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真の楽園への重要な一歩

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真の楽園への重要な一歩
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・フルール歌劇団

 【使徒AI】メルセデスを搭載した花嵐で仕掛ける機会を窺いつつ、桐島 風花はマグナ・マテルと会話を試みる。

『つまり、貴女はこの世に存在する全てのものにとっての敵対的存在なのね』
『全ての種を根絶するのが私の使命だが、反発があるのは理解している。“オリジン”を含め、私が根絶してきた者たちの多くは皆、そうだった』
『三千界は広いわ。中には今の貴女じゃ逆立ちしたって勝てない実力者だっている。種の根絶なんて、到底できそうにない力量に見えるけれど』
『肯定する。私は未だ発展途上にある。だが、私はあらゆる種を取り込み成長する。やがては頂点に至り、全てを根絶する力を得る。それは私が存在する限り、“オリジン”が定めた摂理だ』

 会話して分かったのは、マグナ・マテルは時間経過で爆発規模を増し続け、しかも無限に爆発する爆弾のようなものであり、風花を含めた特異者たちに、マグナ・マテルは生かしておく理由もメリットも一切見当たらないということだった。

『そう。なら成長途中の今のうちに叩いておくわ。滅ぼされたらたまらないもの』
『根絶される“オリジン”の定めた摂理を受け入れるがいい』

 マグナ・マテルがフルール歌劇団に襲いかかってくる。
 迅雷 敦也は、放たれる攻撃のうち、星素によるものを魔法に近いものと感じ、汎用の魔術知識が対応できないか考えた。

「世界によって法則は異なるといっても、ある程度の共通項はあるはずだよな……」

 過去の経験から類似したものを導き出した敦也は、それにより対策を立てる。
 即ち。
 距離を取ること。
 攻撃を誘い、それを確実に回避、あるいは防御して反撃を行うこと。
 予測通りの攻撃が来るなら、対処は難しくない。

「まあ、それでも威力はシャレにならないんだよな……。これ単体じゃ決定打にはならねぇし。受け役がいるか」

 敦也が戦況を見守る中、エスカリボールを駆る望月 いのりは、積極的にマグナ・マテルへ攻撃を仕掛けた。
 インファントキラー<D>とクリアマインドソード<D>を駆使し、幾度となく斬撃を放つものの、マグナ・マテルは全て回避する。

『いのりちゃんの攻撃が全然当たらないよ。やっぱりこれもタイミングが重要なのかな?』

 不思議そうに、いのりが首を傾げた。
 スキルを一度見られて、それで回避されるのならば分かるのだが、今行っているのは通常攻撃だ。
 インファントキラー<D>による虹色のエネルギー波も織り交ぜて、遠近からもう一度怒涛の攻撃を行うものの、結果は同じ。
 逆に反撃に晒される。
 マグナ・マテルの、高振動する水を纏わせた斬撃を避けたいのりは、目を白黒させた。

『わけがわからないよ?』
「そうでもない。結構分かったぜ。よくやってくれた」

 いのりの戦いを見守っていた敦也が、労った。
 バーングラディエーターを手に、風花の花嵐が突撃していのりのエスカリボールと連携する。
 バーニアを吹かして直進的だった突撃軌道を変化させ、弧を描いて側面に回り込むとそこから鋭角に切り返して再突入する。
 動きに惑わされ、マグナ・マテルの放った斬撃は空を切った。
 しかし周囲に巻き起こる風圧だけでもかなりのもので、暴れる機体のコントロールを風花は押さえつけて維持した。
 突出した加速性能を持つ花嵐だが、速度でいえばマグナ・マテルも決して引けを取ってはいなかった。
 その機動性は、特異者の視点から見ても群を抜いている。

『図体の割に恐ろしく速いわね……!』

 何度斬りかかっても、マグナ・マテルは風花がスキルを使っているわけでもないのに回避に成功してしまう。
 斬撃が当たらないのは、マグナ・マテルの素の能力の値が、あまりにも高過ぎるせいだった。
 見切りを発動できずとも、見てから回避が間に合ってしまうのだ。
 ただ闇雲に攻撃するだけでは、一生攻撃を当てられそうになかった。

