3.機先を制する(3)
ラティス・レベリーは連隊には所属せずルミナス王朝の依頼を受け少しでも敵の戦力を削ぐために独自で動く。
目標は敵の上陸作戦失敗させ、誉れに貢献することだった。
特に敵のピンネース型飛空艦に警戒し発見次第破壊する。
集え勇者達よ 綺羅星のごとく
輝く明けの明星ならんこと
汝勝って戦の尾をしめよ
地上のサイフォスキャノンのコクピットハッチに立ち、
エピュアル・エリークが鼓舞舞を踊り味方の士気を上げる。
(ルミナス王朝守りたい)
サイフォスが操縦出来るようになったエピュアルは敵を共闘して倒し、少しでもラティスや他の皆の役に立ちたいと決意していた。
ベグライターのラティスはアーマーゴレムに搭乗しエピュアルと共に地上での防衛を行なっていた。
ラティス達が見回っている岸にも汎用型アーマースレイブが何機か接近している。
敵エース機以外を標的とし、サイフォスキャノンから魚雷を発射して敵が破損して浮かんだところをアーマードゴレムのマジックソードで強化したマジックジャベリンを敵に投擲する。
マジックジャベリンは2本装備する。それなら一本投げても闘うことが出来る。
(心配なのは、今後連盟から、新たなルートで、食料確保出来るかだが、アリスとソラスで、解決出来ることを望みたいな)
食料の供給が滞ることで今後の戦闘目標も変化があるかもしれない。ラティスはそのことを危惧して敵の壊滅及び二度と橋等を作らせないようにしなくてはと強く考えていた。
「これでも喰らえっですわ!」
エピュアルはフロートユニットで水上移動し投擲型デプス爆雷を4発投擲する。更に試蜂巣砲で掃射する。
大きいサイフォスで皆の盾となって戦う。そうすることで敵の完全撤退と味方の大勝利に繋がればと思う。
汎用型アーマースレイブが多数編隊を組んで出現するようならピンネース型飛空艦が接近していると判断する。
サイフォスの大きさを活かして上からの視野的に水中の変化を感じ取ろうとする。
ただ逆に少しばかり目立ちすぎたため敵がその場所での上陸を避けた。
遠距離からの攻撃が集中したため撤退することとなった。
クロウ・クルーナッハも連隊に所属せず独自で動く傭兵の一人だった。ベグライターのクロウはシュヴァリエ・メイジで出撃する。
「今回もよろしくな」
クロウは自機のシュヴァリエに言葉をかけ、フローユニット水上で敵の迎撃にあたる。他の味方の動きも見て、抜けられそうな所を優先的に叩きに行く。
クロウもデキムスの言動に違和感を感じた一人だった。
(連盟は一枚岩ではないとはいえ、他国への進攻を一都市の独断でしようと思うのか。他にも同様の思惑の都市があるのか、或いはガドラスガードと繋がっている者がいるのか……。
どうあれ、今回進攻している部隊は無人ではないようだし、捕虜でも取れれば何か分かるかもしれないな。
まずは渡河作戦を阻止して今後の事を考えられる状況を作らねば)
その時、敵からの攻撃を察気で感知する。
水中からミサイルが向かって来た。
フローユニットの機動に加えて回避のために装備していたウィンドマントで急制動をかけ、回避しシールドで防ぐ。
水上でも汎用型アーマードスレイヴが迫る。
エンブレムシールドを構えて接近し、マジックミサイルアックスで攻撃する。
複製機体でなければ魔力耐性も高くはないとされている。ライトニングソードでの感電も狙いながらフローユニットを狙う。
ユニットを破壊するだけでも進攻を押さえられるだろう。
(機動力を奪えれば倒すことに固執はしない。そもそもアーマードスレイヴって水中に沈んで大丈夫なのか? 流石に生活防水くらいはしてあるだろう)
ウィンドマントで接近してエビュタスですれ違いざまに切る。
察気を使って敵位置を補足しフローユニットによる相手の機動を読みとってマジックミサイルを敵の方向に合わせて放つ。
別の汎用型アーマードスレイヴが迫って来た。
だがその側面に魔力攻撃を受けて吹き飛ぶ。味方のシュヴァリエ・アーチャーの姿が見えた。
