・アルガス騎工団&キルデア騎士団2
アルガス騎工団の応援要請に応え、応援として駐屯地に駆けつけた
九曜 すばるは、すぐさま防衛に入った。
ホライゾンホバーボードで低空を飛び回りながら、防衛戦の後方から突破してくるバルバロイが出ないか警戒する。
「負傷者は無理せず下がれ! 回復させる!」
激戦になっているであろう防衛の最前線へ呼びかけた。
運ばれてきた負傷者の治療に、すばるはすぐさま取りかかった。
実体のない大きな樹と爽やかな草原を出現させ、樹から降り注ぐ太陽光で、生命力を強化し活力を漲らせる。
「よし、回復が終わったぞ」
後方とはいえ、バルバロイの攻撃は射程や範囲の長いものも多く、一度に複数飛んでくる生体ミサイルや、威力が馬鹿にならない荷電粒子砲の一撃など、警戒しなければならないものばかり存在する。
バルバロイと戦い慣れているスバルたちはまだしも、植民してきた一般人たちは、ちょくちょく襲撃を受けていることからある程度耐性はついているとはいえ、それでも精神の負担は大きい。
有事の際には、真っ先に避難させる必要があった。
「こっちだ。落ち着いて移動してくれ。ゆっくりでもいい」
手が空いたタイミングを利用して、すばるも避難誘導を手伝う。
* * *
バルムBCを操縦する
ダークロイド・ラビリンスが、アルガス機工団の駐屯地へ駆けつけた。
状況としては、駐屯地に攻め込もうとするバルバロイの群れに対し、護りを固めてアルガス機工団が防衛戦を行っている形で、援軍のダークロイドたちを含むキルデア騎士団がちょうどバルバロイの群れの後背を突いた形になった。
『さて、応援要請を受けたからには、徹底的に敵を壊さないとなぁ……!』
強襲をかけるには、これ以上にない良いタイミング。
自然と、ダークロイドの狂気的な笑みも深まっていく。
手早く、キルデア騎士団の面々へアルガス機工団から状況が伝えられる。
激しい防衛戦を行っていたアルガス機工団は、すでにかなりの戦闘データを溜め込んでいた。
『何か弱点はないのか?』
『バルバロイそのものに対しては、ないようです。しかし、バルバロイの群れが取っている陣形の性質的に、キルデア騎士団に背後を取っていただけたのはとても有難いですね。……そのまま、奇襲してください。こちらで合わせます』
アルガス機工団の鈴奈から、方針がキルデア騎士団へ伝えられた。
バルムBCを羽ばたかせ、ダークロイドが強風を巻き起こし、バルバロイの群れに飛ばす。
キルデア騎士団に気付いて反転しようとしたバルバロイ・ヘッジホッグとバルバロイ・ポジトロンが、その動きを鈍らせた。
『始めるぞぉ……!』
グラヴィティ・プロトコル<G>による重力制御を行いつつ、ようやく放たれ始めた生体ミサイルと荷電粒子砲の弾幕を避けると、即座にライトニング・ロア<G>の雷鳴を響かせ、着弾地点から雷を拡散させて複数のバルバロイたちを絡め取った。
『このまま遠距離から砲撃し合うより、ある程度間合いを詰めて叩くべきかぁ……?』
よりバルバロイの群れに対して圧をかけるため、ダークロイドは球状の電気バリアを展開したバルムBCを前進させて、三位一体のネイバースフィア<G>を射出し、囮兼攻撃手段にした。
* * *
ツヴァイハンダー・エグザを駆る
卯月 神夜は、無茶しがちな
マリン・ムーンリースのエスカリボールを抑えつつ、肩を並べてバルバロイ・ヘッジホッグとバルバロイ・ポジトロン目掛けて突っ込んでいく。
『無茶な行動はするんじゃねぇぞ。足並みを揃える意識を忘れるな』
スピットファルクスとインファントキラー<D>を手に、稲光を思わせる鋭角な連続切り返しの軌道で二振りの刃を縦横無尽に振るい、烈風を巻き起こして斬りつける。
『何があろうと、私が全力で守りますから、安心して下さい!』
『全然安心できない返答ありがとうよ』
軽口を叩きつつも、神夜はツヴァイハンダー・エグザの動きをマリンのエスカリボールにきっちり合わせてくれた。
『位置的に、バルバロイ・リッパーまでは届かん! ここはバルバロイ・ヘッジホッグとバルバロイ・ポジトロンを叩くぞ!』
『分かりました! 臨機応変に、ですね!』
アイス・カンプガイスト<D>を手に加速したマリンのエスカリボールが居合斬りを放てば、すかさず攻撃対象を合わせて追撃してくれる。
神夜が攻撃している間に、マリンはアイス・カンプガイスト<D>を足元に突き刺し、バリアを発生させ守りとする。
アムド・フレクスランスに持ち替え、攻撃を終えた神夜と入れ替わりに、再度突撃して円を描くように全方位から無数の刺突を浴びせた。
飛んできたバルバロイ・スカラーの魔法を、危ういところでバレルロールして回避する。
奇襲を受けたバルバロイの群れは、大きな損害を受けたもののそれだけでは終わらず、苛烈な反撃を見せた。
抵抗が激しいのは、バルバロイ側も窮地に陥っている証だ。
アルガス機工団とキルデア騎士団は、認識を同じくして前後からバルバロイの群れをすり潰そうとする。
危険に陥りがちなマリンを、神夜は幾度となくフォローした。
『おっと、狙われているぜ』
殺気を感じ取った神夜は、インファントキラー<D>の刃を滑らせて飛んできたミサイルの勢いを削ぐと、そのまま斬って捨てて爆発させた。
もちろん、爆発もきちんと回避している。
* * *
ダークロイドのバルムBCのステージ上で、
エドルーガ・アステリアは氷結悪夢・歪を発動した。
立つ事すら困難な頭痛を発生させられたバルバロイ・ヘッジホッグとバルバロイ・ポジトロンたちの動きが鈍る。
同時に上空から氷の雨が降り注ぎ、バルバロイたちを打ち据えた。
「さて、支援はしますので、荒事は任せましたよ」
揺れるステージに立つエドルーガは、澄ました表情で立ち続けた。
「……一応、備えておきましょうか」
イノセンスブライトから不思議な光を引き出し、周囲に振り撒きバルバロイからの毒と精神異常に対する護りとする。
これは、比較的近い場所にいるバルバロイ・スカラーを警戒してのことだ。
今のところ戦況は安定しているものの、魔法で状態異常を起こすバルバロイ・スカラーは不安要素なので、もしもの可能性を考え対策しておいて損はない。