『ウォルフさん、ここは協力しましょう』
『ああ。その方が良さそうだ』

 風花はウォルフと連携して再度攻撃を試みるものの、やはり有効打とはならなかった。
 反撃とばかりに、マグナ・マテルは大振りの一撃を風花へ振り下ろした。
 余裕をもって避けた風花の目の前で、マグナ・マテルの一撃は地面に直撃し、粉砕して大量の土砂を巻き上げた。
 それらは岩石の雪崩となって、全てを飲み込まんと周囲へ広がっていく。
 マグナ・マテルの巨体から繰り出される攻撃は、余波だけでも周囲への影響が凄まじかった。
 攻めあぐねている状況だが、ある意味では予定に沿っているともいえるので、風花は無理をしてでも打開を狙いはしなかった。
 他の者たちも攻撃に加わり、本格的にフルール歌劇団の戦いが展開される。

『チャンスは必ずきっと巡ってくる……。それを引き寄せられるようにしておかないと。ところで、何か分かった?』
「ああ。閃いたぜ」

 風花に尋ねられ、敦也は頷く。
 先ほどの、いのりの戦いを分析し、さらに別の味方の攻撃が当たった場合の状況を分析した敦也は、あることに気付いた。
 攻撃を当てている者と、避けられている者の差が浮かび上がってきたのである。
 少なくとも、フルール歌劇団の中に限って考えれば、マグナ・マテルにスキルの使用を控えた状態で攻撃を当てているのは、敦也自身を含め、夢風 小ノ葉戦戯 シャーロット人見 三美伏見 珠樹の五人のみ。
 共通するのは、伸ばした方向性は違えど、皆己の強さを極め切った者たちだということ。

「……なるほどな。よし、なら俺たちを中心に攻撃を組み立てるか」

 敦也はフルール歌劇団のメンバーに指示を出していく。

「一斉攻撃のチャンスが来るまでは、五人の攻撃を中心に行う。俺たちで皆を引っぱるぜ」
『了解だよ。指示通りに戦うからね~』

 小ノ葉が手を振り、機体を進ませていった。
 【レリクス】クリュサオルを纏う三美は、珠樹のディマジオ子機に乗せてもらい、ふたり一緒に飛翔しながら敦也の指示に頷いた。

『分かりました。それなら、私と師匠も積極的に攻撃を試みるべきですね。チャンスが来るまでに、少しでも削っておきたいです』
『攻撃が当たるからといって、どれほどダメージを与えられるか分かりませんが……まあ、やってみましょう』

 珠樹のディマジオと、三美の【レリクス】クリュサオルが、積極的にマグナ・マテルへ攻撃を仕掛けた。
 三美は癒しの舞を舞いつつ、リズムよくシンフォニックソード【Rs】を振るい、マグナ・マテルへ斬撃を放つ。
 珠樹も三美と連携してホーリーウィップを直撃させて光を炸裂させ、ダメージを重ねる。
 当たってはいるようだが、マグナ・マテルの図体が大き過ぎて、効いているのかいないのかいまいち分かりにくい。
 露骨に動きが鈍るなど、反応を示してくれれば分かりやすいのだが。
 ある程度余裕があったので、三美と珠樹は平行して支援も行った。
 片想いする乙女の揺れる心を情緒豊かに再現し、甘酸っぱいラブソングを歌い上げる三美に合わせ、珠樹は勇ましく雄々しい歌を唄い、味方を鼓舞する。


* * *



 【使徒AI】鬼姫(通常コピー)を搭載した【レリクス】ブリドゥエンに身を包み、シャーロットはフルール歌劇団を率いてマグナ・マテルへ決戦を挑む。
 ジェニー・ヘアドレッサーやウォルフ・ランバージャックらも共闘に応じたので一緒だ。
 シャーロットの姿は、迅雷 火夜と同じくルルティーナ・アウスレーゼが操縦するフラウフルール EXA-IIのステージ上にあった。

「団長! 前線の指揮は頼んだ!」
『おっけー! ふーかちゃん、いのりちゃん、このはちゃんで前衛を維持! 何とかマグナ・マテルを食い止めて!』

 戦略的な全体指揮は敦也が、戦術的な細かい指揮をシャーロットが行う形で役割分担をする。
 フルール歌劇団に対し、マグナ・マテルは大技を放ってきた。
 大量の水が溢れ、轟音を上げて噴き上がり、龍の形を取って咆哮する。
 マグナ・マテルの行動に気付いたシャーロットは、慌ててルルティーナとアレクスへ向けて声を張り上げた。

『ルルちゃん、アレクちゃん、やばいの来るよ、回避、回避ー!』
『わふうううう!?』
『やべえぞ、急げ!』

 ふたりが回避行動を取るのと、水の龍が顎を開いて襲いかかってくるのはほぼ同時だった。
 ルルティーナがフラウフルール EXA-IIをダイナミックに急降下させ、マグナ・マテルが放った水の龍を振り切ろうとする。
 しかし離れてくれないので、今度は急旋回した。
 まだ離れてくれないので、今度は急上昇した。

