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観測者の葛藤

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観測者の葛藤
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残党インテグレーターの拠点へ侵入する


 PMCの裏切りでカイとミサキがピンチに陥っている最中。
 バルター・アイゼンベルトとジェノは別ルートから拠点を探していた。
 まさかPMCの部隊の中に裏切り者がいるとは露とも思わずにバルターはPMCと良好な関係を築き上げようと通信を繋げて会話を行っていたのだ。
 インテグレーター残党の拠点の特定をPMCと共に行うのであれば、彼らとはある程度話しやすい状況に出来ていればお互いに動きやすくなるだろうと考えて。
 紫雲改レルフェネス【雲雀(先行量産型)】と共に通信を繋げるのはこちらの地区を担当するPMC部隊のリーダーである。
 初めは警戒され話は弾まなかったが、このリーダーは特にAスポーツの実力者だったようだ。
 PMCに入る前はAスポーツ選手であったことを打ち明けてくれるまでの仲になってくれた。
 国家連合軍側の、それも一兵士側にすぎないバルターとしてはこの接近は何としてもしがみ付いておきたい対象だった。
 過去のAスポーツでの活躍を褒め称えていれば、彼の方も満更ではなさそうであった。

「そういえば前回襲撃して来たマリオネットや量産型クアンタロスだが、そちらでも回収をしただろう。なにか変わった部分はなかったのか」
「あれか。当然、マリオネットのクオンタムを回収、量産型クアンタロスも残骸をSQ社に回収さ。だが話はここで終わらないんだなぁ。あのマリオネット、実は……中身が空っぽだったんだよ。元々無人機とはいえコアにAIも積んでないしさ、再起動も不可能ときたもんだ」
「じゃあ、どうやって動かしていたんだ、あの機体は」
「それが分かれば苦労しないんだけどなー」

 そして無人の如何にも無害そうな何の変哲もない拠点へ慎重に機体を入り込ませる両者。
 次々にPMCの部隊が侵入を果たしたこの空間こそ、残党インテグレーターにとっては重要拠点だったことを窺える代物が仰山とあった。

「なっマリオネットの機体がこんなに……」
「これが一斉に動き出したらと考えればゾッとしないな」
「だな」

 無人の拠点には大量のマリオネットが待機状態のままずらりと並んでいた。
 このマリオネットを調べれば何かわかるかもしれないとバルターは基礎量子知識などを使い調べていく。
 だが、このマリオネット機体は随分変な作りをしていることを訝しむ雰囲気がPMC側からも伝わってくる。
 あるべき部品はなく、必要のない部品が接続され、中身はマリオネットとは言い難い作りに改造されていたのだ。

「さて、始めるとするか」

 ジェノの方でもマリオネットをハッキングして情報を抜き取る作業を行っていく。
 いつ襲撃が来ても対応できるようにマニューバシステムで飛行能力確保し、アポリオンで量子干渉出力増幅。
 プロテクターシェルver.4とブルー・アブソープションで防御面も確保した状態でアポリオンで演算能力出力増幅させ、電子の魔術師としての技能をも駆使したクオンタムドミネーションでハッキングを行えば帰還位置の情報などがアクティベータに記録されていることを発見した。
 その帰還位置はこの拠点で間違いない上、襲撃先は前回のあの場所であることが判明する。
 まだ発見はある。
 機体情報の送り先がSQ社システム部門の“室長”宛だったのだ。
 やはり残党インテグレーターと“室長”は繋がっていた。
 それだけのことが分かった上でジェノはクオンタムドミネーションでアクティベータが外部とやり取りする情報を、ゼスト連合軍にも同時に流れるようにプログラムを改ざんしておく。
 そしてもう一つ分かったことと言えばSQ社は残党インテグレーターと繋がっているが、残党の方は無人機用のAIや設計データの提供者がSQ社であることは知らないということ。
 SQ社の良いように残党インテグレーターは使われていることも知らずに、残党インテグレーターらはSQ社と対等の関係だと思っていたことだろう。
 そして残党インテグレーターを利用しているのはあくまでもシステム部門を統括する“室長”であり、CEOのデイヴィッドは一切関わりはない。
 責任は全て“室長”にあるというのがデイヴィッドの主張ということだろう。
 だからこそあの自信だったのだ。
 デイヴィッドが“室長”に箱庭システム“ブルーガーデン”を任せているのは、彼に全責任をなすりつけ、自分は一切関与していないと言い張るつもりだからだ。
 無論、“室長”もそれを分かった上であえて利用されており、もし自分を切り捨てるつもりならブルーガーデンをはじめとした、社内の機密データ全てを一瞬で消去できるよう、プログラムを組んでいたのだが、それも今やデータは既に内部から書き換えられており、すぐには崩壊しないようになってる。
 それはキョウとアマネの連携によるものであることは間違いないが、そもそもの穴はナユタが作っておいたものだということを誰も知らない……。

 CEOデイヴィッドと“室長”の関係はこれくらいの埃だったが、一番の大きな埃は『Project:Over the Singularity』の機密情報だ。
 V03が既に特異者として安定。G02、R04も半覚醒状態。
 F01は覚醒する度に暴走し、V03に始末させた上でリセットされる空間としてブルーガーデンは作り出されていた。
 ブルーガーデンに住まう量子知性の住人、アーキテクトは量子力場の影響で、仮想空間ブルーガーデンを現実世界と同じように世界を認識させられていることも書かれている。
 つまりブルーガーデンは、現実世界のゼストには存在しない……仮想空間である“量子の海”に作られたデータの箱庭であったのだ。
 そこにいる住人達も、自分達がそこに移住したという記憶を植え付けられているに過ぎず、彼らに過去というものは存在しない。
 所詮、神話級ユニークアバターの適合者となるべく調整を施された量子知性体「アーキテクト」でしかなかった。
 そうまでして作り上げようとしているのは覚醒体を現実世界に呼び込むため。
 そのためにF01からG02、V03、R04には刺激を与える必要があった。
 そう特異者により異世界の力という刺激を彼女らに与えるために。
 神話級ユニークアバターとその適合者を人為的に作り出す『Project:Over the singularity』はそのための箱庭計画そのものだったのだ。
 合同コンペティションもその覚醒の一途になるために用意された装置でしかなかった。

「これはどういうことだ!」

 ジェノの仕掛けを施している背後でバルターの怒声が聴こえる。

「私だって知らない! マリオネットにはあるはずのない部品がこの受信機であるなんてことは初めて知ったくらいだ!」
「本当だろな? この通信モジュールはゲームセンターや家庭PCの通信がここにあるマリオネットを操縦するために繋げられた装置だぞ。つまり、この中身のない機体は遠隔操作で動かしていたということになる。そしてその操縦者が、ブルーガーデンの住人であることを、お前は本当に知らなかったのか?」
「知らない! ああ……なんてものを見つけてしまったんだ……お前は余計なことを俺に気づかせてしまった。これを開発したのはSQ社だ。部品にその特徴が残っている」
「なんだと」

 頭を抱えるPMCのリーダー。
 現実を受け入れられず、身をよじらせる姿は狂喜狂乱そのものだ。

「私たちもまた、“餌”だったんだ。ブルーガーデンの量子知性体を成長させ、より高性能な兵器運用システムを構築するためのな。
 システムによる世界の完全支配。以前のSQ社には“あの思想”の信奉者はいなかった。……ダメだ、私は知る必要のないことを知ってしまった。ハハハ……もうお終いだ」

 頭の狂ったリーダーは胸ポケットから小瓶を取り出すと一気に仰いだ。
 そして泡を吹かせて全身を痙攣させながら息絶えたのだった。

「遅れてすまないね」
「向こうの陽動にまんまと引っかかってしまったよ。でも依頼の品はこれでいいかな」

 狂気の顔をひきつらせたまま死んだ死体を横目にミサキが持ち込んできたのは無人で動くマリオネットだ。
 拘束され、武装解除された状態でジェノの前に差し出してくる。

「助かる。こいつのプログラムを改ざんして逃げられた風に見えるようしておこう」
「向こうのPMCは全て殲滅してしまったから難しいんじゃない?」
「いや、殲滅してしまったのなら、生き残ろうとしてむざむざ引き返してきたように改変するだけだ」

 クオンタムドミネーションでそのように改ざんし、あえてこの場に残すことにしたジェノ。
 無数に並ぶマリオネットは全てブルーガーデンの住人がゲーム感覚で人殺しをさせる殺戮マシーンだった。
 その最後の列に改ざんしたマリオネットを並べ、一部のマリオネットも出撃後、撤退したように改ざんを施すと拠点を後にした。

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