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真の楽園への重要な一歩

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真の楽園への重要な一歩
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・鶏肉騎士団

 プロジェクターハーモニクスが、優・コーデュロイがこれから歌おうとしている星詩の効果を上昇させる。
 ロイヤル・ウルトラマリンドレスで高まった自らの魔力を感じながら、優は青いオーラを身に纏った。
 同じように、ルージュ・コーデュロイもネプティネス・サファイアに込められた水の魔力を解放し、トルバドールとしての力を大きく向上させた。
 ロイヤル・クリムゾンドレスにより、優と同じようにルージュの魔力もその勢いを増し、鏡移しであるかのように、優と同色のオーラを纏う。
 星詩の発動に備えて、呼吸を整えた。

「準備はいいですか?」
「いつでもいいわよ」

 優とルージュは互いの意思を確認した。
 ルージュとタイミングを合わせ、優がウェイクアップを発動する。
 優しいアップテンポのメロディが、疲労に折れそうな心や、実際に折れてしまった心を癒やし、やる気を漲らせていく。
 癒しの力は身体にも及び、星詩の効果を受けた者たちの傷が治っていく。
 湧き出る気力が、身体の動きを軽くし、素早さを上昇させた。

「より良い明日を迎えるため。より良い未来を引き寄せるため。諦めないで進みましょう」

 星詩の展開に遅れて、優の周囲に小さな光の妖精たちが召喚された。
 現われた妖精たちは、煌びやかに輝きながら、優の星詩に合わせて歌い始めた。
 妖精の歌を聞いた味方の攻撃力と魔法攻撃力が高まる。
 ラブミー!を発動させたルージュが、己の星詩を優の星詩に合わせた。
 自愛の素敵さを説くルージュの星詩が、聞いた味方の心を熱くさせ、自信で溢れさせた。
 心身を癒やし、戦いの後押しを行う。
 ルージュの纏うオーラが赤に変わり、味方に攻撃力上昇の恩恵をもたらした。


* * *



 周囲のバルバロイたちとの戦闘から自分のもとへ合流してきたイペタムを、納屋 タヱ子は迎え入れる。

『イペタム。わたしので良ければ貴女が知りたがっていた生きる意味をお話ししましょうか』
『なんだい藪から棒に。そりゃ聞かせてくれるなら聞きたいけど、それは生き残ってからだろ?』

 不機嫌そうに鼻を鳴らしてみせるイベタムへ、タヱ子はほほえんでみせた。
 少し、心配になる。
 今、イベタムに自然な笑顔を見せていることができているだろうか。

『……死ぬつもりはありませんけど、それでも、ここで言っておかないともう伝える機会がないかもしれませんから』

 間違いなく、最終決戦だ。
 アークの命運だけでなく、他の世界の命運すらも含めた。
 それはつまり、この戦いに負ければ、単なるアバターの消失に留まらず、最終的にタヱ子自身滅びという名の真の死を迎える可能性があるということだ。
 ここで己が終わるかもしれないという事実に、恐れを抱かない者などいないだろう。
 それでも恐怖を乗り越えて、タヱ子はここにいる。

『……いいよ。聞いてやる』
『それはきっと、精いっぱい生きた後に死んだら分かることなんだと思います。だから、生きてください。人生を楽しんで、謳歌して、誰か好きな人と結ばれて、いつかおばあちゃんになって。たくさんの孫に囲まれて大往生してください』
『なんだそりゃ……“この身体”でそれができると思っているのかい?』

 呆れたようにイペタムがタヱ子へ振り返る。
 彼女の身体はトランスヒューマンとして肉体改造された上に、バルバロイを取り込んでいる。とてもではないが、“まとも”な身体とは言い難かった。

 人の生きた意味なんて、所詮生きている間には分からないことだ。
 人生という名の長い旅路を走り抜いて、その末路。
 最後の最後に悔いがなかったと言えるような終わりを迎えられるのなら。
 それはきっと、生きる意味があったということなのだろう。

『できますよ、あなたが心から望めば。病は気から、というでしょう? あなたが心から望めばその身体だって応えてくれるんです。あなたは苦しんだ分、これからは幸せになるべきなんです。その障害を、わたしたちが取り除きます。マグナ・マテルに勝利するのを見ていてください。わたしの傍、その特等席で』
『……ついていくと決めたのはアタイだ。いいぜ、タヱ子。あんたにとことん付き合ってやるよ』

