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≪セレクター編≫神域への扉

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≪セレクター編≫神域への扉
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・第一サーバ攻防戦3

 少年形態のグレムリンを前に、竜一は鞘からグレイシャルピリオドを引き抜く。
 刀身に冷気が集まり、氷の刃を形成した。

「この一撃を、受けるがいい!」

 横一文字にグレイシャルピリオドを薙ぎ払うと、斬撃の軌跡に沿って冷気が走り、グレムリンへ向けて飛んでいく。
 冷気をひらりと避けたグレムリンは、にやっと笑うと指を鳴らす。

「さて、何が起こるかな?」

 瞬間、室内だというのに竜一がいる場所を狙い撃ちして豪雨が降り注いだ。
 前が見えなくなるほどの雨量にたまらずその場から飛び退くと、グレムリンは竜一を見てケラケラと笑っていた。

「いいね! 水も滴るいい男じゃないか!」
「ふん、余裕のつもりかの!」

 燃え盛る硫黄を身に纏い、リリムローズがグレムリンに格闘戦を挑む。
 殴りかかるリリムローズだったが、グレムリンはひらりひらりと避けて後退していく。

「雨を降らせるのはキミの方が良かったかな?」

 リリムローズへグレムリンは嘯く。
 そこへ守護神竜の聖牙槍を構えて突進してきたみらりんが、鋭くグレムリンへ突きかかった。

「減らず口を叩くのはそこまでですわ!」

 惜しいところで、グレムリンを掠めて刺突が外れる。
 グレムリンからの反撃は、みらりんが身体を張って受け止めていく。
 高い防御力と耐性を前面に押し出し、みらりんは真正面からグレムリンからの攻撃を受け止めつつ、反撃を試みる。
 これは、またしてもグレムリンに避けられてしまったが。

「行け、不可視の獣よ!」

 姿の見えない獣を具現化させたルキナは、それをグレムリンへけしかけた。
 何かがいることに気付いたグレムリンは、再び指を鳴らした。
 大爆発がおき、不可視の獣が巻き込まれて吹き飛ばされると共に、爆風でグレムリンが姿を隠す。
 殺傷力のない爆発だが、無意味なものではない。

「見つけた」

 爆風の不自然な流れから、グレムリンは不可視の獣の位置を予測した。
 追いかけようとする不可視の獣を振り切り、直接ルキナを叩こうと狙うグレムリンだったが、途中で行動を中断して回避行動を取った。
 グレムリンのすぐ傍を、投擲されたミスティルテインが通過していく。

「お嬢様へ手出しはさせません!」

 ルーン魔術で強化された能力を利用し、モリガンは白竜王『グリント』に格闘戦を仕掛けさせた。
 戻ってきたミスティルテインをキャッチすると、すぐさま白竜王『グリント』に合わせ、自らも刺突を放つ。
 目まぐるしい攻防が行われた。


* * *



 味方と連携しながら、【赤青白のクインテット】もグレムリンに襲いかかる。

「“白騎士”イルファン・ドラグナ―――推して、参る!」

 降霊術によりミカエルを己に憑依させたイルファンが、光の刀身を形成し、キャリバー・オブ・メサイアを薙ぎ払い衝撃波を放つ。
 おどけた様子でグレムリンは斬撃を避け、指を鳴らした。
 ロバ、犬、猫、ニワトリの幻影が現われ、けたたましく鳴き叫んでイルファンの注意を削ごうとする。

「怖いなぁ。当たったら大変だ」

 グレムリンの呟きは、わざと危険を装っているのか、本当に危ないと思っているのか、いまいち判断がつかない。
 ただ、その視線は確かにキャリバー・オブ・メサイアへ注がれていた。

「ほざけ!」

 接近戦を挑むなら、少年形態を取っている今がチャンス。
 空を飛び立体的に回りこんで、イルファンは背後から奇襲を試みる。
 セラフィックアーマーから翼を射出し、グレムリン目掛け大量の羽を巻き散らすイルファンに対し、グレムリンは魔法による幻や陽動を駆使して、その狙いを僅かにでも逸らし、弾幕の隙間からひらりと逃げてしまう。
 その身軽さは本当の妖精のようでいて、されど妖精と評するにはグレムリンの表情と纏う気配は邪悪過ぎた。
 ふらふらと動き回り、読めるようで読めない行動を繰り返すグレムリンに対し、心美は潔く五感に頼るのを止めた。
 目を閉じて、紅虹の剣を静かに構え、心の目でグレムリンの居場所を探った。

(言葉に耳を傾けないで、ただ気を落ち着かせて……)

 心美の心が凪いでいく。

「そこっ!」
「あぶなっ」

 目を閉じたまま放った心美の斬撃は、カウンター気味に意表をついてグレムリンの目前に到達して掠め、咄嗟に仰け反ったグレムリンの前髪を斬り飛ばしていった。
 毒を混ぜた水の結果を展開したユウは、グレムリンを警戒しつつアンチボディの様子も窺う。
 アンチボディに対する味方の数は少ない。

(こちらにも、来るかもしれません……)

