コンペティション アイの試練 1
セツナがいつものセツナとどことは言わないが違って見えた。
それを不安に思うのは彼女に置いて行かれそうに感じているからだろうか。
いつもセツナの手を引くのは自分の役目だったのに、彼女ひとりで自分の先を歩きだしてしまいそうな予感がするのは幻だと思いたい。
「くよくよするのはわたくしらしくありませんわ。セツナがひとり立ちしてもわたくしとの友情は変わりありませんもの!」
「それでこそいつものスプレンデンスや! そう。友情なんて壊れやすいが信じていればそう簡単に壊れたりはしないんやで! やから、檜扇のことは成長の証として誇らしく思っとけ」
「そうですわね」
アルヤ モドキがそう励ましている後ろで
アルヤァーガ・アベリアはアルヤの支援射手として警戒していた。
そうなったのはアルヤが以前アイと戦ったことと関係する。
アルヤはその戦いを通して剣術や人を斬る戦いは何か違うと感じた。
その為、アクティベートを用いらず鈍器として模擬葦原刀用いて、体術と組み合わせて戦う戦闘スタイルを確立しようとこのコンペティションに挑むことにしたのだ。
そこまでは別にアイとはなんら関係ない。
話はここで終わらずに今回のコンペティションのジャンルがバトルロイヤルであることからアイに再度挑むのは今ではないと考えており、可能ならばとアイに共闘を申し出た経緯があった。
アイは喜んでその申し出を受け入れ、今のような関係になったのだ。
「(スプレンデンスとの戦いを通して、1つわかったことがある。それはワイ自身の戦いに軸、核いうんか。がないことや……。元々主や家族達と観客席でこのコンペティションを観れればワイは良かったんやからな……)」
「主の自動化の極致、スプレンデンスの機械翼と機械槍を用いた戦法のように、ワイらしい戦い方をコンペティションに参加して見出してみせるで」
「素晴らしい考えですわ。自分らしい戦い方が見つかるといいですわね」
「せやな」
アルヤの挑戦、それを見届けると決めたからにはアルヤァーガも全力で挑まなければ失礼に当たるだろう。
それに彼がコレを思い付いたのはマリナのヘカトンケイルシステムを見て出したことが始まりにある。
それをゼストで振るうのも面白いかもしれないと思ったのだ。
「さぁ、抗わせてもらうぞ。……ですから、あそこで隠れている人は大人しく姿を見た方が痛い目を見ませんよ?」
DuS【【デュプリケイター】】で影写機【stella】【GC:ギア・ドローンカメラ】と影写機【Ducere】【GC:ギア・ドローンカメラ】の両方を同時使いこなせるようにし、両ギアの複製品を生成して4つのギアを同時に展開させた状態で隠れている物陰を狙うアルヤァーガのstellaとDucereの4機。
APC【【転・オートシューター】】で相対する敵をロックして自動攻撃をONにした物騒な脅しになってしまったのは、4つのギアを自分一人では操り切れないというなら自動化してしまえという考えで構築した四重機装状態になっているからだ。
「おっと出番か!?」
エーレンフェストリングで身体動作のデータ収集効果を上げ、かつ基礎能力を向上させた状態で交戦体勢に入ったアルヤ。
アイも機械槍を構え物陰に警戒している。
「あわわっ待って欲しいです~!」
慌てて物陰から出てきたのはアイをイメージして、可愛くてすっごく強い天使様になるーっとイメージしながらライドオンしたブルーナイトとスプレッドウィングスでアイみたいな天使様に近づくために努力した
土方 伊織の姿だった。
懸命にアイのアドバイスに従って可愛い天使になれるように努力を積み重ねてきたのが窺える。
「あら、あなた、伊織さんではありませんか」
「なんや、知り合いか。敵やあらへんの」
「敵対意志はないです。今回はバトルロイヤル方式の生き残り戦との事ですから、アイお姉さまが戦いたい人と戦える様に戦場を整えるのに尽力しようかなって思って機会を窺っていたのです。ですので、アイお姉さまと一緒に戦う許可貰えれば~なのです。貰えなかったら、悲し~ですけど陰からお手伝いするですぅ……」
「カーッそういうことかい。つまりはワイらと同じっちゅうことやないか」
「! ということは共闘拒否は……」
「はい。ありませんわ。こんな可愛らしい天使の姿になってまでわたくしのアドバイスを純粋に受け入れるような子とは敵対したくありませんわ」
「ありがとうなのです! 僕、今日のために支援作戦を考えてきたのです」
伊織は出来る限りアイの邪魔にならないような立ち回りに注意しつつ、ディラックポインターで威力を高めた【僚機】メガリス×3とアクティベーションⅠでパルスレーザハンドガン【パルスレーザハンドガン】もメガリスに変換した計4つのメガリスを使用した遠隔戦闘による支援射撃でお手伝いするのだと意気込んでいる。
状況次第だが【小隊陣形】コラプストリックを実行できるように準備しておくが、そんなことにはならなといいなと思っていた。
事前にアマネ経由で
