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観測者の葛藤

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観測者の葛藤
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コンペティション ナユタ&コウの試練 4


 コンペティションの生き残りも手で数えられるようになってきた今、モニターに映るのは優勝候補のナユタとコウのペアとクロウ・クルーナッハの戦いだ。
 クロウがどのようにナユタとコウの連携を崩すのか、観客の皆は固唾を飲んで見届けていた。

 観測者であるだけでは現状を変える事は出来ない。
 観測は干渉する事ではないのだから。

 だが観測し続けたのならば、どう干渉すればいいのかは分かっているはず。
 だからこそナユタはこのコンペティションに参加したのだ、と思いたいクロウ。
 であれば彼女は、自分自身の観測、解析、干渉の仕方を見せてナユタがブルーガーデンという檻から出られる助けになれれば良い。

 観測とは……知る事とは何を為すためのものか。
 ヒトとて自分を見る事は出来ない。
 見えるのは常に、自分が見据える先なのだから。

 周囲の状況をラプラスの魔瞳環とパーティクル・アナライザーを使って把握し、状況や他の者は永劫の探究を用いて必要に応じて解析を行うクロウ。
 ここが仮想空間だというなら裏で走っているプログラムコードとブルー粒子の動きを見る事が出来れば得れる情報も多くなろう。
 加えてナユタやコウ、その他の者を精神世界や他の次元からも観測し、対応に走る。
 状況や他の者は永劫の探究を用いて必要に応じて解析。
 アクティベートなどの演算の観測・解析には電子の魔術師の知識も加えて。

 ラプラスの魔瞳環自体は分類上は魔力によるシールドを展開可能な盾だが、防御性能は気休め程度であり、メインとなる魔器の補助装置の域を出ない。
 つまりナユタのシールドには劣るということになる。
 強度面だけで言えば。
 だが、ラプラスの魔瞳環は知覚を拡大し、装備者は魔力や霊力、オーラなどを視認できるようになり、霊界や精神世界、異次元などの他世界を通しての世界の認識を可能とするほうがメインといってもいい。
 異なる時間や多次元から同時に観測するため、通常は観測不可能な事象であっても惑わされずに把握し、本質的な状況を認識できることこそこのラプラスの魔瞳環の強みだ。
 さらにザ・ブックとの相性もいい。
 ザ・ブックの使用効率化、高速化するために魔法能力全般が向上するということは、クロウが触れると頭が冴え、発想力が高まるということ。
 永劫の探究である飽くなき知識欲、探求心を体現し、それらによって得た知識を実践に活かすビブリオフィリアの固有スキルは未知の情報・文字列を既知の認識できる情報に翻訳し、解読すること。
 それらを駆使してナユタとコウとの戦闘は空虚の門で防ぎながらナユタとコウの武装や戦い方を永劫の探究で解析。
 ナユタのシールドは張り続けられるのか、コウの銃の発射間隔はどうか。
 解析する物事はたくさんある。
 それら一枚一枚を剥ぎ取るようにクロウは分析して分析して分析して解析して答えを得る。

「さて。解析も完了した。仕掛けさせてもらおうか」

 コウの火力の高い代わりにインターバルの必要なそのタイミングを突くようにナユタのシールドに空虚の門をぶつけて消し、再展開される前に本を守護する者でコウの今しがたアクティベートしていた銃を再現し、可能な限り高火力で撃つ。
 それでも演算能力の高いナユタがクロウの予想を超える速度でシールドを展開し、それを防ぐ。
 その速さに一瞬止まったクロウをコウが見逃すはずがない。
 同じ武器を真似された身。
 同じ武器の痛みを知ればいいとばかりにクロウへ銃を撃ちこむ。
 ラプラスの魔瞳環にそれを耐えうる強度などなく、クロウは戦闘不能に陥った。
 それでも最後にナユタに向かってこう呟く。

「知識とは、自らの望む結果への道を探る道具だ。自らの望む道を進む為ならば、他を利用してでも進めよ」
「しかと心に刻みました。戦闘、ありがとうございました」



◇          ◇          ◇





 セツナと星川 潤也は静かに向き合っていた。
 セツナと共闘を申し込んだ仲間には悪かったが、ここは譲る訳にはいかなかった。

「みんな。ここは私だけの力で戦いたい。それが無茶なお願いだということはわかっている。でも……脱落することになっても自分に大切なことを教えてくれた潤也とはどうしても一人で戦いたい」

