コンペティション 4
体力の多いスレイはこのコンペティションにおいて驚異的な存在として生き残った者達に共通認識を与えた。
モノの少ない広場、ここにスレイの搭乗するストリークMk-Ⅱが陣取っている。
それを見つけたのは誰が先だっただろうか。
ここにいるのは貫とキョウとアイのチームの6人だった。
誰がスレイと戦うのかという駆け引きは既に捨て去った。
一人がぶつかっていってもそれぞれが撃破される運命であることが分かっていたからだ。
「どうでしょう、ここは一時共闘と行きませんこと。6人でかかればどうにかなるかもしれませんわ」
アイの言う通りかもしれない。
ソレで行こうという話でまとまり、対スレイ戦が開幕した。
貫はグロビデンサに騎乗し、旅人の智慧はできるだけ長めの大太刀に伸ばし、アイは機械翼で飛び上がり上空からの攻撃に備える。
伊織がスプレッドウィングスで空に飛び上がりメガリス4機を展開。
まず攻撃に出たのはオートモードで発射するアルヤァーガの4つの映写機だ。
出遅れるように伊織のメガリスも魔弾を撃ち出す。
機械や石柱にディメンションカーヴァーは全く効果はない。
容赦なくスロウ効果を乗せたギア攻撃がスレイを狙う。
伊織のメガリスも頑張っているが威力が足りなすぎるために【小隊陣形】コラプストリックが展開できるように陣形を組んでいく。
ウォッチマンを放っていたスレイには自分を狙う者が何人いるか知らせてくれている。
それに気をつけアルヤァーガのスロウ効果のギア攻撃をこれ以上受けないようにと、ストリークMk-Ⅱの姿勢制御用スラスター、脚部にバーニア、バックパックにブースターノズルを発射させて高速機動でギア攻撃から逃げ始める。
足元に接近したのはアルヤ。
アドインパクトを乗せた模擬葦原刀でボディに叩きつけた。
貫もグロビデンサの速さを活かした突進から旅人の智慧で斬り付ける。
即座にスレイはストリークMk-Ⅱ最大出力で射撃戦の間合いを維持するために下がっていく。
パルスレーザハンドガンで的の小さいアルヤを狙い放てばオーバーザレインボーの虹の防壁がそれを防ぐ。
それと同時に上空からアイの機械槍の槍先からビームが発射され、どこかのビルに潜んでいたキョウがアンフィスバエナをアクティベーションⅡでレールガンに変換した武器でエレクトロアクセルを乗せた電磁加速させたレーザーがアイとタイミングを合わせて狙い撃ちだされる。
そこへメガリスのコラプストリックが殲滅にかかる。
それぞれの最大一撃を与えても膨大な体力のあるスレイの機体を沈黙させることは出来ないが、徐々にアルヤァーガの支援砲撃のスロウ効果がじわじわとスレイの持ち味を潰していった。
パルスレーザハンドガンをスターライトソードを振り回してもアルヤがオーバーザレインボーで、時にはファンタジア+で複数のオーバーザレインボーを発生させて仲間を護り抜く。
スターライトソードの自動回復機能よりも上の火力で押し込まれていけばさすがのスレイも追い込まれていった。
「トドメですわ!」
アイが一直線にスレイに向かって機械槍の槍先に光を溜めて機械翼で勢いを付けて突っ込んでくる。
それを避けるだけの機動力はもはやない。
ゼロ距離からのビームについにスレイの機体は沈黙した。
だが、それで終わりではないのだ。
ここはサバイバルゲームの中。
真っ先に意識を切り替えて攻撃してきたのはやはり貫だった。
「これまでなら舞台装置として使っていたが……!」
貫は演出効果では本気で戦うために天地造彩で空からは仮想ガラテアが火の雨を降らせ、地からは仮想オルガノレウムにより足元が覚束なくなる地震を起こす。
アルヤァーガの支援砲撃も黄金のヘデラが受け止めスロウ効果を受けないように立ち回る。
この自走映写機の危険度は嫌と言う程に先程の戦いで分かっていたから。
反撃とばかりにアニマクリエイトで生み出した数十匹の蜂の体当たりによる足止めするのはアルヤ。
彼に近づかれては落馬の危険性もあった。
そのまま吹き飛ばしてアイのチームを敗北に持っていく!
