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観測者の葛藤

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観測者の葛藤
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ブルーガーデンの日常 3


「こんにちは、コウさん」
「お前か」
「なんだか煮詰まっているようで」
「……お前になら分かるかもな。私はナユタとペアでコンペに挑む。その攻撃の要だ。だが、今までの戦い方ではお前と相打ちになったようにナユタを守れない時が来るかもしれない。私はそれが我慢ならない。だが、私には銃しかない。銃であればなんだって操ってみせるのに、守りたい人ひとり守り切れないかもしれない……」

 ルキナ・クレマティスにはコウの想いが痛い程に伝わってきた。
 そして自分が出来ることと言えば。

「コウさん、私でよければお手伝いしましょう。階級こそ中尉と低いですが、これでもかつては軍属でしたからね」

 新たな戦い方の模索……EMP攻撃の使用や実弾兵器と光学兵器の併用など案は幾らかあるが、今から新しく何かを会得しても所詮は付け焼き刃。
 迷走して本来の実力を発揮できなくなる可能性がある。
 故に、大きな変更は加えず全体的にレベルアップしていく事をおすすめしたい。
 ルキナはそう結論付けコウに説明する。

「ナユタさんとツーマンセルを基本として、防御をナユタさんに任せ、コウさんが火力と手数で圧倒するというのは、シンプル故に強いと思います」

 そうだからこそ。

「コンペまで時間はあまりないでしょうし、訓練するなら付き合いますよ」
「頼む。私と相打ちに持って行けたお前にならば、訓練相手に不足ない」
「でしたら、先日と同様にテストスペースを借りて実戦形式でのトレーニングといきましょう。フィールドを市街戦に設定すればよりリアルな訓練になることでしょう」

 そうと決まれば行動あるのみ。
 トレーニングルームをひとつ借り、フィールドを市街戦に設定。
 機動射撃戦を想定し、ある程度距離を取った状態で戦闘開始した。

 ルキナが一定距離を保ちながら左右へ動いて的を絞らせないようにしつつ、徐々に接近してDD:レーザーガトリング【DD:レーザーガトリング】の乱射で遮蔽物を削っていく。
 コウからの攻撃は弾道予測で軌道を見極め回避を試みるが、スレットセンスに反応した脅威度の高いものはメビウスクライン【メビウスクライン】で防御を行う。
 戦いが長引いたらトリニティブーストで火力や身体能力を高めて一気に勝負を決め一戦を締める。
 そして訓練は一度では終わらせない。
 武器をDD:ガンランチャーに持ち替えて遠距離砲撃戦を展開し、先程とは別の銃撃戦を展開。
 その対応力を如何様無く高める。
 もう一つ考えていたガンランチャーとレーザーガトリングを併用した、二つを同時展開しレーザーガトリングで牽制しつつガンランチャーで砲撃を行うことはアクティベーションⅠでは複数展開は出来ないために実現は不可能だった。
 だが、考え得る出来るだけ多くの戦闘パターンで戦い、合同コンペティションまでにコウに戦闘経験値を蓄積させていく。
 また、一戦ごとに記録を取り、戦闘後には休憩も兼ねて記録映像を見ながらどこが良くてどこが悪かったのか記録を見ながら話し合いよりブラッシュアップさせていくことで客観的、俯瞰的に己の動きを理解させる。

「これが私に出来る全てです。合同コンペ、応援してますよ」

 そう言ってお守り代わりにブルーガーデンの青い鳥のマスコット「あおばちゃん」が刺繍されたお守りを差し出す。
 以前はそこまで興味なかったものの、周囲に関心を持つようになって目に入ったコレはなんとなく最近気に入っているマスコットキャラクターだ。

「ありがと……」

 ぎゅっとお守りを握りしめ、コウは合同コンペティションへと挑むためにナユタと合流を計った。



◇          ◇          ◇




 エリカ・クラウンハートアイと親睦を育み以前話していたオシャレなカフェへ行く約束を掴み取っていた。
 今後何かあった時、アイが自分の意思で未来を決められるように、アイの心に色々残してあげるために。

「ここですわ! フルーツパーラー『FRUIT BASKET』」

 フルーツパーラー『FRUIT BASKET』。
 ここではオーガニックなフルーツをふんだんに使ったタルトやパフェを目玉にしたカフェで、とても平民では入れなさそうな高級パーラーのようだったが、アイは気にする様子もなく優雅に店内へと入っていく。
 エリカも顔面国宝を持つ者として胸を張って店内へと入店を果たした。

「うわぁ……きれい」
「そうですわよね。見ているだけでも目の抱擁になりますわ。わたくしの夢はここのメニューを全制覇するつもりですの。ですが、季節のフルーツ新作が目白押しでとてもではないのですが全てを食べきれる自信がありませんわ」
「体形とか気にならないの?」
「あら、気にして食べるものですの?」
「えっだってこれだけのお菓子を食べたら体重計に乗るの怖くなるよ」
「ふふ。おかしなことをエリカは言うのですね。わたくしはどれだけ食べても体重は変わりませんことよ。やはりオーガニックなフルーツが良いのかしら?」
「ええー……」

 世の中は不公平だ。
 食べても太らないで綺麗でいられるなんてなんて羨ましいことか。
 などと雑談をしながら運ばれてきたのは季節のフルーツをふんだんに使ったタルトとティーセット。
 美しい輝きに思わずエリカも押し黙ってしまう。
 これが地球だったらカメラで写真を残しておきたくなるほどの美しさだ。
 そして味の方も最高だった。
 フルーツの甘さを活かしながらもケーキとして破綻しない完璧なデザート。
 ティーセットに淹れられている紅茶も最高級の物を使っているのだろう。
 タルトを食べてひと段落したところでエリカは会話にメスを入れる。