 この切なる願いを仲間は思い思いの言葉で受け止め背中を押す。
 勝ってこい。負けるな。大丈夫。そういった言葉が全てセツナの力となる。

「セツナ……君が友達のために強くなりたいって言ってくれたこと、俺、すごく嬉しかったよ。俺はそんな君のことを応援する。だから君がもっと強くなれるように……俺も全力でいくぞ。さあ、勝負だ!」

 セツナの二振りの機械刀と潤也の二振りの紅黒のカーマがぶつかる。
 敵を斬ると自分の体力が回復する双剣で、【ジョブ】双剣聖ならではの高速ラッシュを繰り出す潤也。
 セツナもその速度に食らいつき捌き、時に潤也を押しやろうとする気力もあった。

「成長したな! セツナ!! 刀が重い上に、この速度にもついて来ている。楽しいな!」
「目標を見つけたんだ。これくらい成長してみせないと、ね!」

 もっと速く、もっと踏み込んで……どんな困難も切り伏せられるように打ち込んでこいとばかりに潤也は挑発する。
 セツナはその刺激を真っ向から受け止め、さらに上に這い上がるために一段と速度を上げていく。
 潤也が使う技は前の戦いと同じ影踏み・転と影踏み・回天。
 セツナはそれを受け止め次の一手に繋げる流れまで生み出している。
 見るからに成長の一途をたどっていた。
 だからこそ、前回はセツナに見せなかった【テク】チャンプムーブを使用。
 奇跡的な回避から必殺の反撃……。

「これが俺の切り札だ!」

 すでに自分を超えているセツナ。
 それでもセツナに強さを見せつけた自分だからこそ、出せる全てをセツナには受け取って欲しかった。
 凄まじいセツナの怒涛の攻めを回避するこのテクを感じて欲しい。
 そして必殺の、一撃。
 それはセツナに走馬灯のようなものを見せる一撃であった。

『廃墟と化した街』
『粒子となって消えていった親友』
『そして自分を見下ろし、寂しげに微笑む見知った少女』

 夢だと思っていた全てが現実に起こり、リセットされていたことをセツナは思い出した……。
 思い出したのだ、F01が。
 何度も繰り返し暴走を起こし箱庭ごとリセットされていたあのF01が。
 そうF01、檜扇 セツナは覚醒したのだ。

「思い出した……!」

 そう零れ落ちた言葉。
 全て夢であったあのはずの悪夢が。
 全身に力が入る。
 それは握っていた機械刀の柄を指の形に歪めるだけの握力を出力し。
 一閃振るった飛ぶ斬撃はビルを一閃し一刀両断。
 はらりと落ちた落葉を軽いひと振りで十文字に切り落とす。
 リミッターと言うリミッターが解除されたセツナ。
 そして暴走を起こし、このブルーガーデンを破壊しリセットされる運命の子。
 だが、それが起こらない。

「間に合わなかったのですか……!!」
「ナユタ……?」

 血の気の引いた顔に生気は宿っていない。
 唯一真実を知っていた執行人、G02こと三色ナユタ。
 ナユタはあの悲劇が、セツナが暴走し、自分が彼女を処分し、ブルーガーデンのデータがリセットされてまた覚醒前の状態に巻き戻るのだと察知し膝が笑っている。
 何人のセツナを殺したのか。――もう数えきれない程に。
 いくつものセツナの死体の上に私達はいる。
 だが、いつまで経ってもセツナに暴走の兆しが走らない。

「これまでと……違う」
「ナユちゃん、知っていることがあれば話してほしい。私はどうすればいい?」
「詳しい話は後です。あなたがセツナさんのままなら、最後までその力を振るって下さい」
「どういう意味だ、それ」
「今は分からなくて構いません。コンペティションを続けましょう」

