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観測者の葛藤

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観測者の葛藤
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インテグレーター残党の拠点を特定する 1


 ネイティブランド――U.S.L領アイアンベルト。
 スタンダード・クオンタム通称SQの本社CEOデイヴィッド・エヴェレット
 U.S.L出身の彼は現在のゼスト企業のトップに君臨する人物だが、基本的に表に顔を出さないことで知られている。
 過去の経歴も不明ながらAスポーツ関連技術でSQ社を一躍トップ企業に成長させるほどの手腕を見せ、CEOの座についた経歴を持っている。
 そんな彼からの依頼と言うのはSQ社のPMCと共にSQ領の防衛を帝政豊葦原陸軍装騎隊のカイ・ウツロギ大佐とミサキ・ウツミ大尉にして欲しいということだった。
 もちろん、同僚を呼んで協力体制を組んでもいいという大盤振る舞いだった。

「ウツロギ大佐、君たちにとっても“悪い話ではない”はずだ」
「ええ、それについてはこちらから提案するつもりでした。国家連合軍や豊芦原は過去に不正アクセスを受けており、SQ社もインテグレーターによって何らかの情報を奪われているかもしれません」
「もちろん、好きに調べてもらって構わない。この世界の平和を脅かすものを取り除けるのなら、いくらでも協力しよう」

 デイヴィッドの顔には、挑戦的な笑みが浮かんでいた。

「(疑惑について認知した上で、こちらに決定的な証拠を掴ませないだけの自信がある、ということか)」

 顔には出さずにカイは絶対に証拠を掴み取ってみせると決意をする。
 ちらりとミサキを見れば、小さく頷き返してきた。
 相手が堂々と調べていいと言うのならこちらも好きに調べさせてもらおう。

 カイは与えられた会議室でPMCと合同で打ち合わせをしている間に【ヨハンソン小隊】の幾嶋 衛司はスマートクオンタムPCのサポートをミニタロス・紅杏【ミニタロス】に頼み、ブレインワークを駆使して高等なセキュリティを組んだアンチQIウィルス仕込みのセキュリティトラップを作成していた。
 完成したプログラムは【ヨハンソン小隊】のメンバーが乗るメーヴェASPや雲雀(ブリギットカスタム)・改に読み込ませハッキング対策を仕込んでおく。

「よし、作戦はこんなものだろう」
「そうですね。この作戦を成功させ、残党インテグレーターを狩り尽くしましょう」
「ほかにも拠点を残していれば、さらに探すまでだしね。その意気込みで行こう」
「よろしくお願いします。ウツロギ大佐」
「こちらこそ。頼りにさせていただくよ」

 固い握手を結び、PMCの従業員が準備に出ていくのと行違うように、控えめにドアがノックされ衛司が顔をのぞかせた。

「ウツロギ大佐、今大丈夫ですか」
「なにかあったのかな?」
「いえ。問題はありません。ただ、今回任務でもし相手側がハッキング手段を用意しているかもしれません。そこで私がアンチQIウィルスを仕込んだセキュリティトラップを作成したのですが、ウツミ大尉共々使ってくれませんか」
「アンチQIウィルスか……よく作ったね」
「大佐、これだけのプログラムならば保険としても有効じゃないですか」
「そうだね。俺達の機体にもインストールしてくれないか」
「ありがとうございます。今から即座に作業に移ります」

 衛司は敬礼してピシリと反転すると駆けだしていく。
 この一手がカイを守る一手になると信じて。



◇          ◇          ◇




「それではPMCとの合同任務を開始する! 総員出撃せよ!」

 カイの号令で機体が飛び出していく。
 PMCと共にインテグレーター残党の拠点の特定を始めたそれぞれの愛機であるカイの蜉蝣とミサキの振電参型に乗り込み出撃する。
 場所はアイアンベルトの古い工場跡。
 地上からでは決して見つけることができなかった隠し場所。
 カモフラージュの瓦礫を撤去し、奥へ続く道を進めば資源戦争自体の遺跡が廃墟となった地下へと繋がっている。
 地下の広さは未知数。
 だが特定の場所で騒ぎを起こすことで他の班が動きやすいように、別ルートへ侵入しやすくするために陽動作戦をとることを打ち合わせの段階ですり合わせていたのだ。
 カイの先導で地下の工場跡を慎重に調べていく。
 一部のPMCが特定の地点に辿り着き手持ちの武器で暴れ始めれば予想通りマリオネットと量産型クアンタロスが防衛のために顔を出してきた。