『しつこいですっ!』

 光の軌跡をたなびかせ逃げるフラウフルール EXA-IIが、反転して素早くマグナ・マテルへ照準を定め、MBR・ブリューナクで反撃し、集中を削ぐことで何とか追い払おうとする。
 当然のように回避されたが、水の龍の追撃が弱まったため、その間にルルティーナは全力で距離を取った。
 今度はアレクスのファルケンHTが水の龍に狙われた。

『うおおお! 避け切ってみせる!』

 何とか二機とも避けるのに成功したものの、乱れた陣形を食い破ろうと、マグナ・マテルが突っ込んでくる。

『お願い! みみちゃん、たまきちゃん、時間を稼いで!』
『分かりました』
「やれるだけのことはやってみましょう」

 親機に珠樹を、子機に三美を乗せたディマジオが、マグナ・マテルを迎え撃ち交戦を開始する。
 それでも抜けてきた攻撃からは、アレクスが身を挺してルルティーナを庇う。

『させるかぁ!』

 轟音が響き、衝撃となってアレクスのファルケンHTを揺らした。
 フラウフルール EXA-IIを護衛するように、アレクスのファルケンHTは位置取りを続ける。

『マグナ・マテル! お前がどこまでも進化するというのなら、俺たちは全員の力を束ね合わせるぜ! お前の進化に、どこまでも食らい付いてやる!』
『ならば私は更なる進化を進めるとしよう』

 巨大なフェリシアを模したマグナ・マテルの瞳が、無機質にアレクスのファルケンHTを睥睨した。


* * *



 【使徒AI】鬼姫(通常コピー)が搭載されたカゲミツに乗った状態で、小ノ葉はマグナ・マテルを見上げた。

『見れば見るほどでっかいねー。ほんとマジ訳わかんないや……』

 どうしてオリジンがマグナ・マテルを作ったのか、説明されてなお小ノ葉にはいまいち理解できなかった。
 考えていても仕方がないので、戦いに集中する。
 敦也の読み通り、小ノ葉はマグナ・マテルに対して悪くない戦いをしていた。
 斬騎剣<D>とインファントキラー<D>の二刀流を駆使して、多少の被弾を覚悟してでも小ノ葉はマグナ・マテルへ斬撃を当てていく。
 光の妖精たちの歌に支えられた攻撃力は、確かにマグナ・マテルへ通り、少しずつダメージを蓄積させているようだった。
 とはいえそれでどうにかなるならとっくの昔にマグナ・マテルは倒されているだろう。

『いっけー!』

 斬騎剣<D>の刀身をマグナ・マテルの頭上目掛けて射出すると、小ノ葉は自らもカゲミツを加速させた。
 チェーンで繋がっていることを利用し、刀身の軌道を変えてマグナ・マテルの頭部を強襲させると同時に、インファントキラー<D>を振るい、虹色のエネルギー波でさらに狙い打ちした。
 挑むのは刃と刃を交わす接近戦だ。
 マグナ・マテルのいなそうとする動きを逆に利用し、刃を滑らせ斬撃による反撃を凌ぐ。
 ルルティーナが操縦するフラウフルール EXA-IIのステージ上に、【レリクス】クリュサオルを纏った火夜の姿があった。

『種を滅ぼすことが存在理由だなんて……。そんな奴に火夜ちゃん負けないから!』

 火夜はマグナ・マテルに憐れみを感じていた。
 マグナ・マテルはまるでそれが義務であるかのように、あくまで無機質に戦いを挑んできた。
 いや実際、マグナ・マテルにとってはそれは義務に近い認識ではあるのだろう。
 そう定めて作られ、動くことに疑問を抱かず、己の行動結果を良しとしてはいても、そこにマグナ・マテルの感情が介在する余地はない。
 元から感情などないのかもしれないし、そうではないのかもしれない。
 どちらにしろ分かるのは、マグナ・マテルは別に種を根絶することに特別な感情を抱いているようには見えないということだ。
 己の存在理由を果たす喜びも、命を奪う悲しみもなく、ただ淡々と与えられた役目に従って動いている。
 それは、機械と何が違うのか。
 カラドボルグを纏う巨大なフェリシアの姿を取っているマグナ・マテルは、黒いエネルギーの渦を剣に纏わせた。
 放たれた漆黒の衝撃波を、火夜は側面に沿ってシンフォニックソード【Rs】の刃を滑らせ、受け流した。


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