覇王のラーガによるグロビデンサの大群の突撃で切り抜けようとしたが、この共闘ではキョウがいた。
アイが上空から囮となって槍先からビームを放ち貫の意識を向けさせると、キョウが変換したレールガンをエレクトロアクセルでもって電磁加速させたレーザーで狙い撃っていくことで覇王のラーガで別のグロビデンサの大群が撃たれ消えていく。
その中でアイとアルヤが天と地から同時に攻撃を仕掛けてくる。
旅人の智慧の影と本人の大太刀を器用に模擬葦原刀で受け止め、パトリア三重奏が来るもオーバーザレインボーで防ぐアルヤ。
そのままファンタジア+で回避方向に虹を展開しての貫の回避行動阻害、複数の虹による一点防御を用いて貫の挙動の起こりを潰し、アイのビームとキョウの狙撃を以て一気に勝負を決めにいく。
バリツでグロビデンサから貫を落とし、アドインパクトで仕留めたアルヤ。
そして次はキョウと……だったが彼はこの戦闘中にどこかへ身を隠してしまっていた。
それを今から探すには不可能に近い。
なんせ一番の作戦の時からビル上からの狙撃を任せたのである。
それに全員が潰れるまでここで戦うとは一時休戦の時に約束していなかった。
自分に不利だと思えば真っ先に逃げるのだって戦略のひとつだろう。
◇ ◇ ◇
桐ケ谷 彩斗はTAB【トライアルアーマーバイク】をパワードアーマー形態にして装着して、ウォッチマンを飛ばして周囲を偵察しナユタ達を探していた。
四大企業から注目されるよう本気でいくために。
ナユタとコウと戦ってみるいい機会だと考えて。
そしてウォッチマンは彼女達の姿を捉えた。
「よし」
ウォッチマンを回収した彩斗はウォッチマンをライドオンして人が乗れるサイズに巨大化させてナユタとコウの許へ飛んでいく。
「また会ったな……腕っぷしには自信があると言ったが口先だけじゃないのを証明しようじゃないか……」
「それは楽しみですね。わたしの護り、そしてコウの火力を知って驚きませんようにね」
「ああ」
彩斗はコウに狙われないよう遮蔽物のある場所へと隠れ潜むと同時に【神格】カヴァーチャを身に付けた
エレナ・ステリアはマニューバシステムRMで高速飛行しながらアクティベーションⅠでハンドガンを具現化し、ナユタを狙って撃つ。
立体的な起動で様々な角度から撃ち続ける。
簡単にシールドに受け止められてしまうがそれでいい。
周辺の遮蔽物に身を隠した彩斗がウォッチマンの機関砲とスピアレーザーガンのレーザーでコウを攻撃していくから。
エレナがナユタを押さえることで負担を増やすために弾かれる無意味ともいえる狙撃を続けているのだから。
そのシールドが反射能力を持っていたことは驚いたが、それだけで狙撃を止めるような自分ではない。
ナユタに負荷をかけ続けて彩斗のためにナユタを惹きつけて付けておく。
シールドの反射能力を知ってもエレナにはカヴァーチャの守りがある。
そのリズムを崩したのはやはりナユタの方だった。
今まで狙撃に使っていたハンドガンが機械鳥が突進してきたと思ったらブルー粒子と化して分解されてしまったのだ。
「守るだけがわたしの戦い方だと思いましたよね。ですが、こう言った芸当も出来るのですよ。何度でも分解して差し上げましょう」
「素晴らしい芸当を本当にお持ちのようで……憎たらしいですね。でもあなたはこう言った。“何度でも分解する”とつまり……アクティベート自体を封じているわけではない」
エレナはアクティベーションⅠで今一度ハンドガンを具現化。
問題なく具現化したことからもエレナの推察は間違っていないことが証明された。
「あの鳥自体が分解能力を持っているのなら……すぐに使わなかったことに疑問が残ります。アクティベートのリソースは小さい程負担が少なく操りやすくなる……。つまり、あの鳥はただ私の武器に近づくためだけに接近しただけの存在。分解の演算をしているのは……三色さんですね」
「お見事。ですがわたしの機械鳥の役目はそれだけではありませんよ」
彩斗は確かにウォッチマンを使って正確にコウを狙っている。
だが、コウも同じように正確に彩斗を狙って遮蔽物ごと破壊して彩斗の隠れ場所を潰していく。
それが可能としているのはナニか。
エレナはハッとした。
もう一匹の機械鳥がスポッターとなり、コウの砲撃を支援していたのだ彩斗のウォッチマンと同じように。
ナユタはエレナと戦いながらもこうしてコウの支援を続けていた。
その演算能力はどれだけ高いモノがあるのだろうか。
末恐ろしく思うが彩斗とコウの戦いは激しさを増していく。
ウォッチマンの機関砲とスピアレーザーガンのレーザーに加えてエレクトロアクセルでレールガン化して威力の高い一撃を撃つことも織り交ぜて戦い続ける。
コウの一撃はどれも破壊力抜群の攻撃だ。
一撃でも当たれば即座にリタイアしてしまいそうな程に。
だからTABのブースターを加速させて別の遮蔽物がある場所まで逃げ込む。
そうしてお互いにナユタとコウの実力を計り、実力を把握したら仕掛けるまで。
「やるぞ、エレナ!」
「了解しました!」
ザッハークの秘儀で二匹の黒い蛇をかたどり使役し、コウにけしかけ足止めさせるエレナ。
その間にアクティベートで具現化していたハンドガンを消した上でトリニティブーストで能力を大幅に高めアクティベーションⅠでDD:オメガブラスター【DD:オメガブラスター】を召喚。
彩斗もギアシフトで大きく加速しナユタとの距離を一気に詰めエレクトロアクセルで加速させたスピアレーザーガンによる刺突を放つ。
ナユタのシールドに阻まれるがそれでいい。
「これが私達なりの連携ですよ……!」
エレナのオメガブラスターが発射される瞬間に温存してたシュレディンガーケープを起動して砲撃を透過してナユタに当てる。
砲撃が途切れた瞬間に透過を解除、態勢を立て直される前に至近距離からのコンヴァージングショットで防御を貫きにかかった。
「貫いてみせる……!」
「その選択、誤りですよ。ふふ」
ブルー粒子を集束させ、ビームとして放ったそれはナユタのシールドに当たると分解され霧散していく。
その隙に彩斗とエレナは次々に死角からの跳弾する銃撃を受けたことで意識を失ってしまう。
何事も当たり所というものがある。
威力の小さい弾だろうと急所を的確に詰めればこうして意識を狩り取ることは出来る。
意識を失う瞬間、彩斗はこれだけは言っておかねばと気力を振りぼってナユタに言い残す。
「以前、連絡番号教えたし、なんかあれば頼ってくれていいぞ……」
「このコンペティションでは脱落してしまいましたけどね。その気持ちだけは貰っておきますよ。コウ、行きましょう」
「わかった」