コンペティション セツナの試練1/large}
自分から合同コンペティションに参加すると言ったのは今回が初めてだ。
いつもならアイに誘われたからといった言い訳で渋々参加していたが、ここ最近濃密な日常を過ごしたことでその理由も必要なくなったと言ってもいい。
重い足を一歩踏み出して夢とも言えない目標のためにコンペティションに参加したのだ。
そこまでして参加したのだからいい所まで登り詰めてみたい。
優勝なんて大それたことは言わないが、負けたからと言ってまあいっかで終わらないような試合をしてみたくなったのだ。
負けたくない相手だってできた。殻に閉じこもっていた自分のドアを叩いてくれた人だっていた。
ならば、その人達のためにも一歩踏み出してみてもイイじゃないか。
何もないと思っていた自分でも守りたい人、欲しいモノというのはあるのだと気づいたから。
「今回の初勝負は千尋さんかい? 参加したからには容赦はしないよ」
二振りの機械刀をいつでも抜刀できるように警戒するセツナ。
だが、
渡会 千尋に敵対意識はない。
「キミを放っておけなかったからさ。キミはこのコンペで、漫然と生きてる現状を打破したいと思ってる。その助けになりたいと思ってね」
千尋はセツナの傍にあって彼女を守るためにセツナを探していた。
彼女を守るために闘うために。
「バトルロイヤルだとしても出会った後で共闘するのもルール違反ではないでしょ。ボクはキミを守って戦いたい。キミを守れる存在になりたいんだ」
「……嘘、ではなさそうだね。まさか私と共闘を願う人がいるなんて、驚き過ぎて何も言えないよ」
「いいじゃないか。それでボクはキミを守っても良いのかな。キミが自分の実力を最大限発揮できるように隙をカバーしてみせるよ」
千尋はそう言うと神纏で霊力を狼のような守護獣になるように具現化させてみせる。
攻撃手段としては霊醒を用いて霊力を研ぎ澄ませることで強力な霊力感知による予知・行動予測を立てて先の先を取り、雪月落葉の三連撃で敵を確実に倒す計画を立ててあった。
セツナの好みは格好いい子が好きだと先日のお茶会で言っていたから、ここで格好良さをアピールすることでその後のセツナの好感度を高めるつもりであった。
その格好の相手が丁度良く現れる。
草薙 大和と
草薙 コロナのコンビだ。
「おっと君とここでぶつかるのか」
「隣にいるのは協力者ですね。丁度2対2……相手にとって不足はないです」
「すまないね。ボクは彼女を護りたいんだ。邪魔させてもらうよ」
「ということになってね。だからよろしく頼むよ」
大和は模擬葦原刀を素体にアクティベーションⅡで日本刀を具現化すると滅閃の体勢に入る。
コロナもエーレンフェストリングでアバターの基礎能力が少し底上げされた状態でスプレッドウィングスで空中を縦横無尽に駆け回り、相手を撹乱する攻撃を仕掛け始めた。
千尋は霊醒で警戒し、コロナの行く先を予測して間合いを詰めてきていることに気づくと九頭斬による連撃を地噛で防ぐ。
地噛によってコロナの霊力を吸い、磁場に干渉することでセツナへの通りを許さない千尋。
すぐに地場干渉から逃げるように虎走りによるフェイントを使いセツナの方へ抜けると九頭斬を繰り出すコロナ。
セツナは機械刀で受け捌き、虎走りのフェイントにも冷静に一歩踏み出し抜刀には抜刀を繰り出してお互い譲らない。
抜かれたのならば警戒するのは大和の方だ。
片方が攪乱し、もう片方が仕留めるというのは定石過ぎる。
セツナはうまくコロナの九頭斬とフェイントの虎走りを捌いている。
それでも息の隙間というのは存在した。
その息の隙間を縫うように大和はC&Gツールナイフで威力を上げた状態のエレクトロアクセルを乗せた滅閃を放たんとするが、千尋が雪月落葉で反撃して相殺してみせる。
そう何度も大和のこの一撃を止めることはできないだろうが、一度でも止めることが出来ればそれだけでセツナへの脅威がひとつ減る。
千尋にとってそれだけでいいのだ。
格上の二人を相手にするにはそれくらいしか出来ないのがもどかしい。
経験が実践知識が相手の方が上というだけで千尋だってそれなりに積み重ねた経験値というものが存在する。
互いが睨みあっていると【神格】赤兎【【神格】ザンザス】で高速移動して来た
松永 焔子が乱入して来た。
「お姉さまの勝負あるところに私がいますわ! セツナお姉様の腕前には感服しましたもの! ……しかし、その一方で虚ろで危うい印象も受けたのも事実。妹分として剣士である彼女を慕う心に偽り無し。運命の嵐に晒される今現在の彼女を支えます!」
ドンッと胸を張って宣言した焔子はセツナ側に立つことを宣言するためにセツナへ身体を向ける。
「ご親友のアイ様がいるのは存じてますが、此度は束の間でも私と共闘願えませんか? 私の剣との相乗効果で、お姉様も新たな境地を見出せるやも」
「協力するのはなにも一人だけという決まりはないしね。構わないよ」
「そんな……ボクのアピールの機会が減ってしまう……」
そんな千尋の気持ちには気づかずに焔子を受け入れたセツナに焔子はC&Gツールナイフで威力を強化したインターフェアレンスブレードをアクティベーションⅡで大太刀にしてみせる。
「出遅れたことは妹分としては悔しいですが、貴方様には負けませんわよ!」
ビシッと千尋に指をさし宣言すると赤兎に跨った状態でセツナの機を作るために大和とコロナに向かって高速移動して戦場をかき乱しにかかった。
コロナの三次元的な攪乱と焔子の地上を高速で駆け巡る牽制でセツナの力を十二分に発揮できるように乱入者がこれ以上増えないように警戒しつつ侠客の威勢でコロナを怯ませ、赤兎で加速して突撃。
すれ違いざまに大太刀で加速の勢いを乗せたアドインパクトがコロナに直撃する。
息を詰まらせたコロナが吹き飛んだ先ではセツナが抜刀術の構えで待っていた。
抵抗もアドインパクトのブルー粒子に干渉したことによってアクティベーションⅠしたライトブレードのブルー粒子の流れを阻害、戦闘能力を激減され受け止めるのも危ういものになっている。
セツナの抜刀をやはり受け止められることもなく仕留められたコロナ。
大和の方も反動抑制して急制動と同時に急速旋回させることを実現させた、高速状態の赤兎で俊敏な小回りの背の上で返す刀でアドインパクトで追撃に入る焔子。
セツナの抜刀と挟撃される形で撃破された大和の顔に悔いた表情は浮かんでいない。