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≪セレクター編≫神域への扉

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≪セレクター編≫神域への扉
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■エピローグ■



 ――メール山、山頂。

(特異者が山頂に辿り着き、ゲートを超えた。これでゲームは完全に終了、だね)

 玖繰は張り巡らせた糸を通じて、状況を読み取った。
 彼女は倒れ伏した自分自身を見つめている。
 その姿が消滅し、黒子姿の玖繰に吸収されていった。
 玖繰は頭巾を脱ぎ捨て、山頂へと目を遣った。

「90点。これならサヤちゃんも満足するかな。亜蓮君たちにとっては手強い相手になるかもだけど」

 地球人が使えるオーラ操作の技に、アバターファンタズムというものがある。
 オートノマスの黒子との入れ替わりとオーラ回収による回復という組み合わせはクロウが分析の末に見抜いたものだが、実際はそこにさらに残像を挟み込んでいたのである。
 もっとも、度重なるアンチアバター攻撃によって玖繰は疲弊しきっており、追い詰められてた事に変わりはない。
 
「悪足掻きは九鬼の恥。代わりのいない九鬼などいない。
 ……十分長生きしたし、最後に面白い子たちと思う存分遊べたし。悪くないかな」

 そして九鬼一族が相手だろうと、生かそうとしたがる物好きもいる。
 あの三人にその想いが届くとは思わないが、背中を押す時に玖繰の経験をオーラと共に送り込んだ。
 いつの間にか、身に覚えのないオーラ技を知っていることに困惑する事だろう。

 玖繰の身体がオーラの糸に縛られる。
 その後ろには、黒子の姿がある。
 
 玖繰の不死性の最後の秘密。それは生命力の分割であり、オートノマスの像もまた彼女の本体である。
 どちらかが健在な限り、もう一方もまた死ぬことはない。
 だが……この力と引き換えに玖繰は大きな代償を支払っている。

「“敗北は死”。全ての力を使い果たした上で負ければ、私は私に殺される」

 そういう契約で、時の当主から授かった禁術だ。
 最後に脳裏を過ったのは、特異者や九鬼一族ではなく、サヤと官兵衛の顔だった。

* * *


「ところで、あなたはこれからどうしますの?」

 戦いが終わり、RWOに呼び込まれたプレイヤーたちが帰還した後。
 アヴィ=ワンことアメリア・朱雀院はかつての自分――アヴィに尋ねた。

「どう、って。あたいはもうあんたじゃないからな。
 RWOから出られないなら、常時24時間騎士団にいられるし、アクアマリンと団長を交代しても」
『ちょっと言いにくいんだけど、今のアヴィはNPCとプレイヤーの間の不自然なデータになっているから、このままだとアンチボディの駆除対象になっちゃうのよね』

 突如、アヴィ=ワンたちの脳内に声が響いた。
 ソラリスである。

「え、じゃあどうすりゃいいんだよ? 戻る体ないんだけど!」
『それなら大丈夫よ。機械の義体と同期すればアヴィもRWOの外の世界に出られるわ。
 地球から遠隔操作して義体を操っている事例もあるから、大丈夫よ』

 とりあえずアヴィのRWOからの消滅は免れ、彼女はアメリアとは別人として生きる事となった。

「アクアマリンは?」
「無事、山頂に辿り着いたようですわ。その後は連絡がつかなくなってしまいましたが……」

* * *


「サーバーは安定。各ゲームのプレイヤーも徐々に元のゲームに戻っている。
 ピークはもう過ぎたわ」
「これで一安心……とは言ってられねぇな」

 ソラリスと共に第一サーバのセキュリティを操作していたウラバイヤー――タイル・影山は、第一サーバの正体が単に地球のRWOサーバではない事に気づいた。

「ログを解析。俺のいる地球からでもデータが正常に読み込めないアクセスデータがある。
 ……これは、この三千界のレイヤーでは認識ができない世界との接続だ」

 “神域”。
 三千界管理委員会、その一部門である統合機関に所属していた彼はその領域のことを知識として知っている。
 大世界の管理者領域であり、レイヤーが異なる世界と聞いていたが……

「地球と神域は重なっている。
 いや……地球の上位レイヤー、隠居した超越者たちの住処が、俺たちが神域と呼んでいるものの正体だ。
 おそらくな」

* * *


 ――???