 イベタムがタヱ子に肩を並べる。
 そんなイベタムに感謝しながら、タヱ子はクモキリマル弐式に搭載されている【使徒AI】鬼姫(コピー)へ、マグナ・マテルとの戦いに関して助言を求めた。
 鬼姫(コピー)は甲虫型バルバロイ、及び人型バルバロイに関する知識を総動員し、それをマグナ・マテルへ当て嵌めようとする。
 結果はエラー。
 そもそも前提が違うようだ。
 バルバロイ追加装甲の使用をデュランダルⅢに搭載している【使徒AI】アベルに告知してもらいつつ、松永 焔子はオルグキングに誘いをかけた。

『騎士団という信頼できる仲間達による集団の強さ。貴方には未知の強さの形を体験しませんか?』
「敗者である儂に拒否権はない。従おう」
『……一時の協力ではなく、勝者としてでもなく、信頼する仲間としてお誘いしますわ。私たちの騎士団領に来ませんこと?』

 眉を跳ね上げ、オルグキングが焔子を振り向いた。

「断る。そもそも儂の処遇は、貴様らの一存で決められることではあるまい」
『あらら。振られてしまいましたわ』

 オルグキングの言うことももっともなので、焔子は食い下がらずあっさりと引き下がった。
 キョウ・イアハートは、事前準備として各機体に改造を施す作業を進めていた。
 即席の改造なので時間経過で効力がなくなってしまうものの、耐久性が向上する。

『俺たちを滅ぼすのなら、先に俺たちがお前を滅ぼすまでだ。滅ぼすものを滅ぼすってのもアリなんだぜ』

 シュワルベWRdreiのステージに優とルージュ、幸人らを乗せ、キョウは機体を発進させた。
 工具類を戦闘で用いる際の立ち回りや攻撃方法の基本をスタンドガレオンを用いた戦闘に対応させ、効率化して操縦に活かした。


* * *



 皆、全力で戦えるコンディションが整った。
 戦いの立ち上がりから、マグナ・マテルの攻撃は苛烈だった。
 その巨体から繰り出される一撃は、掠っただけでもダメージは馬鹿にならず、大きな損害となる。
 さらにマグナ・マテルは巨体に似合わぬ俊敏さを兼ね備え、攻守において隙が無い。
 マグナ・マテルが疾駆する際には、大質量が超高速で移動することで発生した、強烈な衝撃波が周囲に巻き散らされるほど。
 みるみるうちに、マグナマテルと戦う味方の損耗が嵩んでいく。

「戦いはまだ始まったばかりだ。ここで怖気づいてはいけないよ」

 紫月 幸人が風花石麗を発動する。
 自然と命の礼賛曲が、隔絶した圧倒的な実力を前に萎縮する心を鼓舞し、奮い立たせた。
 同時に身体の傷や機体の損傷を回復させていく。
 幸人目掛けて放たれたマグナ・マテルの攻撃は、草花に覆われた石柱が、己の破壊を代償に守った。
 柊 恭也はカリバーンⅢのドラグーンソナーで得た位置情報を友軍に共有しつつ、Tマギ・トリプルカノン<D>によるロックオン砲撃を狙っていた。
 恭也が機体とのリンクを強化してすることで感覚を加速させ、さらに【使徒AI】鬼姫(通常コピー)がそれに魔力ドライブ炉のリミッターを一時的に解除し出力を上昇させた。

『出し惜しみはしねぇ! 最初から飛ばしていくぜ!』

 砲撃と同時に次弾を装填する一連の動作には淀みがなく、本来の三発を撃ち尽くしても砲撃が途切れない。
 まるでガトリング砲を扱っているが如く、連なるように次々砲弾が発射された。

『こいつもくらえ!』

 孫の手・改<D>により、マギ・シャドウハックバスのロックオン狙撃も追加し、雨あられと攻撃を撃ち込んだ。
 判誘導された攻撃が、一斉にマグナ・マテルへ殺到していく。
 焔子やタヱ子も攻撃参加し、十字砲火となった鶏肉騎士団攻撃部隊の攻撃が、マグナ・マテルに直撃する。
 しかし煙が晴れて姿を現したマグナ・マテルに、大したダメージを受けた様子は見られない。
 ほとんどの攻撃を、スキルに対する特殊な無効化能力を使わずとも素の能力だけで防ぎ、あるいは避けてみせたのだ。

