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真の楽園への重要な一歩

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真の楽園への重要な一歩
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・ライトニング騎士団

 レベッカ・ベーレンドルフが操縦するファルケンHTのステージで、アルフレッド・エイガーは舞い踊る暖かな風花を発動させた。 アルフレッドを中心にステージ上に花園のステージが新たに生み出され、どこからともなく流れ込んできた暖かな風が春の香りを運ぶ。
 花園の効果範囲にいる味方の闘志が掻き立てられ、その戦意を向上させた。
 さらに身体能力の向上と精神安定効果を同時に与える。

「相手がどんな強敵だろうと、オレたちのやることはいつもと変わらねぇ! 全力で支援していくぜ!」

 星音を維持しつつ、アルフレッドは味方を鼓舞する。
 発動したアルフレッドの星音に、シオン・ツバキが元気の華舞を合わせる。
 アップテンポの明るいメロディに合わせ、シオンは軽快にステップを踏み、舞い踊った。

「テンション上げていこうね!」

 シオンの足元から、色とりどりの小さな花を咲き乱れ、花びらを散らせていく。
 宙を舞う花びらが、味方に癒しの力と共に戦うための活力を漲らせた。
 響き渡る星詩と星音を聴きながら、パワーアームズを使い、レベッカは桐ヶ谷 遥やジェノの機体の整備と強化を行う。
 魔力ドライブ炉のチューニングをして出力を高めると、続けて装甲にショック吸収効果を持たせる。

『少し待て。すぐに終わらせる』

 ふたりへ告げてレベッカは作業を急いだ。


* * *



 メンテナンス・サップを使って味方のドラグーンアーマー各機を、戦闘に大きな支障がないか手早く確かめたビーシャ・ウォルコットは、【使徒AI】アベルを搭載した己のシュワルベWRdreiを発進させた。

『乗員は私とアベルさん以外居ませんし、遠慮は無用ですよねぇ』

 ライトニング・ロア<G>の砲声が響く。
 発射された雷の弾は、高速で飛来してバルバロイの群れに着弾すると、周囲に雷を拡散させて雷鳴を轟かせた。
 反撃とばかりに伸びてくるのは、マグナ・マテルが放った、圧縮された水が象った、触手のような水の鞭。

『っ!』

 マグナ・マテルから向けられた殺気を感知したビーシャは、方角から水鞭の軌道を予測し回避行動を取る。
 同時にビットボマー<G>を展開させた。
 シュワルベWRdreiから切り離されたドローン砲台が、本体との連携攻撃でマグナ・マテルを狙う。
 だが当たらない。

 【使徒AI】アルテに周辺の情報収集と伝達共有を任せ、ヒュッツ・スヴェンステンはシュワルベWRdreiを護衛するためフォールチョンでビーシャに同行していた。

『さっそく活躍の機会がやってきたな』

 初撃を避けてみせたビーシャだったが、そう何度も避け続けることは難しい。
 狙われ続ければ、いつかは当たるだろうし、それが次の攻撃である可能性もないとはいえない。
 そんなビーシャの被弾を防ぐことが、ヒュッツの役目だ。

『好きに撃たせるわけにもいかん。例え当たらずとも、邪魔はさせてもらうぞ』

 フォトンシューター<D>から光を纏った矢を放ち、マグナ・マテルへ牽制射撃を行う。
 当然のように避けられるものの、元より少しでもビーシャから注意を逸らすことが目的だ。
 当たることなど最初から期待していなかった。
 攻撃したことで、ヒュッツの目論見どおりマグナ・マテルからの攻撃はビーシャだけでなくヒュッツをも対象に含めるようになってきた。

『そうだ。そのまま俺を狙ってこい』

 側面を向けながら縦に大きく動くことでマグナ・マテルからの攻撃を避け、囮となりつつ好機を窺う。


* * *



 遥は、マグナ・マテルを倒すためにはアマゾナス・マグナートと戦った時以上に、味方との連携と大技を放つタイミングが重要になると感じていた。
 【使徒AI】敏腕サポーターのサポートを受けつつ、マグナ・マテルと相対する味方の位置関係や、どれほどダメージを与えているかを大まかに把握する。
 機体に搭載されている敏腕サポーターが、ライトニングカリバーンⅢとのリンクを強化し、感覚を加速させた。
 敏腕サポーターを通じて、感覚の加速は遥にまで及ぶ。
 タイミングよく、整備も完了した。

『……ジェノ。わたしたちも出るわよ』

 声をかけ、遥が機体を勢いよく発進させた。
 【使徒AI】鬼姫(コピー)を搭載したデュランダルを、ジェノ・サリスは遥のライトニングカリバーンⅢと並走させる。

『速度を上げるぞ。機動力のひとつやふたつ、限界を越えなければ勝利は得られん』

 操風のペンダントで風の後押しを受けたジェノが、機体を更に加速させた。

『援護は任せた。突っ込む』
『無理するなとは言わないわ。思う存分暴れてきて』

 遥を完全に引き離し、ジェノはデュランダルをマグナ・マテルへ肉薄させた。
 分かってはいたが、マグナ・マテルはやはり間近で見ると凄まじい大きさだった。
 一般的なドラグーンアーマーやスタンドガレオンと比べても、三倍近く大きい。

