・アルガス騎工団&キルデア騎士団3
【使徒AI】ヴァレットを搭載したツヴァイハンダー・エリートを駆る
永見 玲央は、キルデア騎士団の一員としてアルガス騎工団の援軍要請に応え、戦場へやってきた。
キルデア騎士団のクローヴィス団長、ガストン副団長からは、拠点の構築、運営に必要な人員たちに対する各種手当も含め出発前に許可を得ているので、その足で真っ先にアルガス騎工団の団長である鈴奈へ許可を貰いにいった。
長期契約がそろそろ欲しいかなと玲央としては思ったりもするのだが、こういうのは正直許可が降りるかどうかはケースバイケースなところがあるため、確約はできないとのことだった。
『損傷した機体の修理及び整備、点検を円滑に行うため、駐屯地内に拠点の構築許可を頂きたいのですが』
『え? 機体の修理と整備を手伝ってくださるんですか? 凄く助かります! 見ての通り戦闘中ですので、安全な場所へご案内しますね!』
玲央の申し出は、鈴奈にとっては願ってもないことで、もちろん拒否するようなこともなく、野戦整備拠点構築許可は簡単に降りた。
ここからは、
永見 博人の出番だ。
操縦する整備専用ピレリWSから垂れ流される
【使徒AI】お局様の、甲虫型と人型バルバロイに関する蘊蓄をBGM代わりに聞きつつ、メカニックとしてその腕を振るう。
『好きなことを好きなだけできるって、幸せなことだよね』
誰に何と言われようと、ひとりの機械好きとして、博人は全力で己の役割を果たすつもりだった。
損壊したドラグーンアーマーやスタンドガレオン、レリクス、イダテンといった兵器の数々を応急修理して、最低限動かせるようにして返す。
それが求められている博人の仕事だ。
一見整備に関係ないことを言っているお局様もあれはあれで、さりげなく整備資材の在庫をカウントしており博人の使用ペースが速すぎると感じると、制止を飛ばしてくるので馬鹿にできない。
最初は博人の精神残量に関してのみ口出ししていたが、気付いたら口出ししてくる範囲が広がっていた。
『いついかなる時も倹約の心を忘れずに、でしょ。分かってるってば』
お局様と会話しながらも手は止まらず、たちまち一機の応急修理を完了させて、送り出す。
* * *
一応自身でもツヴァイハンダー・エリートのドラグーンレーダーでバルバロイの反応が近くにないことを確認しつつ、玲央は野戦整備拠点の前方に陣取り、バルバロイの群れが野戦整備拠点に雪崩れ込むことのないように、支援射撃を行った。
Tフォースブラストライフルの弾丸が狙うのは、群れの最後尾に位置するバルバロイ・ヘッジホッグとバルバロイ・ポジトロンだ。
二種のバルバロイたちも、大量の生体ミサイルと、荷電粒子砲で応戦してくる。
『正面からの撃ち合いですか。望むところです』
玲央も引かず、激しい銃撃戦が繰り広げられた。
伏見 光葉は博人が行う修理作業を手伝っていた。
とはいっても、光葉の行う修理法は高位の治癒魔法による力押しの修理で、修理こそほぼ完璧に行えるものの、その代わり精神力の消費が膨大だ。
応急処置ではどうにもならないような大破状態でも何とかなるため、いざという時の修復手段としてはとても心強い。
便利さを代償にそう簡単に連発できるものではなく、基本は博人の指示を受けて部品をかき集めてくるのが仕事になる。
『これとこれと、これ。全部書いてあるから、持ってきて』
「分かった。探してくるぜ」
部品を集めて届けたら、野戦整備拠点に機体を預けてくれた操縦者たちに、メンタルヘルスケアも行う。
特にこのメンタルヘルスケア作業は地味に需要が多く、戦いが起きているのを不安がるアルガス騎工団の領民たちからも声をかけられ、光葉はあちこち駐屯地中を駆け回ることになった。
サカイヤチョコレートを食べたり、境屋印のWH栄養ドリンクを飲んだりして、身体の疲労を取り除き精神力の回復を図る。
「……忙しいが、悪くはねえな」
感謝する領民たちに手を振って応え、光葉は野戦整備拠点に戻っていった。
* * *
オサフネを纏い、
ジーン・シアラーはアルガス機工団の駐屯地防衛に協力するキルデア騎士団の一員として、参戦する。
ジーンはバルバロイ・ポジトロンを最優先撃破目標に定めた。
『一方的に撃たれ続けては、今は良くてもそのうちまぐれ当たりしかねんからな……。戦況もどう転ぶか分からん。早めにご退場願うか』
攻撃対象を定めたジーンは、バルバロイ・ポジトロン側の考えを予測する。
遠距離からの狙撃を得意とする以上、そう簡単に前に出てくるような位置取りはしないだろう。
とすれば群れの後方に位置する可能性が高い。
そして、後方から射撃するという関係上、多少傾斜がついていた方が狙いやすい。
下り坂が安牌か。
『……ふむ。この辺りか』
地形図から当たりをつけたジーンは鈴奈に己の考えを伝え、先回りした。
遮蔽物を利用して身を隠す程度の待ち伏せでは、バルバロイの群れを欺くことはできない。
甲虫型バルバロイの多くは、熱源探知ができるのでそこから群れ全体にジーンの存在がばれてしまうからだ。
先制の荷電粒子砲を撃たれて狙われ、ジーンは居場所がばれていることに気付く。
咄嗟の回避を成功させたジーンは、気持ちを切り替える。
『まあいい。ならば、気を引くまでだ。攻撃目標が分散すれば、味方が付け入る隙も出てくるだろう』
【使徒AD】豪気なパイロットが操縦するスタンドガレオンのステージ上に、
フランセス・ルシオの姿はあった。
ジーンと一緒に先回りして、同じような場所に隠れる。
そしてジーンと同様の理由で、存在が露見した。
利用していた遮蔽物ごと荷電粒子砲にぶち抜かれそうになったため、慌ててその場から逃げ出した。
『隠れても、もう意味ないよね』
もはや正面からの砲撃戦を展開するしかない。
覚悟を決めて、音の呪いを発動した。
自分の声を歪んだ音の重なりに変質させ、大出力でバルバロイ・ポジトロンたちへ叩きつける。
強烈な頭痛と不快感を強制的に感じさせられたバルバロイ・ポジトロンたちは、一時的に砲撃の勢いを鈍らせる。
『今だよ!』
ジーンに好機であることを伝え、フラン自らも頭痛やマヒなどを引き起こす闇詩を連打した。
星詩でなければバルバロイたちに効果は薄いものの、やらないよりはマシだろう。
居場所がばれていようといまいと、ジーンが狙うのはバルバロイ・ポジトロンのみ。
フランの星詩にタイミングを合わせ、オサフネを突撃させる。
『発射の隙など与えるものか!』
呼応式加速装置<D>で一気に間合いに捉え、纏わりついてグラヴィティ・ソード<D>を振るった。
* * *
しばらくすると、バルバロイが出す物音は、聞こえなくなっていた。
殲滅に成功したのだ。
『さあ、次に参りましょう。キルデア騎士団の駐屯地へ。到着後、アルガス騎工団はキルデア騎士団の指揮下に入ります』
通信で味方に伝え、鈴奈はアルガス騎工団を引き連れ、キルデア騎士団と共に新たな戦場へ向かった。