうがリアが操船技術で優位な位置取りをしてくれる。
機動兵器、飛空艦の脆い部分を狙って攻撃していく。
「渡河の強行は疲れるだろ?
“極上の魚”を馳走してやるぜ」
『それは楽しみだね』
エース機のパイロットはオープンチャンネルで返答を返してきながら余裕で攻撃を回避する。
その声を聞く限り、まだ10代のような若さと屈託の無邪気さを感じる。
上陸に使う艀を搭載したピンネース型飛空艦が優先目標だが、敵もそこは当然警戒して守りを固めてくるだろう。
最初の一撃は不意を突けるだろうがその後はリアの援護攻撃も利用しながら機動兵器に向けて魚雷を集中させていく。
「行動可能な機動兵器がなければ艀を掛けられても後で破壊すれば済むだけの話……もちろん防御が薄くなればピンネース型飛空艦を狙うけど」
護衛機からの反撃も重なる。
潜航中に飛空艦が損傷を受けたら浸水が拡大する前にレストアで修理が必要となる。
「沈没とか洒落にならん」
エミーリアはサンダーカノンを使ったカバリング・ファイアーの弾幕援護を行い渡河部隊を水中から迎撃する
壱星の砲撃後からパッシブソナーを再び使い、操船に集中して飛空艦の速力を活かして敵の攻撃を回避しながらエレクトロマインも使って優位な位置取りを心掛ける。
(サンダーカノンを使ったカバリング・ファイアーの弾幕援護で敵部隊を攪乱させる程度なら出来るはず!)
パッシブソナーを使って把握した敵の位置情報と予想侵攻経路は『地上班』にも随時通信して共有する。
潜水の限界時間が近づいたら仲間に通信を入れてエレクトロマインを後方に撒きつつ飛空艦を浮上させる。
亜莉沙が駆けつける。
「あたしが戦闘する際は余剰兵力が無いってことだから、出し惜しみせず速やかに敵の撃破を狙うわ」
亜莉沙自身はフローユニットを使い海上をウインドマントで移動しつつ敵に接近する。
敵からの射撃をマジックシールドで防御し、権力の誉れで魔導槍アイアースとウォー・アックスを両手持ちで構え、舞踏の回転攻撃を仕掛ける。
舞踏自体のトリッキーな攻撃に加え、槍と斧の両手持ちによる突きと斬撃のコンビネーションで確実に敵にダメージを与える。
エオリアは接近してきた敵へウインドマントで機動力を底上げしマジックジャベリンをダイヤモンドソードで威力を増して突きさすす。
「ここから先は通行止めですです。
絶対に通してあげないですです!」
特に飛空艦が浮上してくる際は攻撃の的になる危険がある。
浮上の隙を攻撃しようとする敵が居たら急行してエビュタスで加速突きを繰り出し反撃されないうちに倒す。
敵の攻撃は極力マジックシールドで受ける。機体がダメージを受けたら、一旦陸上に撤退して直してもらう。
機体を直してもらう間、エオリアもカンフォートパフュームで魔力を補充しておく。
敵が近づいて来ない時は亜莉沙の指示に従う。
だが敵の上陸部隊と敵エース機両方に対応することは難しく、このままでは上陸されてしまうかもしれなかった。