・決着
マグナ・マテルに隙が生じ、攻撃を当てやすくなる機会は、オルグキングが二回に、三竜䰠がそれぞれ一回ずつ。
その機会を最大限に生かし、全力を振り絞った特異者たちは、体力と精神の限界を迎えつつあった。
しかし、限界を迎えていたのは、マグナ・マテルも同じ。
先に、マグナ・マテルの力が尽きた。
『……“オリジン”の定めた摂理を遂行するための存在であるはずの私が……』
マグナ・マテルは不思議でならなかった。
ここで、自らが滅びるのが。
ただひとりを残して創造主たるオリジンを滅ぼし、そして今、特異者たちを滅ぼし、アークを滅ぼす命令が、潰えた。
何度考えても分からない。
『どうして、私は負ける? 長い時の流れで、機能が故障していたのか? いや、全て正常に動いていた。ならば、“オリジン”の定めた摂理は間違いだったのだな』
フェリシアを模したマグナ・マテルの表情が、僅かに萎れる。
ほんの微かな変化に過ぎなかったが、確かに無表情から変わった。
浮かんでいるのは、悲しみか。
『ならば、終わろう。“オリジン”の定めた摂理そのものが誤りならば。根絶されるべきは私の方であるが故に』
今まで
『“オリジン”の定めた摂理』の一点張りだったのが嘘のように、会話が通じなかったマグナ・マテルは敵意を消した。
その身体が、崩れていく。
後から考えてみれば。
マグナ・マテルの精神は、まだ純粋な幼子のようなものだったのかもしれない。
創造主“オリジン”から与えられた定めた摂理を守る使命こそが、己の存在意義なのだと疑わず。
誰よりも飛躍して進化し、超越する自分だからこそ、正しいのだと疑いもなく信じていた。
長い年月を経ても、変わらなかったのか。
それとも、変われなかったのか。
『……生まれたことが過ちだったのなら。“オリジン”の定めた摂理は全て無意味だったのか?』
発せられたマグナ・マテルの最後の言葉は、嘆きに満ちていて。
砂のように、マグナ・マテルの身体は崩れ落ちた。