・第一サーバ攻防戦1
青井 竜一は、セルジュに協力を依頼した。
「手を貸してくれ! 俺たちの防御力で、あいつの手の内を引きずり出していこう!」
「いいだろう! キミの力になるぞ!」
セルジュと共に、竜一はグレムリンと相対した。
リリムローズ・サファイアブレスは己に悪魔二体を憑依させる。
「ベリアル、レヴィアタン!」
身体能力を引き上げ、レヴィアタンが鎧に変形したことで防御力も上昇させた。
「さあ、参りますわよ!」
人馬の鎧を装備し、ケンタウロスのような姿になった
ミラシファー・冴架・アテネメシアみらりんが、守護神竜の聖牙槍を小脇に抱え、戦女神の聖盾をもう片方の手で掲げた状態で駆け出す。
「幻想よ広がれ!」
奥の手を隠し持ちながら、自分の最大火力を発揮するとグレムリンに思いこませるため
ルキナ・クレマティスは即座に周囲の空間を異界化させた。
さらに異界を拡張させ、強化された創造物を出現させる準備を始める。
「行きますよ、グリント!」
白竜王『グリント』を駆り、ドローミを手綱に
モリガン・M・ヘリオトープが空へ舞い上がる。
* * *
第一サーバのリミッター解除に動くソラリスとクレインを助けるため、
永見 玲央と
永見 博人はふたりに合流した。
ソラリスとクレインは、グレムリンが従属させたアンチボディたちに狙われている。
おじさんに協力要請を試みた玲央だったが、おじさんはメール山の橋の防衛の方に行っているらしく来れなかった。
「まあ、問題はありませんね。私がオアシスになればいいことですし」
正式名称はオアシスであって、おじさんではない。
別に玲央がおじさんの格好をするわけではないのである。
「僕も手を貸すよ。人手は多い方がいいしね」
自身の技術や知識を信じる博人は、ソラリスとクラインに手伝いを申し出る。
「ええ、お願いするわ」
「あたしたちはリミッター解除作業中、無防備になる。守りは任せたよ」
ソラリスとクラインは頷き、共に第一サーバへアクセスを始めた。
* * *
アンチボディたちへの対処に回るウラバイヤーへは、
サキス・クレアシオンと
乙町 空が同行していた。
「ところで、何か策はあるのかのう?」
「んなもんはねぇ。あるのは対処法だけだ」
ウラバイヤーは語る。
「アンチボディとの直接の接触は避けろ。身体を動かせなくなる。遠距離から狙うんだ。第一サーバのハッキングをやっている奴らを目に触れさせんな。狙われないように、俺たちに目を惹きつけさせるぞ!」
「なるほど、つまり囮になれということですね。そして倒せと。分かりました。やってみせましょう」
召現させた二本の槍を手に、鈿女の力を借り受けた空が、アンチボディたちと激突した。
* * *
【赤青白のクインテット】の面々も、グレムリンと戦うことに決める。
一部の者は、アンチボディのことも気にしているようだ。
「以前と比べて中身はどうだか知らないが……。まだまだ決着をつけなければならない奴らがいるんでね。さっさと退場してもらうよ」
心美・フラウィアはオーラを纏い、精神的な防衛力を高めた。
「アンチボディと戦っている皆さんは大丈夫でしょうか……。援軍に向かえるようにするためにも、まずはグレムリンを何とかしないといけませんね」
誘惑されることを警戒し、
叉沙羅儀 ユウも精神力への干渉を防ぐため耐性を上昇させている。
見につけたジュリーズバンダナと、ドレスの中に潜ませた空蒼の細剣をお守りに。
「また他人の身体を乗っ取ったのね。もう絶対に許さないから」
離れていても、心は共にある。
ジュリーのことを想いながら、
織羽・カルスは戦いに臨んだ。
イルファン・ドラグナもグレムリンを見据える。
「三千界を滅ぼさせはしない。何度でも、撃退するまでだ」
炎のように巻き起こるアバターのオーラを纏った。
アリシア・ヴァレンベリは、グレムリンから漂ってくる悪意をひしひしと感じていた。
あどけない美少年の様相に反して、伝わる意思は黒く染まっている。
「阻止してみせるよ、私たちで」
決意を胸に、オーダーオブオータスを強く握り締めた。