「今はとりあえず良い成績取ってればガーデンポイントが入るしやっていけるけど、アイはもう進路とか決めてる? やっぱ専属だし、そのままE研?」
「ええ。このままE研に上がって、SQを目指しますわ」
「レールの上の人生って辛くならないの」
「仕方ありませんわ。わたくしはE研の姫まで登り詰めた者。足抜けは出来ませんもの」

 その顔に迷いはない。
 エリカはそれが眩しく、そして不安を覚えた。

「じゃー話は飛ぶけどさ、アイは外の世界って興味あるの?」
「もちろんですわ。ここは退屈しませんが、やはり一人前になって島の外に出たいですわね」
「やっぱそうだよね。みんなそれを夢見て切磋琢磨してるんだもんね」
「そういうことですわ。それよりももう一つタルトはいかが? まだ食べ足りませんわ」
「わ、私はこれ以上食べたら太っちゃいそうかな……でも、アイが食べたいのなら付き合うわ。食べた分は運動して燃焼すればいいのよ」
「素直でよろしい。すみませんが、このスペシャリテを2つお願いしますわ」
「(うう……カロリーお化けが……)」

 嬉々として次のタルトを待っている間にエリカはカバンからひとつの本を取り出してみせる。

「たまたまこの前、コレを見つけたんだけど、アイも読んで見ない?」
「あら。紙の書籍なんてアナログなものよく所持しているのですね。ところでそれはどんなストーリーですの? この【スイ☆ぱら!】というのは」
「読んで見る? そのために持ってきたから」
「本当に珍しいですわね。一般的には電子書籍がメインですのに。でもせっかくですから、わたくしも紙で読んでみますわ」
「こっちが言うのも変だろうけどありがとう、興味を持ってくれて。あと“周りから与えられた役割”だけで生きてるのももったいないなーって気がしてきてさ」
「そういうものなんですか? よく分かりませんが、でしたらエリカの将来の夢はなんですの」
「私は今のところこれかな」

 スイ☆ぱら!【創作物:いちゃラブ同人誌】をアイの前に置いてエリカはふと立ち上がると店の小さなステージにある椅子に座り、≪S≫マイ・トラックリストのギターを演奏を静かに始める。
 周囲の客にも注目されたら顔面国宝で微笑み、ギターをピアノに形状変化させ1/fのゆらぎのリラックス効果の演奏と共に創造設計図でアイと店内の客を大自然の光景に招待させる。
 周囲に大自然の光景が映し出されたかと思えばアイの好きなフルーツが育つ光景が映し出され、それが収穫・出荷され、料理人の手に移り、今目の前にあるフルーツタルトや様々なスイーツになる様子をエモーショナルプレイで感動的に表現してみせた。
 演奏を終えたら優雅に礼をして席に戻るエリカ。

「どうだった?」
「素晴らしかったですわ。不思議なものですわね……気が付いたら大自然に立ってて、そうかと思えばスイーツの成り立ちを上映され一本の映画を見たかのようでしたわ」
「そうそう、今のパフォーマンスで見せたスイーツの作り方、これに載ってるから気になるならそこも読んで見て」

 エリカは顔には出さずにほくそ笑んでいた。
 この【スイ☆ぱら!】はオリジナル系の同人誌。いわゆる異世界転移もの。
 正式名称『スイーツ☆ぱらだいす! ~異世界で甘々ライフはじめました~』というものである。
 まさか百合本とは思うまい。
 これである意味、恋愛観に刺激を与えるのが狙いだった。

 その晩。
 コンペティションの反省を反復していたアイは気分を変えるためにエリカから借りた【スイ☆ぱら!】を読み始める。
 中身は戦争の道具として育てられた無口な少女が戦場で空腹から意識を失い目覚めたら異世界だったところから始まる。
 拾ってくれた少女が暮らす倒産寸前スイーツ店を救うべく無口な少女は静かに動き出す。
 無駄に豊富なサバイバル知識から生まれる絶品スイーツ!? と驚かせられ、今度は敵対する組織とのクッキングバトル! まで勃発。
 共に苦難を乗り越える中、2人の仲も進展し……? とスイーツより甘い!? イチャラブ満載の百合本だった。

「まあ! エリカったらこのようなこと、一言も言っていませんでしたのに」

 叫び出しはしなかったが少々の照れるような恥ずかしいような感覚で読み進めて行く真夜中だった。
 そしてアイは巻末にある物語の中で登場したスイーツのレシピが数点掲載まで読み切ってしまうのだった。
 そして思い起こすのはこの主人公である無口な少女がセツナに似ているような気がしたのだ。
 作中のラブシーンが自分とセツナに置き換わる。

「うふふ。なんて素敵なんでしょう。わたくしも、そうなったら……なんて思っては、はしたないかしら。ですが、セツナがわたくしのことをそう思っているとしたら……」
『強いて言えばかっこいい人に憧れるかな。男女問わず』
「わたくし、強くなりますわ……!」

 セツナが隣に立ってくれればどれだけ幸せだろうか。
 この【スイ☆ぱら!】のように一緒にスイーツを作る恋人関係……憧れずにはいられない。
 だが、自分はE研の姫。
 この泡沫の夢は儚く散ってしまうだろう。

「セツナ……逢いたいですわ」

 そうすれば白馬の王子のようにこの決められたレールから連れ去ってくれるかもしれない。
 一粒の雫を流してアイは眠りに落ちた。

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