「さぁ、派手に暴れて彼らを奥にまで忍ばせないとね。どれだけの広さがあるか分からないし」
「ウツロギ大佐、自分達には他にも頼まれ事がありましたよね」
「あったね。そちらを実行するためにもこの陽動作戦は早急に完了させないといけないよ」

 カイとミサキはジェノ・サリスからSQ社と残党インテグレーターを調べるためにレイグランドワークを受けていたのだ。
 内容としては“インテグレーター残党IFやクアンタロス”へのハッキングを助けてもらう事。
 そちらに手を貸すためにも陽動作戦は早急に終わらせて駆け付けなければならなかった。



◇          ◇          ◇




 衛司はスカウトヴィークルの中から、他のみんなをサポートするためにひたすら警戒していた。
 PMCと味方の位置関係を守山 夢との情報共有で常に把握し、実践的戦術予測で“こちらに攻撃を仕掛ける素振り”がないかを観察しておくくらいには。
 夢はメーヴェASPに乗り込みPKG:スカウターの偵察機を用いて工場跡の内部に隠された拠点を探しているように見せて、PMCと味方の位置関係を位置把握と戦況分析も駆使して把握し、リアルタイムで衛司と共有していた。
 空間知覚で感じてる実際の戦闘距離についても現場の主観として補足しておくことも抜かりないが、つい本音が口から零れ落ちる。

「うへー、めっちゃギスってるッスねこの状況。てかSQ社のマッチポンプなんスから、向こうのPMCが主導の探索で何か見つかるとは思えないんスよね。何か見つけたって言われても罠だって前提で見なきゃいけないし、正直胃が痛いッスわ」
『偵察担当である守山夢が捜索へのモチベーションが低いというのは、あまり関心しないな。自身の職務を全うできないというのなら、いっそ後ろから撃たれるか? 貴様の言う「ギスってる」という状況を部隊内にまでもたらすというのなら、私は容赦しないぞ』
「待って待ってちゃんと偵察するッスからー! ミスティさんは厳しすぎるッスよぉ……正直IF乗りとか絶対私のキャラじゃないと思うんスよねー……せめて前衛じゃなくて偵察機として動きたいッス」
『その願いは叶っているではないか。偵察し、発見次第撃破するというだけのことで』
「だからー私は偵察だけをしたいんスよ! どうして戦いまでしなくちゃ……」
『フン。そんな考えだから、私に背中を狙われるのだ。いいかリンクバングルを付けている同士とは言え息を合わせるというのは最低限必要なことであってな……』
「分かってるッスよ! だからお説教は勘弁して! ちゃんと偵察任務してるんだから、気が散って犯人を見逃しちゃいそう」
『そうか。ならば私から言うことはもうない』

 夢とミスティ・ベルのやり取りも衛司の耳には入っている。
 どうかこれ以上連携が崩れないように進めて欲しいと願うばかりだ。
 自分達はカイを守るためにこの戦場に来ているのだから。
 忠告したミスティもメーヴェASPでPMCの動きは警戒しておきつつ、孤立しないよう位置関係に気を配って飛んでいる。
 黒江 シュンも夢とミスティと同じメーヴェASPに乗って周辺警戒と位置関係への配慮していた。
 『ヨハンソン小隊』の隊長としてブリギット・ヨハンソンは雲雀(ブリギットカスタム)・改に搭乗し、PMCやカイとミサキに同行してインテグレーターの拠点を探しつつ、PMCがいつこちらに攻撃を仕掛けてきても対応できるように警戒していた。
 孤立しないよう位置取りに気を使っておくことも忘れずに。

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