「……奴の能力は危険だ。開発領域に手を出されてしまえば一巻の終わり……。場合によっては、俺たちが触れられただけでも、まずいことになるかもしれん。気をつけろ」
遠近 千羽矢が、味方に注意を促す。
* * *
焔生 たまと
納屋 タヱ子はコンビを組んでグレムリンと相対する。
「また別のガワを被ったんですか? 器ばかりコロコロ変えて……。もういたちごっこに付き合う気はありませんよ!」
「グレムリンの目的を達成させるわけにはいきません。このまま引っこまれるのは厄介なので、ここで倒して少しでも力を削いでおかなければ」
次の瞬間、たまの雰囲気が切り替わった。
肉体が活性化して強大な力を生み、隠されていた霊格も解放される。
たまに憑依する悪魔は炎を統べるもの。
巨大化したたまの姿が、異形に変貌する。
纏うのは、地獄の業火を思わせる獄炎だ。
ゆっくりと、たまの陸阡眼が開き、視線を彷徨わせる。
グレムリンを見つけて、焼滅の邪眼とも呼ばれる目が、合わされた。
背後ではタヱ子もオーラを纏い、たまを援護する準備を入念に整えている。
* * *
【双星の守護者】 も、グレムリンに戦いを挑む。
桐ヶ谷 遥はメタルインカネーターと連絡を取った。
手伝いを頼むためだ。
結果として、メタルインカネーターはアンチボディの対処に回ってくれることになった。
「ありがとう。助かるわ」
「気にすんな。俺も世界が吹っ飛んだらたまらねえからな」
駆け出すメタルインカネーターを見送り、遥は静かに歩き出す。
「サヤとの決着が待っているのよ。ギャラルホルンに邪魔はさせないわ」
ロワ・エレマンが遥の後に続いた。
「こんな所で足止めされているわけにはいかんよな。駆け抜けるぞ」
後衛には
アルフレッド・エイガーがついた。
「回復と防御はオレも援護する。思いきりぶん殴ってやりな」
グレムリンを
レベッカ・ベーレンドルフは見つめていた。
「もはや正体を隠すつもりもないようだな。ならこちらも遠慮はいるまい」
術式を刻むため、スーパーアダプトボウの矢に細工を始めた。
同時にレベッカの観察眼が高まっていく。
何もしていなくても滲み出るグレムリンの悪意を、
ロージィ・パラディースはひしひしと感じ取っていた。
「あれはうん、まさに悪意の塊ってやつやな。あんなヤツに負けるんやないでっ。うちも頑張るからなっ!」
息吹の竪琴を奏で、詩歌を演奏する準備を整えた。
立ち尽くす
キョウ・イアハートの戦意が高まっていく。
「越えさせちゃいけねぇラインがあるとすればここで、止めるべきタイミングは今しかねぇ。……案の定来やがって」
キョウはグレムリンを睨みつけ、遥とロワを囮にするように、別行動でグレムリンの虚を突こうと動く。
(何度悪意をばら撒こうが、何度でも悉く潰してアンタを否定してやる。世界の意思は悪意ばかりじゃねぇはずだ。世界の願いが滅びばかりとも限らねぇはずだ。仮に本当だとしても、代弁者を挟んだ時点でそれはもう変質している。お前さんの意思と解釈が入るからな。そういう意味じゃ結局はお前さんも、外野なんだよ)
自分もまた世界にしてみれば第三者に過ぎないことを、キョウは承知している。
だからこそ、グレムリンと戦うのだ。
どんな経緯で生まれようと世界そのものではない以上、結局はグレムリンも第三者であることに、変わりはないのだから。
「世界の敵……でございますか。どちらが世界にとって本当の敵なのやら。果たしてギャラルホルン本人ですら理解しているかどうか、分からんものですなぁ」
飄々とした態度で、キョウの横に
ホーク・ハインドが並んだ。
特異者もギャラルホルンも共に世界の異物とするならば、それを別つはその世界に対する敬意を持つかどうかに他ならない。
そして世界に敬意を抱いているなら、その世界を破壊しようとする悪意を、見逃すわけにはいかないのだ。
「立ちはだかるのなら何度でも打倒するまでですわ。かけがえのないものを守るために」
さらにキョウの隣、ホークとは反対側に
アントーニア・ロートリンゲンが並んだ。