クロウがお礼の合図を送ると相手も応えた。
ベグライターの
空音 見透は射程を伸ばす効果を持つシュヴァリエ・アーチャーにフローユニットを装備して出撃していた。
遠距離攻撃用の武器の命中率を高めマジックハープーンでの魔力噴射の遠距離攻撃を行なった。
(やっぱりシュヴァリエだと火力不足の部分が大きい気がするから、知恵と勇気ってやつで補っていこう)
「アーチャーにはちょっと無茶させるかもしれないけど、ごめんね」
見透も自機に話しかけるタイプだった。シュヴァリエにはAIといった意識はないが命を預けているので愛着が沸くのだった。
(バルタザール国王の相棒ユリアーヌスには“自我”があるよな。僕のシュヴァリエ・アーチャーにも“自我”が芽生えて欲しいところだけれど……おっと、そんなことより今は、相手の目的が岸に到着する事ならこっちへの攻撃を避けてひっそり隠れて移動しているかもしれない)
魔力感知で敵の気配を探る。
マジックハープーンをダイヤモンドソードで硬くして魔力噴射の遠距離攻撃でぶつける。
だが攻撃を回避され、見透も必死に敵の攻撃をスウェイで回避する。
「アーチャー、ごめん!」
死角を衝き、回避しづらくなるチョッピングトラッシュで片腕を犠牲にする覚悟でハープーンをぶつけて勢いを削ぐ。
魔力感知で敵、または敵に刺さった自分のマジックハープーンの位置を探りそこへ当たりを付ける。
「逃がすか!」
無事な方の腕で投擲型デプス・チャージ×4を投擲して止めを狙う。
「大丈夫、例え投擲でもアーチャーなら当てられる!」
愛機に言葉をかけながら戦闘を続けた。
「あいかわらず連盟は攻め込んでくるなぁ」
「上陸しようとする奴を片っ端から邪魔してやろうぜ」
有間 時雨は
日坂 颯真と言葉を交わしながら颯真のクナール型飛空艦で岸周辺を飛行していた。
「敵機が上陸してきそうな地点は、と……」
ルミナス王朝側の防衛の為に主だった岸にはシュヴァリエ・アーチャーやシュヴァリエ・メイジが配置されている。
時雨はそれらから離れた岸壁に隠れ潜んで敵機が上陸してそうなところを探す。
自分から攻め込んでくる相手に容赦はいらないとして世話になってる王朝から迷惑な客を奇襲してたたき出すことにしたのだ。
水中、水上は連隊を組む人達に任せ、自分は単騎でかつ防衛側ということを活かして地雷のように立ち回ることにした。
「この辺りでいいかな」
「気をつけてな、相棒」
ベグライターの時雨はシュヴァリエ・メイジで出撃する。事前に
癒しの巫女にシールドエンチャントで機体の耐久を強化してもらっておいた。
戦場の地形把握によりあらかじめ把握した地形情報をもとに敵機が上陸しそうな地点にマジックラッパーの光学迷彩で姿を隠して潜んでおく。
颯真は時雨が出撃した後直ちにその場から離れて飛空艦をいったん後方に下げる。
「時雨が隠れ潜んでる時に目立つわけにはいかないからな」
そこは周囲を特に険しい崖に囲まれた場所だった。
汎用型アーマードスレイヴが岸に飛び上がった。おそらく先行する役割であろう、周囲を伺っている。
(不意打ちを仕掛ける!)
この世界の水中機体は地属性が弱点なのも鑑み、左手にエンブレムシールド、右手ににダイヤモンドソードで強化したマジックランスを構えマジックランスチャージで突撃を叩き込む。
今回は相手が有人機ということで、突撃で怯ませたところにヒュプノスソードを仕掛け、意識を弱らせ攪乱しながらさらに追撃を仕掛ける。
単騎で複数の敵機の視線を集めたところでヒュプノスソードを一気に複数の敵機にしかけ各個撃破を狙っていく。
スチールライナーの颯真は時雨が戦闘を始めたらその周辺に対してファイアーカノンでのカバリング・ファイアーで後方から支援砲撃を行う。
後から岸壁に敵機が登ってきた所にも積極的に撃ち込んで上陸を邪魔していく。
その様子を離れた場所の岩場から見ている視線があった。
『せっかく早々に岸に辿り着いたのに倒されるなんて、邪魔だな、あいつら』
汎用型アーマードスレイヴの部隊を率いるエース機だった。