「さて、わらわも進むとするかの」

 九鬼一族との“取引”を終え、彼らを見逃した後、サヤは暗闇の中を進んだ。
 “神域”へ出るわけではない。この先には、狭間の世界が広がっていることだろう。

(サヤ……)
「グレムリン……いや、ギャラルホルンか。汝もやられたか」

 グレムリンはサヤがパーターというウェンディの創造物に鬼神の血を与え、生み出したギャラルホルンのための器だ。
 そしてサヤの血を介し、ギャラルホルンがサヤに干渉してくることもまた、想定の範囲だった。
 器が破壊されたギャラルホルンが次に狙うのは、

(この時を待っていた! 君の血を分けてくれてありがとう。これでボクは君を)
「黙れ。わらわの頭の中で喋るな」

 サヤはギャラルホルンを一蹴した。

(バカな、三千界を滅ぼそうという意思を持つ者が、ボクに抗うことなど)
「ずいぶんと俗っぽくなったではないか。汝は現象、感情なきシステムではなかったのか?」
(く……)

 サヤは目を閉じ、浮かび上がった精神世界のギャラルホルンを切り裂いた。

「消えよ」
(このボクが消えたとしても……“滅亡の意思は”不滅だ。おのれヤナギ サヤ――“鬼神”荼枳尼(ダキニ)!!!)

 断末魔の叫びと共に、ギャラルホルンの精神は消滅した。




【≪セレクター編≫特異点の先へ(仮) に続く】



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担当マスターより

▼担当マスター:クリエイティブRPG運営チーム

マスターコメント

『クリエイティブRPG』運営チームです。
「≪セレクター編≫神域への扉」のリアクションをお届けいたします。

パブリックシナリオは、アクションを投稿しているか、
アクションを投稿していなくても「・アクション投稿しなくても登場を希望」の項目にチェックを入れた場合、基本的にリアクションに登場しています。
基本的にPCは1シーンに登場していますが、シーン分割の関係で数ページに渡って名前がある場合もございますので、リアクションを読み進めてご確認頂ければと思います。

個別コメント、称号が付与されている場合はお知らせがありますので、併せてご確認ください。

今回、下記の方々が特別報酬の対象となりました!
配布は10月上旬までを目途に行わせて頂く予定です。


■ワールドホライゾン・三千界管理委員会からの特別報酬

ローレンティア・ベルジュ(SAL0069524)様
イルファン・ドラグナ(SAM0021401)様
納屋 タヱ子(SAM0020188)様
スレイ・スプレイグ(SAM0065869)様
コトミヤ・M・フォーゼルランド(SAM0000513)様
夏輝・リドホルム(SAM0034773)様
シレーネ・アーカムハイト(SAM0071733)様

■RWO開発チームからの報酬

エリカ・クラウンハート(SAM0057001)様
ビーシャ・ウォルコット(SAM0001063)様
恭司・プラズラン(SAM0066135)様

■玖繰の秘技(オーラ操作に関連したスキルです)
紫月 幸人(SAM0000417)様


▼以下の方にアバター死亡が出ております。

ノーネーム・ノーフェイス(SAL0069750)様 / 偉人
七種 薺(SAL0071012)様 / チャンピオン


最後に今回のリアクションを執筆したマスターからのコメントをお送りします。


【1】【3】 担当:きりん

本シナリオにご参加していただきありがとうございます。
シナリオを担当したきりんと申します。

皆さんお疲れさまでした。
橋の防衛と第一サーバの防衛、どちらも防衛が肝となる戦いのシナリオでしたが、いかがでしたか?
皆様の多方面における活躍により、メール山前の橋の防衛は成功し、グレムリンの撃破にも成功したようです。
ひとまずこれにてシナリオは終了となります。

力強くもユニークなアクションの数々、面白く拝見させていただきました。
またご縁がございましたら、その際はよろしくお願いいたします。


【2】 担当:東雲東

 皆さま、シナリオへのご参加ありがとうございます。今回「【2】メール山の山頂を目指す」を担当させて頂きました、東雲東です。
 こちらのパートでは、玖繰を筆頭とした九鬼一族との戦いが展開されましたが、正直なところボスラッシュにしても大概ですよね。
 八大竜王(+恵都)、星仁、憂仁、玖繰と数だけで言えば1パートで11(+1)となかなか類を見ない数でしたが、これだけの数を相手にしつつも見事に勝利を収められました皆様にの手腕には恐れ入りました。
 また、救援NPCや八大竜王、そして玖繰には、何かしら思うところのある方もいらっしゃったようですね。過去のシナリオも参考にしつつ、リアクションを書かせて頂きましたが、少しでも皆さまの想いやご期待に沿えた内容となっていれば幸いです。