 実際は来ないかもしれないし、懸念が当たって本当に来るかもしれない。
 どちらかは分からないが、対策せずに本当に来てしまうパターンが一番まずいためユウはアンチボディの監視をする。
 当然、グレムリンにも注意を向けたままだ。
 自分の攻撃の際に味方が巻き込まれないよう、輝神オータスに祈りを捧げ、魔性の力に対する加護を与えておいた。
 ユウの攻撃に対して、脅威ではないと見ているのか、グレムリンの反応は少ない。
 実際に、毒を混ぜた水の刃が命中しても、グレムリンの様子は変化がなかった。
 聖唄『ヒュムヌス』を掲げた織羽が、、“輝ける星の唄”を歌う。
 【赤青白のクインテット】の者たちの魔力を活性化させ、内なる力を最大源に引き出し、魔力の消耗を少し緩和させた。

「さあ、広がって。どこまでも」

 歌の力が、強まっていく。
 少しだけ鬱陶しそうに、グレムリンが織羽を見た。
 動きで翻弄されないように、アリシアは魔力を読む。
 グレムリンが攻撃に転じる度に生じる魔力の隆起を察知して、イルファンに注意を促した。

「攻撃、来るよ」
「分かった」

 回避行動を取るイルファンが攻撃を避けたのを確認し、アリシアは神罰術式を行使して多数の光の十字架を放ち、態勢を整えるための時間を作り出した。
 矢が次々に飛ぶ。
 射ているのは千羽矢だ。
 緋弓箭に新たな矢を番えると、鋭い眼差しでグレムリンを見据え、超遠距離から狙撃を行う。

「……まずは、様子見だな」

 刻み込んだ火の刻印が、いい矢の道しるべとなってくれるはずだ。
 大量の水を生み出し自身の周りに展開したユウは、グレムリンの束縛を狙った。
 しかしいくら魔力を注いでも、グレムリンの動きを止めることはできない。

(拘束は効きませんか……)

 やはり、地力で勝負するしかないようだ。
 搦め手はあまり効果的ではない。
 仕方がないので、味方の回復を行った。


* * *



 遠くでグレムリンと戦う味方の戦闘音が聞こえる。

「いいですね。このまま引きつけておいてくれるといいのですが」

 状況を確認する玲央であるが、真に警戒すべきはグレムリンはなくアンチボディであることも気付いていた。
 アンチボディたちは、明確にソラリスとクレインを狙っている。
 もしも触れさせることを許してしまえば、たちまちふたりは身体の自由を奪われ、その時点でリミッター解除ができなくなってしまうかもしれない。

「もし来たら、僕が身代わりになろう。今、作業を中断させるわけにはいかないよ」

 作業の大部分を受け持つソラリスとクレインを補助する博人もまた、アンチボディたちの動きに気付いている。
 少数の味方が止めに動いてくれているものの、人数的に止めきれるかどうかは微妙なところだ。
 ドラゴンタレットでアンチボディとの戦いを援護しつつ、博人は生命力を活性化させ、傷と共に精神力も回復させる。
 ドロップモモンガに乗ってソラリス、クレイン、博人の周囲を旋回し、回復作業を行いつつアンチボディへの牽制も行った。
 ウェアラブルコンピューターを、博人が忙しく操作する。
 あくまでソラリスとクレインを助ける程度のことしかできないが、それでもできることは全てやるつもりだった。

「……ふう」

 サカイヤチョコレートを齧ってその甘さに精神的に癒やされながら、玲央は回復を続ける。
 アンチボディはあともう少しでソラリスとクレインに届きそうな際どい位置まで迫ることもあったものの、戦う味方の奮戦により、押し留められていた。


* * *



 アンチボディを早く倒してしまいたいサキスと空だったが、直接攻撃は危険度が高い関係上、接触を最小限に弾き飛ばす戦法を取らざるを得ない。

「とにかく、動きを鈍らせなければならんのう。数秒くらいがベストじゃな」

 己のアバターをオーラとして発現させると、分離して空神の秘刀を抜き放たせた。

「行け」

 勢いよく飛び出していくアバターに前衛を任せ、サキスは【神格】ムシュマッヘで追尾弾を放つ。
 アバターが振るう空神の秘刀の斬撃と、サキスの銃撃による追尾弾が、時間差でアンチボディへ襲いかかる。
 対するアンチボディは、アバターからの攻撃は当たるに任せ、追尾弾の方を回避した。
 本体からの攻撃の方が、厄介と見たのか。

「困りましたね。こちらは近接戦闘を行う予定だったのですが……厄介な反撃手段があるとなれば、迂闊に攻められません」

 ぼやく空は、間合いを詰めるタイミングを見計らう。
 何度目かのサキスの銃撃が当たった瞬間に動いた。

「──今です」

 鋭い呼気を発して踏み込んだ空の姿が消失する。
 突風と共に次に空が現われたのは、アンチボディの目前だった。
 今の一瞬で間合いを詰めたのだ。
 まずは様子を見て、その反応を窺う。
 アンチボディは空へ向けて手を伸ばす。
 それを避け、明らかに接触を狙っていることを確認し、両手の槍を構えてカウンターを取った。
 回転させた槍がアンチボディの体勢を崩し、さらに全身で行う円の動きによって、空がアンチボディの目前から忽然と姿を消す。
 空はアンチボディの背後に現われていた。
 二本の槍による回転乱舞が、まるで鈍器のように次々アンチボディの胴体に叩き込まれた。
 反撃しようとするアンチボディだったものの、停滞フィールドに阻まれ手が届かなかった。


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