『全てを根絶し、無に返す。それが私の存在意義であり、そのために私に“オリジン”によって作られた。ならば私は、己が生まれた理由を果たすのみだ』

 マグナ・マテルが姿を模した、カラドボルグを纏った巨大なフェリシアが、その近接武装を振り抜く。
 空間が歪み、何かが走った。
 次々広がるその亀裂は、空間の断裂だ。
 まるで導火線のように伸びていく空間の断裂は、鶏肉騎士団攻撃部隊の面々を飲み込む勢いで到達する。
 ゆっくりと閉じていく空間の亀裂を見ながら、幸人はマグナ・マテルのその強大さを肌で感じ取っていた。

「ひとつ教えて欲しいんだけど、全て破壊したあとにはどうするつもりなんだい?」
『その時は、私自身も朽ちるのみ。役目が終われば私も存在理由はない』

 どこか無機質な回答だった。


* * *



 二機のビットボマー<G>が、キョウのシュワルベWRdreiから同時に飛び立つ。

『片方操縦頼んだぜ!』

 一機の権限を【使徒AI】メルセデスに託し、展開されているマグナ・マテルへの攻撃の穴を埋めるよう位置取り、遠距離から砲撃を加えた。
 ツヴァイハンダーⅡ【A】を駆る信道 正義が、マグナ・マテルへ接近戦を挑む。

『どれほど強大だろうと、負けるわけにはいかないんでな……!』

 機体に組み込まれたソードアシストユニットが正義の戦闘をサポートする。
 オーラでフィジカル面を強化し、魔力を犠牲に身体能力と筋力を大幅に高めた。
 一度見せたスキルが通じなくなる以上、攻撃スキルは切り札的に使う必要がある。
 赤い光の軌道が、マグナ・マテルから伸びていく。
 それは真っ直ぐ正義を狙っていた。
 マグナ・マテルの手に無数の光の輪が出現する。
 それらを掴み取ったマグナ・マテルは、一斉に正義目掛けて投擲した。

『正義さん! 狙われていますよ!』

 すぐにタヱ子が正義へ警告を発する。

『分かっている! 大丈夫だ!』

 タヱ子に叫び返した正義は、すぐさま迫り来る光の輪たちの軌道を読んでタイミング合わせ回避を試み、小刻みにステップを踏んだ。
 しかしマグナ・マテルも正義の行動を読んでおり、回避によって生まれる偏差を計算していた。

『どうだ、避け切ってみせたぞ……!』
『無駄な足掻きだ。根絶される未来は変わらない』

 読み合いはひとまず正義に軍配が上がり、正義は光の輪の脅威を退けた。
 反撃にインファントキラー<D>を振るい、斬撃をエネルギー波として飛ばすも、これはマグナ・マテルにあっさりと回避された。
 Tフォースブラストライフルを発射するタヱ子が、さらに正義へ追撃しようとするマグナ・マテルを牽制する。
 焔子はヘビーガトリング砲を乱射するオルグキングと一緒に、自らもヒットアンドアウェイを繰り返しながらヘビーガトリング砲<D>を乱射して大量の弾幕を展開した。
 今までほとんどの攻撃を回避してきたマグナ・マテルだったが、ここで初めて被弾する。

『……うん?』

 違和感を感じた焔子は、思わず首を傾げた。
 当てやすい弾幕とはいえ、今までのマグナ・マテルならば回避していてもおかしくないのに、被弾した。
 そこから導き出せるのは、オルグキングにタイミングを合わせれば攻撃を当てられる可能性だ。
 三竜?についても同じことがいえるかもしれない。
 急ぎ皆に伝えると、いつこの切り札を斬るかという話になった。
 優が維持する星詩は、ルージュの星詩や幸人の星音らと混ざり合い、セッションとなって互いを高め合い、支えていく。

「苦しい時こそ盛り上げ、楽しみましょう。私たちに、悲壮さは似合いませんから」
「面白おかしく未来を過ごすために、今は戦うのよ。相手がどんなに強大だったとしても、私達の愛で迎え撃つまでなんだから」

 星詩を維持する優とルージュは、マグナ・マテルの注意を引いた。
 そのため何度も襲われかけるも、なんとか鶏肉騎士団の仲間たちに守ってもらい、意地でも星詩は途切れさせなかった。
 幸人も加え、優とリューズの三人で、二つの星詩をひとつの星音を維持していく。


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