『全てを根絶する。なにものも、その“オリジン”の定めた摂理からは逃れられない。“オリジン”自身も、だ』
『狂ってやがる……そのまま言ってろ……!』

 放たれるマグナ・マテルの振り下ろしは、その巨大さも相まって、ジェノには壁が上空から落ちてくるようにも見えた。
 反射的に【神格】ジョワユーズを構えるが、明らかに受けられる大きさではない。
 己の技量と、デュランダルのフレキシブルバーニア、呼応式加速装置の三つを併用させて急加速する。
 方向転換を駆使しながら超高速で縦横無尽に空中を跳び回り、避けた。
 マグナ・マテルは無数の木の根の大量に出現させ、ジェノのデュランダルを含む周囲のドラグーンアーマー、スタンドガレオンへ、無差別に投射した。
 直撃を受ければ、ジェノとてただでは済まない。
 純粋な威力もマグナ・マテルの力を考えれば馬鹿にできないだろうが、それ以上に捕まると実質機動力を殺されるに等しい状態になるのが危険すぎる。
 木の根は一度避けても、鞭のようにうねって進路を変え、ジェノのデュランダルを追尾してくる。

『ちっ……!』

 オーラを防壁として展開し、迫り来る木の根を受け止めようとした。
 しかしオーラの防御ができない側面から、別の木の根がデュランダルを襲う。
 気付いた遥が、すかさずその木の根を撃ち抜き到達を遅らせてジェノを助けた。
 生まれた時間差を利用してジェノが避け切る。

『助かった。礼を言う』
『気にしないで。これが役目よ』

 ジェノが遥に話しかける間も、鬼姫(コピー)がマグナ・マテルへ反撃するも、あっさりと回避された。
 そのままジェノは回避に集中し、同時にマグナ・マテルを観察し続ける。
 攻撃の軌道やタイミングを読み、回避の精度を高めて不慮の事故が起こる確率を低下させると共に、行動パターンを解析して確実に倒す好機となるものがないか探した。
 まともにマグナ・マテルへ攻撃を当てられているのは、味方全体を見回してもごく一部の人物に限られた。
 スキルを見切られて回避されているのではない。
 ただ素の能力値だけで、その前段階のスキルに頼らない攻撃をそのものすら避けられている。
 遥とジェノのさらに後方からは、フィーリアス・ロードアルゼリアがコンチネンタル2Mを操縦して援護する。
 三機一体のネイバースフィア<G>を全て射出すると、生物のような複雑な軌道でマグナ・マテルへと襲いかからせた。
 反撃として放たれる斬撃で発生した真空波に機体ごと両断されそうになるのを、ジェット噴射しながらホバリングを行い、タイミングをずらして急加速しながら旋回することで避けた。
 一応構えておいた【神格】アイギスに、攻撃が通過した際に発生した圧力が加えられ、振動が伝わって機体を揺らす。

『冷静に動かなければなりませんね……』

 マグナ・マテルの攻撃が一歩間違えれば大惨事になりかねない威力だと察し、乱れそうになる心を沈め、遥とジェノのサポートを続ける。


* * *



 スキルを全放出して畳みかけることのタイミングは、限られる。
 一度見られたスキルには無条件で対応されてしまうし、そうでなくとも素の実力が高過ぎるマグナ・マテルが相手では、さすがの遥といえども、まともな有効打を加えることは難しい。
 実際に、様子見を兼ねて行ったTフォースブラストライフルの初撃は、掠りもしなかった。
 そしてマグナ・マテルの反撃は苛烈だ。
 瞬く巨大な閃きは、カラドボルグを纏う巨大なフェリシアを模したマグナ・マテルが放つ、無数の斬撃の軌跡だ。
 その身が持つ大質量が生み出す運動エネルギーにによって暴風が引き起こされ、余波となって拭きつける。

『回避して!』

 ドラグーンソナーに映る味方の反応が、遥の声と同時かそれより少し早く、一斉に散開する。
 遥自身も、斬撃を避けるために回避機動を取った。
 ビーシャと協力し、レベッカは後退してくる味方の機体を最後方で回収し、応急処置作業を行う。
 故障部位を見つけ出し、簡易換装を済ませるだけの簡単なお仕事だ。

『あくまで応急処置よ。過信しないで』

 無事を祈りつつ、戦場へと送り出す。
 マグナ・マテルの攻撃がデータとして蓄積されていく度、遥はその脅威度が増していくのを感じていた。

『こっちが決める前に、不測の事態に陥る可能性は充分にある。立て直せるようにしておかないと……』

 もしもの場合を考え、矢継ぎ早に指示を出した。
 遥はTフォースブラストライフルによる射撃を、通常弾からフォース弾にここで初めて切り替えた。
 直線軌道から放物線へと弾道を変化させることで不意討ちを狙った一射だったが、マグナ・マテルはそれにすら対応し、最小限の動きで避けてしまった。
 既に、使える手段は全て使い、遥は自分の実力と機体性能を引き上げている。

『その上で、これなのね……。本当に、好機を見逃さずに捉え、そこで落とし切れるかが、鍵になるわね』

 ライトニングカリバーンⅢの付近で、急速に空気が凍結していく。
 巻き込まれて一緒に凍り付かされてはたまらないと、離脱を試みる遥だったが、急激に低下する周囲一帯の温度の範囲外へ逃げるには、あまりにも動き出しが遅い。
 そして、氷結した場所から数えられないほど大量の氷柱が形成され、ライトニングカリバーンⅢへと一斉に射出される。

『……緊急回避して! コントロールを回すわ!』

 自律的な回避行動を許可された敏腕サポーターが、機体を強制的に動かし強引に回避を成功させた。
 最後方に位置するレベッカではあるが、ファルケンHTが全く狙われないかといえばそうではなく、遠方からマグナ・マテルの放つ攻撃に巻き込まれかけることは何度もあった。
 その度に、蛇が身をくねらせるように機体をうねらせ回避した。


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