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カルディネア

忍び寄る崩壊の序曲

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忍び寄る崩壊の序曲
【!】このシナリオは同世界以外の装備が制限されたシナリオです。
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2.争闘に沸き立つ舞台(2)

◇◆◇ 葵 司七種 薺 ◇◆◇

 対戦相手の発表、そして登場。
 本来なら申請は二人分。しかし現れたのは薺だけであり、もう一人の参加者である司の姿はなかった。
 薺しか現れなかった事に対して観客は様々な憶測を野次った。
 女一人を戦わせる事への非難や、一人で大丈夫かという心配の声。様々な声を聞きながら薺は少しばかり困った表情を見せた。
「後で弁明……いや分からなければ大丈夫……?」
 悩んでいると相手側の扉が開かれた。飛び出して来たのは今回の相手、ワイルドウルフだ。
 それに合わせ薺は弦を引き絞る。隠れられる場所が少ない以上、狩人らしい戦い方はできない。しかし広いからこそ魅せられる事もあるのだ。
「まずは牽制っ!!」
 薺は真っ直ぐ向かってきた狼に弓を放ち、進行方向をねじ曲げた。避けた狼は円形状の舞台に沿ってこちらに向かってきている。
「ルートが分かれば問題ないよ!!」
 次に放った三本の矢だ。矢は狼の正面を軸とし、三方向へと向かっていく。回避を阻む攻撃は舞台の内側へと避けたワイルドウルフの前足へと当たった。
 しかし向こうに止まる様子はなく、牙を見せながら飛び込んで来た。
 それをステップで躱し、すれ違いざまにドラゴーンルーンのブレスを浴びせ体力を削り取る。背後さえ取ってしまえば勝利など殆ど決まったようなものだ。
 薺は狙いを定め、狼の後頭部へ最期の矢を放った。


◇◆◇ ジェノ・サリス ◇◆◇

「滅竜士キャロル……複数の竜を倒してきた強者だ。可能ならば、その力を一旦でも引き出し、その技術を自身に取り込みたいところだ」
 ジェノは滅竜の大剣を手に取り、強者に想いを馳せる。
 彼女と渡り合うのであれば、生半可な動きでは直ぐにねじ伏せられて終わってしまうだろう。
「だが、最低限鍛えてきた自信はある」
 ジェノは湧き上がる感情を胸に、闘技場の舞台へと上がった。

 試合が始まったのはそれから暫くしてのこと。
 観衆の声に耳を傾けていれば、現れたのはキャロルだ。ジェノと同じような大剣を持ち、彼女は明るい表情を浮かべている。
「次はあんたか、ちょっとは楽しめるといいなあ」
「それは俺も同じだ、どこまで抗えるのか試させてもらおう」

 剣戟は間もなく始まった。
 どちらも大剣を扱っているはずなのに、音の間隔はやたら短い。おまけにジェノがいくら重苦しい一撃を入れても、キャロルは難なくそれを防ぎ、同じような攻撃で返してくる。
「どれだけ力がっ……!!」
 掌に伝わる重みは消えない。このままでは押し切られてしまうだろう。
 そう考えたジェノは勝負に出た。
 大剣を一度下げ、地を掠めるように振り上げた。追随した風の力を以て吹き飛ばそうという算段である。
「良い一撃持ってるね……でもあたしの勝ちだよ」
 キャロルは風の抵抗などものともせず、回転斬りでジェノごと吹き飛ばした。

「……鍛えた俺ですら捉えきれないとは、随分と人間離れしているな」
 彼女は一体何者なのだろうか。場外に落とされてしまったジェノは目を細め、勝者を眺めながらそう呟いた。


◇◆◇ 小山田 小太郎 ◇◆◇

「冒険者コタロー、いざ参ります」
 小太郎は闘技場へと上がり、己が目的を反芻する。
 冒険者の身なれど、それを果たせる闘技場(ばしょ)があるのであれば、己が培いし武の教えを以て、戦い果たすのが務めの一つ。
「お相手願います」
 そうして彼はキャロルと対峙する事を決めた。
 彼女はかなりの猛者である。それこそ太刀打ちすらできぬ相手やもしれぬ。
 だからこそ小太郎は彼女へ挑んだ。己が実力を試せる機会を逃さないために、そして格上相手の動き方を学ぶためにも。
「やるからには全力で……善き試合にしましょう」
「次はあんたが相手ね、それじゃあちゃちゃっとやるかー!!」
 打ち合いが始まったのはそれから間もなくの事だ。剣戟の音が周囲へと響き渡り、観客達も息を呑みながらそれを見守っている。
 キャロルの一撃はとても重く、受け止めた刀が悲鳴を上げる。掌に伝わる衝撃は味わった事の無いほどのもので、大岩相手に立ち回っている気分にすらなった。
 勝ち目は限りなく薄い。ただ、それでも止める訳にはいかなかった。
 最初から勝ちを狙わぬ戦いに、人々が惹かれることなどないのだから。

 小太郎はキャロルと距離を取り、刀を一度収めた。痛みの残る掌を数度振り、柄へと手を掛ける。
 狙うは起死回生の一撃、己が体躯を武器にする格闘術。
 小太郎はじりじりとすり足で機を窺い、歩法を用いてキャロルへと距離を詰める。彼女の攻撃を躱し、掌底からの投げ技を決めるために踏み込んだ。
 しかし小太郎の攻撃は読まれていたのだろう。キャロルが軌道を変えたのに合わせ、小太郎も策を切り替える。居合刀に手を掛け鯉口を切ろうとした瞬間。感じたのは風の音だった。
 既に雌雄は決していた。ふわりと身体が浮き上がり、刀からは先程とは比べものにならないほどの圧が伝わってくる。
「あたしの勝ちだよ」
 見上げた先に居たのはキャロルだった。己が身は既に場外へと投げ出されている。
 小太郎は悔しいような、やりきったような表情でそれを受け入れた。
「最後にその剣を見せてもらえませんか」
「ん、いいよ」
 ほら、とキャロルは大剣を手渡した。小太郎はそれを受け取ろうとしたが、あまりの重さに思わず取り落としてしまう。
「……こんな重たいものを片手で」
 これほど人間離れをした身体能力の持ち主である彼女は何者なのだろうか。
 小太郎は湧き出た疑問を胸に、キャロルの大剣を両手で拾い上げた。

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