■プロローグ■
――偽界調査前。
「一つ気になったことがあるのですけれど」
「何かな、メイドさん?」
「メイド服着てますけど、厳密にはメイドじゃありませんわよ、わたくし」
ワールドホライゾンの最終兵器、と胸を張って自分語りを始めそうになった神野 羽生だが、すぐ我にかえってこほんと咳払いした。
「わたくしの事はどうでもよろしくってよ。
ネッサさん、リタさんのことは“お姉様”呼びですわよね。
あっちのギャルにはもっと生意気な口叩いてますのに、前に何かありましたの?」
「そりゃあ、お姉様は敬愛するお姉様だもの。当然でしょ」
尊敬しているのは嘘ではないようだが、ヴァネッサの顔は少し強張っており、どこか恐れているようにも見えた。
「まぁ結構前になるけど、リタ姉に分からされたからね。
ヴァネッサは誰に対してもこんな感じの態度だけど、これでもかなり丸くなった方」
「あらあら。ちょっと可愛がってあげただけじゃない。大袈裟なんだからぁ」
リタが笑みを浮かべると、ヴァネッサが小声でひっ、と漏らし、すくみ上った。
「リタ姉、それが怖いんだよ……」
「るぅるぅを怒らせたらマジやばなんだけど、普段のこのおっとりふわふわモードでも“圧”をかけられるからねー。
はーちゃんだって分かってるじゃん」
「まあ、そうですけれど。今は制御できているとはいえ、わたくしのティアマトの全力を涼しい顔で耐え抜くなんて、規格外もいいところですわ」
「ところで僕もちょっと疑問に思ったんだけど……君は武姫、それとも人間?」
「最近はよく分からなくなってきましたわ。分類上は武姫ですが、アーモリー製の娘たちとは違って、人間ベースですし。
……昔の記憶はありませんけれど」
「ふぅん……」
「何ですの?」
「いや、ちょっと君に興味が沸いただけさ」
「これはもしや、おねショタの波動?」
「んなわけないでしょ、この色ボケギャル」
「ネスっち、なんかあーしに当たり強くない!?」
こうしてみると、歳相応の若者たちのやり取りだ。
神格アバターを持っていようと、中身はまだ子供なんだと、羽生には微笑ましく思えた。
「どしたん、はーちゃん?」
「いえ……まぁ、こういうのも悪くありませんわね」
「はーちゃんって年下の男の子がタイプ的な?」
「そういう事じゃありませんわ。まったく……」
■目次■
プロローグ・目次
【1】偽界遊戯
【1】天空の城
【1】町探索
【1】我は魔王(小物)
【1】魔王城支部
【1】魔王
【1】大魔王のN界霊
【1】偽界浄化
【2】偽界廃都
【2】樹界霊
【2】塔
【2】世界樹のN界霊
【3】偽界闘技場
【3】N界霊の闘士
【3】星々
【3】闘技場のN界霊
エピローグ