キョウ・サワギには打算的な側面としてはこの大会で4人の内誰か? もしくは全員が何らしかの予兆を促されるかもしれないことから、それに対応・観測出来る様に近くにいること、自分自身としてもアイは良い人だし頑張ってほしいから一緒に戦いたいとそう言う理由でコンペティションに参加するという報告はしてある。
報連相は大事である。うむ。
共闘者を増やしたアイではあるがE研の姫の異名に誘われ狙われる回数は異様に多かった。
上空からは伊織が偵察と支援砲撃を、地上からもアルヤァーガの支援砲撃もある中でアイとアルヤが協力して挑戦者を蹴散らしていた。
アイの槍捌きとアルヤのバリツの組み討ちの技術を活かし、敵が接近戦を挑んでくるならその勢いを利用して投げ飛ばし、アイの機械槍で仕留めたり、アルヤが相手の足を払うことで体勢を崩したところにアイが突っ込んでいくなど、きちんと連携が取れていた。
アルヤもアドインパクトを込めた模擬葦原刀を鈍器として用いて追撃をしかける。
相手の反撃もバリツの柔の動きで裁ける範囲は捌き、体術ではどうにもならない場合はオーバーザレインボーの虹の防壁で防御。
逆に相手がが中距離や遠距離を望むなら自ら踏み込むことで距離を無くし、模擬葦原刀の届く範囲に入り込みアドインパクトによる衝撃波を一撃に載せて倒していた。
「やるやん!」
「あなたこそ、成長したのではなくて?」
「はっ敵襲です! ものすごい速さでこちらに接近してくる挑戦者がいます!」
伊織の忠告通り、空からは
焔生 たまがアイと同等以上の空中格闘能力を得るためにマニューバシステムRMを装備し上空からアクティベーションⅡしたインターフェアレンスブレードで襲撃してきたのだ。
伊織は4つのメガリスの魔弾射撃に混ざって変換パルスレーザーを発射させ、アルヤァーガの自動射出四重機装に【スロウ】効果を乗せたギア攻撃が襲撃者のたまに向かって飛んでいく。
【スロウ】の他に【リニア:3rd】と【インデュレイト:3rd】もカスタマイズで組み込まれた構成ギアはたまをロックオンし撮影にかかる。
映し出されてしまえば【スロウ】の効果が倍増し蓄積され投影者を苦しませるだろう。
マニューバシステムRMの急加速で伊織のメガリスを避けるが、APCによるロックオン精度と【リニア:3rd】の速度からは逃れられず【スロウ】の効果が次々に累積されていくのをたまは肌で感じ取りながらも狙いは一つ。
インターフェアレンスブレードをアクティベーションⅡで固定実装し急速落下。
アイの機械槍とぶつかった瞬間にアドインパクトし、すぐに上空へ舞い上がる。
【スロウ】の効果は忌々しいがそれでも更生されたままでは不良学生の名折れとばかりにアイを挑発する。
アイはそれに乗り機械翼を羽ばたかせ制空権の取り合いへと発展。
アドインパクトを駆使しながら高さと速さを生かした重斬撃を繰り出す戦い方をしていくが、アルヤァーガのstellaとDucereによるロックオンは精確無慈悲だ。
ついに【スロウ】の効果で高速機動がアイの速度よりも劣るも、インターフェアレンスブレードで翼を斬りつけブルー粒子の流れを阻害し落下させることに成功する。
「真面目にやれ、と命令したのは貴女ですからね?」
「あなたこそ、考えが甘いのではありませんこと?」
地面に落下していくアイだがそこに恐れの顔はなく挑発的な顔で機械槍の槍先をたまへ向けて槍先からビームを発射。
トドメとばかりにインターフェアレンスブレードで突っ込むかたちでいたたまはそのビームにまともにぶつかってしまう。
それだけではなく、伊織とアルヤァーガの支援砲撃もまだ終わっていない。
「自動射撃の方が鬱陶しいですね!」
「主!」
アルヤァーガ目がけてコンヴァージングショットのカウンターを放つもそれをアルヤがオーバーザレインボーで守られてしまう。
インターフェアレンスブレードで阻害されていたブルー粒子も落ち着かせたアイが翼を取り戻し再び制空権の争いに舞い戻るが今度はそう簡単にアイの翼を狙うことは出来ない。
伊織のメガリスはアルヤァーガの支援砲撃に比べればある程度避けやすい。
だが、今度はアルヤがでオーバーザレインボーを使ってアイを守ることで計算が狂っていく。
つもりに積もった蓄積された【スロウ】でたまの持ち前の機動力はもぎ取られたも同然だった。
今度はたまが地面に叩きつけられる。
「待ってたでぇ! これがワイ、転空世界のヴァイキング……アルドレット・ローガランの今出せる全力や!」
制空権の争いに参加できなかったがアイが負けるはずはないと信じていたアルヤがここぞとばかりにファンタジア+を起動。
空をイメージする蒼の空間を展開して1つしか想像できない制限を解除すると、たまの回避方向に虹を展開しての回避行動阻害。
複数の虹による一点防御を用いてたまの挙動の起こりを潰し、一気に勝負を決めにいく気でアドインパクトを乗せた模擬葦原刀で叩きつける。
エーレンフェストリングでアバターの基礎能力を上げた上でインターフェアレンスブレードで受け止めにかかるが、至近距離からのアドインパクトの衝撃には武器も身体も衝撃を受け流すことはできなかった。