 動揺を飲み込みナユタは辺りを見回す。
 単独で生き残っているのはキョウ・イアハート、そして対戦相手の星川 潤也。
 セツナと共闘の道を選んだ渡会 千尋、松永 焔子、焔生 セナリア。
 アイと共闘の道を選んだ土方 伊織、アルヤァーガ・アベリア、アルヤ モドキ。
 そして、三色ナユタとコウ・サイネリア。

 意外と多くの特異者が生き残ったことに希望を抱くナユタ。
 顔には見せないが合格といったところだろう。
 これだけの生き残る力があれば、もしセツナが暴走を起こしてしまっても止められるだけの力があるかもしれない。
 でも、現実には暴走が起きていない、あり得ない現実が目の前で起こっている。
 それでも自分がボロを出すわけには……。

「そう思い込んでいるだけで、けっこうボロが出てるぜ」

 そうナユタに声をかけたのはキョウだった。

「っつーかようやく人間みが見えてきたじゃん」

 シニカルに笑うキョウ。
 キョウにはひとつ信じておきたかったことがあった。
 そう、この間の昼食時、シーフードアレンジの時に目を輝かせてたのも嘘じゃない、と。

「っつーわけでしゃあねえ。手前の勝ち負け捨てて、お前のフォローだ。コウがついてるから多少は問題ねぇだろうけども、立て直しに時間がいるだろう。シールドだ鳥だの動きが鈍ってんぜ」
「それは……」
「どうせなら筋書きが変わったドラマをアドリブで演じるのも、楽しまねえとな?」
「それもそうですね。彼女は強いですよ……覚悟してくださいね」

 ナユタの宣言通り、セツナは自分の身体を全て理解しているように、思うように、自由に、戦うことに喜びを覚えていた。
 これで護りたい人を守れると気づいたかのように。
 助けたいと手を伸ばせば届くと知ったように。
 リミッターの外れたセツナは基本的な戦い方は変わらないものの、世界への干渉力がより強くなり、遠く離れた空間そのものを直接切断することもできるようになったし。
 ナユタのシールドをも斬り裂けたし。
 飛行しているアイも容易く落としてみせた。



◇          ◇          ◇




 セツナの覚醒というイレギュラーは引き起ったが、無事に合同コンペティションは幕を下ろした。
 ひとりの少女に戻ったセツナは焔子とシュークリームSS半分こにして食べたし、それぞれからおめでとうの祝福の声をたくさん貰っていた。
 そう勝ったのはセツナだった。
 共闘というチーム戦を作り上げたアイも仲間をやられ脱落。
 単独で生き残っていたキョウと潤也、そしてナユタとコウも同じく。
 今まで共に戦ってきた千尋、焔子、セナリアとも勝負を行い正式にセツナがコンペティションを制したのだ。
 そしてセツナは今、千尋に呼び出されひとつの樹木の下に呼び出された。

「優勝、おめでとう」
「あ、ありがとう……」
「実は教えていなかったけど、ボクはこの泡沫(うたかた)のセカイの客人(まろうど)なのさ」
「そう、みたいだね……信じられないけど」
「だけど、ボクはたしかにここにいて、キミもたしかにここにいる。そして、退屈な日常じゃない何かを、キミは今日の経験で見いだせたはずだ」
「うん、そうかもしれない」
「退屈な日常と刺激的な体験。それは相補的な関係で、どちらも欠かすことができない。だけど、日常は結構脆いもので、頑張って守ろうとしてもあっけなく終わってしまう……その時、君のよすがになるのは力と絆だよ」
「力と、絆?」
「そう力とはその名の通り自分自身の力。絆は……良ければボクと、結んでくれないかな? 絆が強く結ばれれ結ばれる程に予想を超える力強い底地からを発揮することが出来るから」
「ごめん……この世界を創り、私達を利用している人と決着をつけるまでは、返事はできない」
「そっか。急がせたみたいでなんだか申し訳ないな。でも、絆を結びたいと思う気持ちは本物だから。これだけ覚えててくれれば、いまはそれで構わないよ」

 絆を結ぶまでには至らなかった千尋は残念そうな顔をしているが、それでも無理強いをする気はさらさらなく、セツナの返事を素直に